近年の中学入試では、時事問題の出題が非常に増えています。ほとんどの中学校が、何かしらの形で時事に関する問題を出題するようになってきています。この傾向は、今後も続いていくと考えられます。
時事問題、というとどのような問題が頭に浮かぶでしょうか?テレビや新聞などで報道されていることをそのまま聞かれる、というものではありません。秋になると、各塾の時事問題の問題集や重大ニュースを集めた参考書などが書店で販売されるようになりますが、時事問題は必ずしもその年に起こったことだけが出題されるわけではありません。
世界で問題になっている国際問題などでは、1年や2年で解決できるものではなく、多くの国が、それぞれの事情を考えながら何度も話し合いを持ち、解決していくものです。ですから、「今年の時事問題集には載っていないから出ない」という考え方は間違いです。
ただし、どうしても時事問題集が発売されるのは、入試直前期ですし、実際に塾の授業で扱われるのは冬期講習、といったケースも少なくありません。つまり、「自分で勉強しなさい」と言われているようなものです。ですが、世の中で起こっていることを正確に理解し、問題を解決するためにはどうすればよいのかを受験生一人で考えるのは非常に難しいことです。また、時期的に「まずは覚えなければならないこと」が増えるので、手が回りきらないということもあるので注意が必要です。
時事問題の出題形式は、中学校によってかなり異なります。出題意図も異なります。大問1題をまるまる時事問題にあて、その中で答えていく設問も時事関連の問題を集めている学校もあります。その場合は、公民分野に重点を置いている学校が多いです。政治、経済、国際関係などを総合的に答えさせるというものです。
また、問題文だけ見ると時事問題だと見せかけて、実はそれに関連した地理、歴史、公民などすべての分野の知識がしっかり備わっているかどうかを設問で聞くという形式の出題も多いです。大問1題の中で、頭を切り替えながら、スピーディに知識問題を答えるというものです。この、「頭の切り替え」が、時事問題では非常に重要なのです。
この時期、すでに過去問などを通して時事問題に取り組んできたという受験生の方も多いと思いますが、自信をもって、「最近話題になっている、日本や国際関係はしっかり頭に入っている!」と言えるでしょうか。塾からは、秋以降に発売される時事問題集をやれば大丈夫、と言われると思いますが、その時期を想像してみてください。各教科の弱点補強、志望校の過去問演習や志望校別コースの授業などで、手が回らなくなってしまうことが十分予想されます。
時事問題は、1つの中心となるテーマから、さまざまな設問を派生させて作ることができる、という特徴があります。たとえば、最近の日本の政治に関する問題であっても、憲法や三権分立、国際問題をはじめ、歴史や地理など、関連する設問をたくさん作ることができるので、いろいろな切り口から知識の正確な理解をたしかめることができます。
また、近年の傾向として、台風や地震、自然災害がよく起きることから、社会の問題に見せかけて理科の知識を聞く、などの科目横断型の時事問題の出題も増えています。
時事問題というと、「難しい」「覚えられない」「こんなこと知らない」などと、敬遠する受験生の方が非常に多いのですが、勉強を始める時期が遅くなりがちなこと、他にやらなければいけないことがたくさんあるところにプラスして覚えなければいけないことが増えた、ということによって「難しい」と思いがちです。
ですが、時事問題は、もちろんある時事に関するできごとに特有の問題も出題されますが、設問の多くは、各分野の基本的な知識を正確に整理して理解できているかどうかを確認するようなものです。これから始まる大学入試改革では、科目横断型の授業や、グループ学習などを通して、「答えのない問題をどう解決していくべきか」ということを思考していくことが重視されます。
そこで求められているのも、難しすぎる知識を知っているかどうかではなく、中学校に入学してからの学習についていくことができるための基礎的学力が身についているかどうかということです。さらに言うならば、「知らないこと」をしらないからわからない、で済ますのではなく、答えがないからこそ自分で試行錯誤して取り組み、なぜ自分がそのような考え方のプロセスをたどったのかどうか、という点を判定したい、という中学校側の意図があるのです。
そのことを意識せずに、単に「時事問題が出題されるからとりあえず覚えられるだけ覚えておこう」という姿勢で学習していては、中学校に入ってからの学習についていけなくなってしまいます。
時事問題を学習するうえで大切なことは、ある1つのテーマが与えられたときに、それに関連する基礎知識が瞬時に出てくるかどうかです。つまり、知識と知識のつながりが頭の中で整理されているかどうか、ということです。その基礎知識のレベルは、発展的なものも含まれることもありますが、学校の教科書を中心に、塾のテキストで必ず学習するような基本的なものが多く出題されています。
