いよいよ12月。ほぼ受験する模試も終わり、成績が返ってくる頃だと思います。その結果を見て、受験しようと考えている学校の合格可能性がどのように判定されているか、同じ学校を志望している、まだ見ぬ受験生ライバルがどのような勉強をしているだろう、などといろいろ考えることも多いと思います。
ですが、やはり受験はお子さんが受けてくるものです。お子さんが行きたい!と強い気持ちを持っていること、あるいは親御さんがわが子の個性を伸ばしてくれるという期待が持てる学校を受けたいですよね。
何回かに分けて、わが家が学校見学に行ってきた中学校の印象を書いていますが、今回は、麻布学園と聖光学院について書きたいと思います。スポーツとの両立など様々な子どもや親の希望を考えて最終的に志望校を決め、進学は大学付属校に決めましたが、やはりできるだけいろいろな学校を見学に行きたいと思い、中高一貫校の進学校も見学しに行きました。
今回は、大学付属校とは違った面など、中高一貫校、それも進学校といわれる学校を見学したときに感じた印象をお伝えしたいと思います。東京男子御三家の麻布学園と、神奈川男子御三家の聖光学院、どちらも有名で、憧れの学校だと思いますが、どうしても大学進学などに目が行ってしまいがちです。実際に見学に行ってみないとわからない生の情報をお伝えできたらと思います。
Contents
麻布学園
(麻生学園HPより)
わが家の息子と同じ小学校出身で、親子ともども仲良くさせていただいているご家庭の息子さん(息子の小学校の同級生)が現在通っていらっしゃいます。そんなこともあり、受験前は学校見学に行ったり、中学入学後もお互いの学校の行事などに足を運びあっているのが麻布中学校です。
自由な雰囲気
麻布といえば、いわゆる御三家といわれる学校の中でも、特に自由な雰囲気、あか抜けた雰囲気をお持ちになる親御さん、お子さんも多いのではないでしょうか。実際に、麻布中学は「校則がない」といわれている通り、本当に自由で、生徒さんたちはとても明るく楽しく毎日学校に通っていらっしゃるように感じます。
麻布中学には、学校祭を見に行きましたが、文字通り生徒さんが中心になって企画を立て、準備などで困ったときに先生に相談する(相談せずに突っ走ることも往々にしてあるようですが)という、生徒主体の運営が徹底しているように感じました。
学校祭のクラス演目のアイディアでとても印象深かったのは、トロッコの技術を応用して創り上げた、「教室内ジェットコースター」などです。これ以外にも面白い発想のものが目白押しで、他の学校の文化祭、学園祭、展覧会とは一味も二味も違うなあ、という印象を持ちましました。
いろいろな催し物があり、受験を考えている小学生だけでなく、まだまだ中学受験までには時間があるような小さいお子さんでも楽しめるようなものがたくさんありました。学校全体で生徒自身も、それだけでなく来場者の方皆さんにも一緒に楽しんでもらいたい、そういう意気込み、勢いを感じました。
そのように凝った出し物が目白押しだったので、それだけに人気のプログラムはかなり待つことは覚悟が必要です。中には1時間待ちというテーマパーク並みのものまでありました。それだけのものを中学生、高校生が創り上げるというのはすごいことだと圧倒された、というのが正直な気持ちです。
文武だけではない
学校祭では、いわゆる「オタク系」の生徒さんも多く見受けられました。有志で出し物や発表をしていらっしゃったのですが、そのこだわり度合いは、大人が行う学会の研究発表かと思ってしまうほど見応えがあるものでした。自分が興味をもった分野にとことんのめりこんで、なおかつ来場者にアピールできるプレゼンテーションをしよう、そのような強い想いをもって発表をする、そしてそれを学校が許す環境が伝統として定着しているのだな、と感じました。
音楽の舞台もあり、プロはだしの演奏を聴くこともできました。それも一人や二人ではありません。よく「文武両道」ということをアピールしている学校がありますが、麻布中学にいたっては、文武だけではなくさらに自分が続けてきたことを、魅力あるパフォーマンスで発表するという生徒さんが多いことに感心しました。御三家というと勉強勉強、と追われるイメージがありましたが、勉強は勉強、やりたいことは自分で見つけて極める、そんな校風を感じとることができました。
伝統ある校舎
そんな学校祭を開催する麻布中学ですが、伝統ある学校だということもあり、校舎や発表する教室など、施設面では、わが家が学校見学に行った学校の中では、ダントツで一番と言っていいほど古い校舎でした。それでも魅力的な学校祭を準備するのですから、たいしたものだと思いました。
ただ「自由」なだけではない?
