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原子の相対質量と原子量
原子1つ1つはとても軽い。例えばH原子1つは1.6735×10-24g、C原子1つは1.9926×10-23 g、O原子1つは2.6578×10-23gである。ここに、6.02×1023を比例定数としてそれらの数をかけると、H原子は(1.6735×10-24)×6.02×1023より約1.0 g、C原子は(1.9926×10-23)×6.02×1023より約12 g、O原子は(2.6578×10-23)×6.02×1023より約16 gと、きれいな数になる。
この比例定数6.02×1023をアボガドロ定数とよぶ。求まったきれいな値のうち、原子1つの質量を12としてこれを基準に、他の原子の質量を相対的に比べてみたものを相対質量という。相対質量と質量数は一致する。
また、同じ原子でもの相対質量は12、の相対質量は13と、同位体では異なる質量のものが存在する。これでは取り扱いにくいので、同位体を考慮した相対質量は、存在比を用いて求める。このように同位体を考慮した相対質量を原子量という。
Ex1) Cには12Cと13Cがある。存在比はそれぞれ98.93%、1.07%であるから、質量数と存在比をかけて12×\(\frac{98.93}{100}\)+13×\(\frac{1.07}{100}\)=12.01 よってCの原子量は12.01
Ex2)Clにはとがある。存在比はそれぞれ75.8%、24.2%であるから、質量数と存在比をかけて35×\(\frac{75.8}{100}\)+37×\(\frac{24.7}{100}\)=35.5 よってClの原子量は35.5
⦅原子量の概数値⦆
H 1.0 C 12 N 14 O 16 Na 23 Al 27 S 32 Cl 35.5 Ca 40 Fe 56
原子量は問題文に与えられるので覚える必要はないが、存在比からこれらを求められるようにしておくこと。意味としては、その原子を6.02×1023個集めるとその質量(g)になるという値。
Ex3) Cl原子を6.02×1023個集めると35.5 gになる
Ex4) Na原子46 g中にはNa原子が6.02×1023×2=1.20×1024個入っている
Ex5) N原子を3.01×1023個集めると7 gである
分子量とmol
原子量と同じように、分子の相対質量を分子量という。イオン式の場合は式量とよぶが、計算方法や意味は同じである。前述の原子量の概数値を用いて計算する。
また、分子を6.02×1023個集めたとき、分子量と一致する。この6.02×1023個を塊として数えるときの単位をmolとよび、物質量としている。まとめると、ある分子6.02×1023個 = 1 mol = 分子量 となっている。
Ex1) NH₃の分子量は、原子量がそれぞれN=14、H=1.0より、14+1.0×3=17である。よってNH₃が17 gあるとき1 molとなる。
Ex2) CO₂の分子量は、原子量がそれぞれC=12、O=16より、12+16×2=44である。よってCO₂が44 gあるとき1 molとなる。
Ex3) O₂の分子量はO=16より16×2=32である。よってO₂を1 mol集めたときの質量は32 gである。
Ex4) NaCl 117 gは、原子量がそれぞれNa=23、Cl=35.5より、117÷(23+35.5)=2であることから2 molに相当し、NaCl分子は6.02×1023×2=1.20×1024個含まれている。
気体の体積とmol
化学では0℃、1.013×105 Paの状態のことを標準状態という。この標準状態では、どんな気体であっても気体1 molが占める体積は22.4 Lになる。このように同温・同圧下では気体の種類によらず、体積と分子の数が比例するという関係をアボガドロの法則という。
Ex1) O₂分子は2 molで44.8 Lである。
Ex2) CO₂ 132 gは3 molであるから、22.4×3=67.2 Lである。
Ex3) N₂ 11.2 Lは0.5 molであるから、14 gである。
溶液と濃度の表し方
