今回は、サピックスの入室テストの説明と対策方法について書いていきたいと思います。
学年や目指すクラスによって気をつけるポイントが違いますので、当てはまるものを参考にしてみてください。
Contents
サピックスの「入室テスト」とは?
サピックスに入塾するためには、「入室テスト」を受け、合格基準点に到達しなければいけません。この入室テストの点数によって、入った後のクラスも決定されます。
サピックスのクラス昇降の激しさは、ご存知の方も多いと思います。中には不動のα1、という方もいらっしゃいますが、毎月行われるマンスリーテストや、組み分けテストによって、クラスの移動が頻繁に行われます。
そのため、入室テストの段階でなるべく上位のクラスに入りたいという方(特に保護者の方)が非常に多いです。
入室テストの詳しい流れや年間スケジュールについては、SAPIX小学部公式HP をご参照ください。
学年別の対策ポイント
サピックスへの入塾を検討している人にとってまず必要なことは、入室テストを受験するための「対策」です。では、どんな対策をするべきなのでしょうか?
サピックスはいつまでに入室しなければならない、ということはありません(6年生の受験直前期に、最終の入室テスト代わりの模試がありますが)。
ただし、お子さんの学年によってテストの難易度が変わります。ここでは新4、5、6年生向けに対策方法をご紹介します。
新4年生(現在小学校3年生)の場合
サピックスの入室テストは、新4年生の場合は算数と国語がそれぞれ40分ずつ、それに体験授業が20分ついてきます。入室基準点には幅がありますが、この学年の場合、入室のためには最低でも3割から4割の得点がほしいところです。
算数と国語の2教科だけ、というと「易しい」という印象を持つかもしれませんが、そんなことはありません。
サピックスは難関校合格で名をはせている塾ですから、入室テストを受ける方も「これまで学校の勉強しかしてこなかった」というレベルではなく、問題集などでプラスアルファの勉強をしてきている、ある程度レベルが高い方がほとんどです。
特に上位クラスを狙う場合は、入室テストを受ける方のレベル感を知っておく必要があります。
受験者のレベルが高めということは、全体の平均点も高くなる、ということが言えます。そのため、算数、国語ともに「ミスをしないこと」が一番重要です。
算数の出題内容は?
新4年生の場合、算数の出題内容は計算問題、文章題、パズル系(図形の基礎や規則性など数の感覚を見るもの)が中心です。
パズル系の問題になれていない方は展開図や規則を見つける練習などをする必要がありますが、出題の半分以上は計算問題と文章問題となっています。
ここで必要なのは「速くて正確な計算力」と、文章題の文章をしっかり読んで、何を答えたらいいのか、そのヒントは問題文のどこにあるのかがわかるなどの算数の「基礎中の基礎の力」です。
学校でも文章題を勉強することがあるでしょうが、最近は国語力の低下が影響しているのか、「求められている」ことに答えられない生徒さんが増えています。
また、計算はそれほど複雑ではありませんが、数量感覚(この答えでおかしくないかどうか直感的にわかる力)を見るような問題になっているので、ドリルなどで訓練しておくことが必要です。
いずれも中学受験には必須の能力ですし、入室してからも計算力や文章題を読み解く力は常に必要とされます。
基礎力をおろそかにすると、せっかく入室テストに合格しても授業についていけなくなってしまいます。これらの力は意識してつけるようにしましょう。
国語の出題内容は?
