理科の物理分野は得意、不得意が分かれるところです。特に、電気、電流に関する問題は入試でも頻出で、これまでも模試でたくさん問題してきたと思いますが、苦手意識を持つ受験生がとても多い分野です。いつも同じところでつまずいていませんか?
物理分野、電気に関する問題については計算問題が多く出題されるため、どうしてもまず「答え」を出そうとしてしまいがちです。間違えた問題であっても、なぜ間違えたのか、自分が何がわかっていなかったのか、ということを飛ばしてしまい、ときに「答え」を確認して次の問題に進もうとしてしまう受験生が非常に多いのです。
なぜ同じような問題で間違いを繰り返してしまうのでしょうか?それは、電流の流れや磁力線の向きなど、電気に関する基礎知識をおろそかにしてしまい、問題を解くことしか目に入らなくなってしまうからです。
理科の計算問題は難しく感じるかもしれませんが、出てくる数字はそれほど複雑なものではありません。必ず頭に入れておいて、自由自在に使える基礎知識を自分のものにしておくことが何よりも大切です。
今回は、ただ問題文をながめていてもなかなか正解にたどり着くことのできない、電流と磁力線について、基礎知識をまとめていきます。まだ自信がない、また間違えてしまった、これから勉強するうえで必要な知識は何なのか知りたい、そのような方はぜひ参考にしてください。
なぜ苦手になってしまうのか
目に見えない電気、電流に、さらに磁力が関係すると、ますますわけがわからなくなってしまう受験生が非常に多いです。この「目に見えない」というのがやはり苦手になってしまう最も大きな原因です。ですから、絡み合ったものを一つ一つほどいて理解しなおすことが必要です。
電流も磁力線も目に見えませんので、実験などで確かめた法則、たとえば「右ねじの法則」「右手の法則」を完璧に把握していなければなりませんが、これらの法則に対する理解があいまいなまま、大量の問題を解いても正解することができず、解答や解説をみても、どの知識が必要だったのか混乱してしまいます。
また、立体的なイメージをつかむのが苦手な方は、算数の立体図形の問題も苦手にしているのではないかと思いますが、このようなイメージをつかむことが苦手な場合は、特に磁力線の向きを把握することがなかなかできなくなってしまいがちです。
ダメな勉強法
理科の勉強には、図やイラストを使った「視覚による理解」が不可欠です。磁力線の問題も例外ではありません。ただテキストを「読むだけ」「眺めるだけ」「答えを読むだけ」の勉強になってしまっていては、理解を進めることは難しく、理解できている人ならば一瞬で正解できる問題にも時間がかかり、差がついてしまいます。
どのように取り組むか
「視覚による理解」が不可欠だと書きましたが、理科の勉強、とりわけ目に見えない電気の分野については、図やイラストを使った、視覚による理解がとても大切です。具体的には、自分で電流と磁力線の関係を絵に描いてみることをおすすめします。
細かすぎる図を描く必要はありません。「紙の上で実験をする」ように磁力線を描いてみてください。電流や磁力線の世界は目に見えないので、それを自分なりのイラストで目に見える、視覚で理解できるようにするのです。学習にあたっては、先ほど挙げたような法則をいくつか習いますが、それを自分なりに確かめ、確実に理解するようにするのです。
そして、描いた図に従って、実際に自分の手を使って問題を実際に解いていくと、間違いは格段に減っていきます。
電流と磁力線の関係
まずは、磁力線の向きを確認しておきましょう。磁力のはたらく空間のことを「磁界」といいます。また、方位磁針のN極の向きにそった線を磁力線、その向きを「磁界の向き」といいます。
さきほども書きましたが、ここで大切な法則を2つ押さえておきましょう。
①右ねじの法則
電流が流れると、電流の流れる方向に向かって、右回りに磁力線が発生します。ネジが進む方向に電流が流れるとすると、ネジを回す向き(右回り)に磁力線が生じることになるので、「右ねじの法則」といいますね、
ネジをどちらに回せば進む(しまる)のか、わからなくなってしまうのは、この法則をしっかり理解できていないからです。実際にネジを使って回して確認するひと手間を怠らないようにしましょう。ネジは、「の」の字を書くように回せばしまります。
②右手の法則
「右手の法則」は、コイルの磁力線の向きをたしかめるときに活用する法則です。電流の向きを、親指以外の指が握る方向に合わせると、親指がさす方向がコイルの中の磁力線の方向になります。
電磁石について
右手の法則と電磁石を融合させて出題する問題も増えています。電磁石を強くする方法も一緒に確認しておきましょう。これには、主に3つあります。
- コイルに流れる電流を強くする
- コイルの巻き数を多くする
- コイルに鉄の芯を入れる
より複雑な問題が出てきたときに思い出せるように、「右ねじの法則」「右手の法則」と一緒に、しっかり覚えておきましょう。
まとめ
「イメージがつかめない」「どちらの向きだったか忘れてしまった」そのような状態だと、本来なら間違いなく正解できる問題であっても時間ばかりかかって正解できず、その理由を納得して次の問題に活かすことができません。本当に理解し、覚えていなければいけない知識そのものの数は決して多くはありません。ただ、「正確に」「向きを変えても」正解できるようになるまで繰り返して理解することが必要です。
図をいくつかご紹介しましたが、どの図もそれほど複雑なものではないことがお分かりいただけると思います。このような単純な図が描けるかどうか、忘れてしまったときに思い出せるかどうか、そのためにもこのような図を自分で描けるようにしましょう。それが電流や磁力線の問題を解く大前提になります。
次の記事で、実際に例題を使って、どのように法則を使うのか、取り組んでみましょう。
<関連記事>
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。