中学受験の国語では、基本となる語彙力(漢字の読み書き、慣用句、ことわざなど)をしっかり覚えたうえで、読解問題に取り組み、正確な選択肢を選び、わかりやすく表現する力を使って記述問題を解いていく、という段階があります。漢字や慣用句は日常生活で使うという学習方法が効果的です。今回は、身につけた語彙力を武器に、文章問題にどう取り組んでいくか、学習法を簡単にまとめていきます。
まず本文をしっかり読む
文章の読解問題では、どうしても設問に答えなければという意識が先に立って、本文をしっかり読まずに「答え探し読み」をしてしまうお子さんが多いです。制限時間がありますから、焦る気持ちは非常によくわかりますが、普段の学習でも「答え探し読み」ばかりしていると、文章全体の構造をつかむことができず、勘違いしたまま設問を解いて大量失点するケースが多いのです。これには注意が必要です。
設問はあくまで文章の内容を客観的に正確に読み取ることができて初めて答えることができるものです。また、文章の種類によって押さえるポイントが異なりますから、それぞれの文種によって意識すべき点に注意して読むことが必要です。
物語文の読解
文章を読むときに気をつけるべきなのは、「場面」「人物」「時系列」「心情とその変化」です。ここでポイントとなるのが、「心情」です。特に読書好きのお子さんがはまる落とし穴なのですが、文章を読んでつかむべきは「登場人物の」心情であって、お子さん自身の心情ではない、ということです。よく、「感情移入」と言われますが、中学受験の国語では、ある程度の感情移入は良しとしても、「自分の気持ち」に引きずり込んで文章を読むことは禁物です。それをしてしまうと、勝手な解釈をしていることになり、設問にいくら答えられた!と思っても的を外して大量失点、ということになってしまいます。
心情をテーマにしていても、あくまで「問題文から読み取れる」登場人物の心情を読み解く、という原則を忘れないようにしましょう。具体的に慣れるためには、問題文のストーリーを他の人に解説してみることです。塾から帰ってきたら、「今日の文章はどんなだったの?教えて」と親御さんから問いかけて、お子さんに解説してもらってみてはどうでしょうか。
論説・説明文
論説文や説明文の場合は、「筆者が言いたい、主張したいこと」と「たとえ話」の違いを明確にして読むことが重要です。論説文や説明文では、筆者が主張したいことの根拠として、具体例(たとえ話)が織り交ぜられています。一つとは限りません。複数ある場合もあります。つまり、筆者が主張したいことを読者に納得してもらうためにさまざまな事実(証拠)が並んでいるわけです。
各段落に、筆者の主張や具体例が織り交ぜられていますから、その文が筆者の主張したいことなのか、それとも具体例なのか、を分けながら読んでいく必要があります。具体例は分かりやすい、あるいは何例もあるととても重要に見えてくるのです。ですから、論説文でやりがちなのが、「筆者が何を言いたいのか」という設問に対して、具体例の部分をずらずら書いて、答えた気になってしまう、という間違いです。
「筆者が伝えたい事実」と「その根拠」を明確に分けて読む、その意識を常に持って論説文や説明文は読むようにしましょう。そして、物語文とも共通しますが、読み急がず、答え探しのために傍線部付近だけを何度も読んで全体を見ない、という学習はしないようにしましょう。
長文を読むのが苦手なお子さんには・・・
中学受験の国語で出題される文章題の文章は非常に長いです。中には、その長さだけで敬遠してしまい、読もうとするのだけど頭に入ってこないというお子さんもいらっしゃいます。そのようなときは、焦って長文読解をたくさんやらせるのではなく、文章を文に、文を文節に区切って読むようにすることをお勧めします。言葉の塊ごとに分けるイメージです。たとえば、
論説文では/「伝えたい事実」と/「その根拠」が/明確に/別れるので/それを/忘れずに/読むように/しましょう。といった具合に文を分けるのです。最初は時間がかかりますが、長い文章も言葉の集まりだと思えば怖くないと思えるようになれば、必ず問題文を理解するスピードが上がってきますので、やってみてください。特に、音読をさせてみてつっかえるようなお子さんには、このように区切るところがどこなのか意識させるとよいでしょう。
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。