今回は平成28年度の埼玉栄中学校の国語の過去問を一部修正して小説の問題の解き方を説明していきたいと思います。本文は佐藤多佳子『ごきげんな裏階段』(新潮社)、もしくは下記のリンクにて参照してください。
問題
問1
−−線1「毛玉のように」の部分に使われている表現技法を次から選び、記号で答えなさい。
- ア、倒置法
- イ、対句
- ウ、体言止め
- エ、比喩
- オ、強調
- 【解答】エ
それぞれの選択肢の表現方法を説明します。- ア、倒置法
倒置法は文の成分や順序を逆にして強調する表現方法です。 - イ、対句
対句法は似たような表現や関連する表現を並べ、対比を作ることで印象強める表現方法です。 - ウ、体現止め
体言止めは文の末尾を動詞や形容詞の用言で終えるのではなく、体現で終わりにしている表現方法のことをいいます。 - エ、比喩
比喩には、“直喩”と“隠喩”の二種類があり、どちらもある物事を似ているもの、あるいは他も物事を借りて表現すること、たとえていう表現方法です。 “直喩”は「〜のようだ」「まるで〜」という表現をし、“隠喩”は「〜ようだ」「まるで〜」という言葉を使わずに、ある物事を別の表現でたとえる表現技法です。 - オ、強調
「〜のである」、「〜しなければならない」、「〜べきだ」など言い切りの形にしてその前の箇所を強調させる表現方法です。
- ア、倒置法
問題となっている「毛玉のように」という部分には「〜ように」という表現が使われ直喩であることがわかります。よって答えはエの比喩となります。
問2
( A )から( C )にあてはまる言葉として最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。
- ア、ビクビク
- イ、ギスギス
- ウ、のんびり
- エ、むずむず
- オ、うずうず
- カ、どっしり
- キ、すっかり
- ク、まったく
- 【解答】
- A オ、うずうず
- B ア、ビクビク
- C キ、すっかり
- 該当箇所を見ながらみていきましょう。
学はキュートなのら子猫をひろって帰りたくて( A )した。
初めてノラに会った学の心情が現れている場面です。ノラを持って帰りたい気持ちが現れていることから(オ、うずうず)が答えになります。
だから、学は、ノラにエサをやるのだって、いいかげん( B )していた。
ノラを可愛がっているけれど、管理組合の理事長にバレるとペットは追放されてしまうということを恐れながら餌をあげている学の心情を現している場面のため、(ア、ビクビク)が正解になります。
ソファーから出てくると、( C )満足した顔で大きくのびをし、おもむろに家中を探検にかかった。
( C )の後ろに「満足した」とあり、「満足した」につながる選択肢は(キ、すっかり)が適当であると考えられます。
問3
−−線2「追放だ」とありますが、どういうことですか。二十字以内で具体的に説明しなさい。
- 【解答】
引っこしをしなければならないこと。
ヒントとなるのは−線2「追放だ」の前です。
こっそりペットを飼っている家が、おばばに見つかると、もうタイヘン!管理組合の会議にかけられて、ごっそり罰金を取られた上にペットは追放、下手すると飼い主までも追放だ。
学が住むみつぼコーポラスがペット飼育禁止であること、厳しい理事長に見つかったら罰金の上ペットは追放。更には飼い主も追放だと言っています。今いるところから追放されるというのはすなわち“引っこし”をしなくてはならないと推測できます。
問4
−−線3「きみのわるさをがまんすれば」とありますが、なぜわざわざ学はきみのわるいこの場所を選んだのですか。その理由を文章中のことばを使って十五字以内で書きなさい。
- 【解答】人がめったにこないから。
−−線3「きみのわるさをがまんすれば」の前の段落を見てみると、
裏階段は、さびれている。人なんかめったにこない。
