青山学院横浜英和中学校は、神奈川県横浜市にあるキリスト教系の男女共学校です。その歴史は1880年(明治13年)、アメリカ人女性宣教師であるH.G.ブリテン氏が横浜市中区山手に「ブリテン女学校」を設立したことにはじまります。
1996年に「横浜英和女学院中学校」に名称を変え、さらに2014年に青山学院大学と系属校関係を締結。2016年に「青山学院横浜英和中学校」と校名を変更し、2018年の新・中学校1年生から男女共学となりました。2020年には創立140周年を迎えている伝統ある中学校です。
教育方針で特筆すべきは、キリスト教教育に基づきグローバル化を非常に意識していることです。
英語教育に非常に力を入れており、少人数制の英会話授業、夏休みを利用した短期留学、海外研修などを実施し、国際的な人材の育成を目標としています。また、来るべき新しい学びに向けて、ICT教育にも力を入れているのが特徴です。
今回は、青山学院の継続校になり、先端的な学びを行うことで人気上昇中の青山学院横浜英和中学校の国語の出題傾向や入試対策方法について解説します。
Contents
入試情報
試験時間と満点、合格者最低点
国語の試験時間は50分、100点満点です。4教科合計の満点は300点(算数・国語各100点、理科・社会各50点)ですが、合格最低点は年によって変動します。
2021年度は、合格最低点がA日程(2月1日午前)で185点、B日程(2月2日午後)は174点、C日程(2月3日午後)で168点でした。おおむね約6割が合格のボーダーラインとなっており、その傾向はこの数年続いています。
問題構成・解答形式
青山学院横浜英和中学校の入試の国語は、大問が5題の出題が続いています。
漢字、慣用句や同義語・反意語といった「ことばの問題」で大問2題、説明文・論説文、物語文、随筆文などの長文読解問題が大問で3題の出題です。
長文読解問題は、説明文・論説文(随筆を含む)が2題、物語文が1題の出題が続いています。
3題で約10,000~12,000字にもなる長文読解が合否を分けるカギとなっており、いかに速く、正確に文章を読むことができるか、重要部分を素早く把握できるかという全体的な国語力が試される入試となっています。
解答形式としては、記号選択式問題、書き抜き問題、記述問題などがバランスよく出題されています。2020年度の入試では、小問が33問。
記号選択式問題、書き抜き問題の割合が多くを占めていますが、なかには大問3のように、長文読解問題1題まるまるで文章の整序問題が出題されるケースもあります。
小問33問の中で、漢字の書き取りと読みで5問、ことばの問題3問、長文読解問題の中で記号選択式問題は13問、書き抜き問題が6問、文章整序問題が1問(大問1題まるまる)、記述問題が2問、そのほかの出題が3問。
記述問題は「具体的に」説明させる問題が出題されており、文章内容の把握が必須の問題でした。原因と結果、理由と結論の関係をしっかり理解できていないと答えるのは難しかったでしょう。記述問題の字数制限がなく、枠の中に必要十分な内容を書き入れていく形式であるのも、ハードルを上げている原因となっています。
また、文章全体の順序を並べ替える文章整序問題は配点も大きいと考えられ、少しでも間違えると大問まるまる1題を落としてしまうことになるので注意が必要です。
このように、出題のバリエーションが幅広いのが青山学院横浜英和中学校の国語の入試の特徴です。十分な基礎知識と国語力をつけ、問題演習を繰り返すことが対策として必須となるでしょう。
近年の出題傾向
概要
青山学院横浜英和中学校の国語では、漢字の書き取りと読みで大問1題、ことばの問題が大問1題につき3問程度、長文読解が3題という構成が続いています。
長文読解問題では3題中1題が文章をまるごと使った文章整序問題が出題されるのが特徴で、文章を素早く読み、どのように並べ替えていくか瞬時に判断しなければなりません。
ほかの2題と合わせても出題される文章量は10,000~12,000字程度あり、速く正確に読まなければ時間内にすべての問題に答えるのは難しいと言えるでしょう。
出題されるテーマは幅広いですが、ベストセラー作家、中学入試の国語で狙われやすい作家の文章が出題されることも多いです。
多様な考え方をテーマに据えている文章が出題されることも多く、グローバル化・今後の大学入試改革を見据えた幅広い視点を求めている出題だと言えるでしょう。
2020年度の出題
大問1:漢字
漢字5問は、書き取り問題が3問、読みの問題が2問でした。
「審判がアウトをセンコクする」「自分ホンイの考え方だ」「葉に露がヤドる」「角笛を鳴らす」「期待に応える」
いずれも、中学受験生なら必ずマスターしているはずのレベルの出題であり、日々の漢字練習をコツコツ行っていれば、それほど難しい問題ではないと言えるでしょう。
ただし、漢字の意味を理解していないと答えられない問題も出題されているため、用例も含めて「その漢字をどのように使うか」を常に考えながら漢字の学習ができているかどうかが重要です。
大問2:ことばの問題
パズル的な出題方法が目立つことばの問題が3問です。
- 「製造工テイを確認する」の「テイ」に当てはまる感じを選ばせる問題
- 二字熟語の組み合わせ5つの中から、反意語の関係にあるものを選ばせる問題
- 四字熟語の間違っている漢字を正しく直させる問題
漢字の知識、同義語・反義語、四字熟語など、ことばの問題のテキストでしっかり勉強していれば難易度は高くありません。
ただし、「知らなければ答えられない」問題なので、正しい知識を以下にたくさん持ち、整理してすぐに頭から出してこられるようにする訓練が求められる出題です。
大問3:説明的随筆
小川洋子「物語の役割」
小川洋子さんはベストセラー作家であり、入試でもよく出題される作家さんです。
