今回のテーマはずばり「計算ミス」です。計算ミスは多くの小学生が抱えている問題で、何度注意しても直る気配がない、と頭を抱えておられる保護者の方も多いのではないでしょうか。
小学校4年生、5年生の時にする計算ミスは、「まあそのうち直るでしょう」と軽い気持ちで流してしまいがちですが、受験を控えた6年生になっても「計算ミス」という癖が直らないと、親子ともに焦りと不安が大きくなってしまいますよね。
今回は、このような不安をお持ちのお母様、お父様へのヒントとなる話を、お子さんの「気持ち」に着目してお伝えしていきたいと思います。
計算ミスは最も直りにくいの?
確かに計算ミスは非常に厄介です。前回のテストでは計算ミスによる失点が5点におさまり、「だんだん直ってきた!」と喜んでいても、その次のテストで30点一気に吹っ飛んでしまった、計算ミスが原因で・・・そんなこともごく当たり前に起こるものです。
このようなことがよくあるため、中にはもう計算ミスの対策をあきらめて、「当たって砕けろ」と鉢巻を回しながらお子さんを鼓舞する親御さんまでいらっしゃるほどです。非常にもったいない、もう一度言います、非常にもったいない話ですよ。
実は計算ミスは直しやすい
実は、計算ミスはあらゆるミスの中でも、最も直しやすいミスなのです!私は何年にも及ぶ塾講師経験から確信しています。
しかも計算特訓クラスや、セミナーなどに通わなくても、計算ミスは大幅に減らすことが可能なのです。あきらめてしまうなんてもってのほかです!
大人でもてこずるような応用問題に食らいついて受験におけるいわゆる「応用力」を伸ばすこと(もちろんこれも必要ですよ、いらないわけはありません)よりも、計算ミスをしない「下地」(基礎力のもっとも基礎の部分)を作ったほうが結果的に何十点もテストの点を伸ばすことができ、実は圧倒的に効率が良いのです。実際の受験でも、ほかの受験生がみな確実にとってくるであろう基礎部分を確実に得点することが合否を分けるのです。
とはいっても、そんなに簡単に治せるんならとっくに計算ミスなんてなくなっているはずだ、と思っていらっしゃるお母様、お父様、よくわかります。そうですよね。何度言っても直してくれないから悩まれているのですよね。
ですが、逆に「どうしてこんなに言っているのに計算ミスが直らないのか」と遡って考えてみたことはおありでしょうか?少し考えてみてください。そこにすべてのカギがあります。
いかがでしょうか。心当たりはおありですか?
「うちの子は筆算をすっ飛ばすからよくミスをする」「字が汚すぎて自分でも読めなくなっているから」など、多くの原因が浮かんだことかと思います。
ですが、一番根本的な原因はこれです。↓
直らないのは・・・彼らに〇〇〇がないから
○○〇には何が入ると思いますか?
答えは、「直す気」です。
なかなか計算ミスが直らないお子さんをお持ちのお母様、お父様。間違いありません。お子さんには本気で計算ミスを直す気がないのです。お子さんたちは一度本気で計算ミスを直そうと思えば、「きちんと筆算をしよう」「字をももう少しきれいに書こう」「あちこちに書き散らさないようにしよう」など、原因を自分で考え、解決策を模索するものです。
そういうことがなく、計算ミスの改善が見られないのは、お子さんが計算ミスによる失点を軽視してしまっているからなのです。これは実際に多くのお子さんが陥ってしまっている悪い習慣です。自分のミスを「計算ミス」とカテゴライズした瞬間に、妙に何か納得した表情になり、その結果を検証することもなくスルーしてしまいます。
お子さんが計算ミスをしないようにするための第一歩は、「自分がどれだけ計算ミスでいつも損しているのか」「こんなに計算ミスをしていて何もしていない自分がどれだけ『ヤバい』状況にあるのか」を彼らに実感させることです(よくお子さんが使う言葉なのであえて使わせていただきます)。
計算ミスが『ヤバい』ことをどのように実感させるか
では、具体的にどのようにして、計算ミスをすることが本当に『ヤバい』ことなのかお子さんに実感させればよいのでしょうか。
一番手っ取り早い方法は、「その日に計算ミスをした数を記録しておくこと」です。
私は以前、計算をしたらすべて計算ミスをしてしまうという生徒さんの授業の際に、計算ミスをした数だけ傍線をホワイトボードに記録していくという方法を試したことがあります。授業が進むにつれてどんどん増えていく「計算ミスパラメーター」。本人も自分が犯している計算ミスを可視化された数としてつきつけられ、驚愕した表情を見せました。指導している側からすると、「何度も言ったじゃないか」という感じでしたが・・・(苦笑)。
その生徒さんは、この出来事があった後、自分から計算ミスをしないように心がけるようになり、2か月もしないうちに、授業の中で「ノー計算ミス」を達成することができました。
「計算ミスの数」を実感させることができれば、紹介したような傍線を書いていく方法でなくてももちろんかまいません。計算ミスをした個所に、でっかい「気持ち悪いスタンプ」を押す、計算ミスをした数×10円お小遣いを減らす(これは賛否両論あるかもしれませんが・・・効果のありそうなお子さんには有効です)など、何かしらの方法でお子さんの計算ミスに対する考え方、態度を変えてしまえばしめたものです。
子供たちの柔軟性は我々大人の想像を絶するほど高いものです。ですから、「直そう」という意思がある子供たちは必ず自ら考え、クリエイティブに計算ミスを直していくことができます。
終わりに
まだまだお伝えしたいことは山のようにありますが、長くなってしまうので、この辺で今回は終わりたいと思います。
今回は「計算ミスの直し方」というテーマを、気持ちの面から取り上げてみました。またの機会に、「計算ミスを直す方法(テクニック編)」も書いてみたいと思います。
ぜひ、「数で計算ミスの量を認識させる」方法を実践してみてください。驚くほど算数の点数が上がりますよ!
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。