本日解説するのは、「渋谷教育学園渋谷中学校」さんの国語の入試問題です。
「自調自考」という教育目標のもと、国際教育に力を入れ、海外大学進学者を多数輩出している、渋谷教育学園渋谷中学校。
そんな渋谷教育学園渋谷中学校の国語の入試問題は、どのようなもので、どんな対策をしていけば良いのでしょうか。
学校情報や入試の基本データをまとめた上で、渋谷教育学園渋谷中学校さんの入試問題を分析し、問題を解くにはどういった対策が必要なのかを解説します。
Contents
【学校情報】
[応募状況]
◎2020年度:募集人員 合計175名(内、帰国生12名)
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第1回 |
第2回 |
第3回 |
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募集人員 |
70名 |
70名 |
23名 |
|||
応募者数 |
男子134人 |
400人 |
男子385人 |
759人 |
男子294人 |
588人 |
女子266人 |
女子374人 |
女子294人 |
||||
受験者数 |
男子125人 |
376人 |
男子343人 |
685人 |
男子224人 |
442人 |
女子251人 |
女子342人 |
女子218人 |
||||
合格者数 |
男子41人 |
121人 |
男子173人 |
258人 |
男子46人 |
69人 |
女子80人 |
女子85人 |
女子23人 |
[倍率]
◎2020年度
- 第1回:男子3.0倍 女子3.1倍
- 第2回:男子2.0倍 女子4.0倍
- 第3回:男子4.9倍 女子9.5倍
[進路実績]
◎2020年度:大学合格者数
国公立大学 |
私立大学 |
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東京大学 |
35名(27名) |
早稲田大学 |
125名(98名) |
京都大学 |
7名(5名) |
慶応義塾大学 |
110名(89名) |
一橋大学 |
8名(8名) |
上智大学 |
33名(31名) |
東京工業大学 |
6名(4名) |
東京理科大学 |
68名(54名) |
大阪大学 |
1名(1名) |
明治大学 |
55名(42名) |
千葉大学 |
3名(3名) |
青山学院大学 |
13名(11名) |
筑波大学 |
2名(1名) |
立教大学 |
18名(15名) |
北海道大学 |
6名(2名) |
中央大学 |
40名(32名) |
東北大学 |
4名(3名) |
法政大学 |
25名(24名) |
※海外大学・他大学 多数合格、
※表の( )内は、新卒者合格人数。順不同
<学校公式HP「『渋谷教育学園渋谷中学校高等学校』進路実績」より一部抜粋。>
[学校説明会日程]
◎2019年:中学校説明会
- 第1回 2019年 10月 19日 (土) 14:00~16:00 ≪6年生対象≫
- 第2回 2019年 11月 16日 (土) 14:00~16:00 ≪4年生以上対象≫
※帰国生入試に関する説明は両日13:00から開始。
※予約受付:両日ともに2019年9月17日(火) 10:00~
<学校公式HP「『渋谷教育学園渋谷中学校高等学校』本校主催「学校説明会」 ご案内・イベント予約について」(2019.09.10)より抜粋>
[入試情報・日程・科目数]
★2021年度入試
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第1回入試 |
日程 |
2021年2月1日(月) |
試験内容 |
学力検査 [ 国語・算数・理科・社会 ] |
募集人員 |
70名 |
出願期間 |
2021年1月12日(火) 10:00 ~ 2021年1月28日(水) 14:59 |
合格発表 |
2021年2月2日(火) 14:00 |
手続期限 |
2021年2月2日(月) 14:00 ~ 2021年2月10日(水) 23:59 2021年2月12日(金) 0:00 ~ 2021年2月12日(金) 23:59 |
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第2回入試 |
日程 |
