近年の中学入試では、時事問題の出題が非常に増えています。大学入試改革の影響もあってか、おおよそ9割がたの中学校の入試で、何らかの形で時事問題が出題されていると言っても過言ではありません。
しかし、時事問題の勉強はいつからはじめればいいのか、またどのように勉強するのがいいのかよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。塾のカリキュラムで時事問題を扱うのは多くの場合冬休み、冬期講習です。秋に各塾から時事問題をまとめた「重大ニュース」という冊子が発売になりますが、受験学年の秋、過去問対策や模試に追われる中では、そうした時事問題を勉強する時間を取ることはまず難しいでしょう。
また、近年の傾向として、時事問題は社会だけでなく、理科でも出題されることがあり、場合によっては社会と理科の両方にまたがった形で出題されることも少なくありません。地震などの災害をイメージすれば、社会と理科の両方にまたがっていることがわかりますよね。
このことからもわかるように、時事問題として出題される題材は、学年に関係なくあちこちにあるのです。時事問題対策をするためには、できるだけ早いうちからアンテナを張り、時事問題と意識しすぎることなく、日常生活の中で理解を深めていくことが有効な時事問題対策だと言えるでしょう。
今回は、時事問題に対応できる力を早いうちからつけるために、どのような勉強をして行ったらよいのか解説します。日常生活で少し意識するだけで、時事問題の基礎は押さえることができます。ぜひやってみてください。
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おすすめは白地図を利用した時事問題対策!
時事問題の多くを占めるのが社会ですが、時事問題対策をするにあたっては「地理」に関する知識が不可欠です。そこで、おすすめしたいのが白地図を利用して地理と時事問題の両方を一気に押さえてしまう勉強法です。
白地図を使って身の回りのものが「どこから」来たのか整理しよう
社会は、私たちの身の回りにあるさまざまなものが題材となる教科です。特に地理は範囲が広く、日本中の情報を勉強します。そして、時事問題では、そのできごとが「どこで起こっているのか」、あるものが「いったいどこから来たのか」といった好奇心が不可欠です。「どこで」「どこから」といったことからも分かるように、地理的感覚が時事問題では非常に重要になってきます。
このように、身の回りにあるあらゆるものが勉強の題材になるのが社会という教科の特徴だと言えるわけですが、社会の時事問題に対応できる実力をつけていくためには、ただ地図をながめたり、塾のテキストを淡々とこなすだけでは足りません。
そこでおすすめなのが、「白地図」を活用した勉強法です。小学校でも白地図学習の時間があるでしょう。白地図に、何かテーマを決めて情報を書き込んでいくことで、自分だけの地理の参考書ができます。たとえば、野菜や果物の産地、工業地帯・工業地域とその特徴など、白地図はさまざまな形で使うことができます。
たとえば、私たちが普段着ている衣服について考えてみましょう。衣服についているタグ(首後ろや服の内側に産地や生地が何からできているかが書かれているペラっとした布地)を見てみると、いろんな情報が分かります。たとえば、その衣服が日本製なのか、中国製なのか、韓国製なのか、ベトナム製なのか、はたまたイタリア製なのか、などです。
普段着として私たちが着る服はアジア圏で作られていることが多いですが、たとえば有名なユニクロがありますね。誰でも1着は持っているのではないでしょうか。ユニクロは日本製ではなく、中国製であることがほとんどです。2020年度の「財務省貿易統計」によると、日本がもっとも多く衣類を輸入している国はどこだと思いますか?答えは、1位が中国、2位がベトナムです。日本で着ているのに、実は別の国で作られているわけですね。
衣服以外にも、よく見ると「これはどこから来たんだろう?」と気になるものはたくさんあります。たとえば、電化製品、パソコン、といった電気製品から、果物、野菜などの食品に至るまで、産地や製造国をよく見てみると、必ずしも日本製ではないことが多くあります。むしろ「Made in Japan」と書かれている方が少ないかもしれませんね。
このように、身の回りのものがどこで作られてきたのかを調べて、白地図の世界地図に書き込んでみると、どういうものがどこから来たのか、ということが肌感覚でわかります。たとえば、衣類が中国製なら、白地図の中国のところに「衣類」と書きこんで服のイラストを簡単に書き込んでみる、バナナがフィリピン産、エクアドル産などの場合は、その国に「バナナ」と書き込んでバナナのイラストを描いてみる、といった具合です。そうすると一目で日本の貿易相手国が分かりますし、身の回りのどのようなものが外国で作られているのか、そしてどこから来たのかがよくわかります。
