私たちの生活には様々なところで鉄が使われています. 今となっては,鉄というものは物質は生活に欠かせない物質となっています.
そんな鉄ですが,実際に使えるようにするためにはできるだけ純粋な鉄を取り出す必要があります.
ここでは地球上で鉄はどのように存在しているのか,どのようにして鉄の純度を高めるのか,ということについて紹介していきます.
地球上の鉄
まずは,地球に存在している鉄について紹介していきます.地球の中に鉄はどのくらい含まれているでしょうか.
実は,「地球全体の重さの約35%」は鉄によるものだとされています.地球には様々な種類の物質がある中,その3割以上を鉄が占めているのですね.
さらに地球の表面付近で考えるとどうでしょうか.
地球表面付近だけで考えると,重量の割合で考えたとき,多く含まれている元素の順で,
酸素(49.5%)→ケイ素(25.8%)→アルミニウム(7.56%)→鉄(4.70%)→…
となっており,この数は「クラーク数」と呼ばれています.
そして地表の鉄は特に,特に鉄そのままの状態で存在しているわけではありません. 空気中の酸素と結びつき,酸化鉄として存在しています.
ここから純粋な鉄を取り出すために,手を加える必要があります.次の節で酸化鉄から純粋な鉄を取り出す方法を紹介します.
《確認》
- 地球全体に含まれる鉄はその重さで約何パーセントですか?
- 地表付近に含まれる元素を重さの割合の順で表した数を何といいますか?
- 地表付近の鉄はどのような物質となって存在していますか?
《解答》
- (1)約35%
- (2)クラーク数
- (3)酸化鉄
鉄の精製方法
より純粋な物質を得るために行う操作を「精製」と呼びます.ここでは純粋な鉄を得るための方法を確認していきましょう.
まず「酸化鉄」を,溶鉱炉で一酸化炭素や炭素と反応させることで,鉄に結びついている酸素を炭素に奪わせることで約4%の炭素や不純物を含む「銑鉄(せんてつ)」が得られます.
次に,融解させた銑鉄を転炉というところに入れて,酸素を吹き込むと,炭素や不純物が取り除かれた,より純粋な「鋼(こう)」が得られます.
このようにして酸化鉄はより純粋な鉄として取り出されるのです.
《確認》
- 溶鉱炉で炭素や一酸化炭素に酸素を奪わせたあとにできた,不純物をまだ多く含んでいる鉄を何といいますか.
- ①を転炉に入れて,酸素を吹き込むことで不純物を減らし,より純度を高めた鉄を何といいますか.
《解答》
- (1)銑鉄
- (2)鋼
入試問題演習
ここまでに学んだ知識を活かして,実際の入試問題に挑戦してみましょう.
問題
解答
- 問1 エ
- 問2 酸化鉄
- 問3 方法:イ 性質:B
- 問4 ア,エ
- 問5 ウ
- 問6 森林
- 問7 586 kg
解説
問1
地球の内部には,温度が高く,鉄が液体になっている部分があります. そこでは地球の自転に伴い,鉄も非常にゆっくり回るように動いています.
鉄は,電気のもとになる「電子」が含まれていますが(他の物質にも電子はあります),鉄が流れることで,同時にこの電子の流れが生じます.
電気の流れは磁力を生み出します. 実際に電流が流れる導線の近くに方位磁石を置くと,磁力が生じていることが分かります.
このように,地球内の鉄の流れによる電子の流れによって地球全体が磁石のようになっています.
問2
地表表面の鉄は,空気中の酸素と反応して結びつき,酸化鉄の状態で存在しています.
問3
水に入れてよくかき混ぜることで,密度の大きい鉄がすぐに沈んできます.
問4
木を蒸し焼きしたときに生じる液体は,「木酢酸」と「木タール」です.
問5
最終的に二酸化炭素が生成しており,二酸化炭素は炭素に酸素が結びついたものなので,ここでは炭素の方が鉄よりも酸素と結びつきやすいことが分かります.
問6
たたら製鉄に必要な材料は砂鉄と木炭であると問題文に書いてあります.
これを中国地方で行っていた理由として,1つは質のいい砂鉄がとれたことを挙げています.
つまりもう一つの理由は,木炭が取れること,すなわち,木が取れることであると考えられます. そこで漢字二文字の木が取れる場所を考えれば,「森林」が連想されると思います.
問7
問題文より,鉄が700gに対して,二酸化炭素が410g発生しています.
つまり,鉄1gに対する二酸化炭素の発生量は
410/700=41/70より
41/70 gであると計算できます(分数はできるだけ最後にまとめて計算しましょう).
つまり鉄1t,すなわち鉄1000gを得ることに対する二酸化炭素の発生量は,
(41/70)×1000=41000/70=4100/7=585.7…≒586
よって約586gとなります.
まとめ
鉄など,身近で使われている物質はどのくらい地球に存在しているのか,どのようにして使える形にしているのかなど,様々な物質の起源や応用先に注目して学習を進めていきましょう.