ですから、時事問題だからといって、難しく考える必要はありません。もちろん、テーマとして問題文に出された内容を全く知らない、というのでは解こうと思ってもどの知識と関連させればよいのかわからないですから、その年に話題になったことはやはり知っておくべきです。
問題をよく読んで、設問を見てみると、決して見たことのないような知識が出題されているわけではありません。小学生なりにいま世の中で起こっていること、ニュースや新聞などで話題になっていることに興味を持ち、それを知っている知識と関連させる意識をもっているかどうかを見たいというのが学校側の出題意図です。
学習を始める時期などからどうしても敬遠してしまいがちな時事問題ですが、問題文をしっかり読めば、聞かれていることが、いままで学習してきたできごとや人物というような、基礎知識が固まっていれば答えられるということがわかると思います。ですが、「時事問題」だからといって、難しいという先入観を持ってしまい、基本的な語句の意味を理解しきれていなかったり、間違って覚えていたりというところで差がついてしまいます。
時事問題は、決して難問ではない、むしろ身近なテーマを扱っている問題だという意識をもって、最後の最後まで整理し、覚えてきた知識と結びつけるという練習にしっかり取り組んでください。自分の持っている基礎知識が問題とぴったり合ったとき、時事問題は怖くないということがわかります。ぜひ、自信をもって知識と問題の関係を意識するように学習を進めていっていただきたいと思います。
政治や経済、社会保障や国際問題などについては、小学生にとってはハードルが高いかもしれません。その際は、ぜひ保護者の方が簡単でよいのでイメージを持つことができるようにお子さんに解説してあげてください。
今回は、夏の時点で、来年度の入試に向けて、時事問題が作りやすいと予想される時事問題の大きなテーマについて解説します。これまで解いた時事問題の内容と合わせて、基礎知識にもれがないかどうか確認してみてください。
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時事問題は実に8割から9割の中学校で出題されている
時事問題は、どのくらい多くの中学入試で出題されていると思いますか?年々増加傾向にあり、近年はおおむね8割から9割の中学校で出題されるまでになっています。2010年代を見てみると、2011年度から2018年度までの間で、時事問題(社会)が出題された学校は、全体の88.5%と、ほぼ9割を占めるまでになっています。
なぜ、時事問題を出題する学校がここまで多くなったのでしょうか?いろいろな要因が関係しているでしょうが、中学校が注目するのは、「時事問題に興味や関心を持つ生徒は、好奇心や学習意欲が高い傾向にある」という点が一番に挙げられるといえるでしょう。
これからの大学入試改革で重視される能力は、好奇心、学習意欲をもち、知識を積極的に自分のものにし、答えのないような複雑な経緯のある問題に対して食いついて、自分なりに調べ、試行錯誤し、自分のことばで解決方法を見つけ出し、さらにその経緯を説明することのできる力です。そのような好奇心、学習意欲を持っているかどうかは、中学校に入学してからの学習に積極的に取り組むことができるかどうかに直結します。
つまり、時事問題を出題するということは、このような、今までの型にはまらない思考力や論理的に説明することのできる能力をはかるという目的があるのです。もちろん、これから使いこなす必要のある知識・教養を身に着けているかどうかをはかるのにも役立つという一面もあります。
たとえば、選挙権を持つ年齢が18歳に引き下げられたという、最近の大きなトピックスがあります。中学受験生はあと数年もすれば自分の意志で政治にかかわるという年齢にあります。ですから、小学生の時代から、政治や社会に関する基礎的な知識やものの見方、考え方を培うことがますます重要視されるでしょう。ですが、ただ受験勉強に必要な知識だから、という姿勢でただ知識を詰め込んでも、それについて深い思考をすることはできません。
このような、身近な、また、現実的な問題について、自分自身の頭で考え、どうすれば解決できるのかをさまざまな視点から考察して、解決を目指す意欲を持っている生徒さんに入学してほしい、また、そのような素養を持っている生徒さんを中学・高校でしっかり育てたいということが、時事問題が出題される背景にはあり、作問者である学校の先生の生徒さんに対する思いがこめられているといえるでしょう。だからこそ、時事問題に対する注目が集まっているのです。
出題される時事問題の範囲はどこまで?
