今回は約束記号についての問題を取り扱っていきます。算数でよく使うのは+,–,×,÷と行った記号です。しかし中学受験で登場する記号はこれだけではありません。それぞれの学校で独自の記号を作り,そのような見慣れない記号を使ってうまく問題が解けるかどうか,という瞬時の適応力が問われます。
そのためできるだけ多く約束記号についての問題を解いて,本番当日にどんなものが出題されたとしても回答できるような応用力を身につけていかなければなりません。したがって本記事では約束記号に関する問題を3つ引用し,解説を行なっていこうと思います。よろしければ問題集のように説きながら読んでいただければと思います。
Contents
問題① 2をかけていく問題
2をN個かけ合わせてできる数を<N>と表すことにします。例えば
<3>=2×2×2,<5>=2×2×2×2×2
となります。ただし,<1>=2と約束します。
(1)<1895> の一の位の数字は何ですか。
(2)<12>+<2>と<13>+<3>を計算しなさい。
(3)<2018>の下2桁を答えなさい。ここで,下2桁とは十の位と一の位の数字の並びのことです。例えば,1729の下2桁は29で,1903の下2桁は03です。
(麻布中学校(2018),一部改題)
解説①(1)
ここからは解説に移っていきます。まず(1)を解く前に,本問での約束についておさらいしましょう。この手の問題を解くポイントは,約束を理解して素直に計算できるか・約束を+,–,×,÷にうまく変換できるかということにあります。
今回は2を○回かけた数字が<○>になるというのが約束ですね。Nという見慣れないアルファベットが出てきていますが,これを見慣れた○や□と同じものだと理解できるかどうか,も本問では重要になってきます。
ではこの約束を確認したところで(1)を見ていきます。<1895>は2を1895回かけた数になりますね。しかし1895回もかけ算を繰り返していると試験時間はあっという間に過ぎてしまいますし,計算ミスも起こしやすいため正しい結果にたどり着くのも難しいところです。
そこで考えていくのが,<○>の一の位に存在する規則性です。
<1>から順番に一の位を見ていきましょう。まず<1>=2なので一の位は2になっています。次に<2>=2×2=4なので,一の位は4になります。同様に<3>については,2×2×2=8,<4>については2×2×2×2=16なので一の位は6になります。さらに<5>も計算していくと,2×2×2×2×2=32なので一の位は2です。この次の<6>は2×2×2×2×2×2=64であり,一の位は4・・・となっています。
このことからある規則性が見えてきますね。一の位は<1>,<2>,<3>,<4>,<5>,<6>,・・・に対し,2,4,8,6,2,4,・・・になっています。この周期性と<○>の中身とを照らし合わせると,<4の倍数+1> の一の位は2,<4の倍数+2> の一の位は4,<4の倍数+3> の一の位は8,<4の倍数+4> の一の位は6という法則性が見えてきます。
この規則に照らし合わせると,1895を4で割ると1895÷4=473あまり3,つまり4の倍数+3になっていることがわかります。つまりこの規則に則ると,<1895>の一の位は8になります。
解説①(2)
続いて(2)の問題を解いていきましょう。<12>+<2>と<13>+<3>の計算が求められています。12と13,2と3という連続した数字が存在するため,例えば<11>+<1>,<10>+<0>のような計算ができれば規則が出てきそうだな,と考えてしまいます。
しかし結局<10>までは自分の手で計算しなければならないため,2をかけていく作業を続けていく方が早く計算できそうです。このように規則が見出せるかどうかをすぐに判断して,無理だなと思ったらすぐ計算に移ることも大切です。
先程の計算より<2>=4,<3>=8ということがわかっているため,<12>と<13>を考えていきます。また<6>=64ということも上で求めたため,<7>から計算していきます。
では<7>ですが,<7>は2を7回かけた数字です。つまり7回を6回と1回に分けると,
<○+1>=<○>×2
と言い換えられますね。よって,これより計算する<7>以降の数字はその一つ前の数字に2をかけたものとして簡単に考えていきましょう。このことから<7>=64×2=128,<8>=128×2=256,<9>=256×2=512,<10>=512×2=1024,<11>=1024×2=2048,<12>=2048×2=4096,<13>=4096×2=8192となります。
したがって,
