中学受験の最大手塾の一つ、日能研。お通いになっていらっしゃる生徒さん、受験生の皆さんも多いと思います。「シカクいアタマをマルくする」というキャッチコピーの載った広告を電車などでもご覧になったことも多いのではないでしょうか。また、日能研の生徒さんが背負っている「Nカバン」もよく見かけますよね。
もともと神奈川県からはじまった塾で、今でも特に神奈川県の難関私立中学校に高い合格実績をあげています。かつては、神奈川女子御三家のフェリス女学院の一学年の80%以上が日能研に通塾していた生徒だったこともあります。いまはサピックスが合格者を増やしてきていますが、それでも30%から40%程度を占めており、依然として神奈川の難関進学校の合格者に対する日能研生が占める割合は大きいものがあります。
現在は、東京をはじめ首都圏、東海、関西、九州まで全国展開しており、北海道でも講習を行うなど、全国規模の塾となってきています。それぞれの地域には名古屋の名進研(四谷大塚準拠)、関西の浜学園・希学園、九州の英進館(四谷大塚準拠)といったトップの塾があり、これから首都圏以外で浸透していくという状態にあります。
首都圏のうち、神奈川県以外では東京都でいくつも教室を展開しており、お通いの生徒さんも多い塾です。以前は1クラス当たりの生徒数が多かったですが、いまは1クラス多くて20名から30名、校舎によってはそれより少ないところもあります。その分、最大手塾の中では「面倒見のよさ」をアピールしています。
塾のいう「面倒見のよさ」にはいろいろな意味がありますが、日能研は非常に拘束時間が長い塾です。受験学年になればほぼ毎日塾に通い、講習会はそれこそ朝から晩まで、土日も特訓授業や志望校別の日特などに通い、塾にいる時間は随一といってもいいかもしれません。質問対応などには講師も積極的に対応しているので、「塾が楽しい」という生徒さんは多いです。
ただし、大手塾すべてに言えることかもしれませんが、日能研のカリキュラムは非常に膨大で、テストの数も多いです。授業のスピードも速く、そして内容そのものが小学生にとってはかなり難しいものまで含まれています。授業のテキスト以外に宿題用のテキストもあり、1週間に生徒さんが解く問題量は非常に多い塾です。そのため、カリキュラムや宿題に日々追われて、習ったことの振り返りをする時間がとれないという日能研生はとても多いです。大手塾に多い、成績上位生と下位生の二極化がみられます。
塾の成績を上げるためには、ただ目先のテストの点数をとればいいというわけではありません。自分の勉強、つまり自分の志望校に合格するために本当に必要な勉強をする必要があります。今回は、日能研に通いながら成績を上げていくためのポイントについて書いていきたいと思います。
Contents
日能研生が陥りやすい悩みとは?
最初にも書きましたが、日能研は拘束時間が長く、カリキュラムも勉強する内容も高度な塾です。そのため、一部の上位生を除いて、ついていけなくなる生徒さんも多くいらっしゃいます。そのような日能研生が陥りやすい悩みとしては、以下のようなっものがあります。
- 塾の授業を理解しきれないまま、大量に問題を解いてくるのでなかなか定着しない
- 塾で解く問題量も宿題の量も多過ぎてこなしきれない
- 宿題が多いのでそれに追われて、「自分の勉強」をする時間がない
- 時間をかけて勉強しているはずなのに、カリキュラムテスト(カリテ)で点が取れない
- なかなかクラスアップできない、座席が後ろになってモチベーションが上がらない
大手塾の中でも、独自のカリキュラム、独自のテキストが用意され、日々「理解する間がなくて」成績がなかなか上がらない、というお悩みをお持ちのご家庭が多いです。
日能研特有の学習システム
日能研は、中学受験の勉強が本格的に始まる小学校3年生の2月から、受験直前期の6年生の11月までを5つのステージに分けるという「ステージ制」をとっています。
- ステージⅠ:3年生2月から4年生1月
- ステージⅡ:4年生2月から4年生7月
- ステージⅢ:4年生9月から5年生7月
- ステージⅣ:5年生9月から6年生7月
- ステージⅤ:6年生9月から6年生11月
なお、各講習と、「合格力ファイナル」と呼ばれるカリキュラムになる受験直前期の6年生12月から1月はステージに分類されません。小学校がお休みになる長期休暇期間は、春期講習・夏期講習・冬期講習(6年生の冬は「合格力ファイナル」といわれます)が実施されます。
