入試が近づいてくるこの時期、ご家族の中の一番の悩みといえば、やはり志望校をどうするか、併願校をどこにするか、午前午後入試もするべきか、入試スケジュールを考える、などの点ではないでしょうか。受験校をどこにするかについては、もしかすると親御さんとお子さんの間で意見が異なることもあるかもしれませんし、親御さんどうしで意見が食い違うこともあるでしょう。その結果、本当に受験直前期の12月、1月の出願時期になっても決めきれない、そんなことも少なくありません。
これまで様々な学校に足を運んで、説明会で先生の話を聞いたり、学校を個別に訪問して学校の設備や生徒さんの様子を見たりして、情報を集めてこられたと思います。お仕事の都合などでなかなか学校を身に行けなかった・・・そう思う方もいらっしゃるかもしれません。お子さんの塾の土日の模試や特訓授業の送り迎えなどでなかなか足を運ぶことができなかったご家庭もあると思います。
学校の雰囲気や、実際に通っている生徒さんの様子、先生方の熱心さや、授業のカリキュラム、学校特有の授業など、学校説明会に行くといろいろな様子を見ることができますし、さらに個別に学校を訪問するなどした場合には、さらに情報を体で感じることができます。
なかには、小学校低学年のころからお子さんと一緒に着々と、ときにはお母様とお父様が手分けをしていろんな学校を訪問されてきたというご家庭もあると思います。そのときの印象はどうでしたか?受験校を決めるにあたり、やはりおおいに参考とすべき点が多かったのではないかと思います。
わが家は共働きで、しかも息子は入試直前まで習い事と受験勉強を両立していたので、なかなか平日の日中や週末の予定を調整するのは難しかったです。それでも、何とか生の情報を得たいと思っていました。やりくりして学校行事に行ったりしましたが、その経験を通して、学校説明会での外向きの情報を得てくるよりも、個人的には学校見学がより受験校を決める決め手になったような気がします。
今回は、いくつかの人気校について、学校見学の経験をまとめてみたいと思います。
慶應義塾普通部(日吉)での学校見学
慶應義塾普通部は、慶應系列の学校の中で、両親が慶應卒だという割合が一番多く、また、慶應幼稚舎から進学してくる割合も一番高いことで知られているのではないでしょうか。
慶應普通部は男子校で、いわゆる「文化祭」がありません。公開イベントとしては、9月後半の週末に行われる「労作展」と呼ばれる作品展が有名です。通っている生徒さんもこの作品展には非常に力を入れますし、親御さんも両親そろって見学に行く、一大イベントです。
わが家の息子のクラスメイトのお兄さんが慶應普通部に通っておられたということもあり、少しインサイダー的な(?)視点の解説も聴きながら、作品展を見学に行きました。
発表されている作品は、どれも中学生の作品とは思えない素晴らしいものばかりでした。どれほどこの作品展に力を入れているか、が一目でわかるくらいでした。実際にお兄さんが慶應普通部に通っている息子のクラスメイトのお母さんがおっしゃっていたのは、入学したら、すぐにこの労作展のテーマを決めて準備を始めるとのことでした。
作品を作るにあたっては、まず自分で決めた一つのテーマをどう表現するかということを考え、時間をかけて作品作りに没頭しながら色々な角度で物事を追求していく、それが労作展なのだそうです。このように、テーマを自分で決めて、どう表現するか試行錯誤することによって考える力、表現する力を養っていく、そんな学校の指導方針の一面を感じることができたように思います。このような取り組みも、その後の大学受験の勉強を気にすることなく、10年間の一貫教育ができるからこそ菜のではないかと感じました。
慶應普通部の校風は?
