前回の記事では、「今だからできる!社会勉強法・克服法」として地理についてご紹介しました。今回は、歴史についてご紹介していきます。
中学受験において、社会はどうしても暗記科目、あとからやれば間に合う、今はやっている時間がない、などの理由で後回しになりがちです。他の教科との兼ね合いでどうしても暗記科目という意識が抜けないとおろそかになりがちですが、いざ直前期にまとめて覚えて覚えきれるほど社会の知識量は少なくありません。
塾の夏期講習では総復習するから大丈夫、と説明を受けるかもしれませんが、夏期講習は基本的に問題演習中心です。ですから、全分野に触れるという意味では総復習ですが、決してそれは知識をもう一度体系的に整理して解説してもらい、定着させるという意味ではないので注意しなければなりません。また、秋以降は受験定番問題や、入試の過去問などのさらに難度の上がった問題演習が学習の中心となるので、知識をもう一度入れたくてもその時間をとることは至難の業です。
しかし、時間は待ってくれないので問題演習に入ろうとしても、社会は皆さんおっしゃる通り知識がモノを言うので、問われている内容に対応した知識が無ければまず正解することができません。つまり「知らなければ解けない」教科なのです。知識を体系的に、またきちんと整理して正確に理解していなければ、問題演習をしたくても解けないというスパイラルに入ってしまうのです。そうすると自信を無くしてしまい、ますます勉強したくなくなるので成績は上がりません。
中学受験の社会は、大きく分けて地理、歴史、公民の3つのカテゴリに分類されることはみなさんご存じですよね。各学年によって学習する内容は異なり、それぞれ最重要のポイントは変わります。現在受験学年の6年生の場合、現在は公民のカリキュラムを学習しているか、塾によっては5年生の間にすべての単元学習を終えているかもしれません。歴史は5年生のときに学んでいると思いますが、その内容はしっかり理解できているでしょうか。つい最近のような気がするかもしれませんが、今、歴史の演習問題を出題されて難なく設問に答えることができると自信をもって言えますか?
社会に限らず、受験に必要な知識は、どうしても繰り返し学習していないとすぐに忘れてしまうものです。また、知識のことばそのものは覚えていたとしても、使い方をマスターしていないため、必要なときに知識を頭から取り出して使いこなすことができません。そうすると、知ってはいても不正解、という状態に陥ってしまいます、
「社会は暗記だから何とかなる」という気持ちでおろそかにしていると、いくらほかの教科を頑張って学習して成績が上がったとしても、言葉は悪いですが「なめていた」社会の知識問題で点数がとれず、4教科総合では足をすくわれてしまうことになりかねません。算数の計算問題や、国語の漢字やことばなどの基礎中の基礎が重要であるように、社会の知識は総合問題を解いていくうえで基礎中の基礎だということを忘れないことが重要です。
社会は分野ごとに効率的な学習法や苦手となりやすいところが異なります。今回は、やったはずなのにできない歴史の分野について、学習法と苦手意識を克服するための方法についてまとめていきましょう。
Contents
最近やったはずなのに忘れやすい歴史の知識
中学受験のカリキュラムでは、主に5年生の後半に一気に歴史の学習を行うことが多いです。期間に対して学習すべき時代が多いため、毎回違う知識が入ってきます。そのことも影響して、塾の授業は一言でいうと「一気に歴史の知識を詰め込む」ための授業になってしまっているのが現状です。
そういう授業が繰り返されるため、一度学習したはずの知識はどんどん次の知識に上塗りされてしまい、例えば江戸時代の学習をしている頃には平安時代のことはすっかり忘れ去られている、そのような受験生は非常に多いのです。皆さんはいかがでしょうか。以前に学習した時代全てについて理解できていると言えるでしょうか。