新しく発見したことをどんどん白地図に書き込もう
また、普段の買い物のなかでもさまざまなことが分かります。たとえば、親子でスーパーに食品の買い物に行ったとしましょう。パックされた肉ひとつみても、たとえば牛肉なら「オーストラリア産」「アメリカ産」「日本産」などさまざまです。キウイも良く食卓にのぼりますが、ニュージーランド産がほとんどですよね。牛乳や豆腐などは日本製であることが多いですが、産地は全国にわたります。
こうした日常的に食べるものについて、白地図に産地を書き込んでみると、実にさまざまな産地からきていることが分かります。一目でどこから何が来ているのかがわかり、日本が外国からさまざまなものを輸入していて、多くの国々とつながっていることを理解できるでしょう。
また、新聞を取っている場合、多くの広告が折りこまれていますよね。なかにはスーパーなどのチラシも多く入っています。それを見てみて、新しい情報が合ったら白地図に加えていくと良いですね。そこでチェックしたいのは、日本でとれる食材がどの都道府県で生産されているか、ということです。たとえば、じゃがいもや玉ねぎ、カボチャなど「北海道産」の野菜は実に多いです。小麦粉も北海道産は多いですね。また、玉ねぎは宮崎県や佐賀県でもよくとれます。なすなら高知県といったように、テキストで学習した知識が生きた知識として頭に入ってきます。
じゃがいも、玉ねぎ、カボチャを見ても分かるように、「北海道産」の野菜は非常に多いことに気がつくかもしれません。そうしたら、それらの野菜の生産量が多い都道府県を調べてみましょう。いずれも北海道が全国1位の生産量を誇っていることが分かります。何がどこでどれくらいつくられているのか、という情報がどんどん蓄積されていきますよね。
ほかにも北海道が生産量全国1位のものはたくさんあります。それらの情報を調べてみて白地図に書き込んでいきましょう。たとえば、大根、ニンジン、ブロッコリー、スイートコーンといった野菜類も実は北海道が生産量全国1位です。これらも白地図に書き込んでみましょう。
白地図に書き込んだら次は理由を考えよう
肝心なのは、ただ書き込んで終わり、にするのではなく、その先の「考察」です。北海道が全国生産量1位の野菜を見てきましたが、じゃがいも、玉ねぎ、カボチャ、大根、ニンジン、ブロッコリー、スイートコーンといった、北海道が生産量1位の野菜に共通することは何でしょうか?このように、一つひとつの知識をバラバラに覚えるよりも、共通点を考えてみると、覚えやすいですし、忘れにくいです。
共通点は、「日持ちがする」「根菜類が多い」ということです。北海道から全国に野菜を運ぶためには、どうしても時間がかかります。最近では輸送手段が発達しているので、それほど気にならないかもしれませんが。基本的に消費量が多い大都市圏の東京や大阪と北海道の距離は遠いですよね。ですが、東京や大阪などの大都市圏で消費してもらうためには、良い状態で品物を届けなければなりません。だから、じゃがいもやカボチャなどの日持ちする根菜類の生産が多いわけです。
農産物ひとつとってみても、いろいろ疑問に思うことはあるはずです。たとえば、「産地はどこだろうか」「〇〇でとれる農産物の共通点はどこにあるか」「ある農産物の生産高の順位はどのようになっているか」といったことなどが挙げられます。こうした、少し疑問に思って調べてみたこと、そして新たな発見があったことについてもどんどん白地図に書き込んでみましょう。
なにごとにも理由が必ずあるので、一度自分の頭で整理して、その理由を考えてみることがとても大切です。地理に限ったことではないのですが、特に時事問題の基礎となる地理的知識については、このように白地図に書き込んで、一目で分かるようにしておくことをおすすめします。そして、テーマごとに白地図をつくって見るとそれが自分だけの参考書になります。
時事問題で大切なのは、一つひとつの知識をバラバラに覚えるのではなく、「何に関係しているか」「理由はどこにあるか」を考えることです。ただ何も考えずに白地図に事実だけを書き込むだけではなく、たとえば日本国内でもさまざまな都道府県がある共通点でつながっていることや、その共通点、特色といったことを自分で発見して深く理解することが大切だと言えるでしょう。
時事問題のネタは、本当に日常生活のあちこちに転がっているものです。身近なものに着目し、「これはどうしてこうなるんだろう」と疑問を持ったら即調べる、そうした取り組みが、結果的に時事問題対策につながっていくので、ぜひ意識的にやってみましょう。積み重ねがいざ時事問題を本格的に学習するときに必ず役立ちます。
写真や絵などの資料も時事問題では頻出!
