空気中には酸素や二酸化炭素といった種々の気体が含まれていますが,化学実験においては他にも様々な気体が発生し,または発生させることができます。ほとんどは無色無臭で見分けがつきませんが,それぞれ固有の性質をもっており,気体の問題ではそれぞれの性質を正確に理解していないとすぐに混乱してしまいます。ここではテーマとして頻繁に扱われる気体を中心にそれらの性質を確認していきましょう。
Contents
気体の性質
まずは各気体の性質を正確に理解していきましょう。紛らわしいものもあるので気をつけましょう。
酸素
- 色:無色
- におい:無臭
- 空気と比べたときの密度:大きい(約1.1倍)
- 水への溶解性:溶けにくい
- 助燃性がある
(助燃性:物が燃えるのを助けるはたらき)
二酸化炭素
- 色:無色
- におい:無臭
- 空気と比べたときの密度:大きい(約1.5倍)
- 水への溶解性:少し溶ける(水に溶けると炭酸水になって弱い酸性を示す)
- 不燃性(自ら燃えることはない)
- 石灰水を白く濁らせる
水素
- 色:無色
- におい:無臭
- 空気と比べたときの密度:小さい
- 水への溶解性:溶けにくい
- 空気中で燃えると爆発して水ができる
アンモニア
- 色:無色
- におい:刺激臭
- 水への溶解性:非常によく溶ける(水溶液はアルカリ性)
窒素
- 色:無色
- におい:無臭
- 水への溶解性:溶けにくい
- 体積の割合で空気の約78%を占める。
塩化水素
- 水への溶解性:非常によく溶けて、水溶液は強い酸性を示す(塩酸)。
塩素
- 色:黄緑色
- におい:刺激臭
- 有毒
- 殺菌・漂白作用がある
硫化水素
- ・におい:腐卵臭
気体の発生方法
次に各気体をどうやって発生させるのか,そしてそれらをどうやって集めるのかを確認していきましょう。
気体の発生方法
- 酸素:
二酸化マンガンにオキシドール(うすい過酸化水素水)を加える。
水上置換法で集める。
- 二酸化炭素:
石灰石や貝殻にうすい塩酸を加える。
炭酸水を加熱する。
炭酸水素ナトリウムを加熱する。
主に下方置換法で集める(水上置換法でも良い)。
- 水素:
亜鉛や鉄、アルミニウムなどの金属にうすい塩酸を加える。
水上置換法で集める。
- アンモニア:
塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混ぜて加熱する。
塩化アンモニウムに水酸化ナトリウムを加えて水をそそぐ。
アンモニア水を加熱する。
炭酸アンモニウムを加熱する。
気体の収集法
- 上方置換法:
水に溶けやすく、空気より密度が小さくて軽い気体を集める方法。
(アンモニアなどを集める際に用いられる)
- 下方置換法:
水に溶けやすく、空気より密度が大きくて重い気体を集める方法。
(二酸化炭素などを集める際に用いられる)
- 水上置換法:
水に溶けにくい気体を集める方法。
上方置換法や下方置換法では空気が混ざるが,水上置換法では純粋な気体が集まる。
(酸素、水素、二酸化炭素などを集める際に用いられる)
※化学実験ではできるだけ純粋な物質を集めたいので,まずは集めようとしている気体が水に溶けやすいか溶けにくいかをみて水上置換法を用いることができるかを判断し,気体が水に溶けやすくて水上置換法が使えない場合に上方置換法や下方置換法で収集することを検討するようにしましょう。
入試問題演習
問題
解説
問1
- (1) 水
実験A:二酸化マンガンに過酸化水素水を加えると酸素が発生する。
実験B:亜鉛にうすい塩酸を加えると水素が発生する。
酸素と水素が反応すると爆発して水が発生する。
- (2) アンモニア、水酸化カルシウム
塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの混合物を加熱するとアンモニアが発生する。
- (3) 試験管を横に倒し,粉末が入ったところを加熱する。このとき発生する水が加熱部にたまって試験管が割れるのを防ぐために試験管の口がちょっと下を向くように傾けた図が描いてあればよい。
- (4) 上方置換法
アンモニアは水に溶けやすく,空気より軽い気体なので上方置換法を用いる。
問2
(1)
- a:ア(酸素)、イ(水素):燃料電池では水素と酸素が反応して水になる反応を用いている
- b:オ(硫化水素)
- c:ウ(アンモニア):アンモニアは水に溶けるとアルカリ性を示す
- d:エ(窒素):窒素酸化物は大気汚染の原因物質である
- e:キ(ヘリウム):ヘリウムは空気より軽い気体である。さらに他の物質とほとんど反応しない。
- (2) カ
塩素は黄緑色
暗記シート
印刷するなどして,暗記や小テストにご活用ください。
まとめ
気体についての知識が曖昧だと問題を解いているときに混乱し,他の選択肢なども引きずられて大きな減点につながることがあるのでそれぞれの性質をしっかり暗記できるようにしましょう。