日本人なら知っておきたい文学作品!文学作品まとめシリーズ【説話集】

説話の覚え方は?おさえるべきポイント! 

説話とは、人々の間に語り継がれた神話や伝説、民話などの総称をさします。短編などを指すこともあります。今回は説話を集めた説話集をまとめて紹介します。取り扱うのは、平安時代に成立した『日本霊異記』、『今昔物語集』、鎌倉時代に成立した『宇治拾遺物語』、『古今著聞集』、『発心集』です。 

日本霊異記』

平安時代

正式な名称は『日本国現報善悪霊異記』。822年(弘仁13年)ごろ成立の仏教説話集、薬師寺[i]の僧景戒著。3巻からなり、雄略天皇[ii]から嵯峨天皇[iii]までの説話116条を年代順に記してあります。日本で最初の説話集であり、後の説話集のもととなりました。正式な名称に“善悪”と入っている通り、善悪の応報を語る霊異譚が中心になっているのが特徴です。 

今昔物語集』

平安時代

12世紀初頭に成立、現存する日本最大の説話集。編者未詳。31巻からなり、千余話の説話が収載されています。天竺インド)(巻1~巻5)、震旦中国)(巻6~巻10)、本朝日本)(巻11~巻31)の3部構成で構成され、収載されている説話も仏教説話だけにとどまらず、神話や民話など多岐にわたります。『今昔物語集』の特徴は、各説話の冒頭が「今は昔で始まり、「となむ語りたまへたるとや」で終わっていることです 

宇治拾遺物語』

鎌倉時代

編者、成立共に未詳・成立年は諸説あり、1212年(建暦2年)ごろ成立の『古事談[iv]』の話が載っていることや、1210年(承元4年)から1221年(承久3年)まで在位の順徳天皇[v]を“当今”とよんでいることから1212年(建暦2年)~1221年(承久3年) の間に成立したかと考えられています。15巻からなり、197話を収録しています。仏教説話も多いが、民間説話や笑い話の要素が多く当時の口語文も含む和文で書かれそのような点から広く愛読された説話です。 

古今著聞集』

鎌倉時代

橘成季[vi]編、1254年(建長6年)成立。20巻からなり、約700話の短章を、30編に分類して編まれています。編目は神祇、釈教、政道忠臣、公事、文学、和歌、管絃歌舞、能書、術道、孝行恩愛、好色、武勇、弓箭、馬芸、相撲強力、画図、蹴鞠、博奕、偸盗、祝言、哀傷、遊覧、宿執、闘諍、興言利口、恠異、変化、飲食、草木、魚虫禽獣と多岐にわたります。博奕、偸盗、興言利口、魚虫禽獣などの編目では庶民の様子をあらわした説話が収載されており、貴族文化だけでない点が特徴です。 

発心集』

鎌倉時代

方丈記[vii]』の作者として知られる鴨長明[viii]編による仏教説話集。成立時期は不明だが、1212年(建暦2年)に『方丈記』より後だと考えられています。序文によると身近な説話を集めて、鴨長明みずからの仏道修業の資料とする意図があったと記述されています。身近な説話のため、インド・中国の話は加えず、仏菩薩についてものぞくとし、発心出家した人々のさまざまな機縁を述べたものと、往生を遂げた人々のさまざまな行いを述べたものが中心となっています。 

【註】

  • [i] 奈良市にある法相(ほっそう)宗の大本山。南都七大寺の一。天武天皇が皇后の病気平癒を祈願し、天皇没後の文武天皇2年(698)藤原京に完成。平城遷都に伴い、現在の地に移転。たびたび火災などで諸堂を失ったが、昭和51年(1976)に金堂、昭和55年(1980)に西塔が再建された。東塔は創建当時の遺構、東院堂は鎌倉時代の再建で、それぞれ国宝。また、薬師三尊像・聖観音菩薩立像・吉祥天画像・仏足石および仏足石歌碑(いずれも国宝)などを蔵する。平成10年(1998)「古都奈良の文化財」の一つとして世界遺産(文化遺産)に登録された。(小学館『大辞泉』) 
  • [ii] 生没年不詳 5世紀後期の天皇
    允恭 (いんぎよう) 天皇の皇子。名は大泊瀬幼武尊 (おおはつせわかたけのみこと) 。『宋書』倭国伝にみえる倭の五王の「武」に比定されている。478年倭王武の宋の順帝への上表文は有名。『万葉集』第1番の国見の歌は,雄略天皇の作とされる。(旺文社『日本史事典』 )
  • [iii] 786〜842 平安初期の天皇(在位809〜823)
    桓武天皇第2皇子。その治世は桓武天皇以来の律令政治再建の努力がいちおうの成果を生んだ時期。宮廷を中心に唐風文化が栄え,『弘仁格式』『新撰姓氏録 (しようじろく) 』などが編纂され,天皇も『凌雲集 (りよううんしゆう) 』に漢詩を残し,三筆の一人に数えられた。薬子 (くすこ) の変を平定し,蔵人頭・検非違使 (けびいし) などの令外官 (りようげのかん) を設け,律令の官制に変革を加えた。(旺文社『日本史事典』 )
  • [iv] 鎌倉初期,源顕兼 (あきかね) の説話集1212〜15年の間の成立。6巻。神仏・宮廷・民間の説話をおさめる。(旺文社『日本史事典』 ) 
  • [v] 1197〜1242 鎌倉初期の天皇(在位1210〜21)
    後鳥羽天皇の第3皇子。母は修明門院藤原重子。父上皇の鎌倉幕府打倒計画に参加し,1221年仲恭天皇に譲位して承久の乱をおこしたが失敗,佐渡に流された。著書に有職 (ゆうそく) 書『禁秘抄』,歌論書『八雲御抄』など。(旺文社『日本史事典』 )
  • [vi] 鎌倉中期の文学者。諸兄(もろえ)の末裔光季の養子といわれる。伊賀守。文学・音楽にすぐれ、建長6年(1254)「古今著聞集」を編集した。生没年未詳。(小学館『大辞泉』) 
  • [vii] 鎌倉前期,鴨長明の随筆文学 1212年成立。治承・寿永(1177〜85)の動乱や大火・辻風・地震などの天変地異を体験して世の無常を感じた長明が,京都日野山に方1丈の庵を結び,有為転変の世・閑居隠遁の心を綴ったもの。『枕草子』『徒然草』と並ぶ随筆文学の傑作。(旺文社『日本史事典』 ) 
  • [viii] 1153〜1216 平安末期・鎌倉初期の随筆家・歌人
    『方丈記』の著者として有名。賀茂神社の神官。のち出家して京都郊外の日野に閑居し,歌・仏の道に親しみみずからを慰めた。著書に随筆的歌論書『無名抄』,家集『鴨長明集』など。(旺文社『日本史事典』 )

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