今回の記事では日本の制度・法律の歴史についてまとめていくものです。歴史の受験勉強となるとどうしても単語や用語を暗記することばかりに目が向きがちですが,その暗記を行うためにはストーリー立てて歴史を頭に入れていく方が覚えやすかったりします。したがって本記事を読みながら,要点を摘みつつ体系的な知識の習得を目指していきましょう。
制度・法律史とは…?
さて,そもそも制度・法律史とは何を指すのでしょうか。簡単に言ってしまえば,これは守るべきルールについてまとめた歴史のことを指します。今でこそ法律などのルールはみんなにとって得になることを目指して作られるものでしたが,最近までルールというのは一番の支配者のために作られてきました。そのため支配者が変わって時代が変わると,それに応じてルールのあり方も大きく変わってきたのです。それゆえ覚えることが多いのですが,今回は江戸時代に入るまでを中心に,1本のお話としてルールの変化を捉えていきましょう。
旧石器・縄文時代
まず旧石器時代と縄文時代ですが,この時代にはルールが特にありませんでしたので,ここで紹介することは特にありません。というのも旧石器・縄文という時代は狩りや漁によって食料を得ていたため,周りの人間と一緒に大規模な生活を営む必要がなかったからです。したがってルールが登場するのはみんなで共同生活をするようになった弥生時代からになります。
弥生時代
さて弥生時代ですが,縄文時代の欄でお話ししたように,この頃には稲作が始まります。みんなでお米を育てるわけですが,そのためには全体を取り仕切るリーダーが必要ですよね。弥生時代にはこのリーダーが王や豪族といった身分となり,その中でも最も大きい勢力であった大和政権=朝廷が日本をとりまとめるようになりました。
ここで登場したのが氏姓制度です。この制度は人々を血のつながった「氏」というグループにまとめ,それらのグループに朝廷との関係を示す「姓」という名前を与えることで人々を管理しようとした制度になります。今の姓名氏名のあり方とは違うことをしっかり意識して覚えておきましょう。
飛鳥時代
続いて飛鳥時代です。この時代に入る頃には大和政権の王は天皇と呼ばれるようになり,そのお世話をする人にも政治を動かす権限が与えられるようになりました。中でも一番有名なのが摂政の聖徳太子ですね。聖徳太子が作った制度として覚えておきたいものは2つあり,その1つ目が冠位十二階になります。これは朝廷ではたらく臣下を12のランクに分け,能力や功績に応じてこのランクを上げたり下げたりすることで,より優れた人間による政治を行おうと設けられたものになります。2つ目は十七条の憲法です。こちらは官僚や貴族が守るべき道徳やルールを17個集めたお触れ書きのことを指します。この憲法には仏教や儒教といった思想が取り入れられていて,和を尊重する・悪を懲らしめ善を勧めることといった心得を示すことで,役人の質を上げようという狙いが込められていました。この辺りは数字がごちゃまぜになりがちなので,注意して頭に入れましょう。
奈良時代
その後奈良時代に突入するわけですが,この時代は大化の改新という出来事が起き,中大兄王子・中臣鎌足が政治改革を始めてからの時代を指します。改新・改革ということで大きな変化があったわけですが,1番は公地・公民という制度により,それまで豪族や貴族によって支配されていた人々や土地を国が直接支配するようになったことが挙げられるでしょう。これが後の税制につながるわけですね。
そして中大兄王子つまりは天智天皇が亡くなった後,天武天皇によって更なる国づくりが進められます。それが大宝律令という制度です。これにより8つの省で政治が行われるようになり,それまでより統一された政治体系が完成しました。また地方のことを現在の県・市・町などにあたる国・郡・里に分け,地方に国の手が行き届きやすいようになりました。その他にはお米を納める租,都で働くか布などを納める庸,特産物などを納める調といった税制が確立され,政府が安定した財源を手に入れられるようになりました。この頃から覚えるべき事項が多くなってくるのですが,焦らず理解していきましょう。
平安時代
続いて平安時代に移ります。平安時代には京都へと都が移るわけですが,奈良時代に作った律令制度が作られてはや100年が経つこの頃にはずいぶん廃れてしまいました。そこで地方政治の監督や税制の強化,また格と式という追加ルールの制定だったり令外の官という新しい役職の設置だったりで,政治を立て直そうとしたのがこの時代になります。
平安時代は初めのうちは天皇が支配の中心にいましたが,やがて藤原氏を中心に,天皇を助ける摂政や関白が政治の実験を握るようになりました。そして最終的には院政,武士の政治へとつながるわけですが,この時代で見落とされがちな点が土地に関するシステムです。先の奈良時代で国のものとなり,広さに応じて税を納めなければならなくなった土地ですが,この時代にはその負担から土地を手放す人が続出します。そうして誰のものでもなくなった土地を裕福な貴族や寺社が自分のものにし,私有地を広げていってしまう事態に陥ってしまいました。このようにして影響力の強くなっていった貴族や寺社に対し,朝廷は国から税を取らない・人も立ち入らないという不輸・不入の権という権利を与えてしまいました。この制度によってますます国の力は当初の予想に反し弱まり,貴族たちの力が強くなっていくのが平安時代です。重要ではないですが,頭に入れておきましょう。