私たちが日常的に目にするさまざまな身の回りのものが、時事問題と関連性を持ち、時事問題対策のために思考を深める材料になることが分かりました。次に、時事問題対策として早いうちから意識しておきたいのが、「写真」や「絵」といった資料です。見たことがあるものから初見のものまで、時事問題では様々な写真や絵が出題されることが多いです。
見たことがないからわからない、とあきらめるのではなく、その写真や絵が何についてのものなのか、特徴はないか、といったように、疑問をもちながらその写真や絵の持つ意味を考えることが解決の糸口です。
時事問題ではある写真や絵を提示して、それに関連する設問が用意されているという形式が多いです。そこでは「なぜこういう写真になるのか」「この絵のこの部分はなぜこうなるのか」という問いかけがなされます。それらに答えるためには、自分自身でさまざまな写真や絵を見たときに、自問自答して理由や原因を考える習慣が大切になります。
見たことがない写真でも知識と結びつけて考えることが大切
たとえば、ひとつ写真を見てみましょう。これは、ワサビ田の写真です。ワサビ田で、ワサビ農家の人たちがワサビの栽培をしていることが分かりますね。この写真1枚をとってもさまざまな知識を引き出すことができるのです。
ワサビ田の地図記号は何だと思いますか?ワサビ田といってもお米を作っているわけではないし、畑のマークかな?と思われるかもしれません。しかし、調べてみると、ワサビ田の地図記号は「田んぼ」と同じだということが分かります。なぜお米を作っているわけでもないのに田んぼの地図記号になるのでしょうか。
ワサビ田の写真をよく見ると分かることですが、たくさんの水がありますね。ワサビを栽培するためには、きれいな水が大量に必要です。お米も同じように水を田んぼに引いてきて、大量の水を栽培するときに使いますよね。ワサビもお米と同じように栽培に水をたくさん使うために、田んぼと共通点があるので、地図記号は田んぼのマークになるわけです。
同じように水をたくさん使って栽培される農作物の場合は、地図記号は田んぼと同じになります。たとえば、茨城県が生産高1位の「レンコン」や、埼玉県で多く作られている、お正月料理などによく使われる「クワイ」という野菜も、お米とはまったく違いますが、たくさんの水を使う点でお米と共通しているので、地図記号は田んぼと同じになるのです。地図記号の持つ本来の意味をよく理解していれば、そのことにも納得がいくでしょう。
話をワサビに戻してみましょう。地図記号についての考え方からさらに発想を広げてみると、さまざまなことがわかります。ワサビの栽培では、水温がとても大切だということをご存じでしょうか。冷たく澄んだ水がワサビの栽培では不可欠です。だいたい何度くらいがいいかというと、10~15度程度の水温がワサビの栽培には適していると言われています。16度以上になってしまうと、ワサビの育ち方が悪くなってしまうそうです。
では、なぜ水の温度によって育ち方に差が出てしまうのでしょうか。少し理科にもかかわってくる知識ですが、その理由は「水に含まれている酸素の量」にあります。たとえば、固体は水温が高いと良く溶けるという性質を持っていますが、酸素などの気体は、水温が高いと自ら出てしまいます。そのため、水温が上がると含まれる酸素の量が少なくなってしまうのです。
水温と酸素の量の相関関係がワサビの育ち方に影響することが分かったところで、さらに発想を広げてみましょう。たとえば、海には暖流と寒流がありますが、どちらに魚が多く生息しているでしょうか。実は、魚は寒流のほうに多く生息しているのです。よく高級魚と言われる魚や日常的に食べる魚も、日本海側や北のほうでとれることが多いですよね。では、なぜ寒流のほうに魚が多く生息するのでしょうか。
直接的な理由としては、魚のえさになるプランクトンが、寒流のほうに多く生息しているからです。プランクトンが寒流に多い理由は、ワサビ田のときと同じように、水に含まれる酸素の量が関係しています。北や日本海側の冷たい海水には、赤道に近い暖流に比べて酸素が多く含まれています。そこで、プランクトンも多く生息することができるわけですね。プランクトン→魚という、食物連鎖も関係してきますが、それぞれが生息できる条件についても疑問を持って調べてみることが大切です。
