今回は国際社会が抱える核問題と日本の国際貢献についてみていきたいと思います。そもそも核兵器とはどのようなものでしょうか。
核兵器とは、核分裂や核融合など、原子核反応によるエネルギーを発生させ、大量破壊や殺傷のために用いる兵器です。爆発の中で気体になっていた放射性物質はしだいに凝結し、土やその他の粒子あるいは水滴などに付着して地上に落下してきます。このことを放射性降下物(フォールアウト)とよび、人体にとって悪影響を及ぼします。次に核兵器の歩みをみていきましょう。
第二次世界大戦中の1945年8月6日、広島に原子爆弾が落とされ、同年8月9日に長崎に原子爆弾が落とされました。第二次世界大戦後、アメリカとソ連(現在のロシア)は実際に武力衝突をせず、東側の共産主義と西側の民主主義に分かれ激しい対立状態、すなわち冷戦に突入しました。
冷戦下、アメリカとソ連では、核兵器を保有することで脅威を与え、他国に攻撃を思いとどまらせようと核軍拡競争となります。そのような核抑止論は今なお続けられ、核兵器の撤廃が進みません。
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の核弾頭データなどをもとに作成
(2021年6月現在)(ながさきの平和)
被爆国である日本は、佐藤栄作首相のもと1971年に、核兵器を「持たず、作らず、持ちこませず」という非核三原則を国会で決議しました。一方で佐藤政権は核の寄港・通過を認めた「核密約」も成立させました。また、日本国憲法では、武器の不保持を掲げています。
日本国憲法 第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
国際社会における核兵器の非人道性に対する認識が広がり、2017年(平成29年)7月7日、「核兵器禁止条約」が国連加盟国の6割を超える122か国の賛成により採択されました。「核兵器禁止条約」では第1条で核兵器の開発、実験、使用、使用の威嚇などを禁止しています。採択された「核兵器禁止条約」は2021年(令和3年)1月22日に発行されました。
被爆国である日本はこの条約に署名・批准をしていません。2021年12月28日現在、署名は86か国・地域、批准は9か国・地域となっています。
ある区域内の国々が、核兵器の製造、実験、取得、保有などをしないと約束する非核兵器地帯条約を結ぶ動きも80、90年代以降行われてきましたが、強い効力を持つものではなく、地域の拡大も求められています。
(ながさきの平和)
日本は、アメリカなどの核保有国の「核の傘」に入っています。「核の傘」とは、核兵器の保有国が、自国を中心に平和を維持しうると考える範囲で、保有しない同盟国の安全を守る体制のことを言います。
そのような核保有国や核の傘に入る国に対し、国際NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は「シティーズ(都市)・アピール」として国ではなく、世界の都市にすることで、都市が自国に対し核兵器禁止の働きかけをするよう促す運動を行なっています。
日本では、被曝した広島、長崎を中心に政府に対し核禁止への働きかけを呼びかける署名などの運動を行なっています。