中学受験算数において、「解法を知識として知っているかそうでないか」によって得点が大きく左右されることは珍しくありません。
例えば何も解法を知らず、闇雲に当てはめたりして探していっても答えを出すことは可能ではあります。ただ、制限時間内により多くの点数を獲得しなければならない受験という場において、そのような時間も労力もかかる方法でしか答えが出せないのでは勝負になりません。
知らないと損をする解法知識のいくつかを、このブログで順次お伝えしていきたいと思います。
今回は、「倍数の見分け方」についてのお話です。
倍数って何だっけ?
倍数、約数、素数、逆数、…いろいろな数があって、混乱してしまう人もいるかもしれません。まだ言葉の意味の違いを覚えきれていないという人は、まずそこから確認しましょう。
- 倍数⇒整数をかけた数 (例:6の倍数⇒6、12、18、24、…)
- 約数⇒その数をわり切れる整数 (例:6の約数⇒1、2、3、6)
- 素数⇒約数を2つしか持たない整数 (例:2、3、5、7、11、13、…)
- 逆数⇒かけて1になる数 (例:3の逆数⇒3分の1)
かけ算するときに「2倍する」とか「3倍する」というように、「倍」という言葉を使いますね。そこから「倍数=かけた数」と覚えておけばよいでしょう。
約数は倍数とは対の関係になる数です。素数や逆数については、今回の内容には直接関係のあるものではありませんが、数の性質の問題を解く上で言葉の意味を知らないと困ることになりますので、意味は正しく覚えておいてください。
倍数判定法とは
数を見たときに、「これはどんな数の倍数になっているのかな?」を見分けるのが倍数判定法です。「どんな数でわれるのかな?」と同じ意味でもあるので、約数を考えるときにも使います。
- 2の倍数⇒1の位が偶数
- 3の倍数⇒各位の和が3でわれる
- 4の倍数⇒下2けたが4でわれる
- 5の倍数⇒1の位が0か5
- 6の倍数⇒各位の和が3でわれて、1の位が偶数
- 8の倍数⇒下3けたが8でわれる
- 9の倍数⇒各位の和が9でわれる
中学受験算数においては、この倍数判定法を知らないと特に困るのは「カード並べ」の問題のときです。何枚かのカードを並べてできる整数の中で、「3の倍数は何通りできますか」などの問題が出題される定番のパターンです。8の倍数は聞かれることはほとんどありませんが、知っておいて損はないでしょう。
尚、中学受験の算数で問われることがないので覚えておいても役に立たないのですが、上にあげた以外にも7の倍数、11の倍数、13の倍数は、4けた以上の整数の場合に限り、判定が可能です。こちらはどこかの機会でまたお話しできたらと思います。
(ヒントとしては、7×11×13=1001になることを使って判定しますので、どれも同じ判定法になります。)
実際に問題を解いてみる
見分け方を知っていても問題を解くときにどう使うのかを理解していなければ意味がありません。実際にカード並べの問題を解く際、どのようにして判定法を活用していくのかを見ていきます。
(問題)0,1,2,3,5の5まいのカードがあります。これらを並び替えて3けたの整数を作ります。
- 2の倍数は何通り作れますか。
- 3の倍数は何通り作れますか。
- 4の倍数は何通り作れますか。
- 6の倍数は何通り作れますか。
上のようにそれぞれの判定法に基づいて考えていきます。2の倍数や4の倍数は、先に一の位や下2けたを限定してから残りの位に入る数字を考えます。3の倍数や6の倍数は、先に各位の和が3でわれるような数の組み合わせを作ってから、その中で並び替えを行います。
2の倍数が求められれば、5の倍数も同様にして一の位から考えればよいです。また、3の倍数が求められれば、9の倍数も同様にして各位の和から考えることができます。
もしこれが、判定法を知らずにこの問題を解く場合にはどうするかというと、「すべての整数を書き出してから、われる数を探す」というような、時間と労力を費やす方法で答えを求めることになってしまいます。
ただし、問題の条件によっては、そのようにすべての条件に当てはまるものを書き出して調べる必要がある問題もあります。
しかし、今回ご紹介したようなカード並べの問題で倍数が何通りあるかという典型題の場合には、スムーズに答えにたどり着けるようにしたいものです。
そのためにも、倍数の判定法を正しく覚えて、解法の手順を練習しておいてほしいと思います。