倍数と約数について振り返ろう!

今回は整数という分野の中から倍数と約数に焦点を当てて,基礎的な定義の復習から受験に出てくる実践問題の解説までをカバーしていきます。

倍数・約数をはじめとする整数の範囲は,基礎的な部分こそ簡単ですが,発展的な問題がしばしば中学受験に出題されます。したがって整数に関する内容を十分に抑えられていると思っていても,本番で苦戦してしまう,といった事態に陥りがちです。

そのため本記事では,整数の中でも倍数と約数を取り上げて,復習と演習をしていきます。実際の入試問題をいくつか引用していますので,よろしければご一緒に解きながら読み進めてみましょう。

語句のおさらいをしよう

倍数とは

まずは倍数と約数とは何か,ということについておさらいしていきます。

倍数とは,ある数字を0倍,1倍,2倍,3倍,・・・と整数倍していった数の集まりのことを指します。例えば2の倍数は0,2,4,6,・・・というようになります。一般的にこの2の倍数偶数と呼びますね。そして偶数でない数字奇数と呼びます。どんな数字でも,最小の倍数は0となります。しかし倍数に最大のものは存在しません。それは整数倍を永遠に続けることができるからです。したがって倍数は数が無限に存在します

公倍数・最小公倍数とは

では倍数と関連するところで公倍数についても復習しておきましょう。公倍数とは,ある2つ以上の数字を考えたときに,共通して存在する倍数のことです。例えば3と4の公倍数は12,24,36,・・・となります。これは3の倍数と4の倍数を並べたときに,12という数字が共通して存在することから導ける数字です。この公倍数のうち一番小さいもの最小公倍数と呼びます。

約数とは

次に約数について解説いたします。約数とは,ある数字を割り切ることのできる整数の集まりのことです。例えば10の約数は1,2,5,10というようになります。これは,10は一体どの整数で割ることができるか,を考えていったときの結果です。ある数字の約数は,無数に存在する倍数と違い,有限個しか存在しません。それは最大値が決まっているからです。例えば先程の例で言うならば,10は11より大きい整数では割り切れません。つまり最大の約数が決まっています。そのため約数の数には限りが出てきるのです。また,どんな数字でも最小の約数は1 になります。

公約数・最大公約数とは

また約数と関連するところで,公約数についてもおさらいしていきます。名前が先ほどの公倍数に似ていますね。この公約数とは2つ以上の整数に共通する約数のことです。例えば6と9の公約数を考えてみましょう。6と9はどちらも1で割り切れます。加えて3でも割り切れます。したがって公約数は2と3になるのです。整数の約数は数に限りがあるため,公約数も数に限りがあります。そしてこの公約数のうち最も値が大きいもの最大公約数といいます。

素数とは

さらに約数に関連するところで,素数についても振り返っていきましょう。素数とは1とその数自身との計2つしか約数を持っていない数のことを指します。例えば2が素数として挙げられます。それは2を割り切れる整数は1と2自身しかない,つまり約数は2つしかないからです。20以下の素数(2,3,5,7,11,13,17,19)だけでも,覚えておくと受験に有利に働きます。ちなみにこのとき1は素数に含まれないことにも注意しましょう。

問題演習①

ではここからは上の倍数・約数に関する問題を解いていきましょう。

6を加えると7の倍数になり,7を加えると6の倍数となる最小の整数を求めなさい。

(明治大学付属中野八王子中学校(2017),一部改題)

いかがでしょうか。倍数の定義を知っているだけでは解けそうにない問題ですね。このように整数の分野ではみんなが知っている知識をどれだけ応用できるかということが問われやすいです。まずはこの問題を自分の力で解いてみてから,次の解説を参考にしてみましょう。

解説①

ここからは解説に移ります。まず6を加えると7の倍数になる数のことから考えていきます。この条件に該当する数字は例えば,1や8が当てはまります。この2つの数字は6を足すとそれぞれ7・14となりますね。そして同様に7を加えると6の倍数になる数字についても考えると,例えば5や11が当てはまります。

それではこれらの数字の中から2つ目の条件に当てはまるものを選ぶにはどのようにすればいいのでしょうか。そのためのテクニックが□を使って表すというものです。

ここでは2つの条件に当てはまる最小の整数を□で表すことにしましょう。□について考えたとき,□に13を足すと6の倍数にも7の倍数にもなるという性質が導けます。これは6の倍数に6を足しても6の倍数になる・7の倍数に7を足しても7の倍数になるという性質を使った結果です。

