関西圏の中学受験生の方はもちろん、関東圏の中学受験生の間でも知名度の高い学校、それが奈良県にある私立中学・高校一貫校の西大和学園中学です。関西圏の中学校として、高い難易度を誇っています。以前は灘中、東大寺学園中の次に難しく、大阪星光学院中や清風南海中と同等の位置づけ、と言われていましたが、京都大学への進学率の高さ、また、近年東京大学への進学者数が増加傾向にあるなどの進学結果の良さもあり、人気が高まってきています。
最近では、東大寺学園中をしのぐ勢いにまで難易度が上昇しており、さらに首都圏で行われるいわゆるサテライト入試(首都圏以外の学校が、本校入試とは別に東京をはじめ各地で行う入試)の人気も高く、首都圏男子御三家中の1月入試校として名が挙がり、偏差値も上昇しています。また、2014年度より男女共学となり、女子の難関校としても知名度を上げています。
今回は、西大和学園中学・高等学校を卒業し、東京大学に進学した現役東大生へのインタビューを中心に、「西大和学園の特徴ってどんなところ?」「受験勉強で大切なこと」についてお伝えしていきます。
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そもそも西大和学園とはどんな学校?
西大和学園はもともと男子の中高一貫教育課程と、高校からの男女共学の教育課程が併設されており、男子校のイメージが強い学校でした。2014年に男女共学の中高一貫校になり、共学校へとシフトしました。以前の男子中高一貫校出身者からすると、かなりギャップもあり、特に女子率の高さが目を引くようになっているようです。
西大和学園の特色
西大和学園の特色としては、主に①指導の手厚さ、②行事やイベントの多さ、が挙げられます。それぞれについて卒業生の経験を見ていきましょう。
特色①指導の手厚さ
西大和学園では、ほかの私立中学・高校に比べて、出される課題が多い、授業時間数も多い、と言われます。実際に在籍した経験からすると、確かに課題の多さは身をもって感じましたし、部活動に関しても学業優先のために十分な練習量が取れないほどでした。
しかし、この課題の多さ、授業時間の多さに代表される指導の手厚さのおかげで、大学受験のために学習塾や予備校に行く必要は全くありませんでした。ほかの高校では、本格的に大学受験態勢に入る高校2年、3年になるとやはり予備校に通い始める、という友人が多かったのですが、私はそういった予備校にはほぼ行くことなく大学を受験しました。授業にしっかりついていき、課題を一生懸命やることによって、東京大学に合格するだけの学力を身につけることができました。学校から出される大量の課題、小テストの繰り返しによるところが大きかったと思います。
また、先生たちも進路について親身になって考えてくれたことも、志望校を決め、それに向かって勉強に邁進することができる大きな原動力になったと思います。
現在では、高校2年生から、東京大学志望者を集めたクラスなど、志望校に応じたクラス編成が行われているようで、より明確な目標を持ち、良い環境で勉強できるようになっていると思います。
また、高校は2002年に、文部科学省の推進するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、2014年にはスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されています。
特色②行事やイベントの多さ
西大和学園は、行事や学校イベントがとても多い学校です。私は実はこの点にひかれて西大和学園に入学しました。
主な行事としては、ファームステイ、富士登山、アメリカへの語学研修旅行、海外研修旅行などがあります。アメリカへの語学研修旅行は中学3年生のときにあり、2週間ほど渡米して、前半ではホームステイをし、後半にはカリフォルニア州での観光をすると言う、非常に楽しい旅行でした。海外研修旅行は、私のときはシンガポール、マレーシアに行きました。今ではインドやシンガポールなど、複数の国から選択していくことができるようになっているようです。
他にも、「多読」の授業やスーパーサイエンスハイスクールに関する活動など、いろいろなイベントがあります。スーパーサイエンスハイスクールの活動としては、ディベートやセミナー、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学への研修プログラム、東京大学でのライブ講義や、京都大学の研究室でのラボステイなど、非常に多くのプログラムが中学のときから用意されていて、とても充実していました。
寮生活について
私自身は6年間自宅から通い続けましたが、西大和学園には寮もあり、遠方に家がある生徒も入学できるようになっています。寮生は、東京や名古屋出身の生徒が多かったですが、中には沖縄出身の人もいました。寮生だけのイベントもあり、バーベキューやもちつき大会が開催されていたそうで、寮生の評判もよく、自宅生の私にとってもうらやましかったです。