日能研の講習会は、基本的に問題演習とその解説が中心の授業が行われます。講習会では、塾によっては受験生が苦手とする分野などの復習のための解説授業を行うこともありますが、日能研のテキストは演習問題が並んでおり、新しい問題を大量に解くという方式をとっています。
中学入試に必要な学習内容はステージⅣ(6年生の夏休み前まで)までに一通り学び、ステージⅤ(6年生の夏期講習後)は志望校別特訓が中心となり、通常授業でも問題演習が中心で、この時期になると過去問演習を含めて大量の問題をさらに解く毎日となります。さらに、6年生の冬期講習を終えて1月からは、授業自体がテスト形式になります。
日能研の授業スタイル
大量の問題演習が中心の日能研の授業ですが、サピックスのようにその日に学習する内容のプリントを配布するスタイルではありません。テキストは授業用のものと家庭学習用のものが冊子として渡されますが、徹底した「復習主義」をとっており、予習はすすめていません。日能研は、予習を進めない理由として、以下のような理由を挙げています。
- 授業中の集中力を増すため
- 新しい知識を得る喜びを得ることによって、学習意欲を増すため
- 予習に時間をかけすぎて非効率な学習になたないようにするため
- 予習の段階での勘違いや思い込みを防ぐため
大手塾は、カリキュラムを時間内で終えるために一方的な「講義」になることが多く、生徒の能力の度合いに応じて理解度に差がついてしまうことから、日能研は授業を、生徒との「対話」によって進めていくことを重視しています。
一方通行的な授業では、「授業を聴く」だけで、自分の頭で考えるということをしなくなってしまう生徒が多くなるため、対話中心の授業で生徒の理解度を講師の方も測りながら、一朝一夕では身につかない「思考力」や、理解したことを実際に問題を解くことに使いこなすことができる「運用力」を養おうという意図を持っているようです。
ただし、問題演習中心の授業なので、多くの問題を解かなければならないため「自分の頭で考える」余裕が持てずにひたすら問題演習を「こなしている」状態になってしまうこともあるので、もろ刃の剣といった状態も実際にはあります。
予習をすすめない代わりに、復習を重視しています。復習主義はサピックスもとっていますが、サピックスの宿題の多さは有名ですよね。日能研の宿題の量は教室やクラスにより異なりますが、基本的には「少量」にして、授業で学んだことを、自学自習深めることが大事だと考えているようです。
ただし、実際には、1回の単元に含まれる問題量はかなりの量なので、「少量」といいますが、文字通りにとらえることはできません。どうしても家庭学習で全部手をつけようとしてじっくり理解を深めるということができていない生徒さんも多いのが現状です。また、6年生の後期になると、必要に応じてテキストの一部を予習として宿題に出すクラスもあります。
日能研のテストのシステム
日能研は、テストや模試も多い塾です。テストには、いわゆる全国模試と、カリキュラムの理解度を見るテストがあります。
全国公開模試
日能研主催の「全国公開模試」は、首都圏中学受験の模試の中でも受験者の多い模試の一つです。受験者が多いので、志望校への合格可能性や、併願校を考える上での参考になるをさぐるうえで貴重なデータが集まります。翌日にはネットでテスト結果を見ることができるようになっています。
また、「この問題ができれば偏差値がどの程度アップするか」など、具体的なアドバイスを提供したり、類題の提供も行っているので、非常に親切な模試といえるでしょう。
6年生の9月から12月にかけて、「合格判定テスト」は1ヶ月に1回(12月は2回)実施されます。模試に合わせて、開成中学校や桜蔭中学校などの難関校の問題研究授業が難関校受験生のために開かれます。
この模試は、ほかの塾に通っている受験生も直前期の模試の1つとして受験してくる模試です。会場も、入試本番の雰囲気に慣れておくために、実際の私立中学校などの校舎を借りて実施することもあります。四谷大塚の合不合判定テストも同じように中学校の校舎を借りて実施していますよね。
カリキュラムテスト(カリテ)
4年生の間には1週おきに、5・6年生ではほぼ毎週、「学習力(合格力)育成カリキュラムテスト」(通称:カリテ)という、範囲のある復習テストが実施されます。テストとテストの間の期間に学習した内容を、実際のテストで「できる」ようになっているかどうか定着度を測るものです。
日能研のクラス分けの基準は?