そして6の倍数にも7の倍数にもなるということは,67の公倍数である42の倍数と言い換えられます。つまりある数字を□としたときに,次のような式が成り立ちます。

□+13=【42の倍数】

考えるのは最小の□であり,□が最小のとき42の倍数も最小のものを取るので,次のような式に新たに書き換えられます。

□+13=42

この資格に当てはまる数字を考えると,答えは29となります。

もちろんこのとき,上であげた1や8の例をたくさん並べ,その一つずつについて7を足すと6の倍数になるか,と確かめていくことでも計算できます。

1は7を足すと8になり,これは6の倍数ではありません。8も7を足すと15になってしまうため,6の倍数にはなりません。このような手順を15・22と繰り返していくと,29が6を足すと7の倍数になり,7を足すと6の倍数になる数字であることが判明します。29+6=35は7の倍数であり,29+7=36は6の倍数です。

このように地道に問題を解いていくのも受験においては有効な技術の一つです。□が上手く使えなさそうなときや,テクニックが思い出せないときは,地道に解いていきましょう。

A.29

まとめ①

  • いくつかの条件が提示された場合は,それぞれの具体例を考えて□で表そう
  • □を使うときは,分からないところ・求めたいところを表そう
  • もし分からなかったときは,地道に数字を並べ,条件に当てはまるかを考えよう

問題演習②

続いては約数の問題を解いていきましょう。

約数を3個もつ1けたの整数は2個あります。このうち9ではないものは何でしょう。また,約数を3個持つ2桁の整数も2個だけしかありませんが,このうち25でないものは何でしょう。

解説②

ではここからは2問目の解説をしていきます。まず1けたの整数について考えていきましょう。1けたの整数は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の計10個あります。これらの約数の個数を順番に数えましょう。

まず0・1の2つの約数は1つで,それぞれ0と1しかありません。2と3は素数であり,1とその数自身でしか割り切れないため該当しません。4の約数は1と2と4自身なので条件に当てはまります。このように考えていくと,4・9が残ることが分かりますね。問題では9以外のものを聞かれているので,答えは4になります。

続いて2けたの整数を考えていきます。しかし計90個の2けたの整数について,一つ一つ約数の数を数えていくのは骨が折れますね。そこで上で見た1けたの整数の法則を考えて,そこから簡単に2問目の答えを出しましょう。

1けたの整数のうち約数を3個しか持たないものは4と9であり,それぞれの約数は1・2・4,また1・3・9でした。これらに共通するのは,1とその数自身の数の他にもう一つの約数,ここでは2および3,を持っているということです。

この2および3は,上で確認したように素数でした。そして2を2回かけると4に,3を2回かけると9になります。したがって1けたの整数のうち約数を3個持つ整数は素数を2回かけた数になっているということです。

このことから2けたの整数についても,約数を3個しか持たない数字は素数を2回かけた数であると推測できます。素数は2,3,5,7,11,・・・であるので,これらを順番に2回かけていきましょう。

2を2回かけたら4,3を2回かけたら9です。これと同じように計算していくと,5を2回かけたら25,7を2回かけたら49,11を2回かけたら121,・・・となります。

このうち2けたのものが問題で聞かれているものなので,当てはまる整数は25と49の2つになります。よって答えは25でないもの,つまり49となります。

A.4,49

まとめ②

  • 面倒な作業に出会ったときは,法則を考えて簡単に計算する方法を探そう
  • 約数を3個持つ整数は素数を2回かけた数になっている

最後に

今回はこれまで,倍数と約数に関する基礎知識の復習と実践問題の演習に焦点を当ててきました。改めて今回確認したテクニックをまとめておきましょう。

  • いくつかの条件が提示された場合は,それぞれの具体例を考えて□で表そう
  • □を使うときは,分からないところ・求めたいところを表そう
  • もし分からなかったときは,地道に数字を並べ条件に当てはまるかを考えよう
  • 面倒な作業に出会ったときは,法則を考えて簡単に計算する方法を探そう
  • 約数を3個持つ整数は素数を2回かけた数になっている

冒頭にも述べましたが,整数に関する分野は基礎が簡単なだけに応用問題でつまずきがちです。復習と演習を繰り返し,十分に対策しておきましょう。本記事が学習の参考になれば幸いです。

(ライター:大舘)

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