合否を左右する!親の中学受験に対する心構え

~abstraction~

 お子さんが小学校高学年になり、周囲も半数以上は当たり前のように受験を考えるようになる頃

受ける学校によって通う塾も変わって来ますし、今までの習い事もいくつか休止しなくてはならなくなるかもしれないけれど、さて我が家はどうしようか…。

周囲の情報も色々あり過ぎて、一人目だし一体どの情報を参考にしたら良いのか取捨選択に困ってしまっているご家庭も多い事でしょう。

また、二人目や三人目のお子さんだとしても、お子さんそれぞれの学力や性格があり、皆が同じパターンでは上手く行かないため悩んでいらっしゃるかもしれません。

今日はそんな保護者の方に、あれこれ悩まずに済む中学受験の心構えをお話ししたいと思います。

 

まずは中学受験をするのかしないのか

何よりもまず、中学受験をするのかしないのかを決めなければ始まりませんね。

ここで、多くのご家庭が陥りやすいのは親の思いが先行してしまうという現象です。

中学受験の最も難しいところは、それを決断する頃にお子さんがまだ小学校中~高学年で、そこまで強い自分の意志というものが固まっていない時期にあるというところです。

自分の意志が固まっていないので、親の意見をそのまま受け入れたり、周囲の大多数の流れに影響を受けたり、また「制服がカワイイから」「スマホを持ちたいから」「電車通学をしたいから」「仲良しのお友達と一緒に塾に通いたいから」といったきっかけで『なんとなく』中学受験をしよう、と思ってしまうのも無理はありません。

そこでまず、何故自分の意志が固まっていない時期なのか、という事を考えなければなりません。

子供たちは中学受験を意識し始める頃、まだこの世に生まれてきてせいぜい10年前後です。

お手本にする大人も、親や親戚や先生といった、限られた世界の限られた人数ですし、お友達といってもまだ幼稚園と小学校、習い事でしかその交友範囲はありません。

まして、自分が通っている小学校以外の小学校をまだほとんどの子供たちが見たこともない中で、さらにその先の『中学校』というものについて、彼らにとっては想像の世界でしかありません。

親としては、既に自分が幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と歩んできて、すべての段階を経験しているし受験に成功も失敗もして、色々な経験をしていますから、ついつい自分の子供の事となると、良かれと思ってその経験を基に「ここの学校が良い」「あそこの学校が良い」「中学受験をしておいた方が良い」「塾は行った方が良い」等、色々な思いが強く湧いてくる事と思います。

しかし、絶対に忘れてはならない事がまず一つあります。それは、

中学受験に成功するのは子供の意志がそこに伴う場合だけ

という事です。

たとえ親が強く勧め、子供がその提示に納得しているように見えても、それが子供自身から湧いてくる強い意志を伴っていなければ、どんなに時間やお金を費やしてもほとんど失敗に終わってしまいます

逆に、子供自身の強い意志を伴うケースでは、到底無理だろうと思うような実力より大分上のレベルの学校でも、合格してしまうケースが多々あります。

結果だけ見ると、親がどれだけ上手く勉強をする気にさせたか、あるいはどれだけ通っていた塾の教え方やカリキュラムが良かったか、あるいはどれだけ元々の素地が良かったかで決まっているように見えるのですが、子供たちはそんな事をよそに自分が本気になったものには軽々と奇跡を起こすのです。

ですからまず、中学受験どうしようかな、という時になったらお子さんに『親の思い』を語るのでなく、

中学受験とは何か。そして中学にはどういう選択肢があって、それぞれどんなメリットとデメリットがあるのか。』

という事を詳しく話してあげて下さい。

仮にご自身にご経験がなく、上手く説明できない場合には塾を頼って頂くのも大歓迎です。

十分に選択肢を与えた上で、またある程度それぞれに選択肢にどういう行く末が待っているのかを説明してあげた上で、今のところどれが一番自分の性格や希望に合うと思うのか、耳を傾けてあげて下さい。

