前回の記事では、浅野中学校の入試の国語について、出題の特徴や近年の傾向をご紹介しました。浅野中学校の国語入試問題は、制限時間50分であることからすると、大問数、出題される文種のバリエーションの幅広さ、設問の選択肢の長さという点から、見た目以上に難易度が高いと言えるでしょう。
また、本文自体の難易度はそれほど高いわけではありませんが、正確に速く読み、設問も読み間違えず1問ごとに頭を切り替えながら解き進んでいかなければいけません。では、浅野中学校の入試問題を攻略し、合格点をとるためにはどのような対策をしたらよいのでしょうか。
今回は、浅野中学校の国語入試分析その2として、入試対策を解説します。ぜひ参考にしてください。
Contents
浅野中学校の国語入試問題の出題傾向
知識問題と文章読解問題、合計3題の出題が続いている
浅野中学校の国語の入試問題では、漢字などの知識問題で大問1題、文章読解問題で大問2題、合計3題の出題傾向が続いています。
文章読解問題では、物語文、随筆、説明文・論説文から2題出題され、2019・2020年度は物語文・説明文からの出題、2021年は物語文と、論説文・随筆文の複数テキストの合計2題が出題されました。国語の得点率、特に合格者平均得点率は60~66%と高いレベルで推移しているため、単純ミスや読み間違いが命取りになると言えるでしょう。
長文の引用文と、内容把握を問う問題が頻出
浅野中学校の国語では、例年かなりの長文の引用文が出題されています。2019、2020年度と1万字を超える、大学入試にも匹敵するような長文の出題が続きましたが、2021年度は7,000~8,000文字程度と少し分量は減っています。
しかし、記号選択肢問題の一つひとつの選択肢が長いため、読まなければならない文字数は1万字程度となっています。読む進む際には相当のスピードが必要であり、かつ正確に内容が把握できていないと設問を理解できず、正答するのは難しいでしょう。
各小問の構成は記号選択肢問題と記述問題が中心です。本文中の傍線部は「理由を問う問題」「言い換え問題」「登場人物の心情を問う問題」がそのほとんどを占めています。一方、単純な書き抜き問題は2021年度も1問と多くありません。
なお、2021年度は複数テキストの出題が見られました。大問3では、論説文と随筆文の2つの文章が出題され、両方の文章を短い時間で正確に理解する力を試す、という出題です。実はこの複数テキストは、大学入試や公立中高一貫校ではポピュラーな出題形式。
浅野中学校では今回初めての出題となりましたが、大学入試への連携を意識する傾向を考慮すると、今後複数テキストの出題が続く可能性も十分あるでしょう。
字数制限のある厳しい記述問題
記述問題は指定字数がありますが、20~50文字程度と決して長くないのが特徴です。だからこそ、本文を素早く正確に読み解き、的確に求められる要素を拾って解答を造らなければなりません。
浅野中学校といえば、「自由記述問題」が注目を集めてきました。ただし、この数年間は出題されていません。出題されているのは内容把握に関わる字数制限のある記述です。文章を論理的に読み解く力こそが重視されていると言えるでしょう。
高い語彙力が求められる知識問題の出題、ここでも差がつく
浅野中学校では例年漢字の読み書きが8~10問程度出題されます。2021年度は10問、書きが8問、読みが2問でした。配点は、推定ではありますが16~20点程度。満点が120点ですから少々落としても大丈夫という考え方ではいけません。
設問数があまり多くないからこそ、1問正解するかどうかは合否の分かれ目になるからです。レベルは超難解とまではいきませんが、受験生が苦手としがちな同音異義語、同訓異字が多く出題されているので、決して易しいとは言えません。
お通いの塾のテキストなどで、まんべんなく学習しておくことが必要です。
時間配分にも注意!
