【中学受験】理科の苦手意識を払拭しよう~5年生編

4年生のときはそれほどでもなかたけれど、5年生になってから急に理科が苦手になった、点数が取れない、理解できない、というお子さんは少なくありません。5年生で扱う理科の単元が量も多く内容も深いので理解不足に陥りがちなのはたしかですが、5年生で理科に苦手意識を持つ原因はそれだけではありません。

中学受験の理科の勉強で大切なのは、「なぜ?」という問題意識を持って、基礎基本の原理原則を徹底して理解し、使いこなせるようにすることです。原理原則が理解できていないといくらたくさん問題を解いたとしても、その場限りで終わってしまうということになりかねません。そうすると、自力で解けていなかった問題であっても、解説を聞いてわかったつもりになり、その後振り返りをしないため自分ではできたつもりになっていてもいざまた同じような問題が出てきたときにやはり間違えてしまうということを繰り返します。

原理原則を理解し、科学的な思考力を使うことが求められる中学受験の理科ですが、大量の問題演習におわれてしまい、そういった基礎基本が身についていないお子さんは非常に多く、それが原因で理科を避けるようになり、結果として点数が取れず、さらに嫌になる、というデフレスパイラルに陥ってしまいます。

6年生になると総合問題演習が中心になるため、原理原則の理解にかけられる時間はどうしても少なくなりがちです。ですが、その土台が作られていないといくらたくさん問題を解いても身につきませんし、第一得点力が伸びません。5年生のうちだからこそ、入試頻出の単元について、原理原則をしっかり理解し、科学的思考力を身につけていくことができるのです。ですから、5年生の間に理科の苦手意識を払拭しておくことはとても大切です。

今回は、5年生のあいだに理科の苦手意識を払拭するために気をつけたいことについてご紹介します。つまずきやすい単元をどう克服していったらいいのか、ぜひ参考にしてください。

原理原則の理解を第一に

中学受験の理科では、原理原則の深い理解が問われます。見たことのない実験や道具について問題が出題されると、知らない知識だとして手を付けないお子さんがいらっしゃいますが、一見して見たことがなくても、学習した原理原則と共通している部分が必ずあります。ですから、自分の知っている原理原則に近づけて考えることができると気づけば、最初は無理、と思っていた問題であっても実は解ける、というものが少なくないのです。まずそこを意識しましょう。

科学的思考力の基礎は原理原則の理解

自分の知っている原理原則に近づけて考えることができる、ということはすなわち化学的思考力を働かせる、ということです。これは現場で試行錯誤する力とも言えますが、同様の原理原則が必要なものをグルーピングして、「これにはこの考えが使える」ということに気づく力、とも言えるでしょう。近年の中学入試の理科の問題は、典型的パターン問題に限らず、見たことのない実験考察問題や実験器具、また天体では地球から見た宇宙ステーションではなく宇宙ステーションから見た地球について問うなど、シチュエーションを変えた問題が良く出題されます。ただパターンだけを覚えていても解けませんが、原理原則をしっかり理解していれば、現場で「この原理原則を使えば解ける」ということに気づくことができるので、科学的思考力を存分に発揮して解くことができるのです。化学的思考力の方がクローズアップされがちですが、その土台にあるのはやはり正確な原理原則の理解であることを再度意識してください。

たとえば、水溶液の問題について考えてみましょう。水溶液の問題はものの溶け方や中和は能など、学習することが多いだけでなく、試薬を使うとその水溶液がどういう色に変わるかといった知識も覚えなければいけないので、苦手意識を持つお子さんが非常に多い単元でもあります。

良く出題される水溶液の問題として、以下のようなものがあります。

「コップに食塩を溶かして食塩水をつくったところ、食塩が解け残り、コップの底にたまりました。コップの底のほう、真ん中あたり、上の方で食塩水の濃度はそれぞれどう違うでしょうか。」

この問題は単純そうに見えて実は奥深いのです。一見すると、「食塩が解け残ってコップの底にたまっている」ので、食塩がたまっているコップの底は他のところに比べて濃度が高いように感じられるかもしれません。ですが、答えは違います。この問題の答えは、「コップのどの部分でも食塩水の濃度は同じ」です。

なぜかと言うと、水溶液というのは、水に物質が溶けてできた溶液ですが、「水に物質が溶けて透き通り、どこも同じ濃さになっている」ものです。これが食塩水をはじめとした水溶液の「原理原則」です。この原理原則にしたがえば、たしかに底の方に食塩が解け残っているものの、たまっている食塩と食塩水は別のものと考えなければいけません。だからこそ、食塩水の部分についてはコップの底の方、真ん中あたり、上の方で濃度に違いはないのです。

この問題は、「そこに食塩が溶け残ってたまっている」ことと「食塩水の」濃度を聞いていることがポイントです。水溶液の原理原則がきちんと理解できていれば、溶け残った食塩とそれ以外のできあがった食塩水を分けて考えることができ、食塩水の濃度が一定であることに気づくことができます。反対に、水溶液とは何ぞや、という原理原則を理解していないと底の方が濃い、という答えになってしまうでしょう。