あくまで私のもった印象なのですが、麻布中学と同じくらいの偏差値の学校(つまり、最難関校の男子校ということです)と比較しても、「かなりはじけている」ように感じられました。麻布中学に通っているうちの息子の友人は、学校祭の時は髪をグリーンにしていました。グリーンだけでなくピンクの生徒さんもいました。
学校祭だけでなく、体育祭も生徒が自主的に引っ張っていき、自分たちのつながりを強め、いろいろな発想を尊重する、そんな感じだということです。最近は、どうしても学業に対する面倒見の良さをアピールする学校が多いな、と感じていたのですが、麻布中学はそういう学校とは全く印象が違いました。それだけ、学校生活の自由度が高いということなのだと思います。
「自主・自立」を建学の精神として掲げている麻布では、学校全体が取り組む行事などを通して、自由さの中で自主性や自立・自律した人間性が育まれていくのは間違いなさそうです。自由といっても野放図ではなく、自立、自律という、精神年齢の高さも求められる学校なのだと思いました。
自由といっても、やはり規律はあるようです。ちなみに中学時代は、授業中にゲーム機を没収されることもわりとひんぱんに起こるということです。何かに集中するときは、それに集中させる、そのように持っていく先生の力も大きいのだと思います。
学業について
学校見学についてなので、学業の方はあまり書けないのですが、麻布中学校には、「地理」「歴史」といったステレオタイプの授業ではなく、「世界」という授業がカリキュラムの中にあるそうです。そこでは、地理も歴史ももちろん学ぶのですが、教科間のへだたりをなくし、その結びつきを意識させながら、調べ、相談し、発表するという授業が行われているそうです。中には、中学1年生で大学入試レベルの世界情勢を学ぶこともあるとか。長年培われてきたカリキュラムだそうで、生徒さんもとても楽しく取り組んでいると聞き、うらやましく思いました。
保護者同士の付き合い
息子さんを麻布中学に通わせている私の友人にはお嬢さんもいて、彼女はカトリック系の女子校に通っているということです。その友人は、お嬢さんの通っているカトリック系の女子校と比較して麻布を語るならば、「麻布生の保護者同士のつきあいは、公立小学校の時にちょっと似ている」と言っていました。
麻布中学では、保護者同士も良く集まって情報交換をしたりするなど、気兼ねないオープンなおつきあいができているようです。
聖光学院
(聖光学院HPより)
神奈川御三家といえば、栄光学園、聖光学院、浅野中学ですが、わが家ではそのなかの一つ、聖光学院にも、学校祭を見学しに行きました。
真面目で厳かな印象
カトリック系の学校だということも影響しているのか、一言でいうと、「真面目で厳かな印象」を受けました。そうとはいえ、学校祭では、ステージ発表やミスター聖光など、他の学校同様に、華やかな演目もいろいろあります。しかし、さきほど書いた麻布中学と比べると、学校祭だからとはいえ、思い切り弾けているというような雰囲気ではなく、あくまで行事としてやっても許される一定の範囲を自主的に決め、その範囲内で最大限楽しむ方法を考えて企画して行っている、そんな印象を受けました。
また、聖光学院は代々の校長先生に宣教師の方がいらっしゃった歴史もあるのかもしれませんが、学校の中に入るとピっと背中が伸びるような厳かな気持ちにもなりました。
モダンな雰囲気の校舎
学校の敷地は広く、校舎は建て替えられたため比較的新しく、良い意味で、男子校のイメージを裏切られるような、コンクリート打ちっ放しのモダンな雰囲気の校舎でした。福島に、高校野球で有名な同名の強豪校がありますが、そちらは全く関係はないそうです。静岡には姉妹校があります。
紳士的な印象
キリスト教の教えが浸透しているためでしょうか、当時まだまだ幼かったわが家の下の娘に、生徒さんたちがとても優しくしてくれたのが印象的でした。学校を全体的に見ても、とても優しい、紳士的な雰囲気の生徒さんが多かったように思います。
国公立の難関校や、医学部医学科の合格者数も多いこともあって、いまや神奈川県の男子校では断トツ1位の偏差値、人気を誇る学校になっていますが、非常に紳士的な印象を持ちました。東京や埼玉、千葉からも通ってくる生徒さんも多く、それだけ安心してお子さんを預けられる学校だととらえられているのかな、と思いました。
まとめ
これまで何回かに分けて、大学附属校、それも慶應系の学校について学校見学に行ったときの印象を書かせていただきました。今回は、がらっと変えて、いわゆる「御三家校」から、東京の麻布学園、神奈川の聖光学院について、わが家が実際に学校見学に行ったときに抱いた印象をご紹介させていただきました。
あくまで個人的な印象ではありますが、それぞれの学校を一言でまとめるならば、
- 「自由でお祭り騒ぎが好き、でもどんなタイプのお子さんも勉強にも没頭できそうな麻布学園」
- 「自由な中にも自主的な規律がしっかりとあり、あくまで羽目を外さず、優しい雰囲気の紳士予備軍のお子さんが多い聖光学院」
といったところでしょうか。
また、両校とも学校祭は、受験間近の秋ではなくゴールデンウィーク中に行われています。もちろん低学年のうちに見学に行くと何度も行きたくなるような学校だと思いますが、受験学年である小学校6年生になってからでも親子で見学に行く時間的余裕があります。学校祭が集中する秋とは異なり、予定も調整しやすいですね。
学校見学に行く際には、いつ、どの学校を見に行くかという計画をたてて「実際に見る」ことがとても大切です。できるだけ、お子さんと一緒に見学に行き、感想を述べあって、お子さんの気持ちをしっかり聞いて、受験校選択材料の一つにしていただきたいと思います。
何より、入学したあとのお子さんののびのびした学園生活を想像できるかどうか、それをお子さんも想像できるかどうか、それが学校見学に行くうえでとても大切なことです。
今回はわが家が学校見学に行った上での感想ですので、ぜひ実際に足を運んで、学校の魅力をたくさん見つけていただきたいと思います。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。