入室テストの国語の出題内容は、「漢字の読み書き」と「長文読解」です。長文読解には、記述問題も含まれます。
サピックスではマンスリーテストなど、テストを受ける機会が非常に多いですが、必ず漢字の読み書きは出題され、配点も低くはありません。実際の中学入試でも、漢字の読み書きは国語の基本です。
少なくとも3年生で習う漢字、できれば4年生の漢字も練習しておくとよいでしょう。漢字は普段から雑に書くのではなく、解答欄に入る程度に大きく、ていねいに、正確に書く練習をしておきましょう。
長文読解は、新4年生にとってはなかなか骨が折れるかもしれません。普段学校で読んでいる教科書の文章よりはるかに長い文章を、40分という制限時間の中で読み、設問に答えるということは、学校の授業だけでは対処することは難しいでしょう。
読書もよい読解練習になりますが、入室テストと普段お子さんが好んで読む文章とは開きがあります。市販の問題集で十分なので、学年相当の読解練習を積んでおきましょう。
また、サピックスはテストの中でも記述問題が占める割合が高く、難しいので有名です。「書きなれている」お子さんはそれほど抵抗はないかもしれませんが、自由に作文をすればいいというものではありません。設問に対応した答えを書くには、そのための対策が必要です。
前提として、「正しい」文章を書く力をつけておくことが求められます。主語と述語が対応しているか、理由を書くのか、気持ちを書くのか、など、文を書くにも決まりがあります。基本的なもので構わないので、文を書くときの決まりを知っておきましょう。
新5年生、新6年生(現在小学校4年生、5年生)の場合
新5年生になると、入室テストの難易度はかなり上がります。ひとつの原因は、出題科目に理科と社会が加わることです。すでに4年生で入室している生徒さんと一緒になって勉強していくわけですから、そのレベルについていくだけの力が求められます。
中学受験の理科、社会も特徴がありますし、内容も難しいものです。算数、国語のレベルアップに加え、このような理科、社会のテストも受けなければならないので、ハードルが上がるのです。
新6年生の場合は、さらに大幅にハードルが上がります。この時期にサピックスに入室するという方には、いわゆる「転塾組」が多く、サピックスの難関校合格の実績に魅力を感じて入室テストを受けに来ます。
さらに、この時期に入室テストを受ける方の中には、以前に入室テストを受けたけども不合格になってしまい、他の塾に通っていたけれどいよいよ受験を考えて受験してくる、「リベンジ組」も含まれます。
そのような事情があれば、入室テストにかけるモチベーションもかなり高いと考えられます。
合否を分けるのはやはり「基礎力」
新5年生はこれから中学受験に必要な中核部分を学習していくことになります。新6年生は、いよいよ受験学年ですので、一通りの範囲をどこまで学習できているかによって差がつきます。
ですから、入室テストでも中学受験の勉強に必要な「基礎力」がどれだけ身についているか、それを使うことができるか、が結果を分けることになります。
入室テストの配点は算数と国語が150点ずつ、理科と社会が100点ずつで、算数と国語の配点が高くなっています。そのため、特に算数と国語の基礎力が身についているかどうかが差のつくポイントとなります。
ご家庭の事情や習い事との関係などから、これから本格的に受験勉強を始めよう、というお子さんが入室テストを受けるケースもあるでしょう。
市販の問題集などで学習をしたり、算数が得意で最高レベルの問題が集められている「中学への算数」を一人で解いていたりするお子さんもいらっしゃいますが、これは少数派です。
入室テストでは、他塾のカリキュラムであっても中学受験に向けて勉強をしてきたお子さんと、これから受験勉強を始めるお子さんとでは、受ける段階でかなり差がついてしまっています。
それだけに、新5年生、6年生でサピックスの入室テストを受けようと考えていらっしゃるご家庭では、事前にある程度の準備をして臨む必要があります。
できれば、すでにサピックスに通っていらっしゃる方が学習している範囲を確認して理解しておくことが望ましいでしょう。カリキュラムはこちらで見ることができます。
サピックスの「入室テスト」の対策ポイント
「入室テスト」は入試ではありません。あくまでサピックスという塾に入り、受験勉強をしていくためのスタート段階です。
ただし、サピックスは、1学年に20クラスもあるような大規模校舎がいくつもあり、通っている生徒さんの数が非常に多い塾です。
入室テストは校舎ごとに行われ、クラス分けも校舎ごとに決まります。つまり、「どこの校舎の何クラスにいるか」というのが、なかなか全体での立ち位置が見えにくいサピックスの中での指標になるのです。
