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高校数学最初のハードル
私も生徒に授業をする機会が多くあるので、生徒の苦手傾向というものがなんとなく見えてくる。その中でも2次関数について教えるとき、初めに苦手な箇所はどこかと聞くとそのほとんどが「場合分けだ」と答える。確かに、場合分けは今までの数学の考え方では出てこなかったものであるから慣れるのには時間がかかるし、一体どの区間で場合分けしたら良いのかを適切に判断出来ない場面にも多く出くわすだろう。そこで今回この記事では、2次関数の最難関事項のひとつである場合分けについて、私自身が問題を解くときに使用している方法について具体的に説明していこうと思う。
なぜ多くの人が場合分けに苦手意識を持つのか?
では、なぜ場合分けが出来ないのだろうか。私の生徒に聞いてみると、ほとんどが口をそろえて「イメージがしづらい」と答える。2次関数の式中の文字を適切に動かしていく動作のイメージが出来ないのだ。私の体感ではあるが、確かに教科書に載っているような場合分けは、それぞれの場合に溝のような隔たりのような断絶された感覚を覚える。しかし、逆に言えば、文字を適切に動かしていく様をなめらかに表現した図を書くことが出来れば、場合分けは怖くなくなるのだ。具体的な方法を下に書いていこう。
具体的な”場合分け”の方法とは?
下のような問題を解くとしよう。
問題
\(a\)を定数とする。\(0 \leq x \leq 2\)における関数\(f(x)=x^{2}-2ax-4a\)について、最小値を求めよ。
2次関数の最大最小に関する基礎的な問題である。読者諸君はひとまず記事を一旦とめて自力で解いてみてほしい。すると、解答としては次のようになるのでは無いだろうか。
解(テンプレート版)
- (1)軸\(x=a\)が\(2<x\)の範囲にあるとき、すなわち\(a>2\)のとき
- \(x=2\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(2)=-8a+4\)
- (2)軸\(x=a\)が\(0 \leq x \leq 2\)の範囲にあるとき、すなわち\(0 \leq a \leq 2\)のとき
- \(x=a\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(a)=-a^{2}-4a\)
- (3)軸\(x=a\)が\(x<0\)の範囲にあるとき、すなわち\(a<0\)のとき
- \(x=0\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(0)=-4a\)
以上から、
- \(a>2\)のとき\(x=2\)で最小値\(f(2)=-8a+4\)
- \(0 \leq x \leq 2\)のとき\(x=a\)で最小値\(f(a)=-a^{2}-4a\)
- \(a<0\)のとき\(x=0\)で最小値\(f(0)=-4a\)
以上がテンプレート通りの答え方である。これだと、(1)(2)(3)の場合分けがどのようにしてなされたのかがイマイチわかりにくい。さらに、採点者の目から見ても、この解答は図の解釈が解答欄にないのでひとつひとつ式を吟味していかなければならず、かなり厳しい採点を施しがちである。では、私なりのオリジナル解答を書いてみよう。
解(オリジナル版)
(1)軸\(x=a\)が\(x<0\)の範囲にあるとき、すなわち\(a<0\)のとき
\(x=0\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(0)=-4a\)(2)軸\(x=a\)が\(0 \leq x \leq 2\)の範囲にあるとき、すなわち\(0 \leq a \leq 2\)のとき
\(x=a\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(a)=-a^{2}-4a\)(3)軸\(x=a\)が\(2<x\)の範囲にあるとき、すなわち\(a>2\)のとき
\(x=2\)の時に最小となる。このとき最小値は\(f(2)=-8a+4\)以上から、
\(a>2\)のとき\(x=2\)で最小値\(f(2)=-8a+4\)\(0 \leq x \leq 2\)のとき\(x=a\)で最小値\(f(a)=-a^{2}-4a\)
\(a<0\)のとき\(x=0\)で最小値\(f(0)=-4a\)
これが私の解答である。あえて最初に示した解答の文と全く同じ文を採用した。だが、見やすさに関しては圧倒的に私の書いた解答の方が上だろう。もちろんポイントは書いた図である。これの図のポイントは定義域を(1)(2)(3)を通して一貫した書き方にしていることである。こうすることによって、定義域は動かず、2次関数のグラフが動いている様子が分かりやすくなる上に場合分けも非常にやりやすい。この表記法はたくさんのメリットを持っているのである。
特殊な書き方は模試だと減点される?
この解答方法を行うに当たって、補足事項を述べる。まず、実際の模試(特に記述模試)でこの解答方法を行った場合、減点はされないのかという点について。私は高校1年のときからこの解答方法を採用していたが、1度も減点をされたことがないのでその点は安心して良い。(一部の学校や塾では、決まった型で書かれた答案でないと減点対象というようなこともあるが、大手の模試や本番の入試では全く問題ない)そして、今回は定義域が固定(具体的な数字で与えられていた)されていてグラフが動く場合の問題を考えたが、逆に定義域が動いてグラフが固定されている場合にもこの解答方法が応用可能である。さらに、採点者に観点から見ても、この解答は文字の他に図形的解釈も行っているので問題に対する理解度が測りやすい。このように、自分がわかりやすいというだけでなく、適切な採点もされやすいのだ。
場合分けは高校数学、末永く寄り添う考え方
今回は2次関数の最大最小問題の鬼門である場合分けに関する解答の工夫方法を述べた。2次関数は数学Ⅰにおける最大にして最重要のテーマである。ここで培った場合分けの基本は今後の数学Ⅱ、Ⅲ等で多く利用する物であるから、場合分けに関する理解は確実にしておきたい。なぜここの範囲で場合を分けるのか?どうして場合分けが2つの時と3つの時があるのか?なぜ範囲を分けた結果このような値がでてくるのか?などなど、2次関数の場合分けに関する理解を深める問題にしっかりと取り組もう。厳密な場合分けに関する考察を早い段階から行っていれば、いざ本番の模試を解くときにも曖昧な解答をせずに理解した状態で解答を書ける。その理解度の差は、しっかりと得点の差となって現れてくるだろう。読者諸君が、この記事をきっかけに2次関数に対する態度を改め、より深い理解にむけて努力する事を願っている。
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