試験時間は50分ですが、本文・設問合わせて1万字以上の文字数を正確に読み、内容を把握し、設問に答えるわけですから、非常に忙しい試験です。設問を読んでは答えを探すというやり方では、タイムアップになってしまうでしょう。
本文を一読する際にどれだけ内容を把握・大切なところを抽出できるかが合否を分けると言っても過言ではありません。言い換え表現が出てきたときにどこと同じことを言っているのか、筆者の意見はどこか、登場人物の心情や変化はどこに書いてあるか、要旨はどれか、といった文章読解の基本を制限時間内にいかに正確に行えるかが決め手です。
本文と、分量の多い選択肢を読み、さらには記述問題にも対応しなければいけないですから、時間の余裕はありません。どれだけ読解問題に時間をかけられるかも大切になってくるでしょう。
合格点をとるための対策ポイント
以上のような浅野中学校の入試傾向を踏まえた上で、合格点をとるためにはどのような点に注意して対策して行けばいいのでしょうか。
内容把握問題でいかに得点できるかが合否を分ける
設問の中心は、内容把握です。記号選択式問題、記述問題ともに、題材となる本文の内容をいかに正確に把握できているかが問われています。
なかでも、特徴的なのは記号選択式問題です。文章の内容を正確に把握できているかどうかを、〇×で判定していくので、中途半端な理解では太刀打ちできない、差のつく問題です。しかも、設問の大多数を占めるのがこの記号選択式問題です。また、選択肢一つひとつの分量が多く、長文なのも浅野中学校の記号選択式問題の難しさです。
正しいか、誤っているかを判別するために、選択肢を読んでは本文に戻る、といった解き方では時間がかかる上に正確さを担保するのは難しくなるでしょう。そのため、本文を1度読んでどこに何が書いてあるのか、内容を正確に把握することが何よりも重要です。
本文の内容を把握する際のコツとして、たとえば傍線が引かれている部分(設問になるところ)が出てきたら、なぜ傍線部のような内容が出てくるのか、理由や言い換え部分などを意識してみましょう。ここで大切なのは「スピード」と「正確さ」です。
長文読解には、文種ごとに必ず読解の手順があります。長文が出題される浅野中学校の国語では、そうした読解のセオリーを忠実に守り、設問も正確に理解して解き進んでいくことが大切です。
段落や要旨・要約、場面や情景、主人公をはじめとした登場人物の心情、心情の変化、主題など、物語文でも説明的文章でも設問として問われやすい内容を確実に抑えられるように訓練することが何よりの対策になります。
記号選択肢問題の選択肢一つひとつが長いので把握が難しい
浅野中学校の国語の設問を見てみると、内容把握を求める記号選択肢問題がほとんどです。つまり、合格点をとるためには記号選択肢問題の正答率を上げていかなければなりません。
記号選択肢問題というと、難易度が低いと考える受験生や保護者の方も多いのですが、実は答えが1つしかないという意味で、記号選択肢問題を確実に正解するのは非常に難しいことです。まず、この点から意識を変えなければいけません。
出題形式がオーソドックスでも、各設問の内容は、たとえば文脈理解や、文章の内容・要点の読み取り、登場人物の心情の読み取りなど、本質的な「読み」の力が問われています。
設問を読んで即座に答えられるような単純な出題ではありません。また、注意しなければならないのは、各選択肢の文が長いことです。2~3行は当たり前、しかも紛らわしい選択肢が並んでいるので、本文の内容の正確な把握なしに解いていくのは大変難しいでしょう。
選択肢が長いと、読んでいるうちに混乱してしまいますし、入試本番の独特の雰囲気の中で冷静に判断するのは簡単なことではありません。そのため、本文を一読する際に、重要な部分にはしっかり印をつけ、どこに何が書いてあるのかわかるように読みながら把握する必要があります。
それを確実に行っておけば、何度も本文に戻る必要はありませんし、設問が何を聞いているのか把握すればすぐに解答につなげることができるでしょう。選択肢そのものの吟味も非常に重要です。
選択肢を読む場合も、その内容が本文と合致しているか、言い換え表現を使っているけれど同じ内容なのか、といったことを素早く判断していきましょう。その際には、選択肢を文節に分解してみて、本文と合致している部分に〇を、合致しないところに×をつけるクセをつけておくと、読みそこなうことがありません。