サピックスに通うことを考える方の中にも考え方は色々あります。大規模校舎の上位クラスから始めたい、クラスは問わないからとにかくサピックスに通わせたい、など、ご家庭の方針によって入室テストで出したい結果が変わってきます。
ここでは上位クラスで合格したい場合と、上位クラスでなくてもいいから合格したい場合に分けて対策ポイントをご紹介します。
上位クラスで入室テストに合格したい場合
まずは上位クラスで合格したい方向けの対策ポイントです。
サピックスの入室テストの内容は、中学受験の勉強で学ぶ内容を前提としたものです。これまで塾にお通い出なかったご家庭の場合、特に注意していただきたいのは、「小学校の授業で習う内容」と「中学受験の勉強で必要とされる学力」には大きな差があるということです。
もちろん、小学校の授業で習う内容が中学受験に全く役に立たないということではありません。小学校で習う漢字や計算の基礎力や、社会科見学や理科の実験を体験することによって、課題を見つけ、適切な方法を考えて解決するという力はこれからの中学入試で決して軽視できないものです。
ただし、中学受験を目的とした入室テストでは、「中学受験ならではの考え方」を理解して受験しなければ点数をとることは難しいでしょう。
特に上位クラスでの合格を目指す場合には、受験用のテキストや問題集を用いて勉強をした上で入室テストを受ける必要があります。
サピックスの入室テストの範囲は、そのとき用いられるテストによって異なります。テストを受けるタイミングによっては、組み分けテストやサピックスオープンが入室テストとして用いられます。この場合は、すでにサピックスで学習が進んだ範囲全てが出題範囲になります。
通うことを考えているサピックスの校舎の進度を確認できたとしても、直前にサピックス生が学習した内容が出題されるとは限りません。これまでに学習が進んでいる範囲全体から出題されるため、単元をねらい撃ちして受験しても高得点をとることは難しいのが現実です。
したがって、上位クラスで入室したい場合には、入室テストを受ける前にサピックスの内部生が学習している範囲を一通り学習して、理解しておく必要があります。小学校の進度とは異なっている可能性は大いにありますが、受験用のテキストを使って学習しておきましょう。
また、漢字や計算問題に関しては一定の配点がありますから、そこで点数を落とさないように注意しましょう。
また、算数ももちろんですが、新5年生、6年生の場合、サピックスの国語の授業で読む文章は非常に長いです。
その文章を速く、正確に読むためには訓練が必要です。設問の数も多く、選択肢の問題、書き抜きの問題、記述問題など様々な形で出題されます。
なかでも特に記述問題は注意が必要です。配点も高いです。
自分がどのような文章を普段から書いているのか、読み直してみましょう。設問に対しての答えが書いてあるか、その理由が書いてあるか、主語や述語は対応しているか、なによりも読んだ側がわかりやすい文章になっているか、などをチェックしましょう。
これも、受験用テキストで練習をしておき、文章を書く基本を身につけておく必要があります。
どのクラスでもいいのでとにかく入室テストに合格したい場合
最初から上位クラスに入ることは目的にしていない、とにかくまずはサピックスに入ってそのカリキュラムにそった受験勉強のレールに乗りたい、とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
その場合は、上位クラスを目指す場合に比べて緻密すぎる必要はありませんが、入室テストに合格できる点数をとることができるように、難問よりも基礎問題を確実に得点することをまず心がけましょう。
出題される範囲は上位クラスと同じですが、点数のとり方が変わります。大切なのは中学受験の基本的な範囲、さらにそのうちの基礎部分を確実に理解し、点数を積み重ねることです。
算数の計算と一行問題、国語の漢字やことばに関する問題は落とすことのないように学習しておきましょう。
計算と一行問題の問題集、漢字やことばの問題集はさまざまなものがありますが、もしすでに他の塾で勉強をしている方はそこで使っている問題集で十分ですし、お持ちでない場合は書店で自分のお子さんが学習しやすいものを選んで学習を進めてください。
その際には、漢字ひとつとっても、線が1本多くないか少なくないか、点を打つべきところに打っているか、という細かいところまで正確に練習しましょう。計算問題は途中式もきちんと書いて、暗算で片づけないようにしましょう。
「基礎」の勉強にも、やり方があります。正しいやり方で練習しておけば、最初に入ったクラスが下位クラスであっても、サピックスのカリキュラムに慣れてくればクラスを上げることも可能です。
サピックスに入室した後は?