現在は公民の学習をしている場合、歴史とは印象の違う新しい知識を常に学習していかなければならない状況なので、つい最近学習したはずなのに歴史の知識は忘れてしまっているケースは非常に多いです。また、お通いの塾によっては、歴史の小テストを合間に挟むこともあるかもしれませんが、多くの場合「宿題」と称して「歴史のテキストの第○回を復習するように」という漠然とした指示が出て終わり、ということが多いです。
たしかに、一度学習したことをしっかり深め、正しく理解し、定着させるためにはもう一度振り返ることがとても大切なのです。ですが、その復習が漠然とした指示による「第〇回をもう一度やる」というものであったら本当にきちんと定着できるでしょうか?他にもその週に学習した教科の宿題もあるので、そちらを優先してしまい、時間が足りなくなるので、結局歴史の復習には手が付けられずに放置されたままになる、ということになりがちなのが現状です。
それほど間が空いていないのに覚えられていないなら、この先直前期にすべての内容を総復習することは果たして可能でしょうか?答えは「NO」です。いくら記憶力に優れていても、時間がない中では一つひとつの知識に対して時間をかける余裕がなく、また、バラバラの知識となってしまい、実際に問題を解こうとしても必要な知識が出てこないという事態になってしまいます。それではいくら暗記しても成績に繋がりません。
ですが、小学校が休校中の今の時期だからこそ、いままで積み残してきた「以前学んだはずの歴史の知識」を体系立てて再度学習するチャンスなのです。この時期に、少しでも忘れ去られてしまった歴史の知識の記憶を喚起して、正確な理解を深めて定着させ、その知識を問題演習や模試の際に正しく使いこなすことができるようにするために、今のうちから振り返りを始めることは非常に重要です。
知識は単体で覚えようとしない
歴史を学習する前、4年生から5年生前半には地理を学習しますよね。実は、歴史を学習する上で、地理の知識を安定させることはとても大切なのです。たとえば、大名の領地の位置や、平安時代までの都の位置の遷移など、地理の知識なしでは理解が難しい歴史の知識は数多くあります。
歴史は分野ごとに覚えればいい、と思われがちなのですが、地理→歴史→公民という順に学習するのにはそれなりの意味があるのです。歴史を学習するためには、地理の知識が必須となります。それがないと歴史を学習するのにさらに時間がかかってしまうのです。その点にも注意する必要があります。ですから、歴史を学習する際には並行して、できるだけ早く地理の苦手分野をチェックし、理解できていない部分を潰しておくようにすることをオススメします。
歴史で重要なのは「出来事の流れ」
また、歴史の学習では、時代の「流れ」を意識した学習が非常に大切になってきます。ただ年号や地名、人名だけを知識として詰め込むのではなく、なぜそのような出来事が起こったのか、それには誰が関与していたのか、といった流れを意識することで、年代感覚が身についていくからです。そこを意識せずに単体の知識を詰め込もうとする受験生は非常に多いですが、それでは時代と時代が混乱してしまって、正しい回答を導くことができません。誰が何をしたのか、なぜしたのか、その結果どうなったか、次に起こった出来事は、という手順を踏むことが非常に重要です。
たとえば、以前筆者が社会のテスト採点を行ったときに、「遣隋使に行った人名」を問う問題がありました。答案のひとつには「与謝野晶子」と書かれていたのです。しかもひらがなでした。正解は「小野妹子」だったのですが、おそらくその生徒は「子」がつく名前だったということはわかっていたはずです。ですが、女性の名前、しかも時代も飛鳥時代と大正時代と大きな隔たりがありますね。「子」がついているから女性かもしれない、最近「与謝野晶子」という名前を習った、正しい答えがわからないけれど答案を埋めなければいけないのでこれを書こう、と頭の中で考えたと思われます。