一般的に、時事問題というと、主に受験する年の前年に起こった、日本や世界の重大なできごとを出題するという形が多いです。入試問題の作問は、何度もの先生が知恵を集めて作り上げるため、非常に時間がかかります。ですから、時事問題を出題する中学校では、夏休みから秋早くに入試問題の作問をおおむね終えているケースが多いです。そのため、時事問題で取り上げられるのは、8月から9月までのできごとであることが基本です。
ただし、このような基本にあてはまらない例外的なケースもあります。例をあげてみましょう。2017年度の入試のときには、2016年11月のパリ協定発効、12月のアメリカ大統領選挙でのトランプ氏の当選が出題されました。ある程度スケジュールがわかっていたことと、連日ニュースで報道されていたということもあったと思いますが、このように、入試直前期に起こったできごとが出題された年度もあります。
そのほかにも、だいぶ以前の出来事ではありますが、2005年度入試では、2004年12月26日に起こった、スマトラ沖地震が3つの中学校で出題されました。社会、理科双方にまたがり、災害に対する危機意識の高まりがあった時期でしたので、できごとの重大性を考慮して、直前に起こったことでしたが、問題を差し替えた可能性があります。
2018年度の時事問題の傾向
2018年度でも、時事問題は多くの学校で出題されました。首都圏約120校の中学校で、どの話題やできごとが出題されたかランキング形式で挙げてみましょう。2019年度の入試でも出題される可能性があります。いくつ知っているか、理解していないものはないか、確認してみましょう。
- 移民・難民問題(シリア難民、UNHCR、ロヒンギャ問題など):21校
- 訪日外国人にかかわる動向、問題点など(インバウンド、民泊、爆買いなど):18校
- 核兵器禁止条約について(日本が調印しなかった理由、ICAN、非核三原則、オバマ前アメリカ大統領の広島訪問・演説など):15校
- パリ協定について(アメリカの離脱、CO2排出量など):12校
- 宗像・沖ノ島の世界遺産登録について(福岡県、海の正倉院など):12校
- トランプアメリカ合衆国大統領の政治や発言について(アメリカとメキシコの国境に壁を建設する理由、TPP離脱など):9校
- イギリスのEU離脱について(EU離脱による影響、首相交代なども含め):8校
- フランスの大統領選挙、イギリス・ドイツの首相について(元首の名前:マクロン、メイ、メルケルや写真も含めて):8校
- 2017年度の衆院議員選挙について(臨時国会冒頭の解散の問題点、定数の変更など):8校
10校近くの中学校が出題している問題以上の出題率が高かったテーマについてあげてみました。内容にはかなり難しいものも含まれています。移民・難民問題は上位に位置していますが、シリアの世界地図での位置や、ロヒンギャという国をもたない人々、難民キャンプなどは、恵まれている日本のお子さんにとってはイメージしにくく、したがって覚えにくいものでもあります。
世の中のできごとに対して常にアンテナを張り、知識欲がおうせいな受験生でないと、表面的な知識だけ詰め込んで終わりになってしまい、何が本質的な問題点なのか、という深い考察をできず、結局不正確な知識を書いて不正解になる、ということも少なくないのが近年の時事問題です。2019年度に出題されるテーマについてはのちほど書きますが、2018年度の入試で多く出題されたテーマに関して、夏のうちにぜひ理解を深めておくことをオススメします。
「周年問題」も意識することが大切
時事問題は、一般的には入試のある年度やその前年度に起こった出来事から出題されることが多いですが、気をつけたいのが「周年問題」です。周年問題とは、入試のある年度やその前年度を中心にして、節目の年に起こったできごとについて出題する、時事問題の一種です。2018年度に多く出題された周年問題のテーマは、以下のようなものでした。
- 日本国憲法施行から70年:8校
- 大政奉還(王政復古)から150年:7校
- ASEANができてから50年:3校
形は時事問題ですが、テーマに合わせて地理、歴史、公民などさまざまな視点から考えさせ、知識と知識の結びつきを確認するために、周年問題を出題する中学校も増えていますので、ぜひ意識しましょう。50年、100年、など、節目の年号をまとめておくと対応しやすくなるので、年表を見て関係性を理解しておきましょう。
カテゴリー別・実際の時事問題の出題
ここまで、2018年度に多く出題された時事問題のテーマがどのようなものであったか例を挙げてきました。実際の時事問題の出題に対応できる知識がどこまで必要か、どのような意識をもって学習すべきか、具体的に解説していきましょう。
移民・難民問題ーー「日本との関わり」を深く考えることが重要
2018年度、首都圏の中学校で出題された時事問題で最も多かったテーマは、「移民・難民問題」でした。依然、世界中で広がり続ける問題ですので、今後も出題される可能性は非常に高いといえるでしょう。来年度の入試に向けて、意識しておいていただきたいテーマです。
受験生の皆さんは、移民や難民がどのような人々のことを言うのか、世界中にどれほどの難民キャンプがあるのか、世界中の国(日本も含めて)の移民政策はどのようになっているのか、ということまで考えたことがありますか?
