今回は2020年度の千葉大学文、人文、国際教養、法政経学部の国語の過去問を一部修正して漢文問題の解き方を解説していきたいと思います。 問題はPDFを参照してください。
問題
『淮南子』(えなんじ)とは?
前漢の高祖の孫で淮南王の劉安 (りゆうあん)(?〜前122)が編著し、「わいなんし」ともいいます。21巻からなり、道家の思想を中核として、知識・思想を集約し、編纂した哲学書です。
問1
傍線部Aをひらがなだけの書き下し文にしなさい。(現代かなづかいでよい)。
【解答】ひとせいすることあたわず。(ひとせいすることあたはず。)
注意する部分は「制」と「不能」の部分です。「制」は「制する(こと)」という動詞になり、「不能」は「〜あたわ(は)ず」と読み、「〜することが出来ない」という意味になります。
問2
傍線部Bを平易な現代語に訳しなさい。
【解答】たとえ険しい道を通り、堀を飛び越えるのであっても、決して尻込みすることはない。
傍線部Bを書き下すと、「険を歴塹を超ゆと雖も、敢へて辞せず」となります。それぞれの語句の意味をみていきましょう。
- 「険」…けわしい所。危ない。危ないこと。
- 「歴」…ふりがなが「へ」とふってある通り、「へる」通るという意の動詞になります。
- 「塹」…注の通り堀のこと。
- 「雖」…たとえ〜であっても
- 「敢〜弗」…「あえて〜ず」の形ですすんで〜しない、決して〜しないという意になります。
- 「辞」…拒絶する、やめる
以上の意味を踏まえて直訳すると、「たとえ険しいところを通り堀をこえるといっても、決して拒絶はしない」となります。
傍線部の前の部分をみてみると
「圉人之を擾らし」⇨圉人(馬の飼育員)がこれを飼い慣らし
「良御之を教へ」⇨良い御者がこれを調教し
「掩ふに衡扼を以てし、連ぬるに轡銜を以てするに至るに」⇨衡扼(くびき)を首にかけ、轡銜(たづなとくびわ)をつけて率いると
とあります。
まとめると、荒々しい子馬であっても、調教し操縦のための馬具をつければという内容が書かれています。そうしたら「たとえ険しいところを通り堀をこえるといっても」拒絶しない、すなわち「尻込みすること」はないだろうと訳せるといいでしょう。
問3
作者の主張に従えば、人は学ぶことによって何を変えることができるのか。変えられないものと対比しつつ、本文全体の内容をふまえて簡潔に答えなさい。
【解答】天賦のものである体躯の形体は変えられないが、生まれたままでは粗野で役に立たず、人と心を通じさせることもできないという内面の性質は役立つ優れたものに変えることができる。
(天賦のものである体躯の形体は変えられないが、内面の性質は役立つものに変えることができる。)
変えられること、変えられないことについてしっかりおさえておくことが重要です。
変えられないことに関しては本文中に「不可変」(変ずべからず)とあり、その上をみると「筋骨形体、所受於天」(筋骨形体は、天より受くる所にして)とあります。よって生まれもって天から与えられた体躯は変えることが出来ないと考えることが出来ます。
変えられることについてははっきり文中に書かれてはいませんが、馬のたとえで書かれています。問2の答えに書かれていた内容がその馬のたとえになります。調教していない子馬であっても、飼い慣らし、優れた御者が調教すれば、制御することができるということが書かれています。生まれもった体躯は変えられないが、指導者や使い方によって優れたものになることができるということです。
馬のたとえの後に「又況んや人をや」と書いてあります。馬でさえそうなのだから人であったら…ということはすなわち、人も生まれもった体躯を変えることは出来ず、そのままでは粗野で役に立たないが、役に立つように変えることができるということをこの文章で説明しています。
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