歴史上に女性が登場することはあまりありませんし、「子」がつく名前は他に思いつかなかったのでしょうが、遣隋使として海を渡るのに女性が行くとは考えられませんし、そもそも与謝野晶子がなにをした人なのか知らない、ということがこのケースではわかりますね。時代や出来事、人名すべてがごちゃごちゃになっていて正確に覚えておらず整理もできていないためにこのような答えを書くに至ったのです。
特に近代史は注意が必要
ですが、このことは他山の石ではありません。6年生になってくると、歴史の問題で必要とされる知識はさらに細かくなってきます。特に、目まぐるしく状況が変化し、日本国内だけでなく他国との関係性も意識しなければならない近代史については、とにかく知識量が膨大です。歴史上のできごとは、その時代だけでなく、その後の流れにも影響してくるので、知識があやふやなポイントは放置せずに、必ず早めに定着させるようにしておきましょう。
テキストの使い方に気をつけよう
社会の学習においては、テキストと問題集だけでなく、重要な知識を分かりやすく簡潔にまとめたサブテキストの有効活用が大切です。予習シリーズでいうとサブノート、サピックスならコアプラスなどです。ただし、これらの教材は使い方には要注意です。なぜなら、それらの副教材は、知識を凝縮しているため、スペースの関係で1問1答形式になっていることが多いからです。そうすると、知識単体に目が行きがちになるため、それだけでは知識と知識を関連付けて正確に理解するのが難しくなってしまいます。
コアプラスやサブノートは、時代ごとに重要なポイントをまず押さえることや、知らない知識をあぶりだすには非常に役に立ちます、ですが、それで終わってしまっては意味がありません。一つの知識を学習したら、その知識に関連知識を肉付けしていく感覚を持って学習していくと覚えられる知識も増え、効率が良くなります。例えば、遣隋使を送ったのはだれか、聖徳太子は他に何をしたのか、冠位十二階制度はどんなものか、聖徳太子は誰の摂政をしたのか、それはなぜか、その時代の有名な建造物は何か、それはどこにあるのか、都の位置は、などなど、遣隋使一つとってもその時代に起こった出来事や関連する人名、地名などに発展させることができます。それらの知識どうしの関係をしっかり理解して整理すると、一つの知識から多くの知識がいもづる式に出てくるようになり、効率がアップするのです。
歴史は「漢字指定」に注意が必要
歴史には人名、地名を始め、たくさんの固有名詞が出てきますよね。そのような固有名詞を覚える際には、必ず漢字を含めて正確に覚えるようにしましょう。固有名詞の場合、ほかの答えはあり得ません。自分の名前の漢字を間違えられたらいやな気持になりますよね?歴史上の人物や地名も、同じように思うのではないでしょうか。
また、最近の中学入試問題では、社会の回答の際に「漢字で書きなさい」と漢字指定してくる中学校が増えてきています。模試ではひらがなで書いても正解をもらえたものであっても、中学入試で漢字指定をされていれば、ひらがなで書いても0点です。そのことをしっかり意識し、手を抜かずにきちんと漢字で覚えるようにしましょう。そのためには時間がかかります。小学校が休校中の今の時期だからこそ、自宅学習で時間が使えるので、漢字指定を意識して、人名や地名、出来事についても漢字で覚え、なおかつ「書ける」ようにしておきましょう。いくら覚えても答案に書けなければ意味がないからです。
なかなか覚えられない場合はクイズ形式で
歴史に限りませんが、社会では知識は全体の流れを総括して覚えた後に、その時代に関連する細かい知識の叩き込みに移ります。もしなかなか覚えられない場合は、それをピックアップしておいて、親子で一緒に、クイズ形式で一つの知識からどんどん設問を変えて知識を発展させて答えていくような形にすると、苦手意識も和らいで楽しんで覚えることができます。また、保護者の方にとっても、お子さんの苦手分野や弱点はどこか、ということを把握しやすくなるので一石二鳥です。
歴史は資料集を活用して学習しよう