ワサビ田の写真から海の魚の話まで発展しましたが、1枚の写真から、これだけ多くの知識を読み取ることができるのです。地図記号は社会の知識ですが、水温と酸素の関係や食物連鎖などは理科の知識です。このように、社会で多く出題される時事問題であっても、理科の知識が大きく関わってくることがあるので、知識の発展という意味でも理解を深め、整理しておくことがとても大切です。
また、知識の広がりを実感できると、調べることが面白くなり、思考力を養うのにも役立ちます。ひとつのことについてさまざまな視点から聞いてくるのが時事問題の特徴ですから、「なぜだろう?」という疑問を常に持ち、おもしろがりながら知識を広げていけると良いですね。
絵をよく見て小さな情報も見逃さない
写真だけでなく、絵も時事問題ではリード文で資料として提示されることが多いです。以下の絵を見て誰が書いた何という絵かわかりますか?
出典:葛飾北斎「凱風快晴」(赤富士)
昔から、日本で一番高い山である富士山は、有名な絵師が描くなど、日本人にとって非常に特別な存在でした。この絵は、江戸時代の浮世絵師で有名な「葛飾北斎」の作品です。葛飾北斎というと風景がをたくさん残したことで知られていますが、この絵の題は「凱風快晴」(がいふうかいせい)です。一般的には「赤富士」(あかふじ)という名で知られています。富士山の上の部分が赤いのでなじみがある絵かもしれませんね。
葛飾北斎は、海外にもコレクターがたくさんいるほど現代でも非常に人気のある画家です。その理由として、日本という、ヨーロッパなどから見ると少々神秘的なイメージのある国の、さらにシンボルである富士山を題材にした絵を描いていることや、ほかの国にはない風景を数多く書いている点が挙げられるでしょう。そのため、葛飾北斎の描いた絵には高い値段がつき、何百万、何千万ということも少なくありません。本物だけでなく、レプリカ(複写)もかなりの高値で取引されるほどです。もちろんこの赤富士の絵も例外ではありません。
では、葛飾北斎がこの絵を描いた当時の江戸時代であれば、いくらくらいで取引されていたと思いますか?当時と現在の貨幣価値は違うのですが、その当時は300円~400円くらい、雑誌1冊分程度の安い値段だったと言われています。現在の価値からするとビックリしますよね。
では、なぜそんなに安い値段がついたのでしょうか。実は、よくよく見ると、富士山の赤い部分には木目が見えるのです。ということは、この絵は「木版画」だということです。つまり、ひとつ原版を作っておけば、何枚でもすることができたわけなのです。木版画は大量に制作できるので、それだけ1枚当たりの値段は下がり、安くなったのです。
1枚の絵から、葛飾北斎という絵師の存在、活躍した時代の文化、そして貨幣価値といった公民で学習するような経済の知識などがイモづる式につながってくるのです。発想を広げていくと、社会の全分野に知識が広がっていくので、気づいたときには疑問点を書き留めてぜひ調べてみましょう。
私たちの身の回りには、時事問題の題材になりうるものがたくさんあります。そうした題材に興味を持ち、気になるものについて、その特徴や、ほかに同じような特徴をもつものがないか、また、「なぜそうなるのか」「どういうことか」といったように自分なりに調べながら考えていく習慣をつけると、社会という教科の勉強になるだけでなく、時事問題の対策を普段からしていることになるので、ぜひやってみてください。
小学生新聞や日々のニュースから「いま、起こっていること」を考えてみる
写真や絵などについて、そこから時事問題に発展していく思考の仕組みについて解説しましたが、時事問題に早いうちから取り組むなら、ぜひおすすめしたいのが、小学生向けの新聞を毎日読むことや、テレビなどのニュースを毎日見て、「いま、日本で、世界で、何が起こっているのか」ということについて考えてみることです。
小学生向けの新聞はいろいろありますが、たとえば日刊の新聞であれば「朝日小学生新聞」「毎日小学生新聞」があります。また、週刊の場合であれば「読売KODOMO新聞」があります。こうした小学生向け新聞では、大人向けの新聞でも取り上げられているその日のトピックをわかりやすいことばで解説してくれているので、お子さんが一人でも読みやすいです。
動きのある社会を実感できるのがニュースの良いところ