日能研の授業内容は、ほかの大手塾と同じように、上位クラスと下位クラスで、差がつけられています。生徒の理解度・習熟度に合わせて授業を組み立てるのはどの塾でも行っています。生徒の理解度に合わせた授業を行わなくては、志望校も今の実力も違う生徒が実力を上げることはできないからです。理解度が追い付いていないのに上のクラスで授業を受けたい、と思う親御さんは多いのですが、授業についていけずにモチベーションが下がってしまい、ますます成績が下がってしまうことになりかねません。
そうならないためには、目指すクラスに合った実力を身につけることが必要です。実際に、所属するクラスによって志望校の合格率はかなり変わってしまいます。志望校が上位校であれば、やはり上位クラスに入り、その中で落ちこぼれることなく、しっかり授業についていき、思考力や運用力を養っていきたいですよね。つまり、クラスと実力がマッチする状態にすることが大切になってきます。
特に上位校を目指しているのであれば、クラスをアップする対策が重要になってきます。ただし、あくまでも志望校に合格するための実力を身につけるためにクラスアップを目指すということを忘れてはいけません。毎週のようにテストがあるとどうしてもその点数に目が行き、クラスが上がるか下がるかだけに注目してしまいがちですが、十分な基礎力を身につけておかなければ、仮に一度テストの結果がよくてクラスが上がったとしても、次の単元ではまた成績が下がってしまいます。
日能研では、基本的に、4・5年生のうちは2か月に1度、6年生になると毎月、クラス替えが行われます。クラス替えの基準となるのは、まず、全国公開模試の偏差値です。日能研の各クラスには「基準偏差値」が設定されています。
公開模試の偏差値が上位クラスの「基準偏差値」を超えた場合にはクラスが上がり、逆に所属クラスの「基準偏差値」を下回った場合には、クラスをダウンさせることが講師によって検討され、クラスが変わる仕組みになっています。
また、頻繁に行われるカリキュラムテストの結果も、クラス替えに影響します。それらのテストの成績や授業の理解度などを総合して、クラスが決まります。だから皆さん、カリテのの成績に一喜一憂してしまいます。
クラスの昇降が頻繁に行われるので、ずっと上位クラスをキープするためにはそのクラスの授業にしっかりついていき、授業の中で十分理解し、家庭学習を効率的に行なう必要があります。これは日能研に限ったことではありません。クラスを上げるためには、そういった日々の学習が十分できることが前提条件だということを忘れないようにしましょう。
日能研のテキストは非常に多い
カリキュラムテストは、決まった範囲から出題される、授業の理解度をチェックする確認テストです。クラスの昇降にも直結するので、カリテの成績を上げることがクラスを上げるために大切になってきます。
日々の授業内容や教材から出題され、その範囲の内容をどの程度理解できているか、また、類題をしっかり解けるくらいに定着しているか、を確認するテストなので、単に問題をたくさん解くだけでなく、その範囲の内容が理解できているか、理解したことを使って問題を解くことができることを意識しながら学習することが大切です。
カリテでいい成績をとるためには、日能研の教材を着実に理解していくことが必要ですが、日能研の教材は非常に種類が多いので、うまく使いこなして理解し、定着させていくことが成績を上げるポイントです。
日能研のメイン教材
日能研の教材のうち中心になるのは、授業で使用される「本科教室」と、自宅学習用の「栄冠への道」の2つです。自宅学習用の「栄冠への道」は、演習問題がメインとなっています。宿題として学んできた内容が理解できているか、定着しているかを測るために使います。もし、問題を解いていてわからない場合は、塾の授業で使用される「本科教室」の解説を確認すれば解決できるように2冊はリンクしています。
これらの教材には難点もあります。「栄冠への道」で問題を解いてわからないことが出てきた場合に確認するために作られているメインテキストの「本科教室」の解説は決して親切とは言えないのです。「本科教室」の内容は、講師の授業の中で理解することが前提になっているので、授業中に理解ができていれば、また、理解しながらノートをとって見返すと内容を思い出せるようになっていないと、問題演習して復習し、定着させることは難しいのです。
