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二等辺三角形
二等辺三角形
二等辺三角形は、以下のように定義される三角形である。
- 定義:2辺が等しい三角形を二等辺三角形という。
まずは、以下の例題を考える。
- \(\triangle{ABC}\)において、\(AB=AC\)ならば\(\angle B=\angle C\)であることを証明しなさい。
- [仮定] \(AB=AC\)
- [結論] \(\angle B=\angle C\)
- [証明]
まず、\(\angle A\)の二等分線と辺\(BC\)の交点を\(D\)と置く。
\(\triangle{ABD}\)と\(\triangle{ACD}\)において、
仮定から、\(AB=AC\) \(AD\)は\(\angle A\)の二等分線であるから、\(\angle BAD=\angle CAD\) 共通な辺であるから、\(AD=AD\) これらから、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいため、\(\triangle{ABD}\equiv\triangle{ACD}\) 合同な図形では対応する角の大きさは等しいから、\(\angle B=\angle C\)
二等辺三角形の等しい辺にはさまれた角を頂角といい、頂角に対する辺を底辺という。また、底辺の両端の角を底角という。
これらから、二等辺三角形は以下のようなことが言える。
- 定理:二等辺三角形の2つの底角は等しい。
- 定理:二等辺三角形の頂角の二等分線は、底辺を垂直に二等分する。
また、下図のように、三角形の頂点とその向かい合う辺の中点を結んだ線分を中線という。
下図では、二等辺三角形の頂点から底辺に引いた中線が、底辺を垂直に二等分することを示している。
これらから、二等辺三角形では以下のようなことが成り立つ。
- 定理:二等辺三角形において、頂角の二等分線、頂点から底辺に引いた中線・垂線、底辺の垂直二等分線は、全て一致する
2つの角が等しい三角形
これまで、二等辺三角形、すなわち2つの辺が等しい三角形について考えた。ここでは、2つの角が等しい三角形について考える。
- \(\triangle{ABC}\)について、\(\angle B=\angle C\)ならば\(AB=AC\)であることを証明しなさい。
- [仮定] \(\angle B=\angle C\)
- [結論] \(AB=AC\)
- [証明]
まず、\(\angle A\)の二等辺三角形と辺\(BC\)の交点を\(D\)と置く。
\(\triangle{ABD}\)と\(\triangle{ACD}\)において
仮定から、\(\angle ABD=\angle ACD, \angle BAD=\angle CAD\) よって、三角形の残りの角も等しいから、\(\angle ADB=\angle ADC\) また、共通な辺であるから、\(AD=AD\) これらより、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、\(\triangle{ABD}\equiv\triangle{ACD}\) 合同な図形では対応する辺の長さは等しいから、\(AB=AC\)
以上の結果から、2つの角が等しい三角形について、以下のことが言える。
- 定理:2つの角が等しい三角形は二等辺三角形である。
正三角形
正三角形は、以下のように定義される三角形である。
- 定義:3辺が等しい三角形を正三角形という。
\(AB=AC\Rightarrow\angle B=\angle C\)
\(BA=BC\Rightarrow\angle A=\angle C\)
よって
\(\angle A=\angle B=\angle C(=60^\circ)\)
こういったことから以下のようなことが言える。
- 定理:正三角形の3つの角は等しく、すべて60°である。
また、三角形ABCの3つの角が等しいとき、
\(\angle B=\angle C\Rightarrow AB=AC\)
\(\angle A=\angle C\Rightarrow BA=BC\)
よって
\(AB=AC=BC\)
したがって、3つの角が等しい三角形は正三角形である。
正三角形は二等辺三角形の特別な場合であるから、二等辺三角形の性質を全て持っている。
定理の逆
先の問題では、
ア \(AB=AC\Rightarrow\angle B=\angle C\)
であることを証明し、その次では、
イ \(\angle B=\angle C\Rightarrow AB=AC\)
であることを証明した。
この2つの事柄を比べると、仮定と結論が入れ替わっていることがわかる。このように、ある事柄の仮定と結論を入れ替えたものを、もとの事柄の逆という。
したがって、以上のアはイの逆であり、イはアの逆である。
ただし、今回はたまたま逆でも正しかったが、元が正しくても、その逆が正しいとは必ずしも限らない。したがって、逆が正しいかどうかは改めて証明する必要がある。
直角三角形の合同
直角三角形の性質について見ていく。
直角三角形の直角に対する辺を斜辺という。直角三角形の1つの内角は直角であり、ほかの内角は鋭角である。
2つの直角三角形は、1つの鋭角が等しいとき、残りの鋭角も等しい。よって、斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい直角三角形は、斜辺とその両端の角はそれぞれ等しいから合同である。
2つの直角三角形は、斜辺とほかの1辺が等しいときも合同になる。