<12>+<2>=4096+4=4100
<13>+<3>=8192+8=8200
となり,これが(2)の答えになります。
解説①(3)
それでは最後に<2018>の下2桁を求めて本問題の解説を終わりましょう。(1)では一の位,つまりは下1桁の規則性を見出すことで求めていきました。これと同様に,<1>から順番に下二桁の数字を並べていき,そこに存在する法則を導くことで解けそうだ,と見通しが立てられます。このように中学受験の問題では初めの方の問題で使った解き方を利用して終わりの問題を解くことができるパターンが多いです。参考にしてみてください。
では下2桁を並べていきましょう。<1>から<13>まではすでに導かれているので,まずはここまでの下2桁を並べてみることにします。
02,04,08,16,32,64,28,56,12,24,48,96,92
まだ規則性は表れていませんね。それでは<13>以降の下2桁を並べ,法則が出るまで計算していきましょう。ここで下2桁を計算する上で,4096や8192といったそのままの数を2倍していく必要性はないということにお気づきでしょうか? 下2桁を2倍していき,その値の下2桁をとるだけで計算は完了します。
例えば<12>=4096であれば,96の部分だけを2倍すると192になりますね。こうして表れた数字の下2桁,つまりは92の部分,が<13>の下2桁になります。これは<13>=8192であることからも確認できますね。以上のように計算をできる限り簡単にできないかと考えていくのも重要です。以下ではこの手法を使って<14>以降の下2桁を求めていきましょう。
<14>の下2桁は,92×2=184より84になります。続いて<15>の下2桁は84×2=168より68,<16>の下2桁は68×2=136より36,<17>の下2桁は36×2=72より72,<18>の下二桁は72×2=144より44,<19>の下二桁は44×2=88より88,<20>の下2桁は88×2=176より76,<21>の下2桁は76×2=152より52となります。
さらに<22>の下二桁は52×2=104より04,<23>の下2桁は4×2=8より08,・・・となっていきます。ここで法則性が見えてきますね。改めてここまで求めた<1>から<23>までの下2桁を並べていきましょう。
02,04,08,16,32,64,28,56,12,24,48,96,92,84,68,36,72,44,88,76,52,04,08,・・・・
つまり<2>の04から<21>の52までの20個の数字がひとまとまりで変化していることがわかります。このとき<1>の02が邪魔ですね。よって<1>の部分を取り除き,そのときの数を20で割った余りでどの下2桁になるのかを照らし合わせていけばいいですね。これは(1)で行った作業と同じことになります。
では<2018>の下2桁を考えていきましょう。まず<1>を取り除きます。2018-1=2017となるので,以下では2017を20で割った余りを計算していきます。
2017÷20=100あまり17
したがって04から52までのまとまりの17番目の数字が<2018>の下2桁と一致しているというわけです。17番目の数字,つまり下から4番目の数字は44でした。したがって<2018>の下2桁は44になります。
A.(1)8,(2)4100・8200,(3)44
問題② 約数の問題
整数xの約数のうち,小さい方から2番目の約数を<x>で表します。たとえば,<6>=2であり,<25>=5になります。このとき,次の各問いに答えなさい。
(1)<9>+<35>+<49>を計算しなさい。
(2)<x>=3になるような,2以上70以下の整数xは全部いくつありますか。
(逗子開成中学校(2018),一部改題)
解説②(1)
では解説に移ります。まず約束事の確認ですね。先ほどの問題と同じ<>という記号が使われていますが,意味が全く違うことには注意が必要です。約束記号はあくまで学校が独自に決めるものなので,これまでにやった問題と似た要素が出てきても引きずられないことが大事です。
今回は<○>で○の約数の小さい方から数えて2番目のものを指すということが約束の中身でした。xというアルファベットは見慣れないものですが,これも見慣れた○などに置き換えてわかりやすくしていきましょう。
ではこの約束事を使って<9>+<35>+<49>を解いていきます。まず3つの数字の約数を考えて,<○>という記号を見慣れた数式に書き換える作業を行なっていきます。
