中学受験の理科で、受験生が苦手とするところの一つがヒトのからだについてです。様々な臓器の名前や働き、血液の循環、消化の仕組み、不要物を排出する仕組みなど、ただ覚えるだけではなかなか点数がとれないところです。特に、軽視されがちなのが不要物を排出する仕組みについてです。二酸化炭素の排出については理解している受験生が多いと思いますが、それ以外の不要物については理解があいまいなままになってしまいがちです。
今回は、ヒトのからだの不要物の排出のについて、トータルで理解できるようにまとめていきます。
Contents
苦手になる理由
なぜ、不要物の排出のところが苦手になるのでしょう?それは、ヒトのからだについての知識が断片的になってしまっていることに大きな原因があります。不要物の排出については、血液の循環や臓器など、からだの仕組みそのものと結びつけて理解しないと、単なる知識の詰め込みで終わってしまい、しかもその知識が不正確なままになってしまいます。また、臓器についても、実際に見ることができないだけに、なじみがあるとは言えないですから覚えにくいですね。消化管とは違うので、さらにイメージしにくいことも苦手意識に拍車をかけています。
ダメな勉強法
さきほども書きましたが、ヒトのからだの仕組み、血液の循環や消化の仕組み、臓器などをバラバラに覚えようとしても、不要物の排出の意味そのものが理解できません。ヒトのからだの仕組みはトータルで出題されることも多いですから、全体像をしっかり理解しないと、ただ断片的な知識を覚えるだけ、しかもなかなか覚えられず、記憶の負担が増すばかりです。
どのように取り組むか
臓器や器官の位置と働きについて理解する
不要物の排出は、血液の循環や消化の仕組み、臓器などと結びつけて考えなければなりません。そもそもヒトのからだに不要なものとは何か、それがどのように処理されるのかをまず整理することから始めましょう。まず、各臓器、器官の位置と働きについて、簡単でいいのでまとめておくことが大切です。細かい知識は問われませんが、位置の確認とどのような働きをするのかの確認は必須です。それぞれの臓器がうまく働かなくなったら体にどのような異変が起こるのか、ということを想像してみると、それらの臓器のはたらきがイメージしやすくなります。
排出に関連する臓器、器官とは
排出に関連する主な臓器、器官は、肝臓、腎臓、ぼうこう、そして汗腺です。
肝臓
肝臓は、体の「化学工場」とも呼ばれ、500以上もの働きをすると言われています。体の中で唯一、再生が可能な器官です。つまり、切られてもまたもとの大きさに戻ることができるのです。肝臓について、覚えるべきなのは主に次の3つの点です。
- 小腸で吸収された養分を一時的に蓄え、必要な時に血液に送り出す。
- 胆汁を作る。胆汁は、脂肪の消化を助ける消化液です。
- 有害な物質を無害な物質に変える、解毒作用がある。
肝臓の解毒作用ですが、たとえば、タンパク質がエネルギーとして使われるとアンモニアが発生します。肝臓は、それを害の少ない尿素に変える働きをします。
小腸で養分が吸収されることや、胆汁が消化液であることはどのテキストにも書いてありますが、臓器のはたらきとしてしっかり結びつけて覚えるようにしましょう。
腎臓、ぼうこう
腎臓は、いわば「フィルター」です。肝臓で作り出された尿素を腎臓でこし取ります。腰のあたりに2つあり、大きさは握りこぶしくらいです。位置と大きさはしっかり覚えておきましょう。
ぼうこうは、腎臓から送られた尿を一時的にためるところです。あまり我慢するとぼうこう炎になるよ、といわれるところですから、覚えやすいですね。
汗腺
汗腺は、皮膚の表面にある汗を出す器官です。汗の成分は尿とほとんど同じなのですが、汗の方が薄いです。不要となった水分や不要物が含まれています。汗腺は、このような排出の働きをしますが、主な役割は体温調節です。汗が出るのにも、このように理由があるのです。
例題で考えてみよう
では、実際に例題を用いて、不要物の排出の仕組みについて考えてみましょう。
(例題)栄光学園中学 2016年度入試
(1)はある働きをする臓器の名前を答える問題、(2)は、臓器の位置を答えさせる問題です。
(1)は、ヒトが小腸で吸収した養分の一部をたくわえる臓器の名前を答える問題ですから、栄養の吸収と関連付けて覚えられていれば確実に解ける、素直な問題です。答えは、「肝臓」ですね。
(2)は、(1)で答えた肝臓の位置を答えさせる問題です。どの位置にどの臓器があるかは、しっかり覚えておきましょう。これをきっかけに、アからクまで、全部答えることができるようにしたいですね。テキストや資料集などで、しっかり位置を確認しておきましょう。
ア:肺、イ:心臓、ウ:肝臓、エ:胃、オ:腎臓、カ:小腸、キ:大腸、ク:ぼうこう
まとめ
ヒトのからだの仕組みは、難しく言うと循環器系、神経系、消化器系などに分けて学びますが、あまり分断して覚えてしまうと、知識がバラバラになり、今回のような循環器と消化の関係するような問題を解くときに正解することができなくなってしまいます。ヒトのからだは、生命を維持するために、それぞれ理由のあるつくりをしています。それを確かめながら理解するようにしていきましょう。
将来、お医者さんになりたい、と志している人には、ぜひとも「常識のように」答えることができるようになってほしいですね。もちろん、そうでなくても、私たち人間のからだはこういう仕組みで生かされている、ということに興味を持って学習すると、理解しやすく、知識もつながりやすくなりますよ。ぜひ、しっかり整理しておきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。