中学受験の国語では頻出の論説文。物語文と合わせて2題の読解問題が出題されるのが定番です。ということは、受験生にとっては必ず越えなければいけないのが論説文の読解の壁ですね。論説文と一口に言っても色々ですが、基本的には筆者の意見や主張を中心に、それに関する説明が書かれている文章です。「え、それだけ?」と思われるかもしれないですが、そうなんです。
ですが、使われている言葉が難しいことが多く、またテーマもつかみにくい傾向にあるので、文章を読み進むうちに混乱してきてしまうのが論説文の読解です。今回は、「構成さえつかめれば実はこわくない」論説文の読解ポイントについて書いていきます。
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論説文の基本的な構成
論説文は、先ほども書きましたが、筆者の意見や主張を中心に、それを説明している文章です。筆者には、あるテーマに関して考えていることがあるのです。意見や主張を持っています。それを何とか読者にわかってもらおうとするなら、どうすればよいでしょうか。言いたいことだけ、大きな文字で書けばいいというものではないですよね。
筆者は自分の意見や主張、考えをわかってもらうために、「なぜそう考えたのか」「そのように考えた経緯はどういうものか」を一生懸命説明しようとします。そうしないと、読者は「何が言いたいのかわからない」と、納得してくれないからです。また、そのテーマに詳しい人にも詳しくない人にも、いろいろな人に理解してほしいと思うものですから、様々な表現を用いて説明しようとします。
ですから、論説文の中には、必ず「筆者の意見、主張、考え(結論と言ってもいいでしょう)」と、それを読者にわかってもらうための「説明」があるはずです。論説文の読解をするためには、「筆者の意見」と「説明」を判別できなくてはいけません。
さきほども書きましたが、筆者は自分の意見や主張をわかってほしくて様々な表現を用いて説明しようとします。そこに、中学受験生が混乱する原因があります。意見なのか、説明なのか、それとも例を挙げているのか、どこが一番重要な部分なのかがわからなくなってしまうのです。論説文の読解で点数がなかなか取れない場合は、まずその「判別(読み分け)」ができているかどうか、模試などで読んだ文章をもう一度しっかり読み返して確かめるようにしましょう。
まず、文章の構成をつかむ
筆者の意見や主張は文章の中で繰り返されている
論説文でまず読みとらなければならない「筆者の意見や主張」は、多くの場合、文章の最初か最後に出てきます。しかし、実は文中に何回か繰り返し出てくることもあり、最初や最後だけに出てくるとは限りません。筆者にとってはその文章で「一番言いたいこと」ですから、繰り返したい気持ちもわかりますよね。ですから、いつ出てきても「これが筆者の意見だ」と判別できるようにしましょう。
まずは大まかな流れをつかむ
どの文章でもそうですが、「何についての文章なのか」がわからないと、読んでいても頭に入ってきません。論説文の読解が苦手、という方は、まず何についての文章なのか、内容を大まかにつかむことで「全体の文章の作り(構成)や流れ」の大枠を理解するようにしてみましょう。
論説文の流れをつかむヒント~接続語
とはいえ、論説文苦手意識がある場合、流れをつかもうと思ってもヒントがほしいところです。そこで、「接続語」に注目することをおススメします。接続語は読み飛ばしがちなのですが、論説文や説明文などでは、文章の流れを教えてくれる大きなヒントになることばですから、しっかり確認しながら読み進みましょう。
特に、「しかし」「けれども」などの逆接(それまでに書いたことをひっくり返す)、「つまり」「ようするに」などのまとめ・言いかえ、「なぜなら」「・・というのは」などの説明につながる接続語のあとは要注意です。そこに、筆者の意見や主張、それに結びつく文章が書かれていることが多いからです。これらの重要な接続語は、しるしをつけながら読むクセをつけましょう。
混乱しないポイント
論説文は、読んでいるうちに何が書いてあったのかわからなくなってしまうということがよくあります。それは、先ほども書いた、意見や主張の部分と説明や具体例の部分の読み分けができなくなってしまうからです。面白いエピソードが書かれているとどうしてもそこに目が行きがちになり、重要な部分なのかと思ってしまうのですが、それは「具体例」や「経験」であって、文章全体から見れば重要なポイントとは言えないこともあります。もちろん、「具体例だ」「筆者の経験だ」と分かっておくことは必要です。ですが、まず、全体として「筆者は何が言いたいのか」をつかむようにしましょう。
本格的な内容の読み込み
文章の大まかな構成がつかめたら、本格的な内容の読み込みに入りましょう。日々の学習で実践し、模試でもできるように、読み込みのポイントをお教えします。
決して難しいことではありません。段落ごとに、そこに書かれている内容や意味を段落の上に書いていくのです。「筆者が問題だと思っていること(問題提起)」「具体例」「主張」「たとえ」「経験」「反論」「結論」という具合に、出てきたたびに書き込んでいくのです。それが難しければ、段落の中で一番大事なことが書かれている文(中心文)に線を引いておきましょう。
これならできそうではありませんか?論説文の読解で混乱してしまうのは、「どこに何が書いてあったか」がわからなくなってしまうことにあります。ですから、書いてあったことを簡単に一言でメモして、自分でヒントを書き込んでおけばいいのです。全体を見渡してから、このように書き込みながら内容を読みこんでいきましょう。そうすれば、論説文を読んでいる途中で何が書いているかわからなくなることがなくなっていきますよ。
「筆者の意見や主張」を浮かび上がらせよう
接続語や段落の意味など、論説文の中には読解の上でヒントになることが必ずあります。そのヒントに注意しながら読むと、「筆者の意見や主張」が理解しやすくなります。つまり、ヒントは、「筆者の意見や主張」を浮かび上がらせる道具なのです。
それでも、複雑な、込み入った文章になると、よくわからないことがあるかもしれません。そのときは逆の発想をしてみましょう。つまり、「意見や主張」ばかり追いかけるのではなくて、「たとえ」「経験」「具体例」を判別して段落や文章を読んだり書き込みながら読んでいけばいいのです。そうすると、それ以外のところに「筆者の意見や主張」があるはずです。
まとめ
論説文の読解のポイントは、まず文章全体の構成とそれぞれの段落に何が書いてあるのかをつかむことです。そのうえで、「筆者の意見や主張」がどこに書いてあるか、それはどういうことか、を理解するのです。どうしても設問が気になって急いで読みがちになってしまいますが、論説文の場合、設問の答えは必ず文章中にあります。ですから、文章中に、各段落に何が書いてあるのかをつかめば、設問に答えやすくなるのです。
また、問題演習をするときや、模試の復習をするときには、文章全体を読んだうえで、内容の要約を簡単にしてみましょう。段落ごとの中心文をつなげていくと、要約ができます。その中の、筆者の意見や主張の部分がその文章の「要旨(結局何が言いたいのか)」ということになります。これをつかむことができれば、記述問題も含めて論説文の設問はいただいたも同然です。ぜひ、面倒くさがらずに、丁寧に大まかな流れをつかみ、段落ごとに読み込み、中心となるところをまとめる練習を積みましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。