もし、お子さんが「栄冠への道」で家庭学習をしていてわからないことが出てきた場合、自分で「本科教室」で確認して解決できれば良いですが、問題を解いてつまずいた場合、そのために必要な知識や解法が理解できていないことがほとんどです。
そうすると、お子さんは保護者の方に「教えて」といってくると思いますが、保護者の方が「本科教室」を使って教える場合に、解説が親切ではないため、教えにくく、苦労されるケースも多いのです。「栄冠への道」と「本科教室」を使って家庭学習を進めることは、基礎力をつけ、成績を上げるために非常に大切なことです。ですから、「どう教えるか」「どう理解させるか」という点をうまく克服しないといけません。
その他の教材
日能研のテキストはこの2つだけではありません。ほかにも、「強化ツール」「計算と漢字」「メモリーチェック」といった教材も使用しています。特に「メモリー・チェック」は有名ですね。「メモリー・チェック」に出ていないことは入試に出ない、という方もいるくらいです。
このような副教材をどう使いこなして日々の家庭学習を進められるかが、基礎力をつけ、さらに応用力をつけていって、上位校合格を狙っていく素地を作るための重要なポイントです。どのタイミングで、どのようにそれらの教材を使うか、お子さんが自分ですべて決めるのは難しいので、塾の先生にも相談して、教科や分野、単元に応じて保護者の方が助言してあげるようにしてあげてください。
日能研の家庭学習の課題について
塾で授業を聴いてきただけでは力をつけることはできません。宿題としてその日に習ったことを理解し、定着するまで家庭学習をしっかり行うことが重要です。
ですが、宿題が大量の問題演習中心なので、日能研生のご家庭が持つ悩みとしては、以下のようなものが最も多いです。
- 宿題が多すぎて、振り返りをする時間がない
- 逆に宿題として指示された宿題が少なくて、これでいいのか不安
- 結局、家庭学習で何をどこまでどのように勉強したらいいのかわからない
日能研は、校舎や担当講師の方針によって宿題の量が大きく変わる塾です。そこに生徒の要望が入る余地はありません。大手塾であればそれは当然、と思われるでしょうが、適切な量、適切な質の家庭学習ができなくては実力をつけることはできません。
日能研で成績を上げるために必要なこと
正しく塾を使うためにやるべきことは?
日能研にお通いのご家庭からは、このようなお悩みのご相談をよく受けますが、問題を解くこと、テストの結果、クラスが上がった、下がったという目先のことに追われていらっしゃることが非常に多いです。つまり、日能研のカリキュラムや授業、家庭学習の課題を「うまく使えていない」のです。それは、「正しく塾を使うことができていない」状態といってもよいでしょう。
上位校を志望する場合、クラスによって授業で扱う内容も、課題への取り組み方も非常に変わるため、やはりクラスを上げる必要があります。ですが、「正しく塾を使う」ということができていない状態では、日々の学習の定着度が上がらず、その結果クラスが上がらない、ということになり、どこから手をつけたらよいのかがわからなくなってしまうのです。
では、どのようにすれば日能研という塾を正しく使い、成績を上げることができるのでしょうか。何といっても一番大切なことは、毎回の塾の授業の理解度を上げることです。中学受験の内容は、受験生の年齢から考えると全体的に非常に高度だと言えます。範囲も広く、学校の授業では習わないことも含まれます。近年では、中学入試の国語で、大学入試で出題される文章が出題されることもあるくらいです。
そのため、塾の授業の進度は速くならざるを得ないのが現状です。日能研に限らず、大手塾にお通いの場合は特にその傾向は顕著です。塾の授業で習ったことを100%完全に理解し、覚えてきているお子さんはほんの一握りです。
重要なのは「家庭学習」のやり方
そこで、重要になってくるのが、日能研の授業で習ったことをできるだけ授業中に理解するための力をつけることです。そして、理解しきれなかったところを家庭学習で補う、というステップを毎週の学習サイクルにうまく組み込むことがとてっも重要になってくるのです。
塾の授業をいくら理解できたとしても、聴きっぱなしではすぐ忘れてしまいます。そこで、習った内容を定着させるために「家庭学習」が非常に重要になってくるのです。「中学受験は家庭学習の量と質で決まる」といっても過言ではありません。