- \(\triangle{ABC}\)と\(\triangle{DEF}\)において、\(\angle C=\angle F=90^\circ, AB=DE, AC=DF\)ならば2つの三角形は合同である。
- [仮定]\(\angle C=\angle F=90^\circ, AB=DE, AC=DF\)
- [結論]\(\triangle{ABC}\equiv\triangle{DEF}\)
- [証明]
下図のように辺\(AC\)と辺\(DF\)を重ねると、3点\(B, C, E\)は一直線上に並び、二等辺三角形\(ABE\)ができる。
よって、\(\angle B=\angle E\) 従って、\(\triangle{ABC}\)と\(\triangle{DEF}\)は斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しいから合同である。
直角三角形の合同条件は、以下のようにまとめられる。
- [定理]2つの直角三角形は以下のどちらかが成り立つとき合同である
- [1]直角三角形の斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい。(斜辺一鋭角相等)
- [2]直角三角形の斜辺とほかの1辺がそれぞれ等しい。(斜辺他一辺相等)
平行四辺形
平行四辺形の性質
平行四辺形は、以下のように定義される四角形である。
- 定義:2組の向かい合う辺が、それぞれ平行である四角形を平行四辺形という。
平行四辺形の性質について考えていく。
- 四角形ABCDにおいて、\(AB\parallel DC, AD\parallel BC\Rightarrow AB = DC, AD=BC\)
このことから、以下のようなことがい言える。
- 平行四辺形の2組の向かい合う辺はそれぞれ等しい。
そんな平行四辺形について、今度は角度や対辺について考えていく。
- 以上で挙げた平行四辺形の性質を利用して、下図のような平行四辺形\(ABCD\)について、以下のことを示しなさい。\(\angle ABC=\angle CDA\)
- [証明] 2組の対辺はそれぞれ等しいため、\(AB=CD, BC=DA\) また、共通な辺であるため、\(AC=CA\) これらより、3組の辺がそれぞれ等しいため、\(\triangle{ABC}\equiv\triangle{CDA}\) 合同な三角形において、共通な角はそれぞれ等しいから、\(\angle ABC=\angle CDA\)
- 平行四辺形\(ABCD\)において、対角線\(AC, BD\)の交点を\(O\)とする。このとき、以下のことを示しなさい。ただし、平行四辺形の2組の向かい合う辺がそれぞれ等しいことは利用して良いとする。\(AO=CO, BO=DO\)
- [証明] 向かい合う辺はそれぞれ等しいため、\(AB=CD\) また、向かい合う辺は平行であるため、\(AB\parallel DC\) これより、錯角はそれぞれ等しくなるため、\(\angle BAO=\angle DCO, \angle OBA=\angle ODC\) 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいため、\(\triangle{ABC}\equiv\triangle{CDA}\) 合同な三角形において、対応する辺はそれぞれ等しいから、\(AO=CO, BO=DO\)
四角形の向かい合う辺のことを対辺といい、向かい合う角のことを対角という。
平行四辺形の性質についてまとめると以下のようになる。
- 定理
- [1]平行四辺形の2組の対辺はそれぞれ等しい。
- [2]平行四辺形の2組の対角はそれぞれ等しい。
- [3]平行四辺形の対角線はそれぞれ等しい。
平行四辺形になるための条件
- 四角形が平行四辺形になるための条件とはなんだろうか?
- [証明]
四角形\(ABCD\)において、\(AB=CD, AD=CB\)が成り立っているとする。
このとき、\(\triangle{ABC}\)と\(\triangle{CDA}\)において、\(AB=CD, CB=AD, AC=CA\) これらより、3組の辺がそれぞれ等しいため、\(\triangle{ABC}\equiv\triangle{CDA}\) よって、\(\angle BAC=\angle DCA, \angle BCA=\angle DAC\)となり、錯角が等しいため、\(AB\parallel DC, AD\parallel BC\) 従って、四角形\(ABCD\)について、2組の対辺がそれぞれ平行であるため、この四角形は平行四辺形であると言える。
- [証明]
四角形\(ABCD\)において、\(AB=CD, AD=CB\)が成り立っているとする。
このようなことから、実は以下のようなことが言える。
- 定理:四角形が以下の条件のどれかを満たしているとき、平行四辺形である。
- [1]2組の対辺がそれぞれ等しい。
- [2]2組の対角がそれぞれ等しい。
- [3]対角線がそれぞれの中点で交わる。
- [4]1組の対辺が平行でその長さが等しい。
これが平行四辺形になるための条件である。これの全てが言えれば、平行四辺形と言えるわけではなく、このうちの1個でも言えれば、その四角形は平行四辺形であると言える。
いろいろな四角形
先にあげた平行四辺形以外にもいろいろな四角形がこの世には存在する。例えば、長方形やひし形、正方形だ。平行四辺形でもそうしたように、まずはこれらの定義を確認していく。
- 定義
- 4つの角が等しい四角形を長方形という。