とあります。“きみのわるさ”があっても、ばれずにのら猫に餌をやるには良い理由は“人がめったにこない”ことだというのが分かります。
問5
−−線4「まだらの大蛇」とはここで何のことですか。八字程度で書きなさい。
- 【解答】
色がはげた手すり
−−線4「まだらの大蛇」の前を見てみると、「ベージュのペンキぬりの壁には一面にひびわれが走っている」に対し妹のくるみは「怪物のギザギザの歯」と言っています。更に−−線4「まだらの大蛇」の後ろでは「二階の天井には大きなクモの巣」に対し、「毒グモ」と言っています。
この2つの箇所からくるみが生き物に例えている発言の前にその場所が書かれています。そのことから−−線4「まだらの大蛇」の前に表記されている場所をみると、「手すりのペンキもはげちょろけ」とあります。この箇所から「色がはげた手すり」だと考えられるでしょう。
問6
□にあてはまる言葉を漢字一字で書きなさい。
- 【解答】声
□の前の文章がくるみが話している部分になるので、発言していることを考え、ひそめるのは「声」であると推測できます。
問7
−−線5「きけんな足音」とありますが、この時の心情として最も適当なものを選び、記号で答えなさい。
- ア、子猫の世話をしていることを他の住人たちに気づかれたと思い、あせっている。
- イ、かわいらしい子猫を他の住人たちにとられてしまうと思い、こまっている。
- ウ、子猫を守るために誰が来ても戦おうと決意をし、気合いを入れている。
- エ、ここに来るはずない有沢のおばばの気配を感じ、きみがわるいと思っている。
- オ、もし有沢のおばばに見られたら大変なことがおこると思い、おそろしく思っている。
- 【解答】オ
それぞれの選択肢を詳しくみていきましょう。- ア、子猫の世話をしていることを他の住人たちに気づかれたと思い、あせっている。
→実際に世話をしている場面が見られたわけではなく、足音が聞こえただけなので当てはまりません。 - イ、かわいらしい子猫を他の住人たちにとられてしまうと思い、こまっている。
→学の住むみつぼコーポラスはペット飼育不可のため、他の住人にとられてしまうと思うのは当てはまりません。 - ウ、子猫を守るために誰が来ても戦おうと決意をし、気合いを入れている。
→−−線5「きけんな足音」の後に学が「にげろっ」と発言していることから戦おうとしている姿勢はうかがえないため当てはまりません。 - エ、ここに来るはずない有沢のおばばの気配を感じ、きみがわるいと思っている。
→−−線5「きけんな足音」の前に「コツコツいうハイヒール」とあり、女性の可能性はありますが、有沢のおばばと確定はしていないため当てはまりません。 - オ、もし有沢のおばばに見られたら大変なことがおこると思い、おそろしく思っている。
→−−線5「きけんな足音」の後に「にげろっ」と学が発言していることから餌をやっている状況を人に見られないようにしていると考えられ、オが正解になります。
- ア、子猫の世話をしていることを他の住人たちに気づかれたと思い、あせっている。
問8
−−線7「くるみは悲鳴をあげた」とありますが、この時のくるみの心情として最も適当なものを選び、記号で答えなさい。
- ア、こわいよう
- イ、こまっちゃう
- ウ、なんてついていないんだろう
- エ、感激しちゃう
- オ、つかまっちゃう
- 【解答】ア
−−線7「くるみは悲鳴をあげた」の前に「ひゃあ、お兄ちゃん!トラトラお化けついてきたよう!」とくるみが発言しています。そのことからのら猫のノラのことを「トラトラお化け」だとくるみが思っていることが分かります。よってくるみの恐怖が現れている(ア、こわいよう)が答えになります。
まとめ
小説の読解には登場人物の心情の変化や比喩表現などを問われる問題が多く出題します。心情の変化や言い換えている部分は問題の前後をみることで理解しやすくなります。まずは問題の前後の箇所を読んで問題に取り組むことをクセづけましょう。
おすすめ記事
参考