すると決まったら、次に方針を立てる

お子さんが何らかの形で中学受験をしてみたい、となった場合、その次のステップとしてまずその進路上にある選択肢となる学校をおおかた選別し目標を定める事になるのですが、先を急がずにまずは、

  • 中小の塾に通う(個別または少人数)
  • 大手の塾に通う(大人数)
  • 通信講座を受講する
  • 家庭教師を頼む
  • 完全独学でやる
  • 上記の複数を組み合わせる

以上のいずれで行くのか、決めるべきです。

決めなければ、あれこれ迷走して進路に合わない無駄なものに時間やお金を費やしてしまい、結果成功する可能性が十分にあったものも失敗に終わってしまう、といった事が起こってしまいやすいからです。

では上記のいずれが良いのか、という話ですが、そこは完全にお子さんの性格や現在のスケジュール、体力、地域によってしまう部分だと思いますから、親の思いを抜きにした現状をまずは冷静に分析し、以下のポイントを頭に置きつつ決定してみて下さい。

①独学以外の場合は、塾や家庭教師以外の「自分の学習時間」を、授業時間以上に取れる状態かどうか

②塾にする場合にはその塾の実績より、わが子の性格が個別、少人数、大人数のいずれに最も合っているかどうか

③任せきりにならず、塾とご家庭がきちんと最後まで連携してやっていける関係性を築けるかどうか

まず、①の場合は、塾に通う事とキャパより多い授業数、宿題に追われて疲れてしまい結局予習復習はおろか宿題さえ全て仕上げずに次の授業に行く事になる、といったお子さんが圧倒的に多いですが、これは最悪のパターンです。
ご家庭は塾に多くの時間を費やしている事である程度安心し、お子さんも通っている事でかなりやる気になって満足してしまうのですが、正直小学生のお子さんが授業内容を取りこぼしなく聴いて身に着けて帰って来る、といった事が出来るとすれば、完璧に予習復習を行って授業で聴いている言葉が全て一度は自分の中に取り込まれている場合だけです。

大体は予習復習をやりきれていなく、聴いてもわからない話が出てきた時点で頭に入って来なくなり、聴いている体で内容は右から左に抜けて行き、後で質問すればいいや~程度で、結局質問するのも面倒になり、わかった気になって精魂尽き果てて帰宅し、復習せずに寝てしまう、というパターンが多いのかなと思います。

そこで、目安として、

自分の学習時間:塾や家庭教師の授業時間=3:1

を目安にして無理のない履修計画を立てるようにしてみて下さい。

例え一般的な日数からすると少ないような気がしても、自分の学習時間をへずってまで通う価値はありません。

上記の割合を保てる時間数が、お子さんのキャパが許す最大限の無駄のない時間数だと思って、まずはそこから始めてみて下さい。

上手くすれば、キャパが拡大して時間数を増やせる時が来るかもしれませんから、そうなった時に増やせば十分です。

また、②ですが、こればかりは向き不向きがありますから、お子さんにどの形式が最も合っているのか、良く見て決めるのですが、時には数か月通ってみてやっぱり合わなかった、という事も出てくる事があるかもしれません。

そんな時は、気づいてからで遅くありませんから、意地でそのスタイルをやり通す必要は全くないので、その時点でより合って形式の塾に移る方がベターです

その時期も、「もう秋では遅いですよね?」といった相談をよく受けるのですが、そんな事はありません。

毎年、大手の集団塾に4年生から通って来たのだけど、やっと今、この子には家庭教師が一番合っているという事に気づいたので、やめて11月から3か月だけ家庭教師にしてみます、と言うようなご家庭が複数ありますから、大丈夫です。