2021年2月2日(火) |
試験内容 |
学力検査 [ 国語・算数・理科・社会 ] |
募集人員 |
70名 |
出願期間 |
2021年1月12日(火) 10:00 ~ 2021年1月28日(水) 14:59 |
合格発表 |
2021年2月3日(火) 11:00 |
手続期限 |
2021年2月3日(火) 11:00 ~ 2021年2月10日(水) 23:59 2021年2月12日(金) 0:00 ~ 2021年2月12日(金) 23:59 |
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第3回入試 |
日程 |
2020年2月5日(金) |
試験内容 |
学力検査 [ 国語・算数・理科・社会 ] |
募集人員 |
23名 |
出願期間 |
2021年1月12日(火) 10:00 ~ 2021年2月4日(木) 23:59 |
合格発表 |
2021年2月6日(土) 11:00 |
手続期限 |
2021年2月6日(土) 11:00 ~ 2021年2月10日(水) 23:59 2021年2月12日(金) 0:00 ~ 2021年2月12日(金) 23:59 |
<学校公式HP「『渋谷教育学園渋谷中学校高等学校』2021年度入学試験募集要項」 より抜粋>
【基本データ】
[試験時間・満点]
◎2020年度入試
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国語 |
算数 |
理科 |
社会 |
試験時間 |
50分 |
50分 |
30分 |
30分 |
満点 |
100点 |
100点 |
50点 |
50点 |
<学校公式HP「『渋谷教育学園渋谷中学校高等学校』2021年度入学試験募集要項」 より抜粋>
[問題構成・解答形式]
渋谷教育学園渋谷中学校の国語は、試験時間50分100点満点の入試です。
近年の入試における問題数は、大問が2問、小問数は20~25問です。出題形式は「選択式」がメインで、「記述式」の読解問題は大問ごとに1~2問ずつ織り交ぜられています。
「選択式」の問題は、1つ3行ほどの選択肢が5つ並び、その中から適当なものを選ぶものが多いようです。答えが本文の直前・直後にない場合も多く、正答するためには、幅広い段落の中に含まれる要点、複数の根拠を正確にまとめ返し理解する力が必要となります。
また、「記述式」の問題については、41~50字以内、もしくは51~60字以内で傍線部の内容を説明する形式であることが多いです。「選択式」の問題でも、「記述式」の問題でも、本文の内容が精確に読み取れているかが問われているといえるでしょう。
問題構成については、大問1が小説、大問2が論説文という形が続いています。語句の問題は、「漢字の書き取り」の問題が読解問題の中で出題されており、独立した大問としては出題されていません。
[合格最低点・平均点]
・2020年度 [合計点:300点]
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第1回 |
第2回 |
第3回 |
合格最低点 |
男子 177点 |
男子 168点 |
男子 184点 |
女子 188点 |
女子 182点 |
女子 194点 |
・2020年度 [配点:国100点 算100点 理50点 社50点]
第1回 |
国語 |
算数 |
理科 |
社会 |
合格者平均点 |
男子 64.6点 |
男子 59.9点 |
男子 37.5点 |
男子 29.7点 |
女子 67.7点 |
女子 60.5点 |
女子 38.0点 |
女子 29.6点 |
第2回 |
国語 |
算数 |
理科 |
社会 |
合格者平均点 |
男子 55.1点 |
男子 78.1点 |
男子 26.9点 |
男子 33.0点 |
女子 62.8点 |
女子 75.8点 |
女子 27.8点 |
女子 32.6点 |
第3回 |
国語 |
算数 |
理科 |
社会 |
合格者平均点 |
男子 56.6点 |
男子 67.0点 |
男子 38.1点 |
男子 32.5点 |
女子 65.4点 |
女子 70.4点 |
女子 38.2点 |
女子 32.0点 |
【近年の出題内容】
◎2020年度
・第1回
大問1 |
小説 |
選択式6問 |
