今回は2021年度の海陽中等教育学校の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、地理問題の解き方、愛媛県の地理について説明していきたいと思います。
問題
愛媛県は、今治市や新浜市、四国中央市などがある東予、県庁所在地松山市を中心とした中予、宇和島市などがある3つの地域にわけられます。
江戸時代は今治藩、松山藩、宇和島藩や幕府直轄地など複数の地域に分かれて統治されており、それぞれの藩が産業の育成に力を注いだことから、地域ごとに特色ある産業が生まれ、その多くが現在の産業へとつながってきました。
東予地域の瀬戸内海に面した平野が広がる地域では、工業がさかんです。今治市は古くから瀬戸内海を結ぶ海運の拠点であったことが現在の( 1 )業につながっており、また、せんい産業もさかんで( 2 )の生産日本一のまちとしても知られています。また、新浜市は江戸時代に( 3 )銅山が上方の商人である住友家によって開発されたことをきっかけとし、銅の精錬時にでる化学物質を肥料などに加工する化学工業や、機械工業など様々な関連産業が発達しました。新浜市の東側に位置する四国中央市は、江戸時代にこうぞやみつまたの栽培がさかんに行われたことから、日本有数の( 4 )業の町に成長しました。
一方、南予地域は山地が海近くまでせまり、平地が少なく、海岸線は入り組んだリアス海岸となっています。そのため、海に面した段々畑でのミカンを中心としたかんきつ類の栽培と、波のおだやかな湾での養殖業がさかんです。
近年は①ミカン栽培と漁業とを結びつけ、自然環境に配慮した地域循環型農業が進められています。
問1
文中の空らん( 1 )〜( 4 )にあてはまる適切な語句に答えなさい。
- 【解答】
- 1、造船
- 2、タオル
- 3、別子
- 4、製紙
問題文にもある通り、愛媛県は大きく分けて3つの地域に分けられます。東予、中予、南予の区分は以下の地図の通りです。
それぞれの地域の特徴を以下の表にまとめました。
地区 |
特徴 |
東予地区 |
製紙・化学・造船・繊維が中心の工業地域 |
中予地区 |
県庁所在地の松山を中心に商業・観光等の第三次産業がさかん。化学繊維等の工場も多い |
南予地区 |
日本一のミカンの産地。また水産業もさかんでタイ、はまち、真珠等の養殖業で全国有数の生産量を誇る |
以上をふまえた上で該当箇所を見ていきましょう。
- ( 1 )⇨「今治市は古くから瀬戸内海を結ぶ海運の拠点であった」という部分がヒントになります。海運ということ、東予地域のさかんな産業の一つに造船があることから導き出せるでしょう。
- ( 2 )⇨「せんい業もさかんで〜」という部分がヒントになります。今治タオルを聞いたり、目にしたこともあるかもしれません。愛媛県の有名なブランドの一つであり、愛媛県今治市は日本有数のタオルの生産地として有名です。
- ( 3 )⇨「江戸時代に( 3 )銅山〜」や「住友家」がヒントになります。江戸時代になると鉱業がさかんになります。中でも有名だったのが愛媛県の別子銅山、新潟県の佐渡金山、島根県の石見銀山です。
- ( 4 )⇨「江戸時代にこうぞやみつまたの栽培がさかんに行われた」という部分がヒントになります。こうぞ、みつまた共に和紙の原材料として知られています。このことから製紙業とわかります。
[別子銅山]
問2
下線部①について、次の図は、愛媛県が進めている地域循環型農業のイメージ図です。
(愛媛・南予の柑橘農業システムホームページ(愛媛県農林水産部)
(1)愛媛のミカンは「3つの太陽」を浴びることでよりおいしくなるといわれています。「3つの太陽」のひとつは昼間の直射日光のことをさしますが、残りの2つは何をさしているか、図を参考にして答えなさい。
(2)ミカン栽培と漁業の間でどのような循環がなりたっているか、図中の矢印を参考にして述べなさい。
- 【解答】
(例)
- (1)
- 海に反射した太陽の光
- 昼間の太陽にあたためられた石垣の熱
- (2)ミカンの皮や果汁のしぼりかすを、養殖用の飼料に利用してブランド化する一方で、魚の骨などから肥料をつくり、ミカンの栽培に利用する。このように、廃棄していたものを役立てながら、循環させている。
- (1)
- 【解説】
- (1)愛媛県では海面に面した南むきの斜面に段々畑を作りミカンを栽培しています。その理由は問題になっている3つの太陽です。図の一番右の太陽が表しているのは直射日光です。真ん中の太陽は段々になっている石垣が太陽の熱であたためられ、ミカンに反射するようになっています。一番左の太陽は海に降り注ぎ、反射してミカンにあたるようになっています。段々畑はミカンの生産には良いですが、作業者は収穫のたびに登ったり降りたりしなくてはならず、重労働です。
(愛媛・南予の柑橘農業システムホームページ(愛媛県農林水産部)
-
- (2)地域循環型農業とは、化学肥料や農薬等を使わず、有機資源を使って農産物を生産をする試みです。「SDGs」等の影響を受け各地域で地域循環型農業を目指す動きが広まっています。
では、愛媛県の地域循環型農業の取り組みをみていきましょう。図に注目してみると、魚からミカンへ肥料の矢印。ミカンから魚、牛へとエサの矢印が出ています。つまりは、ミカンの肥料には魚などの海洋物を用いていることがわかります。一方でミカンも魚や牛のエサとなって循環していることがわかります。
具体的には、魚かす肥料や、真珠のアコヤガイの殻を活用した石灰質資材をミカンの肥料として活用し、ミカンをジュースなどに加工する際にでるしぼりかすや、皮などを魚や牛のエサにすることで、ミカンフィッシュや愛媛あかね和牛などのブランドを確立させています。
- (2)地域循環型農業とは、化学肥料や農薬等を使わず、有機資源を使って農産物を生産をする試みです。「SDGs」等の影響を受け各地域で地域循環型農業を目指す動きが広まっています。
おすすめ記事