まず<9>の値について考えましょう。<9>の約数は1・3・9の3つです。このうち2番目に小さいものは3なので,<9>=3となります。次に<35>について計算していきます。35の約数は1・5・7・35の4つになり,この4つのうち2番目に小さいものは5なので,<35>=5となります。最後に<49>について考えましょう。<49>の約数は1と7と49なので,<49>=7となります。このことから上の数式は次のように計算できます。
<9>+<35>+<49>=3+5+7=15
以上のことから計算の答えは15になります。
解説②(2)
続いて<x>=3になるような整数を考えていきます。<x>=3の意味は,2番目に小さい約数が3になる整数を指します。これまでみてきた3つの整数から,全ての整数において1番小さい約数は1になっているという規則が,当然のことながら見えてきます。つまり約数として2を持たず,かつ3を持つものが,<x>=3となるような整数になり,とわかります。
したがって2以上70以下の整数の中で,約数として2を持たず3を持たない,言い換えると2の倍数でなく3の倍数でないものを数えていけばいいわけです。このような数字を並べていくと,
3,9,15,21,27,33,39,45,51,57,63,69
の合計12個が該当することがわかります。したがって答えは12個になります。
A.(1)15,(2)12個
問題③ 各位を足す問題
整数Aの各位の数を1けたの整数になるまで足した値を<A>で表します。例えば,<48>は,4+8=12,1+2=3なので,<48>=3です。次の各問いに答えなさい。
(1)<10>+<11>+<12>+<13>+<14>+<15>+<16>+<17>+<18>+<19>を求めなさい。
(2)<A>=5となる3けたの整数Aは全部でいくつありますか。
(渋谷教育学園幕張中学校(2012),一部改題)
解説③(1)
では最後の問題の解説を行なっていきましょう。本問でも<○>という記号が現れていますが,これは1問目・2問目とは全く意味が異なります。今回の指示は各位の数を1けたの整数になるまで足せというものです。したがって<10>から順番に,値を計算していきましょう。
まず<10>ですが,この値は1+0=2より<10>=1となります。<11>は1+1=2なので<11>=2,<12>は1+2=3なので<12>=3となります。このように<○>と<○+1>では値が1ずつ異なることがわかります。この手順に沿って,上の式を書き換えてみましょう。
<10>+<11>+<12>+<13>+<14>+<15>+<16>+<17>+<18>+<19>
=1+2+3+4+5+6+7+8+9+10
になりますね。ここでこの式のうち10だけ2桁のため,さらに計算すると,1+0=1となります。このことから問題で与えられた式は次のようになります。
1+2+3+4+5+6+7+8+9+1=46
よって1問目の答えは46です。
解説③(2)
次に3けたの整数Aで<A>=5になるものを考えていきます。ここで3けたの整数は実に900個あり,これらを全部計算していくのは骨が折れます。よって何らかの規則を見つけて,簡単に問題を解いていくという方針を取りましょう。
まず<100>から<109>までの10個を考えていくと,それぞれの数は次のようになります。
1,2,3,4,5,6,7,8,9,1
次に<110>から<119>までを計算すると,
2,3,4,5,6,7,8,9,1,2
となり,さらに<120>から<129>までを並べていくと,
3,4,5,6,7,8,9,1,2,3
となります。このことから1から9までの9個の数字がひとまとまりでループしていることがわかります。したがって3けたの数字の個数を9で割ったものが,<A>=5となる数字の個数と一致することがわかります。このように規則が見出せそうなときは,当てはまる数字を順番に並べて眺めてみることが有効です。
先ほど述べた通り3けたの数字は900個あるため,900÷9=100という計算の結果から,<A>=5となる3桁の整数は100個あることになります。
A.(1)46,(2)100個
終わりに
今回は約束記号についての問題を取り扱い,解説を進めていきました。このような独自の問題が出されるのは,一部の学校に限られています。しかしこのような問題に慣れておくことは適応力を養うという意味で大きな意味があります。その上約束記号の問題は,それ以外の計算や規則とセットで問題が作られていることが多いため,そのような問題に対する演習としても有効でしょう。本記事でご紹介した3問以外にもたくさんの約束記号に関する問題が存在するため,またの機会にご紹介できたらと思います。本記事が学習の手助けとなれば幸いです。
(ライター:大舘)