歴史の大きな流れと対比させながら覚えよう!日本の文化史【〜室町時代編】

今回の記事では,中学受験の社会に登場する文化史について取り扱うシリーズの第1本目として,室町時代までの歴史を追っていきます。この文化史のような細々とした内容は,印象的な戦乱や制度より覚えにくいところではありますが,その分受験に出てきやすいとも言えます。しっかり正確に頭に入れるために,本記事を活用していただきますと幸いです。

「文化史」とは?

まず文化史とは何を指すのか,あらかじめ確認しておきましょう。文化史とは,かんたんに言ってしまえば政治と関連しない要素を辿っていく歴史のことだと思っておくといいでしょう。もちろん風刺画なども存在するので,文化は完全に政治と切り離せるわけではないのですが,そのように幅広い範囲を扱う歴史のことなのだと認識しておくといいでしょう。この文化史にあてはまる代表的なものは,学問・芸術・文学・思想・宗教などです。これらの要素を時代ごとに覚えないといけないので骨が折れますが,その根本に存在する価値観は共通していることがほとんどです。そのため時代ごとの特徴や雰囲気を大まかに理解した上で,個々の要素を理解していくといいでしょう。

旧石器・縄文時代

それでは本題の文化史の解説に移ります。まずは旧石器・縄文時代について確認していきましょう。この時代は大陸から日本へと人類が移り,人々は狩猟をしながら生活をしていました。そんなこれらの時代の文化は,生活にダイレクトに関わる食事に関連するものが多いです。代表的なものが石器です。旧石器時代では石を砕いた打製石器,縄文時代では打製石器を磨いた磨製石器が,斧や矢尻として使用されました。また特に縄文時代に注目すると,縄文土器と呼ばれる縄目がついていて黒く厚い土器が食料の煮炊きに使われていました。

この他,縄文時代では食べ物のかすなどを捨てていた貝塚,当時の人々が住んでいたたて穴住居,人の形を模して作られた素焼きの人形である土偶などを覚えておきたいところです。これらがどのように使われたのかについては色々な説があるのですが,諸説あるが故に受験では登場しないと考えて問題ないですので,興味がある人のみ調べてみるといいでしょう。

弥生時代

続いては弥生時代について見ていきます。弥生時代になると人々は稲作をするようになり,効率よく作物を育てるためにむらという集団を作るようになります。この弥生時代でも覚えておきたいのは食物に関連した文化です。まず代表的なものが弥生土器でしょう。弥生時代の人々は育てた米を煮たり保存したりするのに土器を使いました。縄文土器と比べて,赤色で薄くて固いことが特徴です。建物においても,高床倉庫という育てた稲を蓄えるための施設を作ったりしました。

食物の他だと,この弥生時代では大陸から伝わった金属器の使用が特徴的です。金属器とは青銅や鉄で作られた道具のことを指します。青銅器には銅剣・銅矛・銅鏡・銅鐸などがあり,これらは祭りのための宝物として使われ,他方鉄器は武器や工具として使われました。このような用途まで覚えておくと尚いいでしょう。

また弥生時代の後半にはむらが大きくなってくにとなり,その中でもいくつかの大きなくにが登場するようになります。代表的なものが奴国邪馬台国です。どちらも中国に自分達の実力を認めてもらおうと朝貢したのですが,奴国については後漢書東夷伝という書物に,邪馬台国については魏志倭人伝という書物にそのことが描かれていて,特に奴国については当時の中国である漢から漢委奴国王と刻まれた金印を授かっています。この辺りの史料への理解も深めておくといいでしょう。

古墳時代

では古墳時代の文化について追っていきましょう。古墳時代とは,3世紀末ごろから西日本の各地で豪族王を葬る大きな古墳が作られるようになった時代を指します。古墳の形は円墳・方墳など様々なのですが,特にこの時代には前方後円墳というものが多く作られました。この時代に覚えておきたい文化は古墳に関連したものがほとんどです。まずは埴輪が挙げられます。埴輪と聞くと人や馬の形をイメージすることが多いでしょうが,他の動物や家などをかたどったものもあり,古墳の周りや頂上に置かれました。

この古墳時代には大和政権という勢力が日本を治めるようになるのですが,その政権に関して覚えておきたい文化もあります。その1つがワカタケル大王の鉄剣です。この鉄剣は埼玉県の稲荷山古墳で出土されたもので,しばしばその名前が受験に登場します。

また他国との交流という文脈で,中国や朝鮮半島から渡来人がやってきたことも押さえておきましょう。渡来人によって,日本に漢字儒学,絹織物を作る技術,そして須恵器という土器がもたらされました。須恵器はこれまで紹介した土器と使い方はそこまで変わらないのですが,青っぽい灰色をしていて固いという特徴があります。また6世紀ごろには朝鮮の百済という国から仏教が伝えられ,飛鳥時代以降の文化に大きく影響してきます。