記述問題は少ないだけに、確実に得点しなければならない
2021年度は、字数制限のある、内容把握に関する記述問題が出題されました。国語の出題全般の傾向から、浅野中学校では正確な読解力と、柔軟な表現力を見ていると言えるでしょう。
その双方のバランスを見るのが記述問題、というわけです。国語で求められる表現力には、本文の内容を正確にまとめることと、自分の考えを述べることの2つがありますが、この数年間の出題からは、前者が重視されていることが見て取れます。
まずは設問をしっかり読み、理由を聞かれているのか、作者の考えを聞かれているのかなど、「何を書けばいいのか」を素早く判断しましょう。記述問題の場合、いくつかの要素を確実に拾っていることが必要であり、それぞれの要素に配点がなされています。
そして、それらの要素を確実に拾っていけば指定の字数に過不足なく収まるように作られていることにも着目しなければなりません。書き出してみてオーバーするようなら、表現が冗長になっている、あるいは必要ないことまで書いている可能性があるでしょう。
逆に短すぎる場合は、求められている要素を拾い切れていないわけですから、再度設問を読み、本文からよりふさわしい表現を探してくる必要があります。言い換え表現などに印をつけておけば、こうした作業を短い時間で的確にできるようになるでしょう。なお、浅野中学校の国語の特徴と言えば、「自由記述問題」の出題が挙げられます。
この数年間は出題されていませんが、2013年度の入試でいきなり復活したこともあるので、今後まったく出題されないとは考えない方が良いでしょう。従来出題されてきた自由記述問題は、100~120字程度です。
長いな、と思われるかもしれませんが、実はこのくらいの字数では、たくさんのポイントを入れ込んで記述はできません。自由記述といってもテーマはあるので、そのテーマに沿って何を書くべきか、整理しながらいくつかピックアップし、しかも読む人に伝わるように書かなければならないので、簡単ではありません。
ただの感想文とはわけが違うのです。2010年度までは毎年のように出題されていたので、過去問を上手く活用して自由記述対策を行い、過不足なく記述できるような訓練は必須だと言えるでしょう。
まとめ~高得点をとるカギ
今回は、浅野中学校の国語で合格点をとるために、2021年度と過去の出題傾向から特徴と対策のポイントを解説しました。高得点を取るカギは以下の4つです。
- 一読して内容を把握するためのスピードがあり、正確な読解力
- 長文の記号選択肢問題対策が得点に直結
- 記述問題は少ないが確実に得点を
- 漢字やことばの高い運用能力
制限時間が50分なのに対して大問が3題、設問数はそれほど多くはないものの、読まなければならない文章量が1万字前後と、余裕のない入試です。
そのため、文章を読み始めたら止まることなくスピーディーに解き進めていかなければなりません。漢字以外は読解問題なので、狙われやすい要旨・要点などのポイントを素早く正確に把握する「高度な国語力」を身に着けておくことが必須です。
また、記号選択肢問題が多く出題されますが、ここで意識すべきなのは、本文中の根拠をきちんと押さえられるかどうかです。本文と離れた「もっともらしい」選択肢に惑わされると、大きく差をつけられてしまいかねません。
そこで、一つひとつの選択肢を良く吟味し、主観的ではなく客観的な読みを徹底すること、根拠と照らし合わせることが重要です。記述問題は20~50字程度の短い記述問題の出題ですが、短いからこそ必要なことだけを簡潔にまとめなければいけません。的を外すと点数がもらえないので要注意です。
設問を正確に把握し、何を書くべきかを考えてから入れるべき要素を見極め、さらには字数内に収まるように表現を工夫しなければいけないので、何段階も踏まなければならないことを意識しましょう。
設定されている字数には、その文字数で十分説明できるはず、という学校側の意図が込められていることに立ち返ってください。スピードと正確さを常に意識しながら、通常授業で解く問題、過去問すべてにおいて素早く内容を把握する訓練を積んでいくことが、浅野中学校の国語攻略のカギです。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。