家庭学習といっても、ただ問題をひたすら解いていればいいというわけではありません。理解していなければいくら問題演習をしても、解くことはできません。ですから、家庭学習をするにあたっては、「目標」を明らかにして取り組むことが重要です。たとえば、以下のような点を意識して取り組むことが必要です。
- 塾の授業でできなかったところをまず理解できるようにする(「わかる」段階)
- 習った内容の「振り返り」を確実にして、自力で家庭学習の課題が解けるようにする(「できる」段階)
- その週に習っていないけれども、これまで習った中で積み残した苦手教科の分野・単元の穴埋めをする(「自分の勉強」をする段階)
日々の家庭学習を中身のあるものにするためには、この3ステップをふむことを意識しながら進めるようにすることをオススメします。このように段階をふまずに、いきなる「カリテがあるから」と、ただがむしゃらに範囲にあたるところの問題を大量に解いても、まず定着しません。
とはいえ、日々の勉強の中で、これらのの3段階を着実にふむのはそう簡単なことではありません。お子さん一人ひとり「わかる」スピードも「できる」ようになるスピードも異なります。いまのお子さんの実力、状態によって、必要な内容や優先順位が全く変わってくる、ということも考慮に入れなければなりません。それを考慮せず、「早く宿題を終わらせなさい!」といってばかりでは、成績を上げることはできません。
着実にお子さんの実力を上げ、クラスを上げていくために、早いうちにお子さんの家庭学習への取り組み方をチェックしましょう。ただ問題を解くことだけに追われていないか、数値替えの類題を確実に解けているか、問題を解くための知識や解法がきちんと備わっているかということを確認するのです。
チェックし、対策をとるべきポイントは以下の点です。
- いまお子さんにとって必要なことは何なのか、「課題」を把握する
- 見つかったお子さんの「課題」に対して、塾から出ている家庭学習の課題の量や難易度は適切かを把握する
- そのうえで、どの教科、分野・単元については宿題の問題量を取捨選択するべきかを考える
- お子さんの現状に合わせて、その週の単元の宿題の問題量は減らし、その代わりに
お子さんの現状に合わせて、その週の単元の宿題が多すぎれば問題量は減らして理解できるものに絞る、量を減らす代わりに理解できていない部分の「振り返り」を家庭学習にしっかり組み込む、そのような学習の進め方をすることによって、基礎力を徹底して身につけることが大切です。
反対に、基礎力を定着させるために十分な量、質の宿題が出ていない場合は、同じような問題ばかり解くのではなく、本当に理解できているかどうか確認するために十分な量、質の家庭学習量を確保するようにします。これも基礎を徹底するためには重要なことです。
お子さんの状態に合わせて宿題の取捨選択をすることによって、塾の授業に対する理解を深め、十分知識や解法を身につけることが、遠回りに見えても実力をつけ、クラスを上げるために必要なことであるということを再度意識していただきたいと思います。
家庭学習をお子さんだけに任せるのは危険
家庭学習の重要性についてはさきほど書いた通りですが、家庭学習を中身のあるものにするために注意したいことがあります。これは日能研生に限ったことではありませんが、「家庭学習を、お子さんだけに任せることはとても危険だ」ということです。
自分自身がどこまで理解できていてどこが弱いのか、そのためには何をすればよいのか、段階を踏んで計画的に家庭学習ができているといったような、「正しい勉強法」を確立できているお子さんは非常に少ないのです。ほんの一握りの最上位生だけといっても過言ではありません。
小学生である中学受験生が、そのような計画立てた正しい勉強をするためには、やはり保護者の方の協力が欠かせません。
- 学習計画を立てる
- その学習計画が順調に進んでいるか管理する
- 順調に進んでいなければ学習計画を見直す
こういったことを、保護者の方がおこなってはじめて、お子さんの家庭学習のサイクルをうまく回すことができるようになります。