地理では、地図帳の重要性についてご紹介しました。歴史でも、視覚を大切にした学習は非常に大切です。そこで使いたいのが歴史資料集です。浜島書店などの歴史資料集をお持ちの方が多いかもしれません。かなり細かい知識までも網羅されていますし、何といってもカラーで人物や歴史に関する史料をまとめてあるので、人名と顔や服装、起こった戦争の様子、文化史で有名な人の顔や当時の人々が使っていた道具の写真などが集められており、常に横において調べるようにすると、知識と結びつけることができ、幅が広がります。
また、最近の中学入試問題は資料問題が非常に増えています。だいたいの資料は資料集に載っているので、使わない手はありません。歴史の学習をする際には、必ず資料集で確認し、さらに進んだ知識にも興味を持って取り組み、時代全体をしっかり理解するように学習を進めましょう。
歴史では知識の切り替えを意識することが重要
歴史の問題は、単に一つの時代を切り出して出題されるわけではありません。最近の入試問題も含めた歴史の問題の出題傾向としては、「テーマ問題」が増えていることが挙げられます。たとえば、一つの戦争について出題するなどです。第二次世界大戦をテーマにした場合、それまでの歴史の経緯や他の国との関係、どの国と連盟したか、その国々は結果的にどうなったか、世界大戦の中で起こったそれぞれの戦争の名前と始まった年号、背景、終戦に至った経緯、さらには終戦後の講和条約の名前や締結の際に関わった人名、占領下の生活や占領していた国、国土返還、対外的な条約など、広げようと思えばいくらでも広げることができます。
それぞれ一つの知識を覚えていただけでは、太刀打ちできないのがおわかりいただけるのではないでしょうか。たしかに、歴史のテキストでは、時代ごとに分けてそれぞれの時代の内容として知識がそれぞれ出てきますが、数十年にわたって、あるいはもっと長い期間にわたって一つの出来事が影響しているというのが歴史の面白さであり、難しさでもあるのです。ですから、知識と知識の関係性をつかみながら知識を理解していくことがとても大切なのです。
また、それだけ一つの出来事から広げられる歴史だからこそ、設問は時代をまたぐことさえあります。また、人名を効く問題、地名を効く問題、地図で一を選ばせる問題など聞かれることも様々です。つまり、設問ごとの頭の切り替えがとても大切になるのです。歴史を中心とした問題は、地理や公民、国際関係などと関連性が深いため範囲を広げやすいという特徴があります。そして、入試問題の傾向も同様です。設問ごとに頭を切り替えて正しい知識を引っ張り出していくためにも、正確に理解して知識を覚え、設問ごとに切り替えながら答えていくことを意識して問題を解いていくことを繰り返しましょう。
学校の教科書は歴史学習の宝庫
歴史の学習では、資料集を学習の際に活用することが非常に重要だということをご紹介しました。資料集とともに歴史学習のうえで重要なのが学校の社会の教科書です。学校の教科書には表やグラフはもちろん、カラー写真を用いた資料なども充実しています。塾のテキストのような文字だけの知識ではなかなかイメージしきれず、覚えにくいところをわかりやすく説明してくれており、その時代ごとに押さえておくべき資料をカラーで入れてくれてあるので、ぜひ徹底的に利用したいところです。たとえば、昔の人々の暮らしや、各時代の文化遺産の特徴など、なかなか想像できないことを図表入りで説明してくれるなど、学校の教科書の歴史部分は学習において宝庫といっても過言ではありません。
小学校が休校中の今の時期だからこそ、教科書の内容をしっかり振り返る時間をとっていただきたいところです。教科書の内容は、中学入試の際に求められる最低限の知識であり、中学校側もそれを理解していることを前提として入試問題を作ります。教科書の図表の説明についての知識を問う問題が出題されることもあります。決してその内容は難しいことではなく、知識と知識のつながりを促進してくれるありがたい存在です。たかが教科書、と侮ることなく、中学受験における基礎が詰まっている参考書ともいえる存在であるということを意識してぜひ活用してください。
洗い出した苦手分野や、習ったのに忘れていた内容を早めに克服