この問題で問われている原理原則は決して難しいものではありません。小学校の理科実験でも経験があるはずです。問題文をよく読み、何を問われているのかをしっかり把握したうえで、原理原則をしっかり使えば正解できる問題ですが、原理原則の理解度で差がつく問題であるとも言えるでしょう。

理由を一文で答える練習をしておこう

最近の中学入試の理科の問題では、記述問題も増えてきています。麻布中学校などの難関校は200文字程度の長い記述問題を出題することもありますが、記述問題として多く出題されるのは、基本的な原理原則が理解できているかどうかを試すもので、例えば基本的な原理原則を使った実験考察問題の中で、「なぜそうなるか」と実験結果の理由を答えさせる、というものです。

結果に対する「理由」を答える際には、長々と答える必要はありません。「なぜこうなるのですか」に対しては「○○だから。」と簡潔に答える必要があります。たくさん書こうとするとよけいなことまで書いてしまい、問いに簡潔に答えることができなくなるので、基本は一文で答えられるようにしましょう。

原理原則は、結果と理由がセットです。「こうなる」という結果と、「なぜそうなるのか」ということをワンセットで理解できていることが必要です。ただし、単にワンセットで覚えるのではなく、覚える際には「なぜ」「どうして」をしっかり理解して腑に落ちるようにすることが大切です。

苦手意識がある単元の原理原則については、なかなか覚えるのが大変、というお子さんも多いでしょう。複雑なものもあるため、苦手意識がさらに増してしまう、ということもあるかもしれませんが、原理原則をきちんと理解できていると、解ける問題の数が飛躍的にアップします。苦手な単元の原理原則については、その原理原則が理解できているか、塾のテキストだけでなくわかりやすく解説してくれている小学校の教科書にまで戻ってよくある実験などとともに確認し、理解を深める必要があるでしょう。

原理原則の結論と理由を理解したら、それぞれ一文で簡単にわかりやすく説明できるように練習をしておきましょう。簡潔に答えられるということは、理解できているということです。

理科という教科は、ある「現象」について、なぜそうなるのか、ということを理解することが土台になります。それが原理原則と言われています。実際に出題された問題を解く際には、まずその現象についての原理原則を思い出すようにしましょう。そして、その問題ではどの原理原則が使えるのかを考えて選び出し、適合するものを一文で答える習慣をつけるようにしておくと良いでしょう。もちろん複数理由がある場合は、それぞれ一文で書けるようにして置き、組み合わせて複数の文で答える場合もあるので、ひとつの理由について一文で書けるように習慣づけておくようにしましょう。

力学の問題は原理原則を組み合わせて解く

理科の4分野の中で最もお子さんが苦手意識を持つのは物理分野です。たとえばてこ、滑車、ばね、浮力などを使ったの力学の問題は模試などでも正解率が低く、男女問わず苦手とするお子さんが多い単元です。かろうじててこ、滑車などとひとつだけなら解ける、というお子さんはもちろん多いのですが、入試問題ではてこや滑車を組み合わせたり、ばねと浮力を組み合わせたりと、単純にひとつだけを取り出して問う問題ではなく、複数の組み合わせにより複雑化した問題が出題されることが多いです。

いくつか組み合わさっていると、図を見ただけで「解けない」と思いがちですが、ここで大切になってくるのは、複雑な問題も「分解」して自分の理解している原理原則を使えば解くことができるということに気付けるかどうかです。特にてこの問題は頻出ですが、どれだけ複雑な問題であっても、以下の2つの原理原則を使えば実は解けるのです。

・上向きの力=下向きの力

・てこを左回りに回そうとする力(おもりの重さ×支点からの距離)=てこを右回りに回そうとする力(おもりの重さ×支点からの距離)

この2つの「力のはたらき」の原理原則を押さえておけば、どのようなてこの問題でも実は解くことができるのです。ここで重要なのは、「上向きの力と下向きの力」がつりあうことと、「左回りの力と右回りの力」がつりあうことの2点です。てこがどうも苦手だ、という方はまずその原理原則が理解できているかどうか確認しましょう。

てこの問題では、分かりやすい棒の問題だけでなくモビールの形で出題されることもありますが、どんなかたちであってもてこがつりあっているときは、支点がどこにあるか、どの力とどの力がつりあっているのか、をまず見極めてください。どのような問題であってもこの原理原則を当てはめると力の関係をしっかり答えることができます。