現在、世界中でもっとも数多くの難民を出している国はどこでしょうか?答えは「シリア」です。また、ミャンマーの西部に暮らすイスラム系少数民族の「ロヒンギャ」に対する人権侵害の問題もよくニュースなどで話題になっています。
このような難民の救済や、人権侵害の問題をおこなっているのが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)です。日本でも、緒方貞子さんなどが活躍したこともあり、UNHCRに対する知識や、国際連合の各機関と国際関係全体についても、基本的な関係性はしっかり理解しておくことが必要です。
日本は、世界でも移民を受け入れないこと、難民認定が厳しいことや、日本で暮らす難民の家族が強制送還されることが非常に多い国です。つまり、移民・難民問題に対して積極的に受け入れていないのです。日本が単一民族からなる国であることも関係ありますが、ヨーロッパでは難民を受け入れる国も多く、逆に受け入れ数が多いために従来の住民から抗議運動が起こるという現象も起きています。
このような日本の態度から、日本は移民や難民問題とは関係が薄いと思われがちで、国民の移民・難民問題に対する関心も高いとは言えません。ですが、実は日本にも移民とは深い関係があります。
たとえば、慶應義塾中等部は。1908年に始まったブラジル移民について出題しています。また、それより以前のハワイ移民について、桜蔭中学で出題されています。
中学受験では、小学校の教科書や授業の内容をしっかり理解していることが前提です。実は、日本の移民の歴史については、小学校の教科書でしっかり取り上げられています。近年、特に難関校では、このように教科書に載っている内容を題材にして入試問題を作る傾向がよくみられます。塾のテキストで知識をまとめたものを覚え、理解することとともに、しっかりと小学校の教科書を読み込んでおくことが、中学受験では実は非常に重要なことなのです。
教科書を読む際には、教科書に書かれている文章だけでなく、写真や図、史料などの説明、年表などもよく読むようにしましょう。知識問題だと思うとどうしても文章部分を読み込むことで覚えようとすることが多いですが、近年はかなり細かい資料も出題されます。地図帳や図表を必ず横において学習するように心がけましょう。
移民問題や難民問題に関する時事問題は、自分の身近な生活や世界の国と日本との関わり、世界情勢全体について、一度しっかり考えてみることが大切です。
日本国憲法施行70年—— 「憲法とは何か」根本的な理解が問われる
公民分野、特に憲法に関する問題は毎年多く出題されますが、2018年度に目についた時事問題としては、日本国憲法が施行されてから70年ということに関連して、そもそも「憲法とは何か、何のためにあるのか」という根本的な理解を問うような問題が目立ちました。
たとえば、早稲田中学では、日本国憲法の「基本的人権」とはどういうものか(だれもが生まれながらにしてもっている、人間らしく生きる権利)ということや、憲法第99条等について出題されています。憲法第99条では、「憲法尊重擁護義務」が定められています。少し難しいことばですが、内容は、憲法を尊重し、擁護する義務を負うのは天皇、国務大臣、国会議員などの「公務員」と定められています。憲法尊重擁護義務を負う人の中に、「国民」は入っていません。
なぜ国民が入っていないかというと、憲法とは、本来、国や権力者が勝手に物事を進める力を制限し、個人の人権を保障するためにあるからです。そして、日本国憲法では、「主権者」は国民だと定められています。もちろん、主権者だから、憲法尊重擁護義務者の中に入っていないからといって、国民がなんでも勝手に行動してもよいということではありません。ですが、国の権力が不正に使われると、国民の人権が侵害されてしまいます。
そのため、実際に政治に携わる政治家や公務員に憲法を守らせるために、国民は「憲法尊重擁護義務を負う」側には入っていないのです。憲法第99条については、他にも、明治大学付属明治中学校、豊島岡女子中学校、東邦大東邦中学校(推薦)、富士見中学校などでも取り上げられました。憲法の本質をきちんと理解できているかどうかがポイントになっています。
移民・難民問題や憲法以外にも、2018年度に多く出題された、訪日外国人の動向や、世界遺産などについては、2019年度も引き続き時事問題のテーマとして取り上げられる可能性が高いと考えられます。ぜひ、今のうちに知識を整理しておきましょう。
もし手に入るようでしたら、昨年度の時事問題集や重大ニュースを一通りおさえておくことも学習の参考になるでしょうし、昨年の各学校の時事問題だけピックアップして解いてみることも時事問題に対する抵抗感をなくすのにオススメの方法です。
2019年度に出題される可能性のある時事テーマは?
2018年度の時事問題のテーマについて解説してきましたが、2019年度はどのような時事のテーマが出題されるでしょうか。考えられるもの、また、受験生であればぜひ知っておいていただきたいことを挙げていきたいと思います。
訪日外国人旅行者、外国人労働者の増加
受験生の皆さんも、テレビなどで、日本を訪れる外国人旅行者が増え続けているというニュースを耳にしたことも多いのではないでしょうか。ただ「外国人旅行者」と一口にいっても、さまざまな国から訪れてきています。中でも、どの国や地域からの訪問者が多いのか、そしてなぜ増えているのか、ということについて考えたことはありますか?そういった根本的な知識や、理由についてもしっかり理解しておくことが必要です。
2017年に、日本を訪れた外国人旅行者の数はどのくらいだと思いますか?約2870慢人です。非常に多いですよね。どこの国や地域から訪れる人が多いか分類してみると、中国・韓国・台湾・香港・アメリカの順になっています。
日本は中国や韓国などといろいろな国際問題を抱えていますが、それでも日本を訪問する人々はあとを絶ちません。そのような点を「なぜだろう?」と疑問を持つことができるかどうか、ということも今後聞かれる可能性が高いので、さまざまな問題とも関連付けて理解するようにしましょう。
日本を訪問する外国人旅行者が増えている理由は何でしょうか?円安によって旅費や日本国内の買い物が安くできるようになったこと、LCC(格安航空会社)の国際線の増加、クルーズ船の寄港が増加していることなどが挙げられます。
