以前にも書きましたが、最近の中学入試の理科では実験・観察問題が頻出です。実験・観察問題を解くためには、その実験や観察に使う器具についての理解が必要です。実験器具の使い方を正確に理解しているかどうかが、正解・不正解を分けることもあります。
今回は、なじみがあるようでいて入試で出題されると間違えやすい、顕微鏡をテーマに、実験器具の使い方についてまとめていきます。
身近にある実験器具~顕微鏡の仕組み
学校でも、顕微鏡で植物の組織などを拡大してみた経験は皆さんお持ちだと思います。理科実験室にある、身近な実験器具ですね。ただし、顕微鏡の各部の名称やその働き、使い方、手順などについて、あいまいな記憶のままということが非常に多いです。早いうちにしっかり覚えてしまいましょう。
顕微鏡に関する例題
2016年度の豊島岡女子学園中学では、顕微鏡についての説明について、正しいものを「すべて」選択させる問題が出題されました。
(問題)光学顕微鏡(顕微鏡)を使うと、種子のデンプンを見ることができます。顕微鏡に関する説明として、正しいものを次のあ~かからすべて選び、記号で答えなさい。
(選択肢)
- あ 右利きの人が顕微鏡を用いてスケッチするとき、左目で顕微鏡をのぞき、右目で紙を見て描くようにするのが一般的である。
- い 顕微鏡を用いると、400~6000倍に拡大して、観察することができる。
- う 対物レンズの倍率が、顕微鏡の倍率となる。
- え 対物レンズの倍率を変えるときは、レボルバーを回す。
- お 日光が直接当たるところでは使わない。
- か プレパラートに観察したいものをのせ、その上からカバーガラスをかけて観察する。
どう解いていくか
このような問題の場合、正しいという自信がある知識と消去法で行く方法がありますが、今回は消去法で選んでみましょう。
- 選択肢い:光学顕微鏡の倍率は1000倍~2000倍が限界と言われています。6000倍には拡大できません。
- 選択肢う:顕微鏡の倍率は、接眼レンズの倍率×対物レンズの倍率で求められます。対物レンズの倍率がそのまま顕微鏡の倍率になるわけではありませんので、注意が必要です。
- 選択肢か:この選択肢は、用語が間違っています。「スライドガラス」に観察したいものをのせ、その上からカバーガラスをかけて観察する、が正しい使い方です。プレパラートは、「スライドガラスに観察したいものをのせ、その上からカバーガラスをかけたもの」のことです。正確に理解しているか問われる、引っかかりやすい選択肢です。
以上から、正しいのは選択肢あ、え、お ということになります。
実験器具の知識は基本をしっかり
例題でもわかるように、難関校の入試問題であっても、基本知識を押さえておけば迷うことなく選択できる問題も多く出題されます。ただし、実験観察の選択肢問題では、「すべて選びなさい」という問い方や、「すべて間違いの場合は〇を選びなさい」などの指示があるものが多いので、正確に覚えていないと不正解になってしまいます。難関校では特に顕著な傾向です。
正確に用語を覚えているか、器具の操作方法を理解しているか、これらはすべて小学校でも習う内容です。問われていること自体は基本知識です。「自信がなくて正解できない」ということのないよう、一つひとつ正確に理解するように心がけましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。