いよいよ年の瀬ですね。受験生の皆さんの多くは第1志望校を決め、過去問を解いたり、志望校特訓を受けたりするなど、志望校対策を中心とした学習に入っておられると思います。
また、これから受験をお考えの皆さんも、そろそろ志望校を意識しはじめる時期ではないでしょうか。どのような点に惹かれて志望校をお決めになるでしょうか。どうしても偏差値など、データで選びがちになるのではないかと思いますが、やはりそれだけではなく、入学後、お子さんがどのような学校生活を送ることになるのか、在学中だけでなく卒業後もどのように成長していけるのか、そういったところも視野に入れて学校を選んでいただきたいと思います。もちろん、お子さんご自身の「この学校に行きたい!」という熱い気持ちもとても大事です。
今回は、鴎友学園女子中学校についてご紹介したいと思います。すでに難関校としての位置を確固たるものにしている学校ですが、その人気はどこから来るのでしょうか。学校の教育内容なども含め、ご紹介していきたいと思います。
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学校の概要
鴎友学園女子中学校は、完全中高一貫の私立女子校です。定員は220人となっており、高校からの入学はありませんので、カリキュラムも中高6年間一貫であることを前提に組まれています。
学校周辺の環境など
学校の所在地は、東京都世田谷区宮坂1丁目5番30号です。東急世田谷線宮の坂駅より徒歩4分、小田急小田原線経堂駅より徒歩8分(平坦な道ではあるのですが、実際に歩いてみるともう少し徒歩時間には余裕を持っておいた方がよいでしょう)です。
設備などの特徴
屋外プールや実習園などの設備が充実しています。園芸には特に力を入れています。都心にありながら畑がある学校は特に女子校では非常に珍しいのではないでしょうか。
特色のある授業「園芸」
畑で野菜を育てていく「園芸」に、野菜の構造を学ぶ「理科」、野菜を調理して食する「家庭科」を結び付けるという、複数の教科を合わせた「合科」という総合学習のきっかけとして、また、生徒の精神的な成長に必要不可欠なものとして園芸の授業は以前から取り入れられてきました。その考え方は、今も変わらず引き継がれています。校内に広がる畑には四季折々の花や授業で栽培する野菜などの緑があふれています。塾向けの学校説明会でも、先生がとても力を入れて説明される自慢の畑になっています。
また、校内には園芸実習園があります。中学1年で週2時間、高校1年で週1時間、必修の授業が設けられており、生徒1人にそれぞれ与えられた小さな畑で、花づくりや野菜づくりを通して土に親しみ、日々成長していく生命を育てることを通して驚きと喜びを体験してほしいというのがこのような授業が設けられている目的です。
中学1年生の園芸のテキストの表紙には、授業で作った押し花をデザインして貼っていき、学年が終わるころには自分だけのオリジナルテキストが出来上がります。
鴎友学園の入試の理科の問題では、カラーの植物の写真が出題されることが有名ですが、入学してからのこうした教育と直結していることがうかがえる出題ということがわかります。学校からの、入学後の授業を楽しんで自主的に取り組めるか、というメッセージが入試問題に込められているのといえるのではないでしょうか。
教育の特徴・理念など
鴎友学園女子中学では、「カリキュラム」ということばを、単なる教科の進度とはとらえていません。生徒に関わる全ての活動を指して「カリキュラム」ととらえています。生徒たちがどう生きるか、主体的・能動的な活動をどう行っていくかという点を重視した生活指導、学習指導を重視しています。
キリスト教精神に基づく教育
鷗友学園は、ミッション系というイメージがあまりない学校と思われがちですが、無教会派といわれるキリスト教の学校です。キリスト教精神、キリスト教的自由主義を全てのカリキュラムの基盤としています。聖書の授業や宿泊を伴う行事の中で行われる講話などを中心に、キリスト教精神を教育の柱としており、ミッションスクールということは前面に出していませんが、他者も自分も尊重できる「思いやりの心」を育み、慈愛の精神を育むことを重視しています。
全人教育・リベラルアーツ
最近では、中学・高校でもリベラル・アーツを重視する教育を行う学校が増えてきましたが、鴎友学園では、早くから幅広い学問領域を自由に、自ら積極的に学び、調和のとれた誠実な人間、言い換えれば「総合力」を備えた人間を育てるようなカリキュラムが組まれてきました。各教科の学習では、教員による一方的な授業を受けるというような受動的な学習よりも、生徒自身が主体的・協働的に学ぶ授業を重視しています。そういう意味で、2020年の大学入試改革をきっかけに注目を浴びているアクティブ・ラーニングを実践してきています。
グローバル教育
近年、グローバル教育ということばがよく聞かれるようになりましたが、その内容は学校によって異なります。鴎友学園では、社会性と集団で行動する力、独自性と個人の力、社会でリーダーとなり、活躍していく力を養うことを目的としたカリキュラムを実践しています。各教科の授業だけでなく、生徒会活動や委員会活動なども通じて、異なる価値観をお互いに認め合い、協調して新たなものを作り出すこと、つまり「創造する力」を養うことを重視しています。また、海外研修や交流会といった、多種多様な国際理解プログラムが用意されており、生徒が学校や国などの従来の枠を越えてもっと広い世界で活躍することを期待してグローバル教育が行われています。
