「要約」が苦手な方必見!これを読んでやるべき手順をしっかりと理解しよう!

中学受験でも、高校受験でも、大学受験でも、文章を要約するということは,とても大切な作業です。直接的には、現代文の読解力が上がる、というメリットが挙げられますが、間接的には実にいろいろなメリットがあります。

国語だけでなく、生物や日本史・世界史などの記述・論述問題に対しても解答が上手になる、とか、算数や数学の文章題に対して、何を訊かれていて何を答えるべきなのかがすぐにわかるようになる、とか、作文や小論文の出題に対して、素早く論旨展開が出来るようになる、等と享受できるメリットはかなり豊富です。

私も長年に渡って小学生から高校生まで、実にさまざまな学年の生徒に対してほぼ全教科の指導をしてまいりましたが、受験生に対してもそうでない生徒に対しても、日々の自宅学習でどういうことをやったら良いのかと訊かれたら、毎日必ず新聞記事や書籍を読み要約をするように、と伝えています。これは指導している教科にかかわらずです。ということはつまり、生徒側から言えば、伸び悩んでいる教科がどの教科であっても、この要約を出来るだけ毎日行うことによって、ほぼ確実にその伸び悩みが解消する、ということなのです。

『要約する』とはどういうことか?

では『要約する』とは具体的にどういうことをすればよいのかと言うと、さほど難しいことではないのですが、

筆者がその文章を読者に読んでもらうことによって、読者にどんなことを感じ取ってもらいたいと思っているのかを察知し、それを簡潔に述べること

であります。例えば、井伏鱒二の『山椒魚』という名作がありますね。

自分の身体の成長を見越さずに狭い岩場に入り込んでのんびりしすぎた山椒魚は成長してそこから出られなくなり、そのことを嘆き悲しみ、ある日その岩場に迷い込んで来た蛙を巻き添えにしようとします。しかし蛙は山椒魚のようにずっと不平を言い続けたり、他の誰かを巻き添えにしようとしたりはしませんでした。山椒魚を恨むこともせず、蛙は自分の運命を受け入れ、その状況の中で出来る最大限のことを見つける努力をし続けます。

簡単に述べると、上記のようなあらすじの物語なのですが、『要約をしなさい』と言われたら、このあらすじを書くことだと思っている人が多いような気がします。(上記はあくまでも”あらすじ”であって”要約”とは若干異なります)

しかし本当に『要約をする』というのは、いつ誰が何をどうこうした、という、物語の内容をなぞらえることではなくて、その物語を読むことによって読者が、

  • 何を感じ取り
  • そこから何を学び
  • それをどう自分の人生に活かしていくべきかの考えを持つようになる

ことであると思います。したがって、例えばこの山椒魚の物語であれば、以下のような文が『要約』となります。

この短い人生の中で,皆生まれながらにして異なる身体的特徴や運命を背負っている。誰にとっても、時に思わぬ方向に事が流れたり、苦難にぶちあたる事があるだろうが、それを嘆いていても事態は好転しない。まして他人を巻き添えにしようなどと考えても、自分は救われるわけではない。不平をこぼし、他人に危害を加えることを考える暇があるのなら、まずは運命を受け入れ、自分の置かれた状況を冷静に分析し、ぜひその時間を事態が好転するようにあれこれ策を練ることに使ってもらいたい。それが蛙のように、短い人生を出来るだけ有意義に、賢く生きる術なのである。

いかがでしょうか。山椒魚がこうしました、ああ言いました、といったことは書いていないですね。このように、文章や物語を通して、筆者がそこに吹き込んだ魂ともいえる隠されたメッセージを読み取る、という、一見難しそうな作業が『要約する』ということなのです。そんなに難しそうなことが、自分に出来るものなのかと不安に思う方もいらっしゃると思いますが、ほんの少しの工夫は必要だとしても、筆者だって、一人でも多くの読者にそのメッセージを伝えたい、という思いで文章を書いている訳ですから、その文章を読んだ人の例えば2人に1人しか読み取れない、といったような難解なメッセージの隠し方はしない、と思って良いでしょう。慣れは必要ですが、何度もこの要約作業を繰り返し行っていくうちに、小学生でも十分にこのメッセージの読み取りが出来るようになって行きますから安心してください。

要約が何に役立つのか

ここまで読んでいただくと何となくわかると思いますが、『要約する』ということはつまり筆者がわざわざ文章にしてまで一人でも多くの読者に伝えたい大切なことがあって、それを文章を読み進めていくうちに見つける、ということです。読書の虫とか活字中毒の人は、この『見つける』作業に慣れて上手になって行くうちに、毎回この隠されたメッセージを読み取ることが快感になっているのです。そして、この隠されたメッセージがほぼ確実に読み取れる、ということはどういうことかと言うと、つまるところ、相手が言っていることが瞬時に的確に理解できる、ということになります。筆記テストの出題では、相手が何を答えさせたいのか、問題文を読んですぐに理解できるようになります。小論文や記述問題では、必ず書かなくてはならないことは何なのか、それをその制限字数でと言われたら、どんな表現を用いればちょうど良いのかがすぐに組み立てられるようになります。さらに面接では、相手が何を聞きだそうとしていて、どういう受け答えをするのが望ましいのかがその場で判断出来るようになり、また適切な言葉づかいも出来るようになります。一見関係なさそうですが算数や数学の文章題でも、与えられている条件は何と何で、そこから出題者は何を答えさせようとしているのか、をすぐに察知することが出来るようになるので、問題を読んですぐに方針を立て、答えるべきことの証拠を探したり計算に取り掛かることが出来るようになります。

このように、要約は実にいろいろな場面で役に立つのです。(更に高度な問題になると、第一義として受け取ったはずのメッセージの敢えて逆を答えさせる、という厄介なものまであったりしますが、この要約のスキルが上がっていくことで、見抜けるようになるわけです)

短い文章からはじめると良い

しかし、いくら要約の重要性がわかっても、今までやったことのない作業をやり始めるのには腰が重くなりがちですよね。新しいことを始める時は誰しもがそうだと思うので、まずは新聞の社説とか、短編小説とか、短めの文章から手を付けて見るのが良いと思います。ただし、入試問題として用いられた文章を要約するのはあまりお勧めではありません。なぜならそれらの文章は、何かの本やどこかの新聞記事から一部を抜粋したものであって、筆者が書いた文章が完全な形で再現されているわけではないので、書いていない部分も含めて隠されたメッセージを読み取る、つまり要約することはとても難しいことだからです。(勿論、学校側も全文を掲載したいのでしょうが、各種権利の問題や時間の都合上泣く泣く抜粋しているのです)

ですので、まずは、筆者が最初から最後まで書いた完全な文章を読んで要約できるようになたら、仕上げとして入試問題などの一部抜粋のものを読んで、書いていない部分も含めて要点を読み取れるようにトレーニングしてみて下さい。入試でも、社会に出てからも、この要約が得意になっておくということは非常に得なことです。

今後の入試問題も、より記述に重きを置いた問題に変わっていくと言われていますから、是非気づいた時から練習を始めておきましょう!

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