- 4つの辺がそれぞれ等しい四角形をひし形という。
- 4つの角が等しく、4つの辺が等しい四角形を正方形という。
- 4つの角が等しい四角形を長方形という。
どこかで聞いたことはあるかもしれないが、長方形やひし形、正方形は、この定義から平行四辺形の特別なやつだとわかる。
平行四辺形は2組の対辺がそれぞれ等しく、それらはそれぞれ平行である。
この2点は、長方形、ひし形、正方形の全てに言えることだ。その前提に加えて、長方形は4つの角が等しいという性質がのっかり、ひし形は4つの辺が等しいということがのっかり、正方形は4つの角が等しく、4つの辺が等しいということがのっかっているわけだ。
また、これから、正方形は長方形やひし形の特別なやつと見ることもできるわけだ。
これは参考までに覚えておくくらいでいいが、実際に、正方形の面積の求め方は、長方形のように、縦×横であったり、ひし形のように、対角線×対角線÷2でもあったりする。
平行線と面積
下図のように、辺\(AB\)を共有する\(\triangle{PAB}\)と\(\triangle{QAB}\)について考える。これらの三角形の高さも共通であるならば、底辺と高さが共通であり、その三角形の面積も同じ値を示すはずである。
では、高さが共通しているとはどういうことだろうか?ここで平行線を思い出して欲しい。平行線は常に同じだけの長さを保って離れている複数の直線であった。
それゆえに、高さが共通であるためには、直線\(PQ\)と直線\(AB\)は平行であればいい。
以上より、平行線と面積の関係について、次のことが言える。
- 定理:2つの直線があり、片方の直線に共通な底辺を持ち、
もう一点を双方もう一方の直線上にあるとする。- [1]2つの直線が平行ならば、三角形の面積は等しい。
- [2]三角形の面積が等しいならば、2つの直線は平行。
つまりは、平行線の間であれば、どれだけ頂点を動かしても、高さも、もちろん底辺も変わらないため、面積は変わらない。このことをつかって以下のようなことができる。
下図のような、五角形\(ABCDE\)を用意する。\(AC\)と平行になる直線を\(B\)を通るように書く。また、\(AD\)と平行になる直線を\(E\)を通るように書く。そのすると、三角形ができる。この三角形の面積はこの五角形の面積と等しくなる。
このように、多角形は、それと同じ面積を持つ三角形に変形することができる。このように、図形の面積を変えないで、その形だけを変えることを等積変形という。
三角形の辺と角の大小
三角形の辺と角の大小
以上でやったように、\(\triangle{ABC}\)について、\(AB=AC\)の二等辺三角形ならば、\(\angle B=\angle C\)となることは大丈夫だろう。
では、下図のような\(AB>AC\)であるいろいろな三角形について、\(\angle B\)と\(\angle C\)はどのような関係にあるだろうか??
下図の三角形を参考にすると、(長い辺の対角)>(短い辺の対角)とわかる。
実際に以下のようなことが言える。
- 定理:三角形において、以下のことが成り立つ。
- [1]大きな辺に対する角は、小さい辺に対する角より大きい。
- [2]大きい角に対する辺は、小さい角に対する辺より大きい。
ではこれを、証明していく。
- 下図のような\(\triangle{ABC}\)において\(AB>AC\)とする。
このとき、\(AB\)上には\(AD=AC\)となるような点\(D\)を置くことができ、\(\triangle{ADC}\)は二等辺三角形になる。
\(\triangle{DBC}\)において、内角と外角の性質から、\(\angle ADC=\angle ABC+\angle DCB\) よって、\(\angle ADC>\angle ABC\)・・・ア
\(\triangle{ADC}\)は二等辺三角形であるため、\(\angle ADC=\angle ACD\) よって、アは、\(\angle ACB>\angle ACD\) 従って、\(\angle C>\angle B\) これより、\(\triangle{ABC}\)について、\(AB>AC\)ならば\(\angle ACB>\angle ABC\)が成り立つ。
逆に、\(AB>AC\)ならば\(\angle ACB>\angle ABC\)も成り立つ。
三角形の2辺の和と差
三角形の2辺の和、差と残りの辺の大小については、以下のようなことが成り立つ。
- 定理:三角形において、以下のことが成り立つ。
- [1]2辺の和は、残りの辺よりも大きい。
- [2]2辺の差は、残りの辺より小さい。
これらは、三角形の形成する上での条件となるものだ。つまりは、三角形の2辺を足したら残りの方が小さいし、引いたら残りの方が大きいのだ。では、なぜこれが成り立つのか少し見ていこう。
-
[1]
辺と角の大小関係を利用する。
下図のような\(\triangle{ABC}\)について考える。
直線\(BA\)上に\(AD=AC\)となるような点\(D\)をとると、\(AB+AC=BD\)・・・ア
また、\(\angle ACD=\angle ADC, \angle BCD>\angle ACD\)であるため、\(\angle BCD>\angle ADC\) 先で学んだ辺と角の大小関係から、\(BD>BC\) 従って、アより、\(AB+AC>BC\) -
[2]
[1]を用いると簡単で、
三角形の辺の大小関係から、\(AB+AC>BC\) 移項して、\(BC-AC>AB\)
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