社会の知識は、カリキュラムが進むごとに前までの回をしっかり覚えておけるのが理想的です。しかし、現実的にはそれは難しいです。たとえ、単元ごとに小テストがあったとしても、毎回満点ということはまずないでしょうし、単元によっては全く覚えられていないということもあります。それはなぜなのでしょうか?やはりそれは「勉強時間をとっていない」ことにつきます。
社会は後回しにされやすい教科であることはご説明しましたが、せっかく授業を受け、テキストを読んでいるのに頭の中に入っている知識があまりにも少ないと、あとから覚えようとしてもどこから手を付けていいかわからなくなりますし、知識も断片的になってしまい、知識どうしのつながりを意識して覚えるには時間がかなりかかります。ですが、時期が進むにつれてそういった基礎知識をしっかり理解し、定着させるための時間がかかってしまいます。
「総復習」の時期はこれからなかなかない
また、塾からは夏期講習で総復習するので心配いりませんよ、と言われるかもしれませんが、夏期講習でいう「総復習」とは、「総合問題をひたすら解く」ことだと思ってください。全単元を学習したことを前提に、総合問題を時間いっぱい解いていき、その問題の解説を受ける、その繰り返しです。つまり、もう一度全単元について出来事や時代背景などの知識を説明するということはしてもらえないのです。そこをしっかり理解しておきましょう。
だからこそ、小学校が休校中の今のうちに、苦手分野や弱点をしっかり洗い出し、×を〇に変えていくというワンクッションを入れることがとても大切なのです。それを今のうちにやっておけば、夏期講習や秋以降の問題演習においても、問題演習の際にどの知識を使ったらよいのか紐づけることができるようになります。自宅学習の時間が取れる今だからこそできることです。これまで取れなかった社会の知識を理解する時間をしっかりとって、自分なりの総復習をするようにしてください。
弱点ノートを作るのもオススメ
これまでの模試などで間違えた問題の中から、知識不足で間違えたものや、苦手な出題方法の問題などをピックアップして、弱点ノートを作っておくことをオススメします。ノートの作り方は簡単です。間違えた問題をコピーやプリントアウトするなどして、ノートの見開きの左ページに貼るだけです。
ノートの右側を使って、まずはその問題をもう一度解いてみましょう。そこで解ければ〇としてよいですが、やはり一度間違えたものですから、もう一度解いてすぐに正解するということは難しいのが現実かもしれません。しかし、今のうちはそれで構いません。再度間違えた問題にはカラーペンで×を付けておき、いつでも間違えた問題がわかるようにしておきましょう。再度間違えた問題については、問題で問われた知識について、簡単にノートの右側にまとめておきましょう。それが知識と知識のつながりを意識するきっかけともなっていくのです。
弱点ノートを作っておくと、今後の模試などの際に、ノートを見直せば、同じ問題でまた間違えるということが激減しますし、再度間違えた問題にさらに違う色で×を付けておけば、克服すべき対象が良く見えてきます。ぜひやってみてください。ノートを作るのは少し時間がかかるので、保護者の方が問題を貼るところまでやってあげるとお子さんの時間の節約になります。
今すべてできなくても大丈夫
問題集を解く際も、今の時点ではまず基礎問題を完璧にすることを心がけましょう。焦って応用的な記述問題を完璧にしようと焦る必要はありません。また、記述問題が出題する中学校を志望校としている場合、記述問題を意識しすぎて書く練習ばかりするという受験生がいますが、記述問題といっても解答方式が違うだけで、選択問題で問われるような知識を自分自身で整理し、文章にまとめていくという内容であることに変わりはありません。
まずは、だれでも答えてくるであろう基礎知識を問う選択問題で間違えることのないように、知識があいまいな部分を作らないようにしていきましょう。皆が正解する問題を落とすとダメージが大きいです。ですが、難しい知識を問う問題は正答率も低いですから実はあまり差がつきません、差がつくのはまさに誰もが解いてくる基礎知識問題なのです。
