歴史のある鉄鋼業に注目しよう! 工業地域・工業地帯まとめ【北九州工業地帯編】

今回の記事は,日本全国に存在する工業地域・工業について一つずつご紹介していくシリーズの第5本目として,北九州工業地域について解説していきます。工業地域・工業地帯といえば中京や阪神が注目されがちですが,この北九州の対策も受験においては欠かせません。この範囲・分野は中学受験社会の中でも覚えることが多く毛嫌いしやすいものですが,その分理解していると周りの受験生と差がつけられます。ぜひ入念に対策しておきましょう。

場所は?

まずは北九州工業地帯の場所について見ていきます。北九州という名前から「九州地方の北にあるのかな…?」と予測する人は多いかと思いますが,具体的に何県が含まれるのか,まで理解している人は少ないでしょう。そのためこの章では地図を使って,何となくの場所について確認しておきましょう。

大雑把にいうと,次の図の青く塗られている部分が北九州工業地帯の区域になります。オレンジ色の点は代表的な都市を,()の中身はそこで栄えている産業を表します。ここで取り上げている都市・産業は,出来れば頭の中に入れておきましょう。

北九州工業地帯の地図上の位置

この地図から分かるように,北九州工業地帯は主に福岡県を指します。山口と大分の一部が府生まれることもありますが,福岡県という覚え方で差し支えないでしょう。特に栄えているのは沿岸部ですが,内陸でも久留米市のような都市が工業地帯を支えています。ちなみに北九州工業地帯という名前は,九州地方の北という意味ではなく福岡県北九州市から来ているものです。

工業地域と工業地帯の違いとは?

ここまでの説明を読んで,工業地帯と工業地域は何が違うの?と疑問に思われた方もいるでしょう。このシリーズでは瀬戸内関東内陸東海京葉と全て工業地域を扱ってきましたが,今回取り上げているのは北九州工業地帯です。そこでこの章では工業地域と工業地帯の違いは何か,ということについて説明していきます。

簡潔にこれらの違いを説明すると,工業地域の中で特別栄えているものが工業地帯ということになります。つまり工業地域がレベルアップしたものが工業地帯,ということですね。実際のところ様々な定義があり,事業所間の機能が繋がっているかどうか・発展に地域的連続性があるかどうか,というものもあったりしますが,なかなかピンと来ないと思いますので,栄えているものが工業地帯という覚え方でいいでしょう。

ちなみに現在工業地帯と呼ばれているものは北九州の他だと,京浜・中京・阪神の3つがあります。これらの四つはその昔,四大工業地帯と呼ばれるほど特別な地域でした。現在は産業構造の変化や高速道路の発達の影響により,北九州の工業生産額は他の工業地帯に抜かれてしまいました。しかしこれまでの慣習か古い歴史からか,未だ工業地帯と呼ばれています。近い将来,北九州工業地域になるかもしれませんね。

工業の特徴!

それではここからは北九州工業地帯の工業の特徴について見ていきましょう。第1回から第4回までの記事で繰り返していますが,工業地帯・工業地域の特色を掴む上で大切なのは,出荷額の高さ工業種類別の割合の把握です。出荷額の高さとはその地域でモノがどのくらい作られているのかを,工業種類別の割合とは全てのモノの中で多く作られているのは何の種類かということを指します。北九州工業地帯ならではの特徴もあれば,他の工業地域・工業地帯と共通するような特徴もあります。ぜひ他の記事と読み比べながら頭に入れていきましょう。

出荷額について

初めに確認するのは北九州工業地帯の出荷額です。下の図は全国の工業製品出荷額に占める工業地帯・地域の割合についてのグラフです。この図を見ながら出荷額の多さ・日本の産業におけるポジションを抑えていきましょう。

グラフの読み取り方ですが,この図における数値が大きければ大きいほど,たくさんモノを作って売っていることを表します。例えば一番左側,17.9%という割合である中京工業地帯は日本で一番ものを作っている,ということになりますね。今回取り上げている北九州工業地帯は紫色の部分になります。(データは教育出版株式会社からの引用です。)

