今回のテーマ
これまで人権の概念やそれらを守る仕組みについて見てきましたが、ここからはその実現に大きな役割を果たす政治について学習していきます。
特に今回は政治システムの概要とその成り立ちについて、時代を追いつつ説明していきます。
集団で政治を行う政党政治
政治家といえばまっさきに思い浮かべるのは、国会や都道府県議会などで議員として活動する人たちのことでしょう。とはいえ、政治活動は一人で行えるものではありません。
実際には議会で会派や党といった集団でまとまり、目的を果たすために活動していることがほとんどです。
政治集団の中でも特に重要な役割を果たしている政党は、政治理念や政策を示す綱領を掲げて活動し、政権の獲得そして維持を目的とする集団です。
政権獲得が目的と先に書きましたが、小さい区分で見れば地方議会の多数派になる、首長選で自分たちの政党に属する候補を当選させるなど、様々な政治分野において主導権を握ることが政党の活動目的になっています。
この政党というシステムの成り立ちは18世紀ごろの制限選挙が行われていた頃までさかのぼります。
当時は自由に立候補・投票することができないため、政党の構成員も当然選挙権を持ち、財産と教養のある地方の有力者、いわゆる名望家に偏ってしまいます。そういった政党を名望家政党と呼び、この構成員は議員のみの議員政党でした。
この政党形式でははっきりとした綱領はなく、党内の規則もさほど厳しく制定されることはありませんでした。
しかし、19世紀後半にかけて普通選挙権運動が拡大し、今度は大衆の要求をまとめる大衆政党という形が成立しました。
今までと大きく異なる点としては、議員以外の構成員をもつ組織政党で、特定の目的のために団結した集団という事もあって綱領が明確化され、さらに党内の自治システムも厳格なものになりました。
更に時代が進む、イデオロギーや階級の概念が曖昧になってきた20世紀後半には国民政党と称し、あらゆる階級や集団の支持を包括的に集める包括政党が登場してきました。
更には一部地域のみで活動する地域政党など、様々な政党システムが誕生しているため、欠かさずニュースなど最新の情報にアンテナを張っておくことが大事です。
政党システムについて、ここまで出てきた3つのシステムを分けて表にしてあります。それぞれ特徴を理解して覚えるようにしましょう。
名望家政党 | 組織政党 | 国民政党 | |
構成員 | 議員のみ(名望家) | 一般国民 | 一般国民 |
目的 | 議員個人の利害の一致 | 特定のイデオロギー・目的の達成 | 幅広く意見を受け入れる |
時代 | 18世紀~制限選挙の時代 | 19世紀後半~普通選挙権運動とセット | 20世紀後半~脱イデオロギーの時代 |
2つの代表的なシステムがある政党政治
政党政治はふつう複数政党制を取る国で行われ、二大政党制と多党制(小党分立制)に区分されます。
二大政党制をとる国の代表例はイギリス・アメリカです。
2つの強大な政党が単独ないしは小型の政党と連立を組む形で政権を担い、もう一方の政党は政権交代を目指し議席獲得のために活動するといった形です。
イギリスは保守党・労働党という2つの政党、アメリカでは共和党・民主党の二大政党が政権を獲得すべく活動しています。
イギリスの場合は議会で議席の過半数を取った政党から、アメリカでは大統領選で当選した候補の政党が政権を担当する政党になります。
一方、多党制を取る国はフランス・ドイツ・イタリアといった国々です。
単独では政権を取れない政党も多く、そういった政党は比較的近い政治理念で活動する政党同士で連立政権を組んで政権与党となることが少なくないです。
それぞれの政党政治におけるメリット・デメリット
二大政党制では政治的な責任が明確になり、また政治基盤が安定する傾向にあります。
また有権者の投票行動から見ても、一方の党に賛同できない場合はもう一方の党に投票すればいいという、選択がしやすい利点があります。
一方で、政権交代が行われず一方の党が政権を長期間担う可能性や、巨大な政党にすべての意見を集約させてしまう以上、少数派の意見が比較的無視されてしまいかねないリスクがあります。
多党制はその点、多くの政党で構成されるため少数意見を拾いやすいメリットがあります。また、政党同士でも意見が異なるため、その統合過程で弾力的な政策に期待することができます。
一方、有権者の票が分散するため強大な党が誕生しにくいため、船頭多くして船山に登るような、政党同士の意見が衝突し政治的な不安定を招くリスクもあります。
また、同時に多くの党が政権に関わることで政治的な責任が明確化されず、有耶無耶になってしまう可能性もあります。
【Ex. 社会主義国家における政党】
本題とは少し外れるため、コラムの形式を取った社会主義国家における政党ですが、ほとんどは共産党による一党制を取ることが多いです。
一応他の政党も存在はしますが、実質的に党と国家が結びついた形になるため、実際にはそれらの政党の意見が政治に反映されることはありません。
しかしこれらの政治体制は1991年のソビエト連邦崩壊に前後してほとんどが崩壊しました。
今回のまとめ
今回は政党の成り立ち、そして主な政党政治におけるタイプを分けて説明しました。
それぞれの政党政治タイプごとに特徴を掴み、また代表的な国を覚えて混同することがないようにしましょう。
次回は日本国内における政党政治について解説していきます。
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参考
慶應義塾大学の中村駿作です。
塾講師として2年間、主に国語と社会科を担当しています。特に現代文と政治経済科目には自信があるので、記事もそういった科目を中心に取り扱っていこうと思います。勉強方法が分からないという声も多い国語や、あまり重要視されないお陰で勉強し辛い倫理・政治経済といった科目の理解を深められるような解説を心がけます。また、中学受験と高校受験のどちらも経験しているため、そのときの知識や経験を元にした解説も行えたらと考えています。普段は趣味でスポーツ、とくに海外サッカーとF1を見ています。ヨーロッパやアメリカの昼間に行われているお陰で、日本で見ようとすると夜ふかししなければいけないのが身体に毒ですが、それでもやめられないです。その他、空いた時間に小説を書くことやトレーディングカードゲームをプレイすることも趣味の一つです。