出題は物語文ではなく、小川洋子さんの本との出会い、読書体験の原点について書いたエッセイ(随筆)です。難しい論説文というよりは、平易な言葉を選んで書かれている、比較的読みやすい文章となっています。
中学受験生も読書体験を持っていますが、大人の作家の読書体験というテーマであり、完全に重ね合わせて読むのは少々難しい文章ですが、小学生でも共感できる文章となっており、読むこと自体は難しくないと考えられます。
ただし、この大問の特徴は、文章全体が導入部分を除いて4つの部分に分けられており、それらを意味が通るように順番通りに並べる出題だということです。つまり、大問1題まるまる使った文章整序問題となっているわけです。
長文読解問題の中で文章の一部分を取り出して整序させる問題はよく出題されますが、長文まるまる使った整序問題は非常に特徴的です。
文章のテーマを素早くつかみ、それぞれの部分を正確に読んで、起承転結をつけて並べ替えなければなりません。
読む部分が長いので、一瞬でも気を抜くと読んだはいいものの順番を並べ替えるところまで行きつかない受験生も多かったであろう、差がつく問題のひとつだったと言えるでしょう。
大問4:説明文
稲垣栄洋「雑草はなぜそこに生えているのか」
青山学院横浜英和中学校は青山学院大学の系属校であり、青山学院大学への進学者も多いですが、ほかの大学、しかも理系学部への進学も増えてきています。その影響もあるのか、説明文のテーマとして理科分野の出題が目立ちます。
作者の稲垣栄洋さんは、近年の中学入試の国語のスターともいえる作家さんです。
さまざまな文章が非常に多くの中学校で入試問題に出題されているので、塾の授業や模試でも文章を読んだことのある作家さんでしょう。そんなスター作家である稲垣栄洋さんの文章の中でも比較的読みやすい説明文が今回の出題でした。
地面に生えている花と、アブやミツバチといった虫の関係についてわかりやすく書かれている文章なので、受験生にとってはそれほど難解な文章というわけではありません。
問題となるのは、設問にいかに答えるか、です。文章が比較的平易なだけに、設問の答え方のバリエーションはさまざまで、また文章量も多いため、読み終わってから時間をかけて設問に答えることはなかなか難しいと言えるでしょう。
記号選択式問題が7問、書き抜き問題が3問、記述問題が1問の合計11の小問が出題されています。記号選択式問題の中にはことばの知識の問題もありますが、「どのようなことですか「何を○○だと思っているのですか」という、文章の本質が説明できるかどうかを見極めるような問題がほとんどです。
書き抜き問題では、単に設問に対応するところを書き抜くだけでなく、抜けている文が設問に書かれており、その前後の部分を書き抜かせる問題も出題されているため、文章全体を把握しておかなければ答えることができません。
記述問題は1問でしたが、「ハチだけに蜜を与えるために紫色の花はどのようになっていますか」を説明させる問題でした。
ここで注意が必要なのは、説明にあたって「条件」が付いている、ということです。その条件とは、「ホトケノザの例から」「具体的に」説明しなさい、ということです。
条件付きの説明は、その条件から外れてしまった瞬間にいくら書いても0点になってしまうので注意しなければなりません。設問内容をしっかり把握することが求められた1問だったと言えるでしょう。
大問5:物語文
森絵都「クラスメイツ<後期>」
森絵都さんも、中学入試の国語では頻出の作家さんとして有名ですね。
この大問の文章は、登場人物が中学受験生と同年代であり、平易なことばで書かれているので非常に読みやすいです。ただし、セリフが非常に多いため「誰がしゃべっているのか」混乱する可能性があります。
また、場面の変化がところどころにあり、文章全体が長いので、最後まで集中力をもって読み切ることができたかどうかでまず差がつく問題だったと言えます。
設問としては、記号選択式問題が6問、書き抜き問題が3問、記述問題が1問、文中の穴に当てはまることばを答えさせる知識問題1問、という構成でした。
一見平易に見える出題なのですが、記号選択式問題では、「適当なものを選びなさい」と「適当でないものを選びなさい」という問題が混在しており、注意深く設問を読まないと非常に時間をとられてしまいかねません。
また、主人公の人物像を答えさせたり、「なぜか」という理由を選ばせる問題が並んでいるので、文章の平易さに流されてしまうと、何度も文章中に書かれていることに戻らなければならなくなってしまう、落とし穴の多い出題だったと言えます。
書き抜き問題は、文章が2つに分かれるその境目を書き抜かせる問題が出題されています。これは文章全体の構造を理解していないと答えられないので、間違えやすい問題のひとつだったと言えます。また、ことばの知識、たとえている部分を書き抜かせるなど、一筋縄ではいかない問題が並んでいます。
記述問題は、字数制限がありません。「どのような出来事によって」「どのような気持ちからどのような気持ちに変わったか」という、原因と結果、さらに心情の変化といった、物語文の核心を突く問題となっています。
文章の進み方をつかみ、物語文の中心となる心情について具体的に、しかも「本文の内容をふまえて」説明させる問題でした。いわば物語文の中心部分全部入り、といった記述問題でした。
字数制限がないため、書こうと思えばいくらでもだらだらと書き連ねることができるのですが、設問の条件を読み誤ると的はずれな解答しか作れないので注意が必要です。
「本文の内容をふまえて」とあることから、受験生が自分で思ったことを自由に書いていいわけでもありません。客観的な正確な読みが求められる良問だったと言えます。
次回の記事では、こうした分析を踏まえて、青山学院横浜英和中学校の国語の攻略法を解説します。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。