入試問題3選を解きながら結びつきを理解しよう!受験算数と年号の関係

今回の記事では年号について焦点を当て,取り上げていきます。毎年どの学校でも小問集合の中で取り上げられがちなのが年号という数字です。問題の出題傾向は多岐にわたるため対策しきることはなかなか難しいですが,今回はいくつかの出題例を紹介しつつ,今年度の入試(2023年入試)ではどのような問題が出るかを予想していきます。

年号の関連する入試問題3例

さて,前置きで年号が受験算数の中で取り上げられがちという話をしましたが,これだけだとイマイチピンとこない方や「本当にそうかな」と思われる方もいることでしょう。そこで今回の記事ではまず昨年(2022年)に出題された問題の一部を取り上げていきますので,その問題を読みながら,年号が算数で登場するということを頭に入れていただけますと幸いです。もちろん各問題の解説もしますので,力試しとして一度チャレンジしてみるのもいいでしょう。

出題例① 年号をきっかけとした問題!

まずは出だしが年号になっている問題について触れていきます。このタイプの問題は直接問題の計算や内容の理解に年号の数字が関わってこないものの,下で見る2問のように計算に年号が使われる問題が多い分,引っかけのような形で「年号を使わないといけないのではないか」と考え込んでしまいがちです。そのため特徴としては①年号が問題文のきっかけとして使われる・②数字を計算に使わないため幅広い分野からの出題が想定される・③難しいというより時間を取られやすい,といったものが挙げられます。例えば2022年では次のような問題が出題されていました。よろしければ解きながら理解を深めていきましょう。

次の□にあてはまる数を求めなさい。

2022年は,365日のうち土曜日が他の曜日より多く,全部で□日あります。

(穎明館中学校(2022),一部改題)

出題例① 解説

ではここからは出題例①の解説を行なっていきます。この問題は日暦算という,日・週・月・年という日常的ながらも一定の規則に沿って動いているルールを取り上げた分野からの出題となっています。先ほど,この出題例①のように年号とは色々な範囲からの問題が作られやすいという特徴をお話ししました。その中でもこの日暦算は,年号との関連の強さから取り上げられやすいと言えますね。

さて肝心の解説ですが,この問題では2022年の土曜日の数が求められています。これに対する答えそのものはカレンダーを捲りながら1つずつ数えていけば成立するのですが,計算を使った方法でこの問題を解くために,まず日・月・年などなどに関する法則を思い出しておきましょう。当然のことですが,私たちの暦は7日間で1週間,月ごとに違いはあるけれど大体30日4週間で1ヶ月365日12ヶ月で1年という構成をしています。そして4の倍数の年には,2月が29日まで存在し1年が366日になるうるう年が訪れます。

このことをもとにして問題を見ると,2022年というのは4の倍数ではないのでうるう年ではなく,1年は365日しかないことが分かります。そしてこの365日とは,日月火水木金土の7つの曜日をループすることで構成されているものです。そのため365を7で割ってみると,答えは365÷7=52あまり1となります。このことは2022年において全ての曜日は年に52回ずつあり,うち1つの曜日が1日多く53日となるということを意味します。つまり2022年は6つの曜日が52日間・1つの曜日が53日間存在するということになるのです。ここで問題文を見てみると,2022年は土曜日が他の曜日より多いと明示されていることが分かります。そのため先ほどの考察と照らし合わせると,答えは53日だと分かります。

A.53日

出題例② 計算の一部になっている問題!

続いては計算の中に年号が登場する問題について見ていきましょう。このタイプの問題はよっぽどハイレベルな中学校を除き,ほとんどの学校の入試で目にしやすい問題です。こちらの範囲では年号という数字がダイレクトに使用され,その約数や倍数などについて考えながら計算を簡単にしていくことが求められています。したがって特徴としては,①数字を扱うセンスが問われる・②ミスと無駄のない計算が必要になる・③あらかじめ年号の数の性質を把握しておくことで多少対策できる,といったことが挙げられます。例題としては次にご紹介するようなものが挙げられます。よろしければ一度自分の力でチャレンジしてみてください。