慶應系列校はいくつかあるので、それぞれ校風は異なるのかもしれませんが、慶應普通部の校風や、通っている生徒さんに対しては、「落ち着いた雰囲気」を感じました。
礼節や品性を重んじている、という学校の指導理念通り、通ってきている生徒さんたちは、真面目で礼儀正しい印象でした。これはたまたまかも知れませんが、元気いっぱいというよりは、どちらかというと中学生のわりに落ち着いている、そんな印象を受けました。ちなみに、在学生によると、礼節や品性については先生が特別に指導をするわけではないそうです。もともとそのような素地のある生徒さんが集まり、作られていく周りの雰囲気から、生徒さんが自ら学んでいくものなのではないかと思います。
また、ご存知の方も多いかと思いますが、慶應内部の保護者の方のドレスコードは「黒」なので、もし作品展や学校訪問に行かれる場合は、黒っぽい服装で行かれるのが良いかと思います。自分だけ違うと浮いてしまい、不必要に不安になってしまうかもしれないので、そこは合わせておいた方が無難だと思います。ちなみに、学校を訪問した当日、部活をやっていれば、その日に合わせて見ることができます。よそ行きではない、本当の生徒さんの素顔を見るよい機会だと思います。
慶應普通部は、人間力も重視するとうたっていますので、生徒さんたちの様子を見学すると、そのあたりのことも垣間見えるかもしれないな、と少し期待していたのですが、そのあたりはやっぱり思春期の男の子たちだからか、イベントの1日だけでは、学校のアピールする「人間力」まではあまり感じることはできませんでした。
家族で転居までして入学するほどのブランド力
以前、息子学習内容の穴を埋めようと、いろいろとの先生をを探していた時に、紹介で普通部の高校生が来てくれたことがありました。その方は名古屋出身だということでしたが、祖父からすすめられて名古屋から上京して慶應普通部を中学受験したそうです。
まさか合格するとは思っていなかった(模試の判定でも、合格可能性30%程度だったと言っていました)にも関わらず合格し、それから進学するかどうか相談をし、結果としてお母さまと名古屋から横浜に引越しをして、慶應普通部に通うことにした、と言っていました。
彼が言っていたところによると、自分以外にも、家族と一緒に転居をしてまで普通部に入学してきた生徒さんは、ほかにも結構いるとのことでした。「慶應」のブランド力については私も頭では分かっていたつもりでしたが、転居してまで入学してくる生徒が少なからずいるという現実に、改めて驚いたのは言うまでもありません。
まとめ
慶應普通部の学校見学は、ある意味、予想した通りだったように思います。学校の指導方針が生徒たちに浸透していると感じたと同時に、もともとそういう生徒さんが多く入学してくるのだと思いますが、全体として学校そのものにとても真面目な印象を受けました。
また、労作展までのプロセスを実際に見聞きすると、しっかり勉強したり、学生生活を通して1人のの人間として将来に向けて学ぶことはもちろんのことという雰囲気だと思います。
慶應は、幼稚舎から、理科の実験とレポートが課され、かなり厳しく採点されてなかなか良い成績をとることは難しいそうです。インターネットではなく文献を自分でひも解いて、自分なりの考察を加えないとレポートとして評価されず、成績に大きく影響するということは有名かもしれませんが、特に、研究者気質の子はwelcome!というような印象を受けました。
慶應普通部の、というよりも慶應系列校の入試問題も、いわゆるひねりすぎたような難問は少なく、俳句や手紙文を出したりするような特徴があったり、試験問題の分量が多かったりと事務処理能力も求められる傾向にあります。
慶應普通部も、過去問を解いていたに、そういえば生物など没頭して観察するような問題には、ほかの学校とは一味違う特徴があったな、と思い出しました。それは、入学後の理科のレポート課題に耐えられるか、自然に対する興味を持っているかという点を判断するために出題され続けているのかもしれません。
慶應系列校の問題は御三家などのようにひねった難問はあまり出ない、と先ほど書きましたが、算数に関しては、年々難しくなってきているように思います。年によって出題傾向が読めないところもあるので、何年分か、過去問をしっかり解ききっておくことが重要だと思います。
今回は、慶應系列校の中でも、慶應普通部を取り上げて、実際に学校を見学した際の印象や感想を書いてみました。中には、知り合いの生徒さんやお母さまの情報も入っています。あくまでも私個人の印象や感想ですので、ご家庭によってはまた感じ方は異なると思います。すでに見学に行かれている方は特にそうかもしれません。
もし、来年以降、慶應普通部の受験をお考えの親御さん、お子さんには、ぜひ実際に学校に足を運んで、作品展や生徒さんの様子をじっくり見学してきていただきたいと思います。今回の内容は、私が実際に足を運んで感じたことを書かせていただきましたので、参考程度にしていただきたいと思います。実際に見学に行かないとわからない雰囲気、生徒さんの様子、校訓が校内にどのように浸透しているのかは、ぜひ親子で実際に見学に行ってみて、ご自分の肌で感じてみてくださいね。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。