円安については、なぜ日本での買い物が安くなるのか、仕組みも知っておく必要があります。経済分野で出題されることがありますが、正確に理解できていない受験生が非常に多いので、今のうちに仕組みをしっかりおさえておきましょう。
また、日本国内で働く外国人労働者も増えています。その数は、いまや100万人を超えています。その背景には何があるでしょうか。100万人を超えている、ということだけ覚えるのではなく、背景や理由をしっかり理解しておきましょう。
大きな理由としては、日本の人口減少による人手不足があります。特に外国人労働者として多いのは、ベトナム、フィリピン、ブラジル、ネパールの労働者です。就労ビザの問題や賃金不払いなどの問題も起きていますし、どこの国の労働者がどこの地域に多く住んでいるか、それによって文化交流などもおこなわれています。
そのような外国人労働者が製造したものが、われわれの日常に使われ、あるいは輸出されています。人件費の安さも外国人労働者が増えてきている原因の一つになっています。人が流入してくるということには必ず背景があります。それを意識してさまざまなことを関連付けて理解しておきましょう。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産へ
時事問題のみならず、地理や歴史とも関連して、世界遺産に関する問題は毎年とてもよく出題されています。潜伏キリシタン、キリシタン狩りということばを聞いたことはありますか?キリスト教の伝来(1549年)について、また、島原・天草一揆(1637年)といった、関連する歴史の流れや、できごとが起こった経緯まで理解しておきましょう。
また、地図帳で位置もしっかり確認しておきましょう。よく間違える受験生がいますが、島原は「長崎県」で、天草は「熊本県」です。世界遺産はいくつかの県にまたがることも多いので、地理的位置はしっかり把握しておきましょう。
長崎・天草以外にも日本には世界遺産がいくつもあります。世界文化遺産、世界自然遺産など、分類もさまざまです。一度白地図などに書き込んで、日本にある世界遺産をまとめておくことをオススメします。
「18歳成人」——改正民法などの成立について
成人の年齢はこれまで20歳とされていましたが、これを18歳に引き下げることなどを含んだ改正民法などの法律が、参議院本会議で可決され、成立しました。今は、2022年4月1日の施行を目指して体制を整えている期間です。
この法案の成立によって、女性が結婚できる年齢は16歳から18歳に引き上げられ、結婚できる年齢はこれまで男性は18歳、女性は16歳と異なっていましたが、両方とも18歳に統一されました。
また、成人の年齢が引き下げられたことと選挙権の関係は切っても切れない重要事項です。このことをきっかけにして、政治に関すること、少子高齢社会などについての出題は今後も増えることが予想されます。社会制度との関連も重要ですので、公民分野全体の基礎知識の徹底を意識して学習しましょう。
「政治分野における男女共同参画推進法」の成立
これまでも、男女雇用機会均等法や、男女共同参画社会といったことは公民分野で必ず知っておかなければいけない知識でした。今回の「政治分野における男女共同参画推進法」は、選挙において、男女の候補者数をできるだけ均等にするように、政党に求めるという法律です。
日本の女性議員(衆議院議員の場合)の比率は10.1%と、以前に比べ増えてきたものの、世界193か国中158位で、先進国と言われる国ではまだまだ非常に少ないのです。
男女平等と選挙の関係は複雑です。今後、女性が本当に政治に参画する機会を増やすことは多様な考え方、立場から国民を代弁するということからとても重要ですが、憲法の男女平等との関係もあり、少々難しいこともあります。
ですが、今後、中学校に入ってから学習を進めるためには、さまざまな意見があるでろう問題について、自分はどう考えるのか、それはなぜか、という視点が欠かせません。そういう点では今後も問題にされやすいテーマですので、しっかり理解しておきましょう。
その他、今上天皇の生前退位による改元(関連して一世一元の制)、旧優生保護法によっておこなわれた人権を無視した国家的事件、最近初めて適用された司法取引などについても取り上げられる可能性が高いと考えられます。新聞やニュースでしっかりチェックして、知識と背景を結び付けて理解しておきましょう。
周年問題(2018年を基準に『あれから○○年』問題)
先ほども、周年問題について言及しましたが、入試の前年度、または入試の年度からみては節目の年に起こったできごとについて出題される問題が増えています。2019年度に出題される可能性が高いものを挙げておきましょう。今のうちに意識しておき、年表などで知識をたしかにしておくと、あとであわてずにすみます。
- 1818年 伊能忠敬が死去(200年前)
- 1858年 日米修好通商条約の調印(160年前)
- 1868年 戊辰戦争(1868年から1869年)、五箇条の御誓文、五榜の掲示、一世一元の制(150年前)
- 1918年 シベリア出兵、米騒動、原内閣の成立(100年前)
- 1928年 初の普通選挙(90年前)
- 1938年 国家総動員法の制定(80年前)
- 1948年 世界人権宣言の採択(70年前)
- 1958年 東京タワーの完成(60年前)
- 1968年 イタイイタイ病の認定、小笠原諸島の返還(50年前)
- 1978年 成田空港の開港、日中平和友好条約の調印(40年前)
- 1988年 青函トンネル開業、瀬戸大橋開通、牛肉とオレンジの輸入自由化(30年前)
- 1998年 冬季オリンピック長野大会開催(20年前)
2019年度の入試で取り上げられる可能性の高い周年問題としては、2018年から何年前から、という問題が多いと考えられます。特に、1868年(150年前)、1918年(100年前)、1968年(50年前)は最優先で知識を整理しておくことをオススメします。とくに100年前は、似たような数字が出てくるなど間違えやすいことばがよく出てくるので、しっかり整理しておきましょう。
これまでに歴史で学習した内容について、年表などを利用して、「2019年から○○年」という周年に関するできごともまとめておくとよいでしょう。
理科・社会にまたがるテーマには要注目!