西大和学園に入るためには?受験勉強で気をつけるべきこと
自分自身の経験
私は、小学校4年生のときから、関西の大手中学受験塾である能開センターに通っていました。5年生ころから西大和学園に行きたいなという気持ちを持っていました。得意教科は算数でしたが、塾の先生が独特な人で、授業がとても面白く、さらに算数という教科が好きになったと思います。その時学んだ知識は大学生になった今でも頭の中に残っており、私自身も塾で受験算数を指導しています。
逆に苦手だったのは国語で、これは中学・高校へと進んでいっても苦手意識はなくなりませんでした。それでも、漢字や文法問題は塾でたくさん取り組んだので、そういった問題については点数を落とすことなく解けていました。
大事なのは基本的な問題の反復練習
今になって思うのですが、たとえば算数では、計算問題や基本的な図形問題の反復練習が本当に大事だったな、ということです。例えるならば、サッカーなどのスポーツと同じです。強い相手(=志望校)と対戦する場合、相手を倒すためにいろんな戦術を練って得点をとる、あるいは失点を防ぐことを考えますよね。そしていざ試合が始まって、戦術通りに相手を攻略できたとします。しかし、得点につなげる直前でパスをミスしてしまう、あるいはトラップを失敗してしまって、決定的な得点機会を逃してしまう・・・勝負(=合否)を決めるのは、実はこういった基本的な技術のところなのだと思います。
どれだけいろんな解法、問題パターンを学んでいたとしても、解いていく途中で計算ミスや数字の写し間違いといった決定的なミスをしてしまうと、考え方は合っていても正しい答えにたどり着けません。テストで高得点をとれない原因は、実はこういった基本的な計算間違いだったり、基本的な考え方を間違って理解してしまっていることが多いです。だからこそ、基本的な計算問題や基本的な考え方の理解を繰り返し行い、決して間違えないレベルの正確な力を身につけておくことが、テストでの得点に直結してくるのだと思います。これはもちろん入試でも同じことです。
たしかに、計算練習などの反復練習は地味ですし、面倒だと思いがちですが、逆にやればやるほど力をつけることができる部分です。そしてそれが、テスト、ひいては志望校の入試の点数に直結するのだとしたら?やはり避けては通れません。おろそかにせず、丁寧にやることがとても大切だと思います。
解答用紙に書く字はていねいに!
とくに男子に多いかもしれませんが、テストで問題が解けていても、×がついたり減点されていたりした経験はありませんか?その大きな原因の一つが、「字をていねいに書いていない(書こうとしていない)」ことです。受験勉強をするなら、解答用紙の字はていねいに書くべきです。せっかく問題が解けても、字が汚くて採点者が判別できないと点数はもらえません。自分でできる限り「ていねいに」書き、きちんと採点してもらいたいという気持ちを表すことが大切なのです。
また、字がきれいかどうかは直接の採点対象とはならない(各自差があるため)と思いますが、採点者の印象は変わってきます。中学入試は入学者を選抜するための試験ですから、きれいな字であれば好印象を持たれるでしょうから、非常に良いことです(もちろん答えが間違っていては点数はもらえませんが)。特に記述問題では、採点者に点数のプラスマイナスをつける裁量が与えられていることが多いので、できるだけ字をきれいに書くことによって、記述問題の部分点が多くもらえるかもしれません。日頃の勉強から、字を丁寧に書くことを心掛けるようにしましょう。
まとめ
今回は、西大和学園中学高等学校の卒業生に、学園の特徴と、受験勉強、入試対策で大切なことについてインタビューしてみました。西大和学園は、首都圏の受験生にとっては、御三家中の併願校としても研究しておいて損はない学校です。また、奈良県という交通の便のあまりよくないところにあるため、予備校へのアクセスもあまりよくないことから、むしろ学校での学習をきっちりやることによって難関大学に合格するだけの実力を身につけることができるという魅力もあります。全国には様々な特徴を持った魅力的な学校があります。わが子が進学したらどのように成長するだろうか、そんな視点で学校について調べてみるきっかけとなれば幸いです。
受験勉強については、西大和学園に限らず、どの学校を受験するにおいても大切なことを指摘してくれました。難しい問題を解けなくてはいけない、と思って基礎基本の反復練習をおろそかにしていませんか?おろそかにしているならば、テストの点数に必ず現れてくるものです。今からでも意識して、「確実に得点する」ための反復練習をしっかり行いましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。