飛鳥時代

ここからは飛鳥時代について見ていきましょう。飛鳥時代とは聖徳太子を摂政としていた推古天皇が即位してから,平城京に京都を移すまでの時代を指します。この時代には小野妹子をはじめとする遣隋使によって大陸の文化が取り入れられたり,聖徳太子が仏教を熱く信仰したりしたことから,皇族や豪族を中心とした仏教文化が栄えました。これを飛鳥文化といいます。この文化は先ほども触れたように大陸から広く影響を受けているので,中国だけでなくインド・西アジア・ギリシャなどの文化の要素も混じっており,全体的に壮大で荘厳なイメージを持っておくといいでしょう。

この飛鳥文化ではよく建築が注目されます。有名なのが法隆寺五重塔です。これらは現存する世界最古の木造建築で,受験社会の中でも特に覚えておきたい要素の1つです。また仏像や工芸品なども注目しておくといいでしょう。法隆寺の中にある釈迦三尊像や広隆寺にある弥勒菩薩像など,余裕があれば頭に入れておきましょう。

奈良時代

次は奈良時代の文化に注目していきます。奈良時代は平城京に都を移してから平安京に都が移るまでの時代を指しますが,この時代には律令というルールや平城京という都がつくられるなど,唐の影響を多く受けていました。その背景には遣唐使と呼ばれる,留学生の派遣があります。またこの時代には和同開珎などの貨幣が広がっていき,税の制度も確立され,それによって人々は苦しい生活を強いられるのですが,その辺りは別のシリーズでご確認ください。

この時代には天平文化と呼ばれる,貴族を中心とした仏教文化が花開きました。貴族・仏教という単語だと先ほどの飛鳥文化と同じように聞こえますが,この2つの文化はどんな影響を受けていたかという点で異なります。飛鳥文化はをはじめとした大陸から広く影響を受けていたのに対し,天平文化は隋を滅ぼしたの影響を強く受けながら,日本独自の個性的な文化も磨かれていったという違いがあります。

さてそんな天平文化は聖武天皇の時代に栄えました。主に覚えておきたいのは仏教がらみの要素です。まず聖武天皇の行いとして,国ごとに国分寺・国分尼寺を,都には東大寺を立てて大仏を建立したことを覚えておきましょう。なおこの東大寺には正倉院という,工芸品や書物が保存された建物も重要です。この正倉院は校倉造と呼ばれる構造をしていることが問われやすいので,頭に入れておいてください。また天皇に限らず,唐から来たお坊さんで用水路や橋をつくった行基・同じく唐のお坊さんで,失明しながらも日本に渡り唐招提寺を作った鑑真という人たちの名前も押さえておきましょう。

また先ほど「日本独自」という話をしましたが,そのことは書物から読み取ることができます。この頃には歴史が書かれた古事記・日本書紀,自然や伝説について書かれた風土記・和歌を集めた万葉集など,多くの書物が発刊されました。この辺りも頻出なので,重点的に勉強するといいでしょう。

平安時代

続いては平安時代について確認していきます。平安時代は藤原氏が摂関政治で政治の実権を握り,後期には武士が生まれ,その中でも有数の勢力を誇っていた平氏による政治へと移行します。そんな長い平安時代の文化は国風文化と呼ばれます。国風とは「日本独自の」という意味を指す単語です。この平安時代には,これまで日本が影響を受けた唐や朝鮮半島の新羅が衰えていきます。そのような背景で,日本内部で文化が栄えたというわけです。

そんな国風文化の代表的な要素として,現在のひらがなの元となった仮名文字が挙げられます。この仮名文字は主に貴族の女性の間で使われ,多くの作品が作られました。中でも有名なのが,寝殿造の住居に住む貴族の生活を表した物語である,紫式部源氏物語清少納言枕草子です。そのほか紀貫之などによる古今和歌集や,同じく紀貫之による日記の土佐日記,また庶民生活や地方の説話を集めた,現在まで作者は不明である今昔物語集などを覚えておくといいでしょう。

またこの頃には仏教のあり方も少し変わってきます。それが,念仏を唱えて阿弥陀仏という仏様にすがれば死後に極楽浄土に生まれ変わることができるという浄土信仰です。この浄土信仰が広まると,阿弥陀仏をまつる阿弥陀堂が作られるようになります。中でも藤原頼道による平等寺鳳凰堂,それから奥州藤原氏による中尊寺金色堂が有名です。