工業製品出荷額に対する割合

この図から,北九州工業地帯は日本全国の出荷額の3.0%を占めているということがわかります。順位で言うと日本で9個工業地域・工業地帯があるうちの9番目になります。この値を見てたった3%か,と思われた方もいるかもしれません。しかし前述したように北九州工業地域とはほぼ福岡県のことを指しますので,実質福岡県だけで全国の出荷額の3%を占めている,と考えてもいいでしょう。そして3%といっても金額で言うと何千億にもなりますので,とても産業が発展していることを理解していただけるのでないでしょうか。

さて,北九州の3.0%という数字は京葉の3.8%という数字と近いです。そのためデータを取得した年度によっては順位や数値が変動している可能性があります。この変動は北九州工業地帯に限った話ではないため,特定の工業地域・工業地帯の情報を覚えるときは,「3%ほど」「順位は低め」のように大雑把に覚えておくと良いでしょう。

この工業製品出荷額についてのグラフはシリーズを通して全ての回でお見せします。将来的には数字・順位を聞いただけで地域名を思い出せるくらい知識が定着しているといいですね。

盛んな産業について

続いて北九州工業地帯の工業種類別の割合を見ていきましょう。瀬戸内工業地域編でお話ししたように,工業の種類には重工業と軽工業があります。このうち重工業は金属・機械・化学に,軽工業は食料品・繊維に分類することができます。日本全体で見ると重工業が盛んで,とりわけ機械産業に優れています。より詳しい区別や意味を知りたい方は,ぜひ過去の記事を見返してみてください。

下のグラフは,全国と東海工業地域の工業種類別出荷額割合を比較したものです。グラフの見方ですが,割合の数字が大きければ大きいほど,盛んにモノが生産されている産業を意味します。全国のグラフと北九州のグラフとを比べて割合が大きいもの・小さいものに注目し,特徴を理解していきましょう(データは教育出版株式会社HelloSchool社会科からの引用です)。

工業種類別出荷額割合

このグラフから,北九州工業地域は全国と比べて金属・食料品の割合が高く,反対に化学の割合が低いということがわかります。また機械産業も,全国平均並みではありますが栄えているといえますね。正直なところ,ずば抜けて「ここが優れている!」という特徴いので覚えづらいかもしれませんが,バランスの良い構成がとられていると考えると,1つの長所として捉えられるでしょう。実際のところ全国の割合と類似したグラフが作れる工業地域・工業地帯は他にありません。

なぜ金属・食料品が盛ん?

ではなぜ金属・食料品の割合が高いのでしょうか。その背景にあるものを見ていきましょう。

まず金属について解説していきます。金属という産業は,金属や鉱物を加工して製品を産み出すというものです。北九州工業地域では,金属産業のうちとりわけ鉄鋼業が栄えています。この鉄鋼業が栄えている理由の一つに,北九州における歴史的な背景が関係しています。

北九州市にはその昔,八幡製鉄所という施設がありました。もしかしたら歴史で聞いたことがあるかもしれません。この施設は戦前に建設されたもので,戦争に必要な鉄を作るという目的で使われていました。九州に作られた理由は,燃料となる石炭福岡県中央部の筑豊という地域でよく取れるからですね。残念ながら現在八幡製鉄所は使われていませんが,その発展の歴史が周りに広がり,今でも鉄鋼業が盛んになっているのでしょう。つまり,鉄鋼業の長い発展の積み重ねから金属産業が栄えているというわけです。

次に食料品について説明していきます。食料品の割合が高い理由は,福岡県が食料品をたくさん生産しているから,というわけではありません。この割合の高さは実は見かけ上のもので,本当は特別栄えているわけではないということですね。

というのも,北九州工業地帯に占める食料品の割合は16.9%でしたが,これは生産額に直すとおよそ1600億円にすぎません。他方,京葉工業地帯などの食料品について確認していくと,割合としては4.7%と北九州より低めですが,金額に直すとおよそ2700億円になります。その差は一目瞭然でしょう。