その3か月を合わないスタイルで無駄にするよりはずっと良いので、迷う必要はありません。

最後に③ですが、これは中々難しいかとは思います。

親御さんも仕事や兄弟の子育て等、他の日常生活もありますし受験のプロではありませんから一旦塾や家庭教師を決定したらあとはお任せ、となってしまうのも理解が出来ます。

しかしながら、中学受験に関してはご家庭がかかわった時間数に比例して良い結果が出るかどうかが決まって来るのは明らかなので、どうかお子さんが受験を決意したのであれば、お子さんと同じ目線で作業やスケジューリングを分担し、常に塾や家庭教師と連携を取りながら3人4脚で臨んであげて頂きたい、と思うのです。

 

どんなに優秀な小学生でも、ご家庭での管理やバックアップなしに全て塾や家庭教師の指示通りに自己管理し、積極的に学習を継続出来るお子さんはまずいませんから、塾や家庭教師を無駄にしないためにもこのご家庭の協力は不可欠なのです。

最後に受験校を決める

方針が決まったらいよいよ受験校を決めます。

経過を見ながら変わって行く事もあるでしょうから、それはかまいませんが、まずは現時点での目標を設定する意味でも、今お子さんが行きたいと思う学校をいくつか決定しましょう。

その際に、冒頭でも述べたようにお子さんには今通っている小学校しか知らない訳ですから、まずは出来るだけ沢山の中学校を見せてあげて下さい。

体験授業、学校説明会、体育祭、文化祭など、訪れるチャンスはいくらでもあります。

沢山見せすぎるとかえって迷うのではないかと心配になる方もいるようですが、意外と子供は無駄な事を考えず直感で物事を判断するので、かえって沢山見せれば見せるほどより自分に合う、ピンと来る学校が絞られてくるものです。

以後3年、または6年間、自分がそこに毎日身体を運んで貴重な青春時代を過ごす事になるのですから、受験に対する意志をより明確にして頑張ってもらうためにも、絶対に欠かしてはならないプロセスです。

そうしてお子さんが「あそことここで迷っているんだけど、どっちが良いと思う?」と聞いてきたら、それぞれのメリットやデメリットを交えながら、違いを詳しく説明してあげて下さい。

その際に、長年の教育者として見ても、偏差値というのはあまり重要ではないと思います。

逆に、いかにその子に合っているか。が最も大切です。

例えば偏差値がより良いけれどあまり合っていない学校と、偏差値が中の下だけれど雰囲気や方針がぴったり合っている学校があったとしたら、どうか迷いなく後者を選ぶ後押しをしてあげて下さい。

最終的には大学受験で、将来の夢がある程度具体的になり、それにつながる良い結果が残せる事が目的なのですから、中学高校の6年間をいかに充実して過ごし、将来について考え、大学受験を控えた時に自分の意志で全てを行えるようになるかが大切です。

そして、選択肢としてはやっとの思いで入った偏差値の高い学校で真ん中より下の成績で迎える高校三年生よりは、少し余裕で入って上位の成績をキープしつつ充実した生活を送った後に迎える高校三年生の方が、余程チャンスが多くかつレベルが高いものとなっているはずです。

どうか上記の事を見失わず長い目で見て、長い長い人生の始まりのちょっとした大きなイベントである中学受験という仕事を、親子で乗り切って下さい。

まとめ

以上、中学受験の心構えについて、30年近い塾講師の経験から体感した事を書いてみましたがいかがでしたでしょうか。

これまで400名以上の小学生のお子さんの中学受験にかかわって参りましたが、親の心配とは裏腹に子供たちはタフで、冷静で、結構しっかりとこれからの人生について考えを持っているものです。

親や教師は、これまでの人生の失敗や苦労から良かれと思ってお子さんに色々アドバイスをしたくなりますが、「思い」を伝えようとすればする程その思いは伝わらないものです。

逆に、お子さんの「思い」はどんななのか、まずはそれをしっかりとつかみ、それを叶えるためにこれまでの自分の失敗や苦労はどんな形で参考になり役立ててあげられるのか、といった視点で考えて行くと、子供たちも理解し親や教師の思いも汲んでくれるようになりますから、是非「北風と太陽」の太陽になったつもりで、明るくたくましくおおらかに、お子さんの受験を乗り切って下さい。

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