どうしても受験勉強のためのテキストだけをながめていると、「動いている社会」を実感することがなかなかできません。そのため、こうした新聞を読むことによって、「なんだか大きな問題が起こっている」ことを実感することはとても大切です。日本だけでなく、世界で起こっているできごとについても書かれているので、近年よく出題される世界と日本のかかわりといったテーマにも抵抗がなくなるでしょう。
ニュースの題材は新聞だけでなく、テレビで報道されているニュースからも得ることができます。テレビの場合はより動きのある映像なので、どれだけ取り上げられているニュースの題材が深刻なものなのか、ビジュアルで見ることができることはメリットだと言えるでしょう。ただし、大人向けのニュースがほとんどなので、解説に使われていることばは小学生には少々難しいかもしれません。その場合は、気になったことを保護者の方が解説してあげると理解が深まっていいですね。
新聞に戻りますが、お子さんが新聞を読んでいる最中に、「このニュースについてもっと知りたい」「このニュースは面白い」などと興味や関心を持った記事があった場合は、切り抜いてノートに貼り付けて、「時事問題ノート」を作ることをおすすめします。作り方は簡単で、記事を切り抜いてノートの見開きの左ページに貼るだけです。ノートの右側には、その記事についてテレビのニュースなどで新しく知ったことや、インターネットで調べたり、受験用のテキストから関連する知識などをピックアップして簡単にまとめてみましょう。
別の機会に新しい知識を得たら、また書き足すといったように、時事問題の題材について自分だけの参考書を作ることができます。また、もし知らないことが出てきて、インターネットで調べてもどういうことなのかよくわからない、という場合は、保護者の方が簡単にまとめて話してあげて、その内容をお子さんが要約してノートに書き入れる、ということをやってみましょう。
特別なことを直前期にやるというイメージが強い時事問題対策ですが、6年生になる前からでもできる対策はたくさんあります。時事問題は、今や私たちの身の回りで起こっているできごとや題材を多角的視点から分析していくという位置づけになっています。なぜ時事問題がほとんどの中学校の入試で出題されるかというと、そうした思考力、多角的視点を測るのに適しているからです。
直前期にあわててやるのではなく、早いうちから気になるニュースをピックアップして考えてみる習慣を身につけておくと、時事問題に対する抵抗感もなくなり、その場で考えるという、現場思考能力が身につきます。そして、それこそが中学入試で出題者が求めている能力なのです。いわば本物の学力と言ってもいいでしょう。そうした力を身につけるためにも、普段から習慣づけて気になるニュースについて考えたり調べたりする時間を「少し」とるようにすることをおすすめします。
興味を持ったニュースを題材に親子で意見交換をしてみよう
このように、新聞を活用して、気になるニュースをピックアップして時事問題ノートを作っておくと、自分から調べる習慣がつくだけでなく、いろいろな形で活用できるのでおすすめです。
たとえば、時事問題ノートを家族で読んでみて、保護者の視点からお子さんに「これって、どういうことなんだろうね」と質問をしてみると、お子さんは好奇心からいろいろな意見を言ってくるでしょう。もしわからない場合は、途中まででもかまいません。大人の視点からあるニュースを見ると、どのような背景が読み取れるのかといったことを親子で共通体験にすることができるのです。
また、「なぜその記事に興味を持ったのか」ということを、お子さんに尋ねてみるのも良いですね。保護者の方からの発問に対して、お子さんは一生懸命答えようとします。そして、興味を持ったフックになる部分について、さらにお子さんに質問をしていきましょう。そのように対話することによって、時事問題に対する理解がさらに深まりますし、考えをまとめて伝えるという「表現力」が身につきます。
時事問題に強くなるだけでなく、説明しようと一生懸命意識して適したことばを探そうとするので、語彙も増えていきますし、まとめる力がつけば記述力のアップにもつながります。教科横断的だからこそ、時事問題について興味を持つことは、中学受験に必要なさまざまな能力を養うことにつながるのです。また、受験勉強をしているとなかなか親子で会話する時間が取れないことも多いのですが、少しでも時間をとって、あるテーマについて話し合ってみることで、お子さんのやる気を引き出すこともできるのが時事問題対策のいいところです。
