政治経済をサクッと復習!「民主主義」の基本[立憲主義・国民主権・人権保障]

今回のテーマ

今回は民主主義の政治において基本になる立憲主義国民主権、そして人権保障について確認していきます。

政治では憲法改正が議論されるなど、時事問題としても出題率が高くなりそうなこの分野、一つ一つ、丁寧に整理していくことで確実に得点にしていきましょう。

権力を縛る憲法の役割

まず皆さんに質問です、普段生活していて憲法に違反しているという理由で逮捕されることはあるでしょうか?

もちろん、答えはNOですね。

憲法を破ったところで罰則があるものではなく、憲法に規定されたものが法律化、例えば刑法などという形になることで初めて実効性を持ちます。

しかし、ならばなぜ憲法なんてものを定めているのでしょうか。

憲法はそもそも、国民ではなく国家権力を抑制するためのものです。

仮に憲法がなければ、どのような法律を立てても、国民がどんなに反抗しても強制的に施行することが出来てしまいます。

しかし、近代憲法はそういった事を起こさせないセーフティとして国民の暮らしを守る役目を果たしています。

国家権力は多岐かつ、強力なものです。軍事・警察権といった直接身体の拘束などに関わる権力から、税金を取る徴税権、政治をおこなう統治権など、様々な権力を一手に担う以上、これを縛るものがなければ暴走してしまうおそれがあります。

1789年のフランス人権宣言では「権利の補償が確保されず、権利の分立が規定されていない全ての社会は、憲法をもつものではない」という条文があるように、近代的な立憲主義は人権保障と権力の分立に意味があるのだと示しています。

憲法   法律
国家そのもの、国家権力 対象 国民・企業など
なし 罰則規定 ものによるがあり

憲法と法律、混同させる問題が出てきたときには「憲法は国を縛るもの」という言葉を忘れずに確認していきましょう。

憲法が規定する民主主義の基本原理

日本国憲法に限らず、近代憲法ではいくつかの基本原理を掲げ、憲法でそれを遵守するとしています。次の4つは必ず覚えましょう。

  1. 人権保障
  2. 国民主権
  3. 権力分立
  4. 法の支配

この4つです。今回はこのうち人権保障と国民主権について詳しく解説していきます。

それぞれ簡単に、「人間が持っている権利を守ること」、「国民が国を動かす」、「権力は分散させ相互に監視させる」、「人が裁くのではなく、法が裁く」という意味を持つこの言葉ですが、ここから詳しく説明していきます。

人権とその成り立ち

  • 人権民族、宗教、国籍などを問わず、人ならば必ず持っている権利

人権は全ての人が等しく持っている権利です。何の理由もなく殴られたり、捕まったりしないのはすべてこの人権のうちに含まれます。

また、この権利は前回扱った「社会契約説」が唱えた自然権の思想に基づきます。元から持っている権利を国家などに信託することで結果的に守られる、という思想は当然憲法も引き継いで持っているものです。

1776年6月のアメリカ独立革命の際に発せられたバージニア権利章典(バージニア憲法)は、人権を明確に守ると宣言した意味で革新的な憲法でした。

ここではロックの思想に影響されたと言われています。

人権を初めて自然権として保証したこの憲法は、その後の近代的憲法を導く上で大きな意味があるため、名前を覚えておくようにしましょう。

国民主権が保証する権利

ここで問題になるのは憲法で保証した権利である人権をどうやって守るか、ですね。

国家が大きな力を持つならば、そんな物を無視して支配することも可能です。

そこで、憲法は同時に国民主権というシステムを制度のなかに組み込みました。こうすることで、人権を濫用する為政者を追い出すことが出来るようになります。

フランス人権宣言では、「あらゆる政治的団結の目的は、……自然権を保全することである」とあり、同時に主権は国民に存することを宣言しています。このことは、権利は国民そのものが持つもので、それを守る方法として政治的な団結がある、という形を示しています。

しかし、いくら国民に主権があるからといって、前に扱ったようなギリシャのように、全員が集まって政治をするわけにも行きません。そこで、代表民主制というシステムが生まれました。

代表者が政治をするシステム

ルソーが望んだ政治システムは直接民主制でしたが、例えば今の日本で国民すべてが一堂に会することは可能でしょうか。

当然、無理なことはみなさんも良くお分かりだと思います。ネットがあるからといっても、そううまく行くわけがありません。

しかし、選挙というシステムを使って代表者を選べばどうでしょうか。完全な代弁は不可能ですが、皆が集まる事なく、政治を進めることができます。

ここで直接民主制と間接民主制の違いについて表でまとめておきましょう。

間接民主制   直接民主制
国民 主権者 国民
代議士(議員) 政治を行う人 国民
数百人~千人ほど 規模 国民すべて(数千人ほど)

大きな違いがあるため混同することはないと思いますが、名前を聞いてどんな政治体制かをすぐに思い出せるようにしておきましょう。

しかし、誰かに任せたときその人が果たして、本当に正しく自分たちの代弁をしてくれるか確認する方法が必要ですね。

そのため、間接民主制では次の原理があります

  1. 国民代表の原理
  2. 審議の原理
  3. 行政監督の原理

1つ目は、誰か特定の層の代表ではなく国民全体の代表という意識を持ちなさい、という意味です。

代表者として集まってきた人たちが、全員が全員、主張を通すことしか頭にないとなれば政治はできないですので、国民の代表としての意識が必要になります。

2つ目はより広範囲にわたり、少数の意見を尊重しつつ、公開された議場で議論をし、多数決で決定するという原理です。

数に物を言わせて押し切るのではなく、きちんと少数の意見も拾い上げていくこと、そしてその様子を多くの人が見られるようにすることが大事です。しかし、それでは運営に支障が出るため、多数決というシステムがここで活用されます。

3つ目は政府を運営する行政が、きちんと機能しているかを国民の代表として、監視するという原理です。

これは次の権力分立にも関わるところですので、それと併せて覚えておきましょう。

次回は、権力分立と法の支配について、より詳しく解説を加えながら学習していきます。

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慶應義塾大学の中村駿作です。 塾講師として2年間、主に国語と社会科を担当しています。特に現代文と政治経済科目には自信があるので、記事もそういった科目を中心に取り扱っていこうと思います。勉強方法が分からないという声も多い国語や、あまり重要視されないお陰で勉強し辛い倫理・政治経済といった科目の理解を深められるような解説を心がけます。また、中学受験と高校受験のどちらも経験しているため、そのときの知識や経験を元にした解説も行えたらと考えています。普段は趣味でスポーツ、とくに海外サッカーとF1を見ています。ヨーロッパやアメリカの昼間に行われているお陰で、日本で見ようとすると夜ふかししなければいけないのが身体に毒ですが、それでもやめられないです。その他、空いた時間に小説を書くことやトレーディングカードゲームをプレイすることも趣味の一つです。