時事問題というと、社会で出題されると思いがちです。もちろん、社会では非常に多く時事問題が出題されますが、近年の入試問題の特徴として、理科に関しても時事問題が出題されるようになってきています。その数はだんだん増え、首都圏の中学校の約4分の1の中学校で出題されるようになってきています。また、社会だけ、理科だけでなく、社会と理科の融合問題も目立つようになってきています。
2018年度に最も多く出題された理科の時事問題のテーマは、「ヒアリ」でした。9校で出題されています。昆虫など生物に関する関連問題を作りやすいテーマだったと言えるでしょう。
理科の時事問題でほかに外せないのは、地震の起こる仕組みや、ロケットや人工衛星などの打ち上げと地球の自転の関係などが挙げられるでしょう。地震は社会と理科の融合問題としても出題される可能性が非常に高いテーマです。社会の時事問題を解くときにも、理科の正確な知識があることによって、さらに深く問題を読み込み、取り組むことができるようになります。
理科の時事問題対策としては、なによりも生物・地学・物理・化学の4分野の正確な基礎知識を理解し、覚え、使いこなせるようになるまで練習することが重要です。その正確な知識こそが、一見複雑そうに見える時事問題を、自分の知っている知識に引き寄せて考えることができます。夏の間に、苦手分野の基礎知識をしっかり整理し、覚えて定着させることを優先してください。
時事問題を攻略するポイントは、世の中のできごとに疑問をもつこと
2018年度に出題された時事問題のテーマ、2019年度にテーマとなる可能性の高い時事の話題について書いてきました。こういった時事問題のテーマを、みなさんはどのように攻略しますか?予想を立てて決め打ちで詰め込んで少しでも点数が取れればラッキー、というように優先順位を低くとらえていないでしょうか。
時事問題は、いまやほとんど出題しない中学校がないほど、いろいろなテーマがいろいろな形式で問われるようになっています。直前期に重大ニュースを丸暗記し他だけでは歯が立ちませんし、第一、自分が身に着けている基礎知識を使うことができず、他の受験生に大きく差をつけられてしまいます。
では、時事問題に強くなる、また、苦手意識をなくすためにはどのようなことが必要でしょうか。大きく分けると、2つ重要なことがあります。
時事問題攻略ポイント①常に世の中のできごとに疑問をもつこと
時事問題に強くなるために、第一に重要なことは、今、世の中で起こっていることや社会的に問題になっていること、国際的に話題になっていることなどについて、「なぜそのような問題が起きるのか」「どうしたら解決できるのか」ということを常に考えることです。このような疑問をもたずにただ暗記に頼ったとしても、歯が立たないのが今の時事問題です。
なぜこのような「疑問を持つこと」が大切なのかというと、あるできごとについて疑問を持つことによって、そのことについて調べてみよう、理解しよう、といった好奇心や、世の中で起きているできごとについて興味や関心が枠きっかけになるからです。お子さんは本来的に、非常に好奇心の強いものです。その好奇心を刺激するのに最適なのが、時事問題について「なぜ?」「どうして?」と疑問を持つ姿勢なのです。
お子さんは、推理ものの小説やマンガに興味を示しているでしょうか?推理もののだいご味は、トリックを考えたり、結果が明かされるまでに起こるできごとから自分で推理する、つまり考えるところにあります。
時事問題もそれと同じで、日本や世界で起きているできごとの背景や理由を探る、つまり推理することをおもしろいと感じることができる、ということが攻略するポイントです。なにかできごとが起きるときには必ず背景や理由があります。
それを探すのが面白いと感じられるようになると、自分でその背景や理由を探すのが楽しくなってきます。そうすると、時事問題に対する抵抗心が薄れ。時事問題を勉強するのも苦ではなく、むしろ「今起こっている出来事を知っている」ことに対する楽しさが勉強を後押ししてくれます。
ただし、お子さん一人で問題集に向かっても楽しさを感じることは難しいでしょう。やはり、ニュースなどでリアルに世の中で何が起こっているのか、そしてそれはなぜなのか、ということを考える機会をできるだけ多く持つことが有用です。そのように仕向けるためには、やはり保護者の方の腕の見せどころと言えるかもしれません。
塾の拘束時間が長く、テレビのニュースを見ることができないという受験生も多いかもしれませんが、最近はオンデマンドで視聴することができます。ただ文章を読んで頭に詰め込むよりも、世の中で起こっているできごとの実態を視覚的にとらえることができる方が、お子さんの記憶に残りやすいです。ですが、難しい内容もありますから、そのときはぜひ一緒に見ていただくなどして、そのできごとについてお子さんにわかりやすく説明してあげていただきたいと思います。