「中学受験するのだから、塾のカリキュラムにそって子ども本人が計画立てて勉強していけばいい」と思いがちですし、そのように思いたい、というのが保護者の方の正直な気持ちであることが多いのです。ですが、お子さんにそこまで求めることは非常に酷なことです。先が見えない中でひたすら問題を解いていれば成績は上がる、と思っていませんか?成績を上げるためには、保護者の方が、やるべきことを分析して、家庭学習をある程度管理してあげる必要があります。
保護者の方が教えると、逆効果のこともある
保護者の方がお子さんの家庭学習を管理する場合は、中学受験で求められている学習のやり方をきちんと理解した上で、お子さんを正しく指導してあげることも必要になってきます。その中には、「勉強を教える」こともある程度含まれてきます。
大人である保護者の方が、小学生である受験生に勉強を教えることは簡単なことだと思っていませんか?ですが、実際には、非常に難しいことなのです。保護者の方が中学受験をした経験をお持ちであっても、中学受験の「正しいレベル」に合わせて教える、ということはまた別のことです。自分は中学受験をして合格したから教えられる、と思われるかもしれませんが、中学受験はほかの高校受験や大学受験とは異なる「特殊な受験勉強のやり方」が必要であることを忘れてしまっているというケースが多いのです。
たとえば、中学受験では方程式が使えません。不定方程式という形で、未知数を何かに置き換えるという考え方そのものは使うことがあっても、xやyを使って方程式をたてて、それだけで問題を解くといった単純な問題ではないのです。ですが、その後大学受験を経験した保護者の方は、方程式を使って数学の問題を解くという経験をしています。方程式を使って勉強した期間の方が長いので、その便利さがわかっているために、その考え方を使えば簡単に問題が解ける、と思いがちです。
そのため、お子さんに「わからないから教えて」と言われたときに、方程式を使って教えてしまい、お子さんに方程式を使って解くクセがついてしまう、というのが代表的な「保護者の方が中学受験のやり方で教えることができない」ケースです。
また、日能研の教え方と違う教え方をしてしまうと、お子さんが混乱してしまう、ということになってしまう結果につながってしまうというデメリットもあります。中学受験には独自の解法、教え方があります。お子さんが混乱しないよう、理解しやすい解法を教えてあげることが大切です。お子さんに勉強を教えるときは、「混乱させない」ということを意識して教えてあげてください。
勉強時間は長くても成績が上がらないという状態から脱するためには
宿題をやるため、毎日長時間机に向かって勉強しているけれども、座っているだけで結果的には思うようにはかどっていないということはありませんか?また、1問解くのに時間をかけすぎて、時間切れになって十分やり切れていない、理解もできていない、というお子さんも多いです。
家庭学習が思うようにすすまないのはなぜでしょうか?根本的にあるのは、日能研での授業内容が理解できていないという点です。習った内容を理解できていないと、宿題に取り組んでも解くことができず、時間ばかりかかってしまいます。問題を解くために必要な基礎知識や解法が理解できていないからです。
また、まだ小学生なので、苦手な教科や単元の勉強やってもできないのでやりたくないと思ってしまうこともよくあります。やりたくないので避けてしまい、得意な教科や単元の問題しか解こうとしない、知識を覚えようとしない、というお子さんも非常に多いです。
しかし、教科や単元に得意・不得意のムラがあると、テストで成績をとることができず、その結果クラスを上げることもできません。成績を上げ、志望校合格に近づくためには、苦手教科や単元を早いうちに克服することがとても大切です。
日々の授業で理解できていないところをしっかり把握し、できるだけ時間をそういった苦手部分の克服にあてるようにすることが、結果として成績を伸ばすために必要なことです。目先の大量の問題に惑わされずに、そういった得意・不得意のムラをなくすことを意識して家庭学習をすすめることを忘れないようにしましょう。
家庭学習をするときに重要なポイント
では、どのように家庭学習を進めればよいのでしょうか。基本的には塾で習う解法をしっかり身につけることを優先して学習をすすめられるようにすることが最も大切です。そのためには、実際に教えるまえに、まず「 家庭学習をしっかり管理する」ということが大切です。その際に重要なのは、以下のポイントです。