次の□にあてはまる数を求めなさい。

2022×23-1011×18+4044×13=□

(常翔学園中学校(2022),一部改題)

出題例② 解説

それでは出題例②の解説に移ります。この問題はかけ算と足し算が組み合わさった,割と単純な形の計算式です。しかし年号にもなっている2022という数字をいかにうまく処理するかというところで多くの人が時間をかけてしまいやすい,といった構造の問題となっています。ここで引用したようなタイプの問題は筆算を繰り返すことで解くことが可能ですが,基本的にほとんどの受験生は簡単に解くコツを覚えていますので,素直に左から計算を進めていくと周りに遅れをとってしまう,というわけなのです。

さてここからは問題の答えを導くにはどうすればいいか,を考えていきましょう。先ほども触れたように単純な計算式の問題は素直に筆算をやれば解けますが,ここでは簡単に楽に解くにはどうすればいいかに焦点を当てていきます。まずはこの式にある数を順番に見ていくと,2022・1011・4044という似たつくりをした数が3つ存在することが分かり,より詳しくみていくと1011×2・1011・1011×4と全てが1011の倍数になっていますよね。そのためこれらの数字を分解していくことで,次のように式を整理することができます。

2022×23-1011×18+4044×13=1011×2×23-1011×18+1011×4×13=1011×46-1011×18+1011×52

そしてこの式を見たとき,足し算における全ての数に1011という数字がかけ算として入っていることが分かります。このようにとある数の倍数同士を足したり引いたりするとき,その計算はその倍数×倍数でない数の足し引きの結果の数で簡単にすることができました。このように説明すると難しく感じるかもしれませんが,「1011というかたまりが46個あり,そこから18個無くなって,また52個増えた」とイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。このように考えていくと,上の式は次のように簡単にすることができます。

1011×46-1011×18+1011×52=1011×(46-18+52)=1011×80

これを解くと答えは80880となります。このように年号を使った問題は,今回なら2022という年号がどのような数字であるかということを活かせば簡単に解くことができるのです。もちろんそのテクニックを使った上で計算ミスをしないように答えを出す必要はありますし,今回のように同じ倍数に関する足し算・引き算をまとめるという知識がないと役に立たない場合もありますが,傾向の1つとして頭に入れておきましょう。

A.80880

出題例③ 規則の一部になっている問題!

最後にご紹介するのは規則の一部になっている問題です。この問題も先ほどご紹介した計算の一部になっている問題と同じくらい受験で登場しやすいですが,周りと差をつけたい難関校を志している受験生にとって対策が必須なものだと言えるでしょう。このタイプの問題では数字に関するセンスだけでなく,規則を読み取る論理性まで必要となるので最後まで解き切ることは難しいですが,記述問題である場合はここで部分点を稼ぐことができます。そのため特徴としては①基礎がしっかりできた上で挑むべき難問・②算数のテクニックだけでなく頭を柔軟に動かすセンスが必要・③途中まで解いて部分点を狙う,という3つにまとめられます。ここでも1つ問題を引用しますので,よろしければ一度解いてみてください。

2から2022までの整数のうち,0,2,4,6,8だけを使ってできるものを次のように小さい順に並べます。

2,4,6,8,20,22,24,・・・,2022

このとき,次の問いに答えなさい。

(1)小さい方から数えて20番目の数は何ですか。

(2)全部で何個の数が並んでいますか。

(3)全部の数の和はいくつになりますか。

(中央大学附属横浜中学校(2922),一部改題)

出題例③ 解説

さてここからは出題例③の解説に移ります。規則性の範囲のうちこのように数字が並んでいるものは数列とも呼ばれます。今回の設問では(1)からいきなり20番目の数が聞かれていますが,これは2,4,6,8,…と続いていく数列を,どうにか規則性を求めてから延長することでしか求められないものです。先ほどの出題例②はテクニックを使わず押し切る解決できましたが,他方このタイプの問題はそうはいかず,その点がやはり厄介になります。したがってまず設問ではなく規則から考えるという手順は身につけておきたいところです。