実際の中学入試の出題傾向を見ても、ほとんどの学校で、時事問題に関しては「なぜそのようになるのか理由を述べなさい」「あなたの考えを、問題文の根拠に基づいて書きなさい」という問題が出題されています。特に難関校では、記述問題の形で聞いてきます。ですから、時事問題においては、「なぜ」「どうして」が出発点であり、学習のモチベーションにもなるのです。ぜひ、保護者の皆様もお子さんの時事問題攻略に手を貸してあげていただければと思います。
たとえば、このような例があります。ある小学生が、ご両親と動物園に行ったときに、ライオンが出ていなかったことがあったそうです。そのお子さんは、動物園にはライオンがいるものだと思っていたので、なぜライオンがいないんだろう?と疑問を持ちました。
その疑問を解決したくて、動物園の職員の方に、「なぜライオンがいないのか」と尋ねたところ、ライオンは絶滅危惧種の動物であること、絶滅危惧種の動物は、その種ごとに、一つの動物園でまとめて飼育したり、計画的に繁殖をすすめているということを説明してもらったということです。他にも、パンダなども、赤ちゃんが生まれるかもしれないといったときには一般公開をしないですよね。どのような動物がいま世界的にどのような状況にあり、生態系を守るためにどのような工夫がなされているのか、というような一連のことに疑問を持ち、専門家に聞くなどして調べるという姿勢は、これから中学校に入学してからも、学習を進めるうえで必須の姿勢になってくるでしょう。
もちろん、動物園に行っている暇は受験生の皆さんはないでしょうから、ニュースなどで目にしたものでかまわないです。自分がこうだと思い込んでいたことが、実は社会的な問題になっていることに気づき、その疑問を解消するということは、時事問題を攻略するためには必須の力だといってもいいでしょう。
「なぜ」「どうして」とお子さんが考えることを、「やることがたくさんあるでしょう!」といってシャットダウンせずに、保護者の皆様もその疑問を大切にしてあげて、一緒に攻略しよう、と工夫してみていただくとよいと思います。
時事問題には「歴史」あり。歴史を意識すると、時事問題が攻略できる
もう一つ、時事問題において大切なことは、今の世の中で起こっていることであっても、必ずそのような問題が起こるには理由がある、つまり「歴史的背景がある」ということを意識することです。今の世の中で起こっていることも、突然問題になってきたわけではありません。必ず歴史的な背景や理由があるということに気づくことができると、時事問題に限らず、問題解決への取り組み方が目に見えて変わってきます。
たとえば、あなたの苗字は何ですか?なぜ自分の苗字ができたのか考えたことがあるでしょうか。学校や塾でもいろんな人に出会うと思いますが、それぞれ皆さん苗字がありますね。大Kは漢字二文字、中には三文字、一文字、四文字という方もいます。全国的に見て圧倒的に多いのは二文字の苗字で、それだけで9割を占めると言われています。それ以外の字数の苗字がいかに少ないかわかりますね。では、なぜそのような違いがあるのでしょうか。
苗字は地名と非常に深い関係があることが多いです。苗字の9割は地名からきているといわれており、地名も漢字二文字ということが多いですよね。つまり、対応していることが多いのです。
なぜ二文字の苗字、しかも地名と関係が深い苗字が多いのでしょうか。おおもとにさかのぼると、大宝律令の時代(701年)が起源だと考えられています。このころ、日本でも中国にならって、各国(地域)を漢字二文字にすることが決められたと言われています。中国の地名も考えてみてください。「北京」「上海」など、漢字二文字のところが多いですよね。
もともと、日本の国(地域)の名前は、一文字のところや三文字のところもあったのですが、それがさらに二文字に改められました。ちょうど同じころ、いわゆる「元号」が本格的に使われるようになりました。元号も、「平成」や「昭和」など、漢字二文字ですよね。
元号をつくったのは中国の皇帝だと言われています。ただ定めただけではなく、いろいろな目的があったようです。土地や人だけでなく、人々の時間までも支配するためといわれています。元号を使うことは、その元号を定めた人に従うという歴史的な意味がじつはあるのです。
あるできごとや、普段身近にあるものにも、それぞれ背景や歴史が必ずあります。その歴史を知ると、できごとなどの別の面が見えてきます。「いつからこういうことが起こったのかな」「昔はどうだったのかな」「どのように変化したのかな」などと考えるクセをつけると、時事問題だけに限らず、さまざまな考察問題に対しても興味を持って取り組むことができるようになります。
もし、テレビのニュースなどで気になるできごとがあったら、ぜひその場で地図を見て場所を確認してみたり、数字に注目してみたり、そのようなできごとが始まったきっかけやこれまでの経緯を調べてみたり、親子で会話してみていただくと、さらに興味を持つことができます。そして、さまざまな方向からものごとを考える、という基本姿勢が身につきます。
