中学受験の物理分野は、苦手とする受験生が多い分野です。その中でも、力学の問題を苦手とする受験生は特に多いです。計算問題が多く出題される分野ですが、計算以前に「どうやってこの問題を解いたらいいのかがわからない」というところに、点数が取れない、苦手意識を持ってしまう、その原因があるのです。
今回は、力学の基礎、てこの原理の勉強の方法について、段階を追って勉強していくことを意識しながら、お伝えしていきます。
力学の基礎、てこの原理ではどんな問題が出るの?
力学分野では、てこの問題、ばねの問題、輪軸の問題、振り子の問題などが中心的に出題されます。てこの問題はつり合いの問題が特に多く出題されます。花の問題では、ばねの伸びとおもりの関係の問題などが出題されます。輪軸は基本的に、考え方はてこの問題と同じです。力学に関しては、計算問題が中心に出題され、基本的な問題から、問題の中に示されている条件が複雑で解くのが難しい問題も多くあります。
塾で習うときも、根本的な原理を繰り返し教えてくれるというよりは、さらっと説明し、問題を解かせることに重点を置くことが多いです。カリキュラム上、非常に重たい単元のわりに、割かれている回数が少ないため、基礎の基礎をじっくり解説している時間がないというのも現状です。
なぜ力学が苦手になるの?
力学が苦手、という方でも、典型的な基本問題が解けないわけではありません、例えば、以下のような図が出題され、振り子の長さと重さの関係の問題はそれほど抵抗なく解くことができるお子さんが多いです。テキストの条件通りに解けばいいからです。基本の形としてテキストに書かれているこの図、見たことがありますよね。
では、この基本形に、くぎを途中に売ってみるとどうでしょうか
こうなると、受験生の目には「全く違う問題」に映ってしまうのです。でも、実際に何が違うかというと支点が釘の位置になったという点だけです。つまり、条件を少し変えられただけなのですが、「あ、これ解けない」と思ってしまうのです。最初の基本形がわかっていて、支点の位置が異なるとどうなるのか、という基本がわかってさえいれば正解を導き出すことができるのです。でも、その基本形がわかっていない、支点の位置が変わるとどうなるか、ということがわかっていないと、まったく解くことができないのです。
こうすれば点数がとれる!その克服法は?
物理分野は、やはり計算問題が解けることが大切です。上の例のように、一見すると難しい(知っている基本形と違う)と思う問題も、全く解けない問題はありません。そのような難しい問題が解けるお子さんと解けないお子さんの差は、てこなど、力学の原理をしっかり理解しているかどうかです。
まずは基本的な計算問題を使いながら、力学の基本原理を何度も繰り返し頭に入れましょう。力のつり合い、向きの基本がすらすら出てくるようになれば、しめたものです。くれぐれも、「わからないから飛ばして二度と見ない」とか、「答えを赤で売るして終了」というような勉強はしないようにしましょう。どの科目にも言えますが、原理原則が重要ですから、解説をしっかり読み、わからなければ塾の先生や指導者に聞き、繰り返してとき、自分のものにすることが必要です。計算問題中心だからと言って、原理原則をおろそかにして「その問題だけが解ければいい」という考えは持たないようにしましょう。
基本的な問題をときながら根本原理をしっかり理解したら、徐々に応用問題に挑戦していきましょう。応用問題も基本的な原理を理解していれば解くことができます。ただ、典型的な問題と設定が違ったり、条件が付けくわえたりされている、という違いがあるだけ、と考えてみてください。そうすれば、基本形と何が違うのか、条件を整理して考えるうちに解くことができるよういなります。計算自体は複雑になりますが、「なぜまずここの部分の計算が必要なのか」「この条件はどこで使うのか」ということを一つ一つ紐解いていけば、全体像が見えてきます。
力学は様々な条件の組み合わせによっていろいろな問題を作りやすい分野です。ですから、できるだけ多くの問題にあたっておくことが必要です。でも、あくまでそこに書かれている条件は「その問題だけの」条件です。ですから、つまずいたときは原理原則に戻りましょう。そして、間違えた問題は、「どの条件が大事だったのか」「何を見落としたのか」ということまでしっかり理解しておきましょう。
まとめ
ただ暗記に頼っては、力学の問題は解けません。自分で考えて解く、考えてわからなければ原理原則にもどる、それでもわからなければ解説をしっかり読んで解法を身につける、それを習慣づけるようにしましょう。様々な問題集がありますが、過去問を集めた問題集でいろいろな目新しい問題にチャレンジするのもおすすめです。
苦手意識を持たれがちな力学ですが、原理原則に戻ることを忘れず、解法の手順をしっかり理解する練習を積んでいけば、正解できる問題は必ず増えます。同じような問題で数値替えされたり、少し条件を変えられたりされると解けないということはありませんか?そのときは、かならず自分がなぜ間違えたのか、その理由をしっかり考えておきましょう。わからないからと言って答えをみて終わりにしてはいけません。何度も問題を解き、自分で考え、解説を読み、「できるようになるまで」繰り返し練習を積んで、理科の計算は得意!にしてしまいましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。