受験校を選び、受験スケジュールを立てていくうえで、親御さんとしては最後まで頭を悩ませること、それは、「この受験校がわが子にあっているのだろうか」「わが子の能力を伸ばしてくれるだろうか」「充実した学生生活を送ってくれるだろうか」「大学入試改革があるけれど、大丈夫だろうか」・・・いろいろあると思いますが、つまるところ、お子さんの将来にとってプラスになる環境を与えてあげるためにどこを受験すべきだろうか、ということだと思います。
いわゆる御三家といわれるような学校は、1回しか入試を行いませんが、特に女子は、かなりの高偏差値の学校でも複数回の入試を行います。第1志望に決めた場合、全部の回に出願するという受験生も多いです。
今回は、そのような学校の一つ、非常に人気の高い吉祥女子中学校について、ご紹介していきたいと思います。
吉祥女子中学校の環境
吉祥女子中学校は、完全中高一貫の女子校です。定員は全3回の入試合わせて234名で、高校からの入試は実施しません。
所在地は、東京都武蔵野市吉祥寺東町です。JR中央線・総武線・東京メトロ東西線直通で、西荻窪駅から徒歩8分、西武新宿線・上石神井駅から西荻窪駅行きバスで、地蔵坂上バス停より徒歩8分の、閑静な住宅街の中にあります。
渋谷や新宿といったターミナル駅ではありませんので、非常に落ち着いた雰囲気の中にあり、周囲にも大学などがある、学校生活を送るにはとても安心できる環境です。
教育理念や特徴
吉祥女子中学校の建学の精神は、「社会に貢献する自立した女性の育成」です。逆境にあってもめげることなく立ち上がって自分の道を進んでいくたくましさ、「吉祥魂」を育てる、とされています。
もともと地理学者であった守屋荒美雄が創立した学校です。皆さんも1冊はお持ちだと思いますが、地図帳などを発行している帝国書院の創設者です。受け継いだ二代目校長も数学者であったこともあり、主体的に学んで知的探求心を育み、その知的探求心を継続して持ち続けることができるような教育を目標にしています。子どもは知的探求心を誰でも持っていますし、ちょっとしたきっかけで目覚めます。しかし、それを継続して持ち続けることはとても難しいことです。
また、女子教育というと、いわゆる良妻賢母の学校が多かった中で、吉祥女子中学校では、自分自身で考えること、そして自分の行動に責任を持つこと、を校是としています。これからの時代、自分の考えをきちんと自分のことばで述べることができること、一方で他者の意見にも耳を傾けること、が求められています。吉祥女子中学校では、そのような姿勢を持った生徒を育てることに力を注いでいます。
上述したことと重なることもありますが、自分の意見を述べるということは、自分の価値観を言葉で表すことであり、ときには他の人の意見や価値観とぶつかることもあります。その時に自分の考えだけを押し通しては、成長する機会を失ってしまいます。自分に枠をはめずに、話し合いを重ねること、それによって何かを解決する姿勢、コミュニケーション能力が非常に重要になってきます。そのため、自分だけでなく他者の価値観も尊重するという、できそうでなかなかできないことを学校全体で育んでいくことを目指しています。
施設・設備など
西荻窪(吉祥寺)のキャンパスは、8号館まであり、ホールやカウンセリングルーム、トレーニングルームやカフェテリアもあります。5号館は、2018年9月完成に向けて新築が始まっています。
校外施設としては、八王子と富士吉田にキャンパスがあり、林間学校やクラスの一泊旅行、部活動の合宿所としても使われています。八王子キャンパスでは運動会が行われます。
大学進学実績
2017年度の現役生の大学進学実績は、東京大学2名、京都大学2名、一橋大学9名、早稲田大学70名、慶應義塾大学31名、上智大学45名、東京理科大学44名など、好調な結果を残しています。
2017年度は、全生徒の約78%が現役で大学に進学しているので、これはかなり高い確率といえるでしょう。
教育における特徴
広大なキャンパスを持つことによって、学業だけでなく、部活動や学校行事にも積極的に取り組む生徒が多く、女子校としては非常に活発な雰囲気を持っています。
学業に関しては、非常に進度が速いことで知られています。特に数学は、中学3年生から高校1年生にかけて、文系数学(数学Ⅱ・B)までは終わらせてしまい、文系の生徒でも高校2年で2巡目を非常に速いスピードで学びます。
そのため、学校の課題をきっちりやっていくことが何よりも大事になってきます。早いうちに自ら学ぶ習慣をつけておかないと、中学から高校に上がるタイミングで非常に苦労することになります。教員のオリジナルプリントなども使い、決して難しすぎることをやるわけではありませんが、基本を徹底して叩き込まれるカリキュラムになっています。
英語については、最近では休暇中に語学研修などを行う学校が増えていますが、吉祥女子でも、中学3年生のカナダ語学体験ツアーをシミュレーションしたプログラムで、英語・英会話を鍛えています。
留学制度もあり、中学3年生の10月から11月には、8泊9日のカナダ語学体験ツアーがあり、これにはほぼ全員が参加しています。
高校生になると、カナダ・アメリカ・中国・オーストラリア・韓国にある姉妹校への1年間の留学をすることができるほか、オーストラリアでの英語セミナーが2週間程度、夏休みに行われます。英語だけでなく、中国での7日間の研修セミナーを春休みに行っている点は、他校とは一味違う研修といえると思います。
高校2年生で文系と理系、そして珍しいのですが、芸術系に分かれます。高校3年生になると、文系は国公立志望と私立志望に分かれての自由選択科目が合ったり、芸術系の生徒も音楽と美術に分かれ、音大や美大を目指す生徒も少なくありません。これも珍しいコース分けになっています。
入試情報
【募集定員】
- 第1回 114名
- 第2回 90名
- 第3回 30名
【試験科目と配点】
- 国語と算数はそれぞれ50分、100点満点
- 理科と社会はそれぞれ35分、70点満点
【倍率(2017年度)】
- 第1回 志願者466名、受験者442名、合格者225名、倍率1.96倍、合格者平均点239.9点(定員114名)
- 第2回 志願者745名、受験者494名、合格者204名、倍率2.42倍、合格者平均点261.0点(定員90名)
- 第3回 志願者573名、受験者307名、合格者45名、倍率6.82倍、合格者平均点251.3点(定員30名)
第2回入試は2月2日に実施されるため、2月1日に御三家などを受験し、2日に受験する生徒も多いため、倍率に比して合格者平均点の高さが目立ちます。
偏差値
サピックスは52~57、四谷大塚は64、早稲田アカデミーは62、日能研は60~63
合格者数
サピックスは146名、四谷大塚は141名、早稲田アカデミーは102名、日能研は79名
まとめ
吉祥女子中学校の入試傾向などについては別の記事で書きますが、重要なポイントは、苦手科目、苦手単元を作らないことです。入試問題は各科目とも、出題分野に偏りが少ないです。その分、4科目まんべんなく得点する力が要求されます。合格者平均点を見ても、高得点勝負となる傾向が続いています。
合否を分けるポイントとなるのは、算数の後半の応用・発展問題と、理科の計算問題です。この部分の対策は過去問や類題でしっかり行っておく必要がありますが、何よりも「みんなが確実に得点する問題を落とさないこと」が重要です。ぜひ意識してラストスパートをかけていきましょう。
<関連記事>
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。