歴史問題読解〜紙幣に関わる人物史〜[中学受験社会過去問解説シリーズ]

今回は2019年度の二松學舍大学附属柏中学校の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、歴史問題の解き方、紙幣に関わる人物史について説明していきたいと思います。 

問題

次のA〜Cの人物についての文を読み、後の問いに答えなさい。 

  • A
    私は飛鳥時代に、蘇我馬子と一緒に( ① )天皇を補佐し、政治を支えました。天皇を中心した国家体制を整えるために法整備などを行い、②十七条の憲法を制定し、優れた文化や政治を学ぶようつとめました。③仏教をあつく信仰し、現在の奈良県を建立しました。
  • B
    私は、一条天皇の中宮であり、藤原道長の娘の彰子に仕えた④平安時代の女性作家です。その際、主人公の光源氏を通して、平安時代の貴族社会を描いた長編小説『源氏小説』を完成させました。この作品は平安時代を代表になりました。
  • C
    私は土佐藩出身で、⑤明治維新では中心人物として活動しました。私は国民が選んだ議員がつくる国会の開設要求を出し、そこから( ⑥ )運動が起こりました。その後も活動は広がり、1889年に⑦大日本帝国憲法が発布され、1890年に第一回帝国議会が開かれました。 

問1

空欄( ① )にあてはまる語句を答えなさい。 

  • 【解答】推古
    蘇我馬子が天皇に代わって政治を担っていたのは推古天皇の時代です。推古天皇の摂政となったのは甥の聖徳太子でした。よってAの人物は聖徳太子であると推測できます。 

問2

下線部②の史料として適切なものを次のア〜エから1つ選び、記号で答えなさい。 

  • ア、これまで天皇や豪族がもっていた土地や人民を、国家のものとする。全国を国・郡(評)に分け、郡の近くは畿内とする。戸籍をつくり、それにもとづいて人々に田をわりあてる。
  • イ、寄合に二度欠席した者は、罰金を払うこと。村の森で苗木を切った者は、罰金を払うこと。犬を飼ってはならない。
  • ウ、和をとうとび、争うことのないようにしなさい。仏教をあつくうやまいなさい。天皇の命令にはしたがいなさい。
  • エ、朝は早く起きて草をかり、昼は田畑を耕し、夜はなわをない、俵を編み、油断なく仕事にはげめ。できるだけ、麦・あわ・ひえなどの雑穀を食べ、米を多く食べないようにすること。
  • 【解答】ウ
    それぞれの解答の史料が示すものを説明していきます。 

    • ア→公知公民。大化の改新の際に出され、天皇中心の中央集権国家を目指し、民や土地は天皇のものとしました。
    • イ→室町時代村は“”という自治組織が村を統治していました。イの史料は惣の掟になります。
    • エ→1649年(慶安2年)に江戸幕府が公布した慶安の御触書の内容です。百姓の生活について細かく規制するものになっています。 

問3

下線部③について述べた文として適切なものを次のア〜エから1つ選び、記号で答えなさい。 

  • ア、鎌倉時代にうまれた浄土真宗や時宗などの新しい仏教は、わかりやすく実行しやすい教えなので、民衆の間に広まっていった。 
  • イ、桓武天皇は、仏教の力によって社会の不安をしずめようとし、東大寺の大仏をつくる命令を出し、地方には国分寺や国分尼寺をつくった。 
  • ウ、仏教が全国統一のさまたげになると考えた織田信長は、キリスト教を保護し、本能寺を焼き討ちにし、石山本願寺を攻めた。 
  • エ、唐で学んだ行基と空海はそれぞれ天台宗と真言宗を開き、この世の病気や災いを取り除くきとうやまじないを取り入れたので、天皇や皇族の信仰を集めた。 
  • 【解答】ア
    それぞれの選択肢を細かく見ていきましょう。 