苦手なところは、放置すればするほど苦手意識が増してしまい、学習する際にも敬遠してしまうので結局手をつけずに放置してそのうち忘れてしまいがちです。だからこそ、逃げずに早いうちに対策しておくことが必要なのです。入試直前の詰め込み学習は効果がありませんし、そもそもほぼ時間が割けません。したがって、多くの受験生や保護者の方が考えているように、直前期にまとめて覚えるということは不可能に等しいことを知っておきましょう。
今まで学習した内容は今の期間に理解を進め、正確に覚得て定着させることが必要です。そのためには、こまめに復習することを心がけてください。これまでの範囲から苦手分野を洗い出し、克服するためには小学校が休校中の今が大きなチャンスです。応用的な問題は6年生の夏以降に数をこなしていくので、まずはその前提として。必要な基礎知識を自宅学習でしっかり定着させるようにしておきましょう
まとめ
今後の中学受験の勉強においてとても重要なのは、「自分のための勉強」をしていくことです。受験生一人ひとり、苦手分野や弱点は異なります。教科だけでなく単元ごとに考えてもみんなが同じところでつまずくこともありますが、誰もがそういうわけではなく、自分にとって何を克服すべきかを自覚することが何よりも大切です。これまで毎週のカリキュラム学習の中ではなかなかできなかったことです。ですから、小学校が休校中の今こそ、他人と比べるのではなく、自分の苦手分野や弱点分野を洗い出し、一つひとつ克服していくことができる貴重な時間なのです。
塾での通常授業では、どうしても集団授業なので、カリキュラムを時間内にこなすことが一番重視されます。そのため、生徒一人ひとりの状態に気を配る時間はなく、ただ授業が進んでいきます。そういう授業の中では、わからないことがあってもそのまま放置してしまうことになりかねませんし、質問時間もあまりとれなければわからないまま家に帰ることになり、宿題を解こうとしてももう一度テキストの内容を読まないと1問も解けないという状況になってしまいます。
特に、社会の場合、塾の授業は1時間足らずであることが多いです。その短い時間の中で、ひたすら新しい知識を詰め込む授業が行われ、問題演習は宿題という形で受験生にゆだねられます。短い授業時間でその回の必要知識を全て定着させるのはまずできることではありません。ですから、宿題という形で復習をすることはやむを得ないとも言えます。だからこそ、自宅でいかに復習し、理解を深めて定着させられるか、ということが結果的に周囲と差をつけるポイントと言えるのです。
今までに学習してきた内容について、小学校休校期間中の今だからこそ振り返り、弱点をあぶりだすチャンスです。受検学年の場合、この先、知識問題だけに時間を割く余裕はなかなかないでしょう。だからこそ、今の時期にこれまで学習してきたことをしっかり定着させるように「自分のための学習」を進めましょう。
問題演習をしないと点数が上がらないと焦っても、社会の場合は、前提となる基礎知識があいまいでは時間ばかりかかって結局不正解という結果になってしまいます。暗記科目、ととらえられている社会は。正確な知識の理解が無ければ絶対に問題は解けません。社会は「知らないと解けない」教科だからです。
小学校が休校中の今だからこそ、一度立ち止まって基礎中の基礎に返り、目と手をフルに使って、自分自身の現状に向き合った「自分のための学習」を進めていきましょう。自分のための学習、という意識をもってしっかり基礎固めをしておくと、今後始まる問題演習や模試、入試過去問の学習をしていく際に非常に楽です。焦らず、自宅学習を進めていくことこそが今後の自信にもつながり、受験へのモチベーションを高めてくれます。ぜひ、「自分のための学習」をすることを意識して、苦手意識のある分野や弱点を見極め、着実にひとつずつ克服していき、基礎を固めていきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。