溶液とは、2つ以上の物質から構成される液体状態の混合物のことである。溶液を作る際に、物質を溶かす液体を溶媒、溶かされた物質を溶質という。溶媒が水のときにできた溶液を水溶液という。
Ex)食塩水は、水+食塩でできている。このとき、水が溶媒、食塩が溶質、できあがった液体を溶液(水溶液)という。
また、科学で用いられる濃度は、①質量パーセント濃度、②モル濃度、③質量モル濃度の3つが主に用いられる。以下では、質量パーセント濃度とモル濃度を説明する。単位をよく確認し、使い分けること。全体のうち溶けている溶質がどのくらいかを表しているということは、質量パーセント濃度のモル濃度も同じである。
質量パーセント濃度
%で表示される濃度。全体の溶液のうちで何%の溶質が溶けているのか把握する。溶液の重さは溶媒+溶質なので、計算し忘れないこと。
\(\frac{溶質の重さ(g)}{溶液の重さ(g)}×100=(%)\)Ex) 水100 gにNaCl 25 gを溶かした溶液の質量パーセント濃度は、\(\frac{25}{100+25}\)×100=20 %
モル濃度
溶液1 Lあたり何molの溶質が溶けているのかを表している。単位はmol/L 。
Ex1) 水にNaCl 117 gを溶かして500 mL(0.5 L)の食塩水にしたときのモル濃度は、 = 4 mol/L
Ex2) 0.1 mol/LのNaCl水溶液100 mL(0.1 L)中にあるNaCl(分子量58.5)の質量は、0.1×0.1=0.01 molより、58.5×0.01=0.585 gである。
化学反応式の係数の付け方
例えば、メタンガス(CH₄)を燃やして空気中の酸素と反応させると、水と二酸化炭素が生成する。これを反応式で表すとCH₄+O₂→CO₂+H₂Oとなるが、このままだと左辺と右辺の原子の数が合わない。そこで各物質の前に係数をつけ、原子の数が合うように調整する必要がある。
⦅係数の付け方(例:CH₄の燃焼反応)⦆
- 最も分子の多い複雑な物質の係数を1として基準に考える。
1CH₄+O₂→CO₂+H₂O
- ①をもとに他の原子の数が合うように係数を振っていく
1CH₄+O₂→1CO₂+H₂O
- H原子は左辺に4個なので、右辺も4個になるようにする
1CH₄+O₂→1CO₂+2H₂O
- O原子は右辺に4個なので、左辺も4個になるようにする。
1CH₄+2O₂→1CO₂+2H₂O
- 係数1は省略する。
CH₄+2O₂→CO₂+2H₂O
途中で数が合わなくなり分数が出てきたら両辺に2や3をかけて係数はすべて整数にする。複雑な物質→単純な物質の順で係数を振っていくとやりやすい。複雑な物質が多く、計算しづらい反応式では、係数を文字で置いて連立方程式を解く未定係数法を用いる。
Ex1) C₂H₆の燃焼反応
C₂H₆+O₂→CO₂+H₂O
1C₂H₆+O₂→2CO₂+3H₂O
1C₂H₆+\(\frac{7}{2}\)O₂→2CO₂+3H₂O
2C₂H₆+7O₂→4CO₂+6H₂O
Ex2) Cuと硝酸の反応式
Cu+HNO₃→Cu(NO₃)₂+NO+H₂O
1Cu+aHNO₃→1Cu(NO₃)₂+bNO+cH₂O
aを基準に考えると、Hからみるとa=2c、Nからみるとa=2+b、Oからみると3a=6+b+cとなる。これを解くとa=\(\frac{8}{3}\)、b=\(\frac{2}{3}\)、c=\(\frac{4}{3}\) 。よってこれらを代入し、両辺を3倍して係数を整数にすると、3Cu+8HNO₃→3Cu(NO₃)₂+2NO+4H₂O
化学反応式とmolの関係
化学反応式の係数比は反応する物質のmol比に等しい。
Ex1) C₃H₈+5O₂→3CO₂+4H₂Oという反応式で、2 molのC₃H₈を燃焼させると、6 molのCO₂が発生するので、標準状態のときの体積は22.4×6=134.4 Lである。
Ex2) Mg+2HCl→MgCl₂+H₂という反応式で、MgCl₂(分子量24+35.5×2=95)が1.9 g生成したときに必要なHCl(分子量36.5)の質量を求める。MgCl₂とHClのmol比は、1:2である。HClのmolをxとする。MgCl₂のmol\(\frac{1.9}{95}\)==0.02 molより、1:2=0.02:xである。よってx=0.04 molである。ゆえに0.04×36.5=1.46 gのHClが反応した。