バランスの良い産業構造を中心に理解しよう!工業地域・工業地帯まとめ【阪神工業地帯編】

今回の記事は,日本全国に存在する工業地域・工業について一つずつご紹介していくシリーズの第8本目として,阪神工業地帯について解説していきます。工業地域・工業地帯という分野は中学受験で対策が欠かせない分野の一つです。それは,この範囲が出題されやすいだけでなく,他の受験生も苦手としがちだからです。そのため工業地域・工業地帯が得意であればあるほど,周りの受験生と差をつけることができます。初めのうちは頭に入りにくいものも多いでしょうが,導入としてこの記事を読んでいただけると幸いです。

場所は?

それでは,まずは阪神工業地帯の場所から確認していきましょう。阪神という地名は,野球に詳しい人だったら「阪神タイガース」からイメージしやすいかもしれませんが,ほとんどの小学生にとっては馴染みのないことでしょう。

大雑把にいうと,次の図の青く塗られている部分が阪神工業地帯の区域になります。オレンジ色の点は代表的な都市を,()の中身はそこで栄えている産業を表します。ここで取り上げている都市・産業は,出来れば頭の中に入れておきましょう。

この地図から分かるように,阪神工業地帯は近畿地方,とりわけ大阪や兵庫の辺りを指します。前述の阪神タイガースも,兵庫県の甲子園を本拠地とする球団ですね。

この阪神という単語は,実は「大」と兵庫県の県庁所在地である「戸」から取ってつけられたものです。したがってもし場所がわからなかったら,阪神という単語を分解してみると分かりやすいでしょう。また阪神という漢字に関連して,「坂神」などと間違えて書かないように注意してください。前述したように阪神の「阪」は大阪を意味するものなので,漢字が違うと丸がもらえませんので,気をつけましょう。

工業の特徴!

それではここからは阪神工業地帯の工業の特徴について見ていきましょう。第1回から第5回までの記事で繰り返していますが,出荷額の高さ工業種類別の割合を覚えておくことが,この工業地域・工業地帯という範囲をマスターするためには不可欠です。詳しい意味は第1回の瀬戸内工業地域編で紹介していますが,出荷額の高さとはその地域でモノがどのくらい作られているのかを,工業種類別の割合とは全てのモノの中で多く作られているのは何の種類かということを指します。したがって以下ではこの2つの要素に注目していくことにします。

出荷額について

初めに確認するのは阪神工業地帯の出荷額です。下の図は全国の工業製品出荷額に占めるそれぞれの工業地帯・地域の割合についてのグラフです。この図から,全国の工業地域・工業地帯の出荷額がどれくらいか・日本の産業において何番目に栄えているのか,を理解することができます。

具体的な読み取り方ですが,この図では左から出荷額の大きい順に工業地域・工業地帯が並べられています。例えば一番左側,17.9%という割合である中京工業地帯は日本で一番ものを作っている,ということを指します。そしてその出荷額は全国の出荷額32兆円に17.9%をかけることで計算できる,というわけです。

それではこのグラフを使って,阪神工業地帯の特徴を覚えていきましょう。今回注目している阪神工業地帯はグラフの黄色の部分になります。(データは教育出版株式会社からの引用です。)

グラフを見て一目でわかる通り,阪神工業地帯は日本で2番目にモノを生産しています。そしてその生産額は全国のうち10.3%を占めている,ということもわかりますね。したがって阪神は日本でもトップクラスの工業地域・工業地帯だといえます。北九州工業地帯編で解説したように,工業地帯とは生産額が高い工業地域でしたね。この阪神も工業地帯の名にふさわしい生産額を誇っていることがお分かりいただけるかと思います。

ちなみにこの10.3%という数値は,関東内陸の10.0%・瀬戸売りの9.6%と近いので,データを取得した年度によっては順位が変動している可能性があります。このような変動に対応できるように情報を頭に入れることが大切です。細かい値は気にしないで「大体10%くらい」「2~3位くらい」と覚えておくといいでしょう。

盛んな産業について

それではここから阪神工業地帯で盛んな産業の種類について見ていきましょう。第一回の瀬戸内工業地域編で覚えたことをおさらいしますが,工業は主に重工業と軽工業に分類でき,重工業には金属・化学・機械が,軽工業には繊維産業や食料品産業が含まれます。詳しい説明は第一回の記事で行っていますので,忘れてしまった人がいたらそちらを確認してください。

では阪神工業地帯の産業の構成はどのようになっているのでしょうか。全国の割合と阪神の割合を比較するグラフを用意しましたので,そちらを参照しながら解説していきます。(データは教育出版株式会社HelloSchool社会科からの引用です)。

このグラフから,阪神工業地帯では金属産業の割合が高く,対して機械産業の割合が低いことが読み取れます。特に機械産業について,日本の工業は機械産業が中心であり,ほとんどどこの地域でも機械の割合は高めであるため,40%を下回るというのは珍しいです。

ただし,このことは機械産業が発達しないことを示すわけではありません。先ほど生産額 のグラフで阪神工業地帯の生産額は日本全国の10.3%だと申し上げましたが,これを金額に直すと330兆円にも上ります。そのうち約40%というのは132兆円ですので,生産額で言えば,阪神の機械作業はむしろ優れているといえます。

したがってこのグラフから導ける特徴は,特定の産業が栄えているということよりも,いろいろな産業がバランスよく発展しているということでしょう。このような産業間における偏りのなさを達成できていること工業地域・工業地帯はそれほど多くはありません。そのため重要な特徴の1つとして覚えておくと,受験を攻略する際に役に立つでしょう。

なぜ産業のバランスがいい?

