振り子の基本を理解する ~振り子の速さとエネルギーに関する法則を身につけよう~【中学受験理科】

以前の記事で、振り子の基本について解説しました。

【中学受験理科】振り子の基本を理解する ~振り子の基礎知識をマスターし、周期についての理解を深めよう~

この記事では、振り子の基本単語と振り子の周期に焦点を絞って説明していますが、振り子については他にも「振り子の速さ」「振り子のエネルギー」という基本事項があります。この二つのことを理解するのがこの記事の目標です。

先に、この記事で最も重要なことを記しておきましょう。

「振り子の速さはおもりの高さに注目すればよい」

さて、なぜこの結論が導かれるのでしょうか。

いまこのことが理解できなくても、記事を最後まで読んで再び考えれば、きっと理解できるはずです!

振り子の周期は、「振り子の長さ」だけに注目すれば良かったですよね。速さとエネルギーにも同じような法則があります。一つ一つの法則は非常に簡単ですが、すべての法則をいっぺんに暗記しようとすると、混乱の原因になります。それぞれの物理量の特徴をしっかりととらえて、時間をかけて覚えていきましょう。
練習問題を解きながら理解する形式になっていますので、最後まで取り組んでみてください!
それでは解説に入ります。

振り子の速度はどこが一番早い? 2種類のエネルギーから考えてみよう!

次の問題の答えを考えてみてください。

問1 ①~③のうち、おもりの重さが最も早くなる場所はどれでしょう。

問2 ①~③のうち、速さがゼロになる場所はどれでしょう。

問1の答えは②、問2の答えは①、③です。

なぜこうなるのでしょうか。

その前に、振り子のエネルギーについて重要なことを述べておきましょう。 振り子のエネルギーには次の2種類があります。

「高い位置に存在する物体が持つエネルギー」
「運動をする物体が持つエネルギー」

物体を高い位置にあげるということには、それだけたくさんの重力に逆らう力が必要になります。荷物を床に落とすのと、荷物を持ち上げるのでは、荷物を持ち上げる方が疲れますよね。また、坂を登る方が、坂を下るよりも疲れますよね。このように、物体を高い位置に上げるということは、それだけでエネルギーを必要とすることなのです。

一方、速い速度で移動する物体にも多くのエネルギーがあります。例えば、ボウリングで速い球を投げたときと、遅い球を投げたときとでは、どちらの方がよりピンを遠くまで飛ばせるでしょうか。答えはもちろん速い球を投げたときです。あるいは、ドッヂボールで速い球をキャッチしたときと、遅い球をキャッチしたとき、どちらの方が体に受ける力が大きいでしょうか。これも、速い球ですね。このように、速い速度で移動する物体にも多くのエネルギーがあります。

このことを踏まえた上で、再び問題を見てみましょう。いま、振り子には力を加えていないので、振り子が持っている全体のエネルギーは変化しません。

②の状態を見てみましょう。このとき、振り子は最も低い位置に存在します。つまり、「高い位置に存在する物体が持つエネルギー」はゼロになります。このとき、物体がもつ全体のエネルギーはすべて「運動をする物体が持つエネルギー」になるので、おもりの速さは最も速くなります。

一方、①、③の状態を見てみましょう。このとき、振り子は最も高い位置に存在します。つまり、物体がもつ全体のエネルギーはすべて「高い位置に存在する物体がもつエネルギー」になります。したがって、「運動をする物体が持つエネルギー」はゼロになり、おもりの速さはゼロになります。

これらの答えはどのような振り子にも当てはまります。おもりの速さは、おもりが最も低い位置にいるときに最も速くなり、おもりが最も高い位置にいるときに最も遅くなる(=ゼロになる)ことを理解できたでしょうか?

最も速い振り子はどれ?

では、次の問題を解いてみてください。

問3 次の振り子①~③のうち、支点の真下での速さが最も速くなる振り子はどれでしょう。

振り子の速さを違う振り子同士で比べたとき、振り子の速さを決めるのは「振り子の高さ」です。正確に言えば、「おもりが支点の真下にいるときの場所からどれくらいの高さで手を離したか」が重要になります。

なぜそうなるのでしょうか? 実は、おもりの重さは物体の速さとは関係ないのです。例をあげましょう。鳥の羽と鉄球を同じ高さから同時に落としたら、どちらの方が速く地面に落ちるでしょうか。おそらく、ほとんどの人は「鉄球」と答えるでしょう。実際、通常我々が生きている世界では鉄球の方が速く落ちます。ですが、これは「空気抵抗」の働きによるものなのです。空気が存在しない「真空」中では鉄球も羽も同時に地面に落ちます(本当です)。

小学校理科の問題では、基本的に空気抵抗の影響は考えないので、おもりの重さと物体が落下する速さは無関係になります!

したがって、答えはおもりが支点の真下にいるときの場所から最も高い位置で手を離す②となります。

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まとめ

今回は、「振り子の速さ」に焦点を当てて解説しました。2種類の振り子のエネルギーの話や、おもりの重さとおもりの速さが無関係であるということは、はじめて聞いたという人も多いかもしれません。ですが、物体の運動を考えるうえで、「なぜそうなるのか?」を考えることは非常に大切なことです。振り子の問題で混乱することがあれば、またこの記事を読み返してみてください。物体の運動のさらに詳しい内容は、中学校以降の物理で勉強することになるので、楽しみにしていてください!

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