- 現段階でお子さんがやるべきこととそうでないことの取捨選択をする
- どこから手をつけるか、優先順位をつける
- 現段階で知識として覚えておく必要性が高いところと、まだそこまではできないであろうと頃を区別し、現段階で覚える必要性があるかどうかの判断をしてあげる
- 覚えているべきところをしっかり理解し、知識として定着しているか確認する
- 先に進むことだけを考えるのではなく、定着度に応じて「振り返り」の時間を確保する
- お子さんがわからないところを教えるときは、お子さんの性格にも配慮しながら、「中学受験に必要な教え方」で教える
- 保護者の方が教えても効果がないときはほかの方法も考える
- テストの出題傾向をふまえて効果的なテスト対策を考える
もちろん、これだけではありませんが、こういったことを「決めて」お子さんの家庭学習を管理してあげていただきたいと思います。正しく家庭学習を管理してあげることで、成績が大きく伸びるお子さんはとても多いのです。
大切なのは、授業と家庭学習の量と質のバランス
これまで述べてきたように、日能研に通いながら成績を上げ、理解を深めていくためには、家庭学習をお子さんに任せきりにせず、保護者の方が適切にお子さんの家庭学習を管理していくことが大切です。小学生にありがちな家庭学習の失敗をふまえながら、どのように家庭学習をすすめていくか、計画をたて、それを着実にこなしていけるよう管理することが、保護者の方にとっては一番重要な役割といえます。いわば、中学受験生のプロデューサーになるということです。
多くの日能研生は家庭学習をうまくできていません。目の前の問題を解くことに精いっぱいになってしまい、まずやるべき基礎力の教科や、不得意箇所の克服がおろそかになってしまっています。その原因は、計画を立てず、家庭学習の管理ができていないことによって、勉強自体が虫食いだらけになってしまっていることにあります。そのような勉強方法は、正しいやり方とは言えません。
逆に言えば、正しいやり方で受験勉強をすすめていけば、基礎力をつけることができ、できるところとそうでないところの区別ができるのでどこを克服するべきなのかがわかります。
塾の授業に集中し、理解度を上げることが非常に重要です。そして、習ってきた内容を定着させるために家庭学習を段階をふんで正しく行うことはさらに重要です。一度にすべてできるようになるお子さんはほとんどいらっしゃいません。だからこそ、スタートラインは同じです。
特に日能研の場合、テキストの多さもあって、やらなければならないことの「見た目」が膨大です。その見た目に惑わされずに、「何を、どう、いつまでに」やるべきかということがとても重要です。そして、塾の授業の理解と、家庭学習の量と質のバランスを見極めることが大切です。
まとめ
今はなかなか塾の勉強についていけない、成績がなかなか上がらない・・・そのようなお悩みは、正しいやり方で、バランスをとりながら家庭学習をすることによって解決していくことができます。
日能研は、確かにカリキュラムもテキストも独特ですし、進度も速いです。ですが、以前に比べて講師と生徒の距離が非常に近く、質問しやすい雰囲気になってきています。拘束時間の長い塾であることはたしかですが、そのような時間のない中で家庭学習をどのようにすすめていくか迷ったときは、まず塾の講師に家庭学習のやり方や管理の方法を相談してみてください。
それでも解決しない場合は、解説があまり親切ではないテキストの内容の理解を深めるためにも、個別指導などに相談することも一つの方法です。大切なのは早く手を打つことです。夏休みになるとどんどん問題演習の授業になってきます。そうすると、家庭学習も、不得意なところの克服のための振り返りをするよりも、「塾で解いてきた問題を解けるようにする」ことに目を向けがちになってしまいます。
理解できていること、できていないことを洗い出し、宿題を取捨選択し、不得意なところを克服するためには、今のうちに手をつける必要があります。正しい勉強のやり方で受験勉強をすすめられるようにするためにも、塾の授業と家庭学習のバランスをしっかりとることを最優先にして、お子さんの家庭学習をサポートしてあげてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。