    • イ、桓武天皇は、仏教の力によって社会の不安をしずめようとし、東大寺の大仏をつくる命令を出し、地方には国分寺や国分尼寺をつくった。
      →東大寺の大仏、国分寺・国分尼寺をつくる命令を出したのは桓武天皇ではなく、聖武天皇です。
    • ウ、仏教が全国統一のさまたげになると考えた織田信長は、キリスト教を保護し、本能寺を焼き討ちにし、石山本願寺を攻めた。
      →織田信長が焼き討ちにしたのは本能寺ではなく、比叡山延暦寺です。本能寺明智光秀の謀反によって織田信長が討たれた場所です。
    • エ、唐で学んだ行基と空海はそれぞれ天台宗と真言宗を開き、この世の病気や災いを取り除くきとうやまじないを取り入れたので、天皇や皇族の信仰を集めた。
      行基唐で学んではいません。民衆に向け仏教の教えを説き、東大寺の大仏建立に貢献した僧です。空海と共に唐に渡ったのは最澄です。その後、帰国し空海は真言宗最澄は天台宗を開きます。 

問4

下線部④について、平安時代に起こった出来事として適切なものを次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。 

  • ア、武家社会のしきたりなどをまとめた武士による法律である御成敗式目が定められ、政治や裁判のよりどころとなった。 
  • イ、白河天皇は幼い子に位を譲って上皇となり、上皇の屋敷である院で政治を行う院政を始め、政治の実績を握った。 
  • ウ、近江国の馬借や農民たちが、借金取り消しの徳政令を求めて起こした一揆を、正長の徳政一揆(土一揆)という。 
  • エ、天皇の後つぎをめぐって、天皇の弟である大海人皇子と子どもの大友皇子で争う壬申の乱が起こり、弟の大海人皇子が勝利した。 
  • 【解答】イ
    それぞれの選択肢を細かく見ていきましょう。 

    • ア、武家社会のしきたりなどをまとめた武士による法律である御成敗式目が定められ、政治や裁判のよりどころとなった。御成敗式目が定められたのは鎌倉時代です。 
    • ウ、近江国の馬借や農民たちが、借金取り消しの徳政令を求めて起こした一揆を、正長の徳政一揆(土一揆)という。正長の徳政一揆が起こったのは室町時代です。農民が起こした初めての一揆として有名です。 
    • エ、天皇の後つぎをめぐって、天皇の弟である大海人皇子と子どもの大友皇子で争う壬申の乱が起こり、弟の大海人皇子が勝利した。壬申の乱が起こったのは飛鳥時代です。勝利した大海人皇子はその後、天武天皇として即位します。
    • また、設問とは直接関係ありませんが、 平安時代の女流作家、『源氏物語』の作者ということからBの人物は紫式部だということがわかります。

問5

下線部⑤について、明治政府は「富国強兵」「殖産興業」をスローガンに様々な政策を行っています。満20歳以上の男子に兵役の義務を課す法令を何といいますか。答えなさい。 

  • 【解答】徴兵令
    徴兵令の他に、明治維新の内容としておさえておくべきなのは以下の内容です。

    • 五箇条の御誓文…明治政府の基本方針を示し5つの条文。
    • 廃藩置県…藩をなくし、県を起き、明治政府が地方統治をする形になりました。
    • 地租改正…土地の所有者に地券を発行し、地価を定め、その3%を税金として納めるようにしました。
    • 教育制度(学制)…6歳以上の全ての男女に教育を受けさせるようにしました。

問6

空欄( ⑥ )にあてはまる語句を漢字4字で答えなさい。 

  • 【解答】自由民権
    Cの文章中にある「国会の開設要求」という部分が大きなヒントになっています。明治時代、藩閥政治を批判し、国会の解説を要求した運動を自由民権運動といい、その中心人物は板垣退助です。よってCの人物は板垣退助であることがわかります。 

問7

下線部⑦について、大日本帝国憲法が発布された日を、次のア〜エから1つ選び、記号で答えなさい。 

  • ア、2月11日
  • イ、5月3日
  • ウ、10月23日
  • エ、11月3日
  • 【解答】ア
    2月11日建国記念日として祝日に制定されています。
    他の選択肢は何の日なのか解説していきます。

    • 5月3日1947年に日本国憲法が公布されたことを記念して憲法記念日に制定されています。
    • 10月23日は祝日ではありません。
    • 11月3日明治天皇の誕生日であり、現在は文化の日に制定されています。 

まとめ

人物の説明文を中心に問題が出題されていますが、それぞれの人物に関わる時代の政策について出されている問題が多かった印象をうけます。また、選択肢も関連する内容の時代を混ぜた問題が多く、政策と時代を合わせて覚えておけば解ける問題でしょう。 

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