そして規則を考える上では,①数字はどのように並べられているか・②数字をどのようにグループ分けできるかという2点を抑える必要があります。①については1桁の偶数の整数を使うということが既に明らかになっていますので,ここからはグループ分けに移ります。まずは先頭の4つの数字を見ると,ここまでは1桁の数が並んでいることが分かります。その後2桁の数の数列へと移り,まずは2を十の位に置いた20から28までの5つの数が,次に40から48までの5つの数が,そしてこのように2桁の整数が十の位の数を2→4→6→8と4回変えることで合計20個の整数が並べられるわけです。この要領で3桁の数字,そして4桁の数字がいくつ並べられているかを考えて2022までの規則を求めていけば全体像が分かりそうですが,一旦ここで(1)を解いていきましょう。

(1)では20番目の数が問われていますが,上で見たようにこの数列は1桁の数字が4番目まで存在し,その後2桁の数が20個つまり20+4=24番目まで存在しています。20番目とはこの間にある数なので,少なくとも2桁の数であることが分かりますね。このようにグループ分けが行われていると,○番目という数列でありがちな問題がスムーズに解けるのです。そして2桁の数で24番目になる一番大きいものは88ですから,そこから数字を1つずつ小さくしていくと,23番目が86,22番目が84,21番目が82となり,20番目は80になると答えが求められるのです。

A.(1)80

続いて(2)の何個の数が並んでいるかについて考えていきましょう。いま(1)の答えを出す前に見ていったように,この数列には先頭から1桁の数が4個,2桁の数が20個並んでいることが明らかになっています。この要領で3桁の数が何個並んでいるか,そして2022までの4桁の数が何個並んでいるかを考えていきましょう。はじめに3桁の数は200から始まり,202,204,…と続いていくのですが,ここで十の位以下に入る数というのはそれまでの数列で作った2桁の数になりますよね。そのため2から88までの24個の数に0を加えた25通りの数が200番台の数として作れるわけです。このようにそれまでの設問を解く上で使ったことをうまく流用できるかが,特に数列の問題では鍵となってきます。

そして200番台の数が25個作れるとき,百の位を4,6,8に変えてもそれぞれの場合について25個ずつの数字が作れることが分かります。そのため3桁の整数は百の位が4通り×下二桁で作れる数が25通り=100個存在すると求められました。

では最小の4桁の数である2000から2022までは幾つの数が存在するのでしょうか。これは数が少なそうなので,じっくり考えるより手を動かした方が早く答えを得られそうですね。千の位が2のとき,下3桁に入る数字は000,02,004,006,008,020,022の7つになります。そのため2000以上の4桁の数は7個存在することが明らかになりました。

これまでのことをまとめると1桁の数が4個・2桁の数が20個・3桁の数が100個・4桁の数が7個存在する,という結果が得られました。したがってこの数列には,全部で4+20+100+7=131個の数があると計算でき,(2)の答えは131個となります。

A.(2)131個

それでは(3)に挑んで解説を締めくくりましょう。この問題では2から2022までの総数131個の整数を足した和が求められています。(1)(2)を考える上でどの整数が数列に存在するかは既に明らかになっているので,131個の数を順番に足していけば答えはわかりますが,そのように力技で解いていくのでは時間がかかってしまいますし,ミスも起きやすいですよね。ここでもう一度数列を見てみると,一の位は0,2,4,6,8を循環しており,これと同様に数列を延長したときに十の位・百の位・千の位でも0,2,4,6,8が繰り返されていくことが分かります。したがってここからは0から8までの数字が何回繰り返されているかをもとに,簡単に計算するためのヒントを探っていきましょう。

まず一の位についてですが,最初の2,4,6,8以降,5番目の20から9番目の28まで,10番目の40から14番目の48まで,と5個ごとに繰り返しが発生することが分かります。ここで数列の最後が2020→2022で終わることを考えると,最初の4つと最後の2つを除いた125個の数字において,0,2,4,6,8が繰り返されているわけです。ここで0+2+4+6+8=20であることから,一の位の数を全て足した合計は次のようになります。

