一言に中学受験といっても、様々な中学がありますよね。私立の中高一貫校(いわゆる進学校)、私立大学附属校、国立大学附属校、公立中高一貫校など、いろんなタイプの学校があります。
ので、最近は塾でも学校のタイプ別に対策を行っています。中学受験では、できるだけ早い時期に目指す学校のタイプを決めておくことが必要です。
あなたのお子さんは、どの学校のタイプにあてはまりそうですか?
私立中高一貫校と私立大学附属校では
私立の学校は、教育方針やカリキュラムなどを個々に決めているので、国が定める(定めようとしている)教育改革などにアンテナを張り、素早く対応する学校も多いです。いわゆる新興の人気校などは、出口に対応すべく、毎年のように入試改革を行っているところもあります。一方で、伝統を重んじ、生徒が自主性をもって学習する環境を整えることに重点を置く学校も多いです。
校長をはじめとする教員は、公立校のように頻繁な異動がないので、長く勤務していることが多く、そういう意味では教育方針に安定感があり、教育改革に取り組む余裕があるといってもよいでしょう。また、中高一貫のメリットを活かし、中学部のうちから高等部のカリキュラムを取り入れるなど、大学進学を見据えた教育に力を入れている学校が多いです。最近は、大学附属校でも、進学できる大学に希望する学部がないという理由で、大学受験を織り込み済みの学校も多いです。
文武両道を掲げ、部活動の種類を多彩にそろえている学校や、女子校に多いですが、礼法を教えたり、所作についての基本を身につけさせてくれる学校も多いです。課外活動の充実も魅力の一つです。また、補習(強制、任意様々ですが)制度や勉強合宿を行う学校もあり、生徒の学習能力に寄り添う努力が見られます。
教育方針、理念があるので、当然学校側も、その学校に合った生徒の入学を希望します。ですから、学校側と受験生側双方の相性がとても大事になってきます。学校見学に行ったり、過去問を解くなどして入試問題を見ればその学校の教育方針が見えてきます。
私立大学附属校では、基本的に中学から入れば、高校受験・大学受験はありません。ですから、海外留学や課外活動に力を入れることができたり、大学の教授の授業を高校で受けられたりという特徴ある教育を行っているところもあります。それは附属校ならではの魅力といえるでしょう。
また、数年前は学費の高さから敬遠されていた附属校ですが、大学入試改革がどうなるかあまりはっきりした発表がない現段階の状況をふまえて、人気が復活してきています。あえて有名大学の附属校・系列校・系属校になることによって、知名度を上げる学校も増えています。
こう言うと、附属校はパラダイスのように思えるかもしれませんが、先ほど述べたような、その大学にない学部を志望して大学受験をするケースはもちろんあります。推薦枠があるにもかかわらず、他大学を受験する割合が高い学校もあります。たとえば、早稲田系列と一口に言っても早稲田中学・高校のように、大学推薦枠を使い切らない学校もありますから、進学先についても事前に調査しておく必要があります。
とはいえ、基本的には、推薦で大学に進む割合の方が全体的には高いですから、高校受験、大学受験といった特別な受験勉強をするというよりも、日々の学校の課題をきちんとやることが大事です。大学附属校でも、成績が足りなければ高校に上がれなかったり、大学で希望学部に行けないこともありますから、その点もしっかり考えておきましょう。
国立大学附属校では
私立校と同様に教育環境は非常に整っていると言えるでしょう。校舎の古い学校は多いですが(最難関中である筑波大学附属駒場中学などは代表的な例です)。それにもかかわらず、学費が公立校並で済むことから、変わらず根強い人気があります。
基本的には抽選を行ってから学科試験を行う形式が多かったのですが、先に述べた筑駒などは、もう何年も抽選を行っていません。
文部科学省の指定を受け、学習指導要領に沿った学習を行うのが基本ですから安心感があります。それでも、各学校はその枠組みの中でも独自の工夫をしています。筑駒の話題ばかりで恐縮ですが、田植え、稲刈りといった経験をカリキュラムに組み込んでいる学校も多いです。また、部活動もオペラ部がある学校もあり、自主的に取り組む生徒が多いのも特徴です。様々な意味で、精神年齢の高い生徒が集まってくるとも言えるでしょう。
学費、そして安心感の面からも、根強い人気のある国立大学附属校。基本的に進学校が多いので、そのまま大学に進むことはあまりないですが、志望する方が絶えないので、入試はかなり高いレベルの学力勝負となります。
公立中高一貫校では
全国的に広がってきている公立中高一貫校。学費の安さと、意欲的な取り組みにより年々競争は激化しています。東京の小石川、九段、両国、白鴎などをはじめ、千葉では県立千葉、東葛などの公立トップ校も一貫校化して話題を呼んでいます。
倍率は10倍を超える学校もあるほどで、かなり高い学力が求められるといってよいでしょう。ただし、私立の中高一貫校とはかなり入試問題の趣は異なります。「適性検査」という形で思考力、判断力を記述中心で問う入試が多く、学校によっては理系より、文系よりという特徴があり、科目融合型の出題も目につきます。また、資料や会話文などを正確に分析し、様々な角度から設問を用意するという出題に対してはやはりしっかりした対策が必要になってきます。
単に一貫教育を行う進学校という位置づけのみならず、開校して間もない横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中学など、非常に個性ある教育を行う学校が増えています。
まとめ
一口に中学受験といっても、様々なタイプの学校があります。中学受験を目指すのなら、まず受験する学校のタイプをある程度決めておくことが大事になるでしょう。それぞれのタイプにより対策が変わってきます。
最終的にはタイプ別というより学校別対策になってくるわけですが、お子さんの希望、ご家庭の教育方針や経済状況などをトータルして受験校を決めていく必要があります。ぜひ、親子で希望をしっかりと話し合って、受験の方向性を決めましょう。
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。