政治経済をサクッと復習!「国家」について[国家の3要素・支配体制・ルールなど]

今回のテーマ

今回から、共通テストの政治・経済(および倫理、政治・経済)で出てくる内容について、実際の問題を見ながら解説していきます。

記念すべき初回のテーマは、政治を行う基本単位の国そのものの定義や、その成り立ちについて扱います。

とても基本的な所ですが、国家そのものの理解をまずは深めた上で、そして入試問題で太刀打ち出来る力をつけていきましょう。

国家の三要素

まずは国家が国家たりうる条件について確認します。

すべての国家は以下の3つを持っています。

  1.  その国家に属する国民
  2. 強制力を持つ主権(統治権)
  3. その主権が及ぶ領域(領土・領海・領空)

このすべてを持って初めて、国家と呼ばれます。これらの要素が個別に問われる問題は少ないですが、基本となる所なのでしっかり押さえておきましょう。

また、主権が及ぶ領域として挙げた領土・領海・領空の3要素については、それぞれの広さも確認しておきます。

領土 海岸の低潮線までの陸地
領海 低潮線から12海里
領空 領土と領海の上空

低潮線とは潮が引いているときの線を指し、ここを基準に領海も領土も定められます。特に、領海の12海里(約22km)という数値は、次に挙げる排他的経済水域と混ぜて出題されることもあるので、正確な数値を覚えておきましょう。

そして先の低潮線から200海里(370km)は排他的経済水域と呼ばれ、天然資源の採掘や漁業といった、経済活動を独占的に行う権利を持てる水域になります。このことは国連海洋法条約で定められ、日本も96年に批准しています。

国の持つ主権とその行使

国の領域やその国民は直感的に理解しやすいため、その具体的な数値を覚える必要がありました。では、国の主権とは一体どんなものが含まれるのでしょうか。

国の主権には大きく分けて、国内に向けられるものと、国外に向けられるものがあります。

特に国内に向けて行使できる権力の1つに、軍事・警察権にはじまり、裁判権や徴税権といった、その国の国民に対して行える強制的な権力が挙げられます。こういった国家が’持つ組織的な強制力をまとめて、国家権力といいます。

国外に向けては国家間の交渉を行う権利や、内政に干渉されない権利がその主権に含まれます。仮にこれらの権利がない国家があるとしたら、それは現代では正式な国家とは言えないでしょう。過去の植民地はこの権利を宗主国に握られていました。

一方、国家権力をどこまで国民に対して行使するかは、その時々の国家観に大きく影響されています。

時代 分類 内容
19世紀 夜警国家 国防・治安維持のみを求める

 

国民の活動に干渉しない

20世紀 福祉国家 経済格差の是正・社会保障制度の充実化

 

国民の活動に積極的な介入を行う

19世紀の近代国家では、国家に多くを求めず基本的な軍事と治安維持のみを求め、国民の経済活動を妨げるような行動は慎むべきだとされていました。しかしながら、資本主義の発達に伴う貧富の差が社会問題化しました。

それに伴い、国が経済格差を是正し、社会保障制度によって救済を図るべきであるという福祉国家の枠組みが求められるようになりました。これは20世紀に入ってからの大きな流れです。

正統な支配とは

ここまで国家の要素と、そのあり方について説明してきました。では、そもそも国家を支配する人の正当性はどこに裏付けられているのでしょうか。

マックス=ウェーバー(ドイツの社会学者)は、3つの系統に分析しました。

  1. 伝統的支配(→君主制)
    血統などの伝統に基づいて正統な支配者であることを宣言する
  2. カリスマ的支配(→ファシズムなどの個人崇拝)
    支配者個人の魅力や権威によって大衆の心を掴む
  3. 合法的支配(→議会制民主主義など)
    議会の制定した法律を基に支配力の正当化を行う

マックス=ウェーバーはこの3つに分類しました。大まかな内容と、その例についてしっかりと結びつけて覚えておきましょう。

国の基幹をなすルール

国のルールといえば、真っ先に思いつくものとして法律が挙げられるでしょう。しかし、本当にそれだけで国家はその形を保てるでしょうか。

国家やグループがその形を保つために、個人は法や道徳を守ることが求められてきました。これらのルールをまとめて社会規範と呼ばれます。

しかし、それぞれに細かい差異はあります。法律を守らなかった場合は国家権力である警察権・裁判権の行使を受け、場合によっては処罰されます。ここに法と道徳の差があります。

一方、法の中にもさまざまな分類があります。

一般的に法という言葉を聞いて思い浮かべるものの一つとして、いわゆる刑法とか、あるいは民法があるでしょう。これは成文法と呼ばれ、実際に文書の形で制定された法律です。

この中には公法・私法・社会法といった様々な分類に分かれていきますが、これについては大学で法律を勉強する上でより詳しく学ぶことになるでしょう。

一方、法律には文章になっていないものもあります。判例を基にする判例法はその最たるものでしょう。

様々な判例の積み重ねによって創り上げられた法は、不文法と呼ばれます。

さらにわざわざ制定する必要もないような、普遍的に適用されるようなものは自然法と呼ばれます。

ここまで説明した法の分類を表にすると、以下のようになります。

自然法……普遍的に通用する根本的な法
実定法
  →不文法……文書化されていない、判例などの積み重ねで体系化された法
  →成文法
     →公法……国と国民の関係を定義する法
     →私法……個人や法人の間を調整するための法
     →社会法……私法では内包しきれない、様々な社会的問題の調整を行う法

特に強調した語句については、しっかりと整理して覚えておきましょう。

次回のテーマ

今回は国家の3要素からその主権などについて整理しました。

次回は、時代を追いながら国家の成り立ちについて学習していきます。

世界史や、日本史の内容と重なるところもありますが、しっかりと時代区分を整理して覚えていきましょう。

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慶應義塾大学の中村駿作です。 塾講師として2年間、主に国語と社会科を担当しています。特に現代文と政治経済科目には自信があるので、記事もそういった科目を中心に取り扱っていこうと思います。勉強方法が分からないという声も多い国語や、あまり重要視されないお陰で勉強し辛い倫理・政治経済といった科目の理解を深められるような解説を心がけます。また、中学受験と高校受験のどちらも経験しているため、そのときの知識や経験を元にした解説も行えたらと考えています。普段は趣味でスポーツ、とくに海外サッカーとF1を見ています。ヨーロッパやアメリカの昼間に行われているお陰で、日本で見ようとすると夜ふかししなければいけないのが身体に毒ですが、それでもやめられないです。その他、空いた時間に小説を書くことやトレーディングカードゲームをプレイすることも趣味の一つです。