新聞がなぜ時事問題対策、さらに中学受験において重要な意味を持つかというと、新聞記事という特性が関係します。新聞記事は、新聞記者が取材をし、筋道をたてて、論理的に書かれているという特徴があります。そうした文章を新聞で読むことには、文章の論理的展開に触れることになります。こういうできごとがあった→なぜそれが問題なのか→社会において似たような問題はあるか→結論といったように、新聞記事の論理展開は、各教科の受験勉強に欠かせない思考回路でもあるのです。そのため、新聞記事を読むことによって、ものごとを論理的に考える力を養うことができます。
また、新聞を読んでいると、思わぬところで興味をひくような記事に出会うことがあります。そうした経験を積んでいくと、お子さんの視野が格段に広がります。受験勉強のためにテキストとにらめっこしている毎日では、なかなか視野を広げる経験ができません。そのため、新聞記事を活用して、思考の幅を広げることによって、多角的な視野を養うことはおすすめです。
新聞というと、難しいのでは、と思われる受験生も多いのですが、小学生用の新聞であれば特に問題なく読むことができるでしょう。ただし、政治や経済についてのニュースは少々とっつきにくいかもしれません。たしかに大きなニュースが多いのは政治や経済分野であることは多いですが、抽象的な内容であるケースも少なくないので、最初は自分が面白いと興味をひかれた記事から読んでいくのでまったく問題ありません。
政治や経済についてのニュースがお子さんひとりで読むのが難しいようでしたら、ぜひ保護者の方と一緒に読んでみましょう。最初は音読からはじめて、徐々に内容について「これはどういうこと?」と親子で話し合ってみて、少しずつ興味をひきだしていくと力がついていきやすいです。よくわからないニュースが出てきた場合にも、ぜひ時事問題ノートに付け足して、学習が進んできたときに見直してみると理解が深まっているので、思考の幅も広がっていくでしょう。
毎日新聞を読むのは大変、という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、時事問題など、いま問題になっていることをまとめた月刊誌もあります。たとえば、朝日新聞が出版している「ジュニアアエラ」などはおすすめです。こうしたものを利用してみて、時事問題に定期的に触れる経験をしてみるといいですね。気になった記事があったらコピーして、時事問題ノートにストックしておきましょう。
テレビのニュースでも同じことが言えます。テレビのニュースで使われる用語は専門的であることも多いので、まずはニュースの要点をお子さんに説明してもらいましょう。だいたいわかってはいるけれど、問題の本質はわかっていないな、というときは、保護者の方が質問をして、お子さんを誘導してあげてください。親子で会話をすることで、理解が深まりますし、何より視覚的に映像が入ってくるため記憶に残りやすいです。新聞と異なり、記事を切り取ることはできないので、時事問題ノートに題名と要点を書いて、会話でわかったことや、今後調べたいことなどを書き留めておくことをおすすめします。
まとめ
時事問題は、中学受験のカリキュラム上、6年生の最後にまとめて学習するパターンが多いです。しかし、詰め込みでは理解が深まらず、ほかの知識との連携性も取れません。時事問題で大切なのは、知っている知識を活用して多角的な方面からあるできごと、ものごとについて考えつくすことです。出題する中学校も、そうした深い理解や視点、論理的思考力を求めています。
時事問題は、私たちの生活を取り巻くできごとを中心に作られます。なかには初見のものもあるでしょう。しかし、使うのはそれまでに理解してきた知識や視点です。難しく考える必要はありません。新聞やテレビのニュースをうまく活用して、時事問題ノートを作る習慣をつけておくと、ほかの教科の学習にも役立ちますし、「あ、これはあそこで学習した知識がつかえるな」とお子さん自身が気づくことができるでしょう。
ぜひ、早め早めに日々のニュースをピックアップして、特に話題になったものについては親子で会話して理解を含め、直前期にあわてないで済むように思考力をつけて時事問題対策を行っていきましょう。ほかの教科の成績アップにもつながりますよ。ぜひやってみてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。