内容説明、心情、空所補充 |
記述式7問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[51~60字] 1問 空所補充(内容説明)[書き抜き] 2問 |
||
大問2 |
論説 |
選択式4問 |
内容説明、理由、具体例、段落構成 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[41~50字] 1問 記述(内容説明)[51~60字] 1問 |
・第2回
大問1 |
小説 |
選択式4問 |
心情、空所補充、内容説明 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[41~50字] 1問 図示(人物相関図) 1問 |
||
大問2 |
論説 |
選択式5問 |
内容説明、具体例、理由、筆者の主張 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[61~70字] 1問 記述(内容説明)[51~60字] 1問 |
◎2019年度
・第1回
大問1 |
小説 |
選択式5問 |
心情、内容説明 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 書き抜き(内容説明)[11~15字] 1問 記述(理由説明)[41~50字] 1問 |
||
大問2 |
論説 |
選択式6問 |
空所補充、表現、内容説明、慣用句、理由 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[51~60字] 1問 記述(理由説明)[41~50字] 1問 |
・第2回
大問1 |
小説 |
選択式6問 |
心情、理由説明、内容説明 |
記述式4問 |
語句(漢字の書き取り) 3問 記述(内容説明)[81~90字] 1問 |
||
大問2 |
論説 |
選択式5問 |
内容説明、理由、空所補充、具体例 |
記述式5問 |
語句(漢字の書き取り) 3問 記述(内容説明)[31~40字] 1問 記述(内容説明)[71~80字] 1問 |
◎2018年度
・第1回
大問1 |
小説 |
選択式6問 |
場面、理由、心情、表現、内容説明、 空所補充 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 5問 記述(内容説明)[71~80字] 1問 |
||
大問2 |
論説 |
選択式6問 |
内容説明、具体例、空所補充、筆者の主張 |
記述式6問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(理由説明)[46~55字] 1問 記述(理由説明)[66~75字] 1問 |
・第2回
大問1 |
小説 |
選択式5問 |
内容説明、心情 |
記述式4問 |
語句(漢字の書き取り) 3問 記述(理由説明)[61~70字] 1問 |
||
大問2 |
小説 |
選択式5問 |
内容説明、ことわざ、空所補充 |
記述式5問 |
語句(漢字の書き取り) 3問 記述(内容説明)[21~30字] 1問 記述(理由説明)[41~50字] 1問 |
【出題傾向】
[出題のポイント]
1.「小説」「論説」は毎年1題ずつ出題! 両ジャンルともに、要点を掴みながら読む練習を。
渋谷教育学園渋谷中学校の入試問題では、「小説」も「論説」も文量としては長めの文章が出題されています。そして、どちらの読解問題でも、傍線部の直前・直後に解答の根拠があるような問題ではなく、ある程度の範囲の要点を掴むことで正答できる問題が多いです。そのため、渋谷教育学園渋谷中学校の問題を解くためには、「要点を掴みながら読む力」を養うことが必須であると言えるでしょう。
また、選択式の問題では、漫然と読んでいると間違えてしまいそうな選択肢が並びます。そういった意味でも、小説では人物の心情の筋道を、論説では筆者の主張の筋道を掴みながら読むことができないと、正答に辿り着くことは難しいでしょう。
しかし、裏を返せば、「内容が的確に掴めていれば正答できる正統派な問題」ともいえるので、まずは本文の内容の要点を掴みながら読む練習をすることが肝要です。
2.本文の内容を問う問題では、「対話文」を読んで答える問題の出題あり!