また、てこの問題の場合、棒の重さを考えるときと考えないときがあります。棒の重さを考えなくていい場合が基本形ですが、そのような単純な問題はあまり入試では出題されず、やはり棒の重さを考える問題が出題されます。棒の重さを考えなくてはならない場合は、「棒の重さは重心にかかっている」という原理原則を理解しましょう。さらに、棒の重さについては「重心のところにおもりが下がっている」と考えるようにします。つまり二段階で考えるのです。重心は目に見えませんが、それをおもりに置き換えることによって目に見える形にして解くというひと手間をとることをクセにすれば、一見複雑に見える問題であっても段階を踏んで解くことができます。

力学の問題は、2つの原理原則を使えば解ける、このことをしっかり覚えておきましょう。複雑に考えすぎるのではなく、分解して考えることが大切です。どんな複雑な問題であっても同じことがいえるので、怖がらずにどんどんいろんな問題で実践してみましょう。

実験器具の使い方は頻出

最近の理科の入試問題では、実験器具の使い方についての問題がよく出題されます。実験器具の使い方は単に暗記すれば良いと思っていませんか?実は、ここでも「原理原則」があるのです。

実験器具を使う場合の手順の原則は、「下から上へ」「元から先へ」という原理原則があります。これは、多くの実験器具を使うときに共通して言えることです。たとえば,ガスバーナーを例にしてみましょう。ガスバーナーで火をつけるときの手順を覚えていますか?「ガスの元栓を開ける」→「ガス調節ねじを開く」→「火をつける」→「空気調節ねじで炎の強さを調節する」というものです。反対に消す場合は、「空気調節ねじ」→「ガス調節ねじ」→「元栓を締める」という手順で元に戻していくということになります。小学校の理科実験でもやった経験があるのではないでしょうか。ですが、意外と原理原則を意識せずにおこなっていることが多く、手順を混乱して覚えている受験生は少なくありません。

なぜこのような手順になっているかというと、実験を正確におこなうことと、安全性に配慮してのことです。家でガスコンロを使う場合を考えてみると分かりやすいです。ガスコンロで料理をする場合、ガス栓をひねってから元栓を開けるのでは順序が違いますよね。元栓を開けてからガス栓をひねらなければ危険です。また、最近はオンライン授業などでパソコンを使うことが増えていると思いますが、使い終わったらいきなり電源を落としますか?まずは使っていたサイトを閉じ、何もない画面に戻してから主電源を落とします。そうしないとパソコンが壊れてしまいますよね。

このような身近な例を考えれば、実験器具の使い方にも原理原則があるということが良くわかります。入試問題で実験器具の使い方が良く出題されるのは、それだけ「差がつく」からです。同じような実験を経験していても、原理原則を理解できているかどうかを問えば一発で理解度がわかる上、その後の問題に対処する方法が身についているかどうかも分かります。なにより、中学校に入ってからの理科の授業では、実験を数多くおこないます。その際に何も考えずに実験器具を使うと大変危険です。

実験器具についても、「なぜこういう器具があるのか」「どういう手順で使うのが合理的なのか」という原理原則があります。単に暗記だけすればいいと考えるのではなく、「下から上へ」「元から先へ」という2つの原理原則を常に意識して学習するようにすれば、理解が進みますよ。

「なぜ?」と考えることを大切に

中学入試の理科では、見たことがないような条件設定の問題が多く出題される傾向にあります。また、いくつかの単元を組み合わせて作られている問題も少なくありません。ですが、パターンを覚えて学習しているだけでは、見たことがない問題=解けないと思ってしまい、手をつけずに大量失点してしまうことになりかねません。

理科の入試問題で問われている知識そのものはそれほど細かいものではありません。もちろん「知っている」「覚えている」ということは大切ですが、それよりも重視されるのは、知らない現象が出題されたときに、原理原則に戻ることができるかどうか、ということです。原理原則をもとにして「こうなるだろうな」と試行錯誤し、解答を導き出す科学的思考力、それこそが中学校が受験生に求めている「理科的能力」だと言えるでしょう。

なかなか理解できないから丸覚え、という学習方法をとってしまっているケースも少なくない理科の学習ですが、そういう姿勢だとより理科嫌いが加速してしまい、最悪の場合思考停止状態に陥ってしまいます。そうすると、ほかの教科にも悪影響が出てしまいますので注意しましょう。意味も分からず暗記しても定着することはありません。問題を解く際に原理原則を使いこなせるかどうかが大切だということを意識してください。

理科の問題を見たら、「この問題で使えそうな原理原則にはどのようなものがあるかな」「なぜこれが使えるのかな」と考えながら理解していくことが大切です。5年生の間にその習慣を身につけられると、実力が飛躍的に伸びます。特に5年生で学ぶ単元は中学入試において中心となるところなので、いま、この時期に原理原則の重大さと「なぜ?」という疑問を持つことはとても大切なのです。

苦手意識のある単元であればあるほど、まずは原理原則の理解を徹底しましょう。そして、分からないことがあったとしても、「この原理原則を理解できれば解ける」という経験をたくさん積むことが大切です。ぜひ、小学校の教科書などにも戻ることも含めて、原理原則を徹底して理解しましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。