ぜひ、保護者の方もお子さんと一緒に世の中のできごとに注目していただき、なぜなんだろう、どういう歴史があって今の状態にあっているのだろう、というように、お子さんと一緒にさまざまな視点を持って考えてみてください。ときにはヒントをあげたり、「どう思う?」と聞いてみるなどしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
大学入試改革を目前として、新しい学習指導要領では、「思考力」「判断力」「表現力」という学力を受験生にも求めています。これらの力はすぐに身につくものではないですが、今からでも十分時間はあります。
まずは、「読解力」を身に着けることが最重要です。今後、入試問題の問題文はさらに長文化すると考えられますし、設問も複雑化してくると考えられます。そのときに、正確に読み取ることができなければ、いくら考えても正解にたどり着くことは難しいですし、問題文を読むだけでタイムアップということにもなりかねません。特に、時事問題ではそのような傾向が進むと考えられます。
読解力は、本を読むのが好きなお子さんは身についていることも多いですが、好きな本を読むのと、入試で出題される文章を読むのではわけが違います。なぜなら、「客観的な読解」が求められるからです。
塾の国語の問題を解くことである程度養うことができますが、なかなか文章によっては好き嫌いがあったり、読解の結果にばらつきが出ることもあります。また、他の科目に応用が完全に聞くわけではありません。
そこで、時事問題対策として是非オススメしたいのが、保護者の方とお子さんとが一緒に新聞を読むことです。すべて読む必要はありません。一面や社説、社会面、国際面や、その解説文などがオススメですし、興味を持つことができると思います。
新聞には最新の世の中のできごとや、データがたくさん載っています。また、書かれている文章も、おおむね客観的に事実を伝えていることが多いですし、書いているのは文章を書くプロです。難しいことばについてはワンポイント解説もついています。毎日それらすべてを読まなくても、少しずつでも読んでいくと、世の中の動きを知るとともに読解力もつけることができます。
また、写真やマンガ、図などでわかりやすくまとめてくれている話題もあるので、その日一番注目したニュースの部分だけでも構いませんから、ぜひご一緒に新聞を読む習慣を持つことをオススメします。
そして、そのことについて、家族で話題にして、それぞれ意見を出し合うのも、時事問題に興味を持つきっかけになります。日々長時間塾に行っているお子さんとのコミュニケーションの場にもなりますし、お子さんの考え方や発想を知ることができます。思いもよらない斬新な意見が出てくるかもしれません。
時間がないときは、見出しだけ目を通して、どういうことが起こっているのか想像する、というだけでもお子さんの好奇心を刺激することができます。小学生向けの新聞もいろいろと出ていますので、ぜひ利用してみていただきたいと思います。
もし、新聞を読んでいて出てきた地名や、わからないことばは、すぐ調べられるように、地図帳や国語辞典(小学生向けのもので十分です)を横においておくとよいでしょう。それでも理解しきれない場合は、ぜひ親御さんがかみ砕いて説明してあげてください。
日常的に、家庭の中で政治や社会の話をされているというケースは少ないかもしれません。それは、お子さんがついていけない場合もありますし、関心を示さないまま、親どうしで話をしているのをなんとなく聞いているだけ、ということも多いです。ですが、話題が塾での勉強やテストの成績だけというのでは、お子さんも好奇心の発揮のしようがないですよね。
これから始まる教育改革で求められる学力の内容を考えても、小学生だから知らなくてよい、というのではなく、なにか気になるできごとや新しいできごとが出てきたら一緒に議論したり軽く話したりできる環境をご家庭の中で整えてあげるのもよいですね。
時事問題は社会でよく出題されますが、社会という教科は、自分たちの住んでいる国土やルーツ、国の政治の主人公は国民であるということを学んでいく教科です。お子さんも国の主人公なのです。そのような意識をもって、受験に必要な基礎的な知識や、さまざまな視点からものごとを見ること、さらには自分なりに考えていく力を養う教科です。
時事問題は、「そういった世の中のできごとに興味を持っていますか?」「これからはあなたたちの時代ですよ、自分が主人公になって問題を解決していくにはどうしたらよいと思いますか?」という、中学校からの問いかけであるともいえます。
ぜひ、時事問題の勉強を通して、お子さんが自ら考え、問題点を見出し、解決方法を導き出していく力を養っていくために、保護者の方もご協力ください。夏の間にそのような体勢ができていれば、時事問題に必要以上に苦手意識を持つこともなくなります。ぜひ、親子で取り組んでみていただきたいと思います。
時事問題をある程度進めておくと、秋以降非常に楽になります。今回挙げた出題例や予想も含めて、いろいろなテーマやできごとについて今のうちから手を付けておくことをオススメします。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。