入室テストに合格し、無事にサピックスに入室できた、それで終わりではありません。大事なのは、そこからサピックスの速いカリキュラムについていって受験勉強をしっかりやっていけるかどうかです。
サピックスの指導は「集団授業」です。集団授業である以上、生徒一人ひとりに合わせた授業をしてくれるわけではないということを忘れてはいけません。
途中からサピックスに入室したお子さんも、これまですでにサピックスで勉強してきた生徒さんと同じ授業を受け、同じように成績がつけられていきます。
途中入室のお子さんのために何か補習をするということは想定しておらず、最初からサピックスのカリキュラムで勉強している生徒さんに合わせて授業が行われるということは念頭に置いておきましょう。
サピックスは「復習主義」
サピックスは、徹底的な「復習主義」をとっています。
授業のある日に新しいテキスト(その単元のプリント)を渡され、初めて見る問題を解き、解説を受けます。
そして、配られたテキストの中で授業時間内に扱われるの問題は、基本的に一部分だけです。上位クラスでも下位クラスでもテキストは共通ですから、上位クラスの方がより難問を扱い、下位クラスでは基礎問題を中心に扱い、残りの問題は宿題として出されます。授業で習ったことを宿題としてできるまでやってきなさい、それが「復習主義」です。
授業の内容についていけなければ、その授業時間はただ「講師の言うことを聞いているだけ」の時間となってしまい、勉強時間としてカウントできない「無駄な時間」となってしまいかねません。
授業の内容についていけないケースで多いのは、「前に習ったことが定着していないので、聞いても分からない」や、転塾生で「まだ習っていない内容が出てきてしまった」などです。
前者の「前に習ったことが定着していない」点は、最初からサピックスに通っている方にも共通の悩みだと思います。
ただし、後者の「サピックスではすでに一度やっているけれど、自分は習っていない内容にどう対処するか」は特に新5年生、6年生になってサピックスに入室された方が悩まれることです。
未習部分をどう埋めるか
しっかりサピックスでの授業についていくためには、サピックスで学習が終わっている部分のカリキュラムの内容を入室前に家庭学習でフォローしていく必要があります。
それを怠ると「わからない」が積み重なり、お子さんの勉強への、ひいては中学受験へのモチベーションが下がってしまいます。
入室前のプリントをもらえるかというとそうではないので、まずは問題集などでそれらの単元の基礎から学習をしていく必要があるでしょう。基礎のないところにどれだけ応用を積み上げようとしても、それは無理な話です。
塾では「わかっていること」を前提に授業が進められるので、塾の授業や宿題の時間以外に「自分の勉強の時間」を確保する必要があります。しかも計画的に、です。
入室するタイミングにもよりますが、すでにサピックスで消化されたカリキュラム内容をすべて順番に学習していこうとすると、大量の学習時間が必要となってしまいます。
塾の授業や宿題をする時間以外にそのような時間を確保するのも難しいですし、どのように進めていったらいいか、その量を見て途方に暮れてしまうこともあると思います。
大切なのは「取捨選択」
そこで大切となるのが、「取捨選択」です。日々の宿題もそうですが、抜けている部分や基礎が不安定な部分も加味して、どれを、いつ、どのように進めていくかという「取捨選択」が上手くいったお子さんは、志望校合格に近づきます。
その大切な「取捨選択」は一人でできるお子さんもときにはいらっしゃいますが、正直なところ、お子さんが一人で計画立てて勉強し、やるべきことを取捨選択するのは非常に難しいことです。
勉強をするのはお子さん自身なので、お子さん抜きに計画を立てるべきではありませんが、保護者の方がお子さんの「今の状況」をしっかり把握することが何よりも大切です。
お子さんの弱点や、未習分野などをまずは書き出してみましょう。そのうえで優先順位をつけて学習を進めます。
普段の授業や宿題でいっぱいいっぱいというときは、春休みやゴールデンウィーク、夏休みなどをうまく使って、なるべく早く優先順位の高いものから克服していくようにするとよいでしょう。
まとめ
ここまで入室テストとその対策、入室後について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
入室テストはあくまで入り口です。入室後のサピックスで行われる小テストやマンスリーテスト、組み分けテストも志望校合格という目標のためのプロセスにすぎないということを忘れないようにしましょう。
どうしてもテストの成績、クラスの昇降に目が行きがちになるとは思いますが、あくまでそれは「今のお子さんの実力を知る」材料です。
弱点が見つかったことをチャンスに変えて、×を〇に変える、お子さん自身の勉強をしっかり進めていきましょう。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。