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タンパク質の構造と性質
生体物質のまとめ
物質名 | 構成元素 | 分子量 | 性質 |
タンパク質
(有機物) |
C H O N S | 大 | 非常に多くの種類がある(ヒトでは10万種類以上)。多数のアミノ酸からなる高分子化合物。酵素、ホルモン、抗体、筋肉、皮膚の成分。呼吸基質となる。 |
核酸
(有機物) |
C H O N P | 大 | DNAとRNAがある。多数のヌクレオチドからなる高分子化合物。 |
炭水化物
(有機物) |
C H O