2+4+6+8+20×(125÷5)+0+2=20+20×25+2=522

このような手順で十の位・百の位・千の位の合計も求めていきましょう。続いて十の位ですが,十の位は5番目の20から現れるので131個中127個が計算対象となります。そして5番目から9番目までの5つで20番台が,10番目から14番目までで40番台が,と5個数字が進むごとに十の位の値は変わっていきます。つまり20が5個・40が5個・60が5個・80が5個・0が5個の合計25個ごとに繰り返しが発生しているのです。そして数列の最後が2020番台の数字が2つで終わっていることを考えると,繰り返しが発生しているのは127個中125個の数字であり,このことから十の位の和は次のようになります。

(20×5+40×5+60×5+80×5+0×5)×(125÷25)+20×2=1000×5+20×2=5040

続いて百の位をみていきましょう。(1)で確認したように,百の位が出てくるのは1桁の数4個と2桁の数20個の後なので,131-(20+4)=107個が計算対象となります。そして数列は200番台→400番台の数→……と続いていくわけですが,ここで(2)で押さえたように3桁の数はそれぞれの百の位ごとに25個ずつあり,0を3桁目に持ってくる数だけ2000番台の7個のみ存在しているため,百の位の合計は次のようになります。

200×25+400×25+600×25+800×25+0×7=50000

では最後に千の位についてですが,千の位が存在するのは2000番台の数字のみになります。そして再三述べたように4桁の数字は7つしか存在しないため,その合計は2000×7=14000となります。このことから全ての位における数字の合計が求められたため,それらを足すと答えは522+5040+50000+14000=69562となります。この問題では2022という数字の性質というよりは,2022のそれぞれの位で使われている数に着目するという問題でしたが,中には②のタイプと混合させて厄介な数列を作る中学校も存在します。また2022という数字は2と0しか使われていない偶数だったので単純な規則の問題が作られやすかったですが,後述するように2023というのはそれと比べると複雑なつくりになっていますので,本番で登場したら注意するといいでしょう。

A.(3)69562

今年(2023年)はどんな数…?

最後は2023がどういう数字かを考えつつ,関連する算数のトピックをご紹介していきます。まず2023という数字は7×17×17という素数のかけ算で表すことができます。これは昨年の2022という数字が2×3×337と,337の部分が大きいものの2の倍数・3の倍数であることが分かりやすかったのに比べて,なかなか分解するのに手間取る数だと言えますね。また17が2回かけられているということにも注意が必要です。2回同じ数がかけられている数は規則性の範囲で登場する可能性があります。

そして2023=7×17×17という関係から,2023の約数には1,7,17,119,289,2023の6つが存在するということもわかります。先ほど引用した2022は2で割ったときの値が1011になると頭ですぐ計算できましたが,2023÷7や2023÷17を頭の中で行うのは難しいですし,手で計算したとしても間違いが起きやすいです。そのため計算式にこの数があるときは特にミスに気を付けておくといいでしょう。

最後になりますが,年号というのは受験に登場させるのにうってつけの数となっています。それは1年変わるごとに数字の構造が大きく変わるからです。前述したように2022=2×3×337,2023=7×17×17とこの時点でも大きく異なるのに,2024は2×2×2×11×23,2025は3×3×3×3×5×5と中身がガラっと変化します。また計算式などの場合,適当に作成した問題だとこの世のテキストのどこかに同じ問題が存在する可能性がありますが,年号を使ったものはそうそう被ることはなく,公平性を保つという点でも使用されることがあります。したがって受験を少し楽にする手段として,年号というものに注意を向けておくとお得になることがあるかもしれません。

終わりに

今回の記事では年号という数字に着目し,その数字が受験算数の中でどう扱われるかに焦点を置いた解説を行なっていきました。記事全体の結論としては様々な問題が出るというありふれた教訓にまとめられてしまうのですが,今年は特に2023という処理に苦労する年号である分,頭の片隅に入れておくと入試本番が楽になるかもしれません。よろしければ以下の参考書籍などもご活用いただき,更なる学力向上を目指していきましょう。

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