鎌倉時代
それでは鎌倉時代はどのような制度があったのでしょうか。この時代は平安の終わりに院政が敷かれ,それにより力が弱められた平氏と源氏をはじめとする豪族が反発し院政を終わらせ,さらにそのうちの源氏が平氏を滅ぼしてから始まります。つまりは武士・幕府による政治が始まったということですね。ここで行われた施策の1つが公領を監視する守護,私有地を監視する地頭の設置を朝廷に認めさせたことになります。これにより幕府はどんどん力をつけていくのですが,朝廷がいなくなったわけではないので,農民は幕府と朝廷の両方から支配されることになり,負担が増えてしまいました。また政治の制度面がシンプルになったことにも注目すると良いでしょう。幕府は警察を担う侍所・政治をつかさどる政所・裁判を行う問注所を作り,この役所が御家人と将軍の信頼を深めていきました。
以上の制度などにより力を蓄えていった幕府ですが,時が進むに連れ政治の中心は将軍ではなく将軍を補佐する執権へと移っていきます。また時間が経つに連れ朝廷の反発も強くなり,幕府はそれを倒していくわけですが,ここで出されたのが御成敗式目というルールになります。これは戦いに出る御家人の権利や裁判の基準などをまとめたもので,後の時代に大きな影響を与えることになりました。
そんな鎌倉時代はモンゴルの襲来によって途絶えてしまいます。モンゴルに対して応戦し追い払う幕府でしたが,あくまで追い払っただけなので幕府は御家人にお礼ができません。そこで登場した法律が,御家人の借金を帳消しにするという徳政令になります。借金が帳消しになるということで良いものかと思いきや,貸した側の人たちから大きな反感を買い信頼も失い,やがて足利をはじめとした別の武士グループに倒されることでこの時代は幕を閉じます。
室町時代
そして室町時代に移行するわけですが,ここでの支配の中心は足利という武士のグループになります。室町時代の初め,朝廷は北と南の2つの派閥に分かれます。足利はこのうち北側の味方として勢力を広げ幕府を作り,最終的には義満の時代に朝廷は1つにまとめられ,幕府の力はピークに達します。
この時代の政治や制度の構造の基本は鎌倉時代と変わりませんが,細かいところで違いが見られます。例えば幕府の仕組みについては,侍所・政所・問注所が存在するところは変わりませんが,それらを束ねる執権というポジションの名前が管領になっていたり,鎌倉を監視するための関東管領という役職が置かれたりしています。気をつけて覚えましょう。
そしてやがては後継者争いが発展して起こった応仁の乱により幕府の力が衰え,その最中に成長した守護である守護大名が力をつけ,各国で台頭してくることにより,最終的に室町時代は終わりを迎えます。
安土桃山時代
ではこの記事の締めとして安土桃山時代を確認していきましょう。先ほどの室町時代で大名が力をつけた後,分国法と呼ばれるそれぞれの国のルールをもとに領地を広げていく戦国時代が始まったのですが,その中の国の1つである織田家が室町幕府を滅ぼしてから安土桃山時代が始まります。安土桃山時代は江戸幕府の成立により終わるのですが,この時代は大きく2つの時期に分けることができます。
1つの区切りが織田信長の時代です。信長は楽市・楽座という制度により,税金を取らない自由な商売を認め経済を活性化させようと狙いました。また商売の税金以外にも関所での通行料をなくしたことにも注目しておきましょう。
そして後半の区切りが豊臣秀吉の時代です。彼は本能寺の変のあと信長のかたきを討ち,その後全国を統一しました。秀吉が定めた制度として覚えておきたいものは2つあります。1つ目は太閤検地です。これは全国の田畑の面積やそこから取れる作物の量を計算し,国に収めるべき税金がはっきりと,かつ統一された基準で定められ,年貢の徴収が確実なものとなりました。2つ目は刀狩です。これは武士ではない百姓から武器を取り上げるというもので,一揆をはじめとした反乱を未然に防ぎ支配を安定させようと狙って行われたものです。そしてこの刀狩の結果として達成できたのが兵農分離です。全国を守る武士・それを支える農民というように身分や権利を明らかに分離することで,軍事や経済の効率化を達成しました。秀吉は全国規模で行ったことが多く受験でも登場しやすいので,積極的に覚えておきましょう。
終わりに
本記事ではここで,安土桃山時代までの歴史の中から支配者層と作られた制度について着目して解説を行っていきました。歴史は文化史・経済史など覚えることがたくさんありますが,この制度や法律に関しては数々の情報の基盤となっているので,一番初めに流れを理解してしまうとその他のジャンルの勉強にも活かしやすいでしょう。よろしければ下記のおすすめ記事や参考書籍も使ってみてください。本記事が今度の学習のお役に立てば幸いです。
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