ではなぜ阪神工業地帯では産業のバランスが保たれているのでしょうか。

その理由は,中小企業下町工場が栄えていて,全体での事業所数が多いからです。 事業所数については簡単に工場や会社の数だと思っていただけると良いのですが,阪神工業地帯はこの事業所数がおそらくすべての工業地域・工業地帯の中でダントツに多いです。

阪神以外の中京や東海といった工業地帯では,またそれ以外のどこの公共地域でも,これほどまで事業所が多いところはありません。このような地域では,コンビナートができていたり,慣習的に得たような産業が集まったりしていることが多いです。それゆえある1つの産業に特化している,別の言い方をすると偏っているのです。

他方この阪神では,事業所が多いことで必然的に競争が起こりやすくなり,他の事業所と棲み分けをしようとした結果いろいろな産業が発達し,バランスのよい産業構造になってきたのではないかと考えられます。

ちなみに阪神に来られた中小企業や下町工場が多い背景ですが,その由来は江戸時代まで遡ります。大阪は天下の台所と呼ばれる商業の中心地でした。この頃から商人や職人の街として賑わってきました。したがってその長い歴史の中で卓越した技術と豊かな経験が積み重なり,数多くの町工場が生まれたのでしょう。

北九州工業地帯との違いは?

ここで本シリーズのすべての記事を読んでいる方は気づくかもしれませんが,バランスが良いと言う特徴は北九州工業地域でも挙げられていましたね。したがってここまでの説明だと北九州との違いがわかりづらいかと思われますので,ここからは似たような特徴持って北九州工業地帯と詳しく比較していくことにしましょう。

まず大きな違いが生産額にあります。一番初めに乗せたグラフをしていただければわかるかと思いますが,阪神工業地帯は全国第2位の出荷額であるのに対し北九州工業地帯は全国第9位とかなり順位が離れています。

次に挙げられる相違点としては,バランスの中身ということが考えられます。阪神の工業種類別出荷額割合のグラフ,そして以前の記事で載せた北九州のグラフを改めて添付しますので,並べて比較してみましょう。

この2つを比べると,金属と機械の割合は類似している判断できるかもしれませんが,化学の割合と食料品の割合に大きな違いがあることがわかります。そのためバランスが良いといっても産業ごとの割合が若干違う,ということを頭に入れておきましょう。

工業以外産業の特徴!

以上が阪神工業地帯の工業の特徴です。工業地域・工業地帯という分野に苦手意識を持っている人はぜひこれらの特徴を覚えて今後の勉強に生かしてみてください。

ただし中学受験の社会をマスターするという意味では,工業の特徴を覚えておくだけだと不十分です。それは複合問題が登場されるからです。ある地域の工業の特徴から気候や人口,その他の産業の特徴を見出せという問題もありますし,逆にいろいろな地理的特徴から工業地域・工業地帯に話を飛躍させるという問題もあります。そのためここからは工業以外の産業,今回はその中でも農業と漁業にスポットを当て,お話ししていきたいと思います。

農業の特徴は?

まずは阪神工業地帯の農業の特徴についてです。まず農業を確認する前にこの地域の気候だったり人口だったりという要素について抑えておきましょう。温暖か寒冷か・都市か農村か,といった要素で生産される農作物は大いに変わってきます。

この阪神という地域は近畿北部の高地と近畿南部の山地に囲まれているため,比較的雨が降らず年中を通してやや温暖な気候となっています。山に囲まれている上に雨が少ない,というのはお隣の瀬戸内工業地帯の気候と似ていますね。この特徴を活かし,たまねぎやイチョウ,サンショウなどが生産されています。

ただ,阪神と言われて聞き馴染みの深いものはやはり畜産業でしょう。神戸牛・但馬牛といわれれば,一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。生産額が特別大きい訳ではないのですが,特徴の一つとして覚えておきましょう。

漁業の特徴は?

次に阪神工業地帯の漁業の特徴について見ていきます。この地域は瀬戸内海に面しているため,前述した瀬戸内工業地帯で紹介したものに近い漁業が行われています。おそらく最も盛んだと言えるのが養殖業でしょう。この地域ではノリやカキ,ワカメの養殖が盛んであり,日本全国に出回っています。

また漁業が盛んに行われているのと同時に,水産加工業も行われています。ちりめんじゃこ・釘煮などが有名ですね。ここまで詳しい商品名は覚えなくても問題ありませんが,加工業という側面から地理を捉えることもできる,ということだけ軽く抑えておきましょう。

まとめ

今回は阪神工業地帯の特色について簡単にまとめていきました。前述したように,この地域の工業の特徴はバランスの良さということだったため,他の地域と同じような覚え方では知識が定着しないかもしれません。そのため何度も記事を 繰り返して読んで,少しずつ着実に受験本番に向けて社会をマスターしていきましょう。また他の工業地帯・工業地域と比較して覚える,というのも有効な手段であるでしょう。よろしければおすすめ欄にある他の記事を読んでみてください。この記事が今後の勉強のお役に立てば幸いです。

(ライター:大舘)

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