その他、教育における特徴など
学校行事では、中学1年生と高校1年生は箱根研修があり、追分山荘で聖書の講話を聴く機会があります。修学旅行は中学3年生が沖縄に行きます。高校2年生の研修旅行は、京都・奈良に行っています。
特徴のある授業を行っている鴎友学園ですが、数学や英語の進度も気になりますよね。鴎友学園では特に英語力の強化に力を入れています。グローバル教育を目指していることにも関係するのですが、オールイングリッシュの授業取り入れられています。中学校3年生、高校1年生では、外国人講師によるディベート講習会もあります。
高校1年生、2年生では、ウェルズリー・カレッジ、スミスカレッジといった海外の学校の生徒をファシリテーターとして、1日6時間の英語による意見交換を5日間実施しています。
留学制度
高校1年生、2年生の希望者対象に、アメリカの名門大学であるイエール大学で英語授業を受ける研修があります。また、アメリカの名門中学高等学校であるチョート・ローズマリー・ホールで行われるサマースクールに参加することもできます。開成高校や成蹊高校も同校との交流を取り入れています。
高校1年生、2年生の代表者を対象にして、韓国や中国の学生が集まるシンポジウムにも参加する機会もあります。
大学進学実績など
現在学校のホームページから見ることができない状態になっているので、2016年度の合格実績(現役性のみ)をご紹介します。
東京大学8名、一橋大学10名、東京工業大学2名、お茶の水女子大学5名、早稲田大学91名、慶應義塾大学47名、東京理科大学40名、上智大学65名となっています。難関大学への進学実績が伸びているのも、鴎友学園の人気が伸びている一つの要因であることはたしかです。
中学入試情報
中学入試が3回から2回に変更になってから、さらに難度が上がっています。もともと鴎友学園は、学校見学に行ってお子さんが非常に気に入り、また環境も閑静な住宅街の中にあり、学習環境が整っていることから親子でファンになる方がとても多い学校です。3回入試が行われていたころから、3回とも出願する受験生が非常に多く、合格したら進学する、という率も非常に高かった学校です。それは入試が2回になっても変わりません。
入試問題の特徴としては、先ほど園芸の授業のところでも書きましたが、植物のカラーの写真を出題し、特徴を観察させたりする問題を出題する理科は特徴的です。また、算数は50分という試験時間から考えると問題数は多めですが、問題自体は難問というよりはオーソドックスな問題が様々な分野から出題されているという傾向です。文章問題、数の性質の問題、図形の問題がバランスよく出題されており、比を使った問題もよく出題されます。
2018年度入試変更点
算数については各分野からバランスよく出題されることに変わりはないと考えられますが、これまで大問8題すべてが式や図、思考過程を見るような記述問題のみでしたが、2018年度から大問1が計算問題となります。2問程度の出題になる予定ですが、分数や小数が多数組み合わさった計算問題が出題される予定です。計算問題は解答だけを記入する形になっており、部分点は与えられませんが、約分忘れなどには部分点をつける予定とされています。ほかの記述式の大問のレベルは例年と変化は特にないということです。
鴎友受験生なら、毎日のように繰り返し計算練習を行い、速くて正確な計算力を身につけてきていると思いますが、2018年度からはミスの許されない計算問題が導入されます。最後まで正確に解ききる力、正確さをさらに磨いていきましょう。
また、11月に発表されましたが、入学金の支払いもインターネット支払いとなりました。
自己申告書については、出願理由は本人が書くことになっています。素晴らしくまとまった文章を書く必要はありません。どうして鴎友学園に入りたいのか、何を見てそう思ったのか、そのきっかけや、入って何をやりたいのか、などについて受験生自分のことばでわかりやすく書くことができれば十分です。
ただし、欠席について申告する欄があります。通知表のコピーや調査書は提出不要なのでその代わりになるものですが、小学校に照会が行くこともあります。欠席については正直に理由を書くようにしましょう。病気やケガで少し長く休んでも合否には関係しません。
偏差値や各塾の合格数など(2017年度)
各回の入試結果
第1回入試:2月1日 定員180名、志願者463名、受験者453名、合格者241名、倍率1.9倍、合格者平均点244.2点
第2回入試:2月3日 定員40名、志願者486名、受験者269名、合格者74名、倍率3.6倍、合格者平均点278.6点
特に第1回入試の志願者数と受験者数をみると、いかに第1志望の受験生が多いかということがわかるのではないでしょうか。
偏差値
サピックスは50~58、四谷大塚は64、早稲田アカデミーは62、日能研は59~63
各塾の合格者数
サピックスは112名、四谷大塚は60名、早稲田アカデミーは44名、日能研は71名です。
<写真出典>Wikipedia
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。