したがって北九州における食料品の高さは見かけに過ぎない,というわけです。ただし,中学受験だとグラフの読み取りが出題されたりするので,食料品という特徴は覚えていて欲しいです。ちなみに食料品産業の割合は,その地域の工業出荷額が高いと低く,出荷額が低いと高くなる傾向があります。

最後に化学について見ていきましょう。北九州において化学の割合が低いのは,単に他に生産に優れている地域があるからだと考えられます。これまでのシリーズでも見てきましたが,日本には瀬戸内・東海といったような化学産業に特化している地域がいくつかあります。海沿いの北九州も立地が悪いわけではないのですが,「餅は餅屋」なのでしょうね。

工業以外産業の特徴!

ということで北九州工業地帯の特徴を見てきました。次は農業・漁業といった工業以外の産業について確認していくことにしましょう。「工業以外の産業もなんて覚えられない…」と感じるかもしれませんが,ここで色々な産業についてまとめて解説するのは,地域ごとに産業・人口・気候などの要素をまとめて覚えるのが受験社会を勉強する上でオススメだからです。受験においては,1つの地域に関連して色々な範囲・分野の内容が登場するという複合問題が頻繁に登場しがちです。したがってこのような難しい複合問題に対応するために,この回で産業について一気に抑えてしまいましょう。

ただ,やはり優先して覚えるのは工業の特徴です。もし上で書いた工業の特徴がまだ掴めない,また少し難しいように感じていたら,飛ばしてしまっても構いません。余裕がある方は,続きを読んで軽く頭の中に入れておくと役に立つでしょう。

農業の特徴は?

まずは北九州工業地帯の農業の特徴についてです。

ここで,農業を理解するために少しだけ九州の地形についてお話ししておきましょう。工業地帯がある福岡県のあたりには,筑紫平野などに代表されるように平野部が多いです。また山も多いことから水資源も豊富です。気候についても触れておくと南の方に存在することや,黒潮・対馬海流という2つの暖流に囲まれていることから年中暖かめです。

このような特徴から稲作がとても栄えています。マイナビ農業によると,福岡県ではなんと耕地面積の80%が水田だと言われています。そしてここで育てられた稲を食べさせて牛や豚を育てる,といった畜産業も盛んです。畜産といえば同じ九州地方だと鹿児島や熊本が注目されがちですが,九州北部でも栄えているのだと覚えておいて損はないでしょう。

漁業の特徴は?

次に北九州工業地帯の漁業の特徴について見ていきます。

先程農業の章で,九州地域は2つの暖流に囲まれているという話をしましたね。このことは温かい気候という特徴にもつながるのですが,良い漁場になるというメリットにもつながります。特に福岡県の博多港などは全国でも名高い漁港の1つです。取られている手法としては,遠洋漁業近海漁業といった大型〜中型の船を出して魚を獲りに行くものが栄えています。加えて特徴的な手法が,底引き網漁というものです。これは袋状の網を海の底まで入れて,引っ張って魚を獲るといったものになります。中学受験レベルだと出題されないかもしれませんが,余裕があれば覚えておいてください。

よく獲られているのは,さばなどの青魚ですね。また九州西部の有明海という海だとノリの養殖が盛んに行われています。ただ色々な種類の水産物が獲れるので,これといった代表的なものはありません。漁業の特徴だけ覚えておくといいでしょう。

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まとめ

今回は北九州工業地帯の特色について簡単にまとめていきました。この地域は他の工業地域・工業地帯に比べてどうしても取り上げられにくく,そのせいか知識が定着しづらいことでしょう。わかりやすく簡潔に記事を作成しましたが,それでも一回読むだけだけで内容を覚え切るのは難しいかと思われます。よろしければ何回も読み返して復習してもらったり,他の回の記事と見比べてもらったりして,更なる得点力アップを目指していきましょう。

(ライター:大舘)

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