鎌倉時代

ここからは鎌倉時代の歴史を勉強していきましょう。鎌倉時代は源氏が政治を収めていた時代であり,将軍とご恩と奉公の関係を結んだ武士が中心となって社会を動かしていました。そんな武士は,普段は領地の農村の質素な家に住み,農民と共に農業を行いつつ弓馬の道という志のもと武芸に励んでいました。なおこの頃の農業は平安時代までのものと大きく異なり,牛や馬の活用・鉄の農具の普及・草や灰の肥料の使用などによって生産効率が上昇していました。作物も米だけでなく,米の取れない期間ではを育てる二毛作が始まります。このほか産業の関連では,神社の門前・交通の要所などで定期市が開かれるようになり,宋から輸入された銅銭である宋銭がそこで使われていました。

このような鎌倉時代では,以上のような生活を営む武士の素朴さ・力強さ伝統的な貴族の優美さを兼ね備えたような文化が生まれます。まず確認しておくのが新しい仏教の誕生です。平安時代では浄土信仰が広まりましたが,戦乱が増え人々の不安が増す鎌倉時代では,わかりやすく実行しやすいような教えを持つ宗派が次々に生まれます。まずは念仏を唱えることを重視する念仏宗です。この念仏宗には浄土信仰を継承した法然による浄土宗,悪人こそ救われると唱えた親鸞による浄土真宗,踊りながら念仏を唱える踊り念仏が特徴的な一遍による時宗が存在します。続いては日蓮による日蓮宗です。この日蓮宗では念仏の代わりに題目というものを唱えるという教えがあります。最後に見るのは中国から伝わった禅宗です。この禅宗には,栄西が開いた臨済宗道元が開いた曹洞宗の2つがあり,どちらも座禅を組むことで悟りを開くという特色があります。しかし臨済宗は幕府の保護を受け,曹洞宗は権力を嫌っていたことを違いとして押さえておきましょう。

続けて文学について見ていきます。この時代の文学では,戦乱を取り扱う軍記物の1つである琵琶法師平家物語が有名です。そのほか随筆では鴨長明方丈記兼好法師徒然草などを,和歌集では承久の乱を起こした後鳥羽上皇によりまとめられた新古今和歌集を覚えておいてください。また建築や彫刻の分野では,先ほど触れた武士の力強さが表れた作品が多く,特に代表的なのが東大寺南大門です。この場所には運慶や快慶の作った金剛力士像があり,しばしば受験に登場するのでしっかりと頭に入れておきたいところです。

室町時代

最後に室町時代の歴史について触れます。この室町時代には足利氏によって政治が担われてきました。その支配体制については法律史のシリーズで確認していただくとして,まずは貿易について見ていきましょう。室町幕府は中国・朝鮮だけでなく,蝦夷地・琉球など多くの地域を相手に貿易を進めました。しかし南北朝時代から,この貿易を妨害する海賊である倭寇が目立って悪さをするようになります。そこで義満の時代のとき,勘合という2枚で1組になる証明書を使った貿易が宋の跡を継いだとの間に始まりました。これが勘合貿易です。

農産業についても,鎌倉時代より一層形が変わっていきます。まず農業ですが,この頃には鎌倉時代に生まれた二毛作・牛や馬を使った耕作が広まり,作物も米と麦以外に麻・桑・藍・茶・綿など多くのものが作られるようになりました。商業では鎌倉時代の定期市がさらに頻繁に開催されるようになり,それにともなって運送業である馬借や車借,お金の貸し借りを扱う土倉や酒屋が活躍するようになりました。このように商業が発達するのに伴い,やがて貴族などに保護を受けるという組合が登場するようになったり,裕福な商工業者が町の自治を担う町衆となったりするようになります。

そんな室町時代の文化は応仁の乱の前後で大きく2つに分けられます。まずは前半,足利義満のときに花開いた文化である北山文化について見ていきましょう。北山文化は先ほど見た鎌倉よりも貴族と武士の雰囲気が融合し,義光が建てた鹿苑寺金閣に代表されるように派手な文化となっています。他には義満の保護を受けた観阿弥・世阿弥の親子が狂言を作り上げたりしました。

他方禅宗の影響を受け,簡素で深みのあるわびさびの文化が応仁の乱以降の東山文化です。この東山文化では,足利義政が作った慈照寺銀閣が代表的です。この銀閣の下の層が,床の間・畳・ふすまなどが用いられた書院造になっており,現代の建築につながっていきます。また建築で言うと,龍安寺などにある石で水の流れを表現した枯山水が有名です。中国から伝わって雪舟によって大成された水墨画なども重要ですので,しっかり覚えておきましょう。

終わりに

今回の記事では文化史について扱うシリーズの第1本目として,室町時代までの歴史を取り扱っていきました。この文化史は,まず歴史の大きな流れと一緒にざっくりそれぞれの時代の作品の傾向や雰囲気を掴んだ後,1つ1つのタイトルや作者を覚えていくことがおすすめです。次回・次々回の江戸時代以降の歴史についても,同様の手順で覚えていきましょう。本記事が今後の学習のお役に立てば幸いです。

(ライター:大舘)

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参考

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