渋谷教育学園渋谷中学校の読解問題では、本文を読んだ生徒たちの発言や対話文から本文の解釈や内容について問う問題が、近年連続して出題されています。こういった形式の問題でも、文章の内容を精確に捉えることの重要性は変わりません。選択肢となっている生徒たちの発言と本文の要点を照らし合わせることで、どの選択肢が正解で、どの選択肢が誤答なのか見抜くことができるでしょう。
選択肢を読み、なんとなく正答に思えた時点で解答を選ぶのではなく、正答であろう答えのあたりはつけながらも、消去法でしっかり他の選択肢を削っていくことで、正答率を上げることができます。問題形式に関わらず、丁寧に選択肢を削る練習をしていきましょう。
3.語句の問題は「漢字の書き取り」が毎年出題! 時折、「ことわざ」や「慣用句」も出題。
渋谷教育学園渋谷中学校では、語句の問題が大問として独立して出題されるというよりも、読解問題の大問の中に「漢字の書き取り」の問題が配置される傾向にあります。
大問一題につき、「漢字の書き取り」の問題が毎年3~5問出題され、そこに「慣用句」などの問題もたまに数問加わる程度のため、語句の問題の比重が特別高いというわけではないでしょう。標準的な語句知識系統の問題集を1冊しっかり解けるようにしておくことが重要と思われます。
[問題の分析と対策]
渋谷教育学園渋谷中学校の問題を解くためには、第一に「要点を掴みながら読む力」を養うことが肝要であるといえるでしょう。
先述した通り、渋谷教育学園渋谷中学校の問題は、傍線部の直前・直後のみを読んで正答できたり、漫然と読んでいて正答できたりするような問題ではありません。本文の要点を掴み、その要点と選択肢を照らし合わせながら、丁寧に選択肢を削ることで、正答に辿り着くことができる問題だといえます。
そのため、渋谷教育学園渋谷中学校の問題で得点率を上げたい場合には、第一に、小説では登場人物の心情の筋道を、論説では筆者の主張や説明の筋道を的確に掴みながら読む習慣をつけるのが重要です。
要点を的確に掴めないと、なんとなく選択肢を選ぶことになってしまい、なかなか正答率を上げることが難しくなります。ただ漫然と本文を読む「受動的な読み方」ではなく、内容を掴み整理しながら本文を読む「能動的な読み方」を習慣化できると、安定して得点が上がってくると思われます。
そして、渋谷教育学園渋谷中学校の問題で得点率を高めていくためのもう1つのポイントは、本文内容を要約する力でしょう。
渋谷教育学園渋谷中学校の問題では、本文中の複数の根拠をまとめあげて正答の選択肢が作られている場合があり、複数の要点をまとめあげる力があると、そういった問題も解きやすくなります。
また、選択式の問題が多いといえども、記述の問題も大問1つにつき1問は必ず出題されているので、本文内容をまとめる力を身につけておくと、そちらの問題を解く際にも活かされてくるでしょう。
以上で述べた力を養うためには、「①本文のキーセンテンスに線を引き、段落ごとの要点を掴む練習を行う」「②選択肢を選ぶ際には「消去法」を丁寧に行い、答え合わせのときには選択肢のどこが違うのか必ず確認をする」「③最後に要約の練習を行う」の3点を、普段の読解演習のときから地道に行うことが大切です。
最初は時間がかかっても良いので、まずは丁寧に読む練習を行い、徐々に時間制限付でも精度高く読めるよう、とにかく繰り返し練習を行いましょう。
[おすすめの問題集]
◎中学受験新演習 国語 小5~6(上・下)
ジャンル・出題形式問わず読解問題をバランスよく演習することができます。問題量も多く、語句知識の問題も配置されているので、総合的な国語力を上げていくためにおすすめの問題集です。
◎中学入試 でる順過去問 漢字 合格への2610問[四訂版]
◎中学入試 でる順過去問 ことわざ・語句・文法 合格への1204問[改訂版]
漢字や語句知識をそれぞれ1冊で網羅的に学習できる問題集です。頻出度順のため、効率よく学習することができます。
[総括]
今回は、渋谷教育学園渋谷中学校の問題を解説しました。
「自調自考」という教育目標のもとユニークな取り組みを行う学校さんですが、入試問題は質の高い読解を求められる正統派な読解問題ともいえる問題傾向でした。
しっかりとした読解力は1日にしてならず。ぜひ日頃の文章を読む機会を大切に、丁寧に文章を読み、問題を解く習慣を身につけられるよう練習をしてみてください。
【参考】
<関連記事>
明治大学文学部卒。
明光義塾、トライグループと渡り歩いた豊富な指導経験を活かし、初学者の躓く勘所を抑えた記事を多数執筆。
大学での選考は日本近代文学で、芥川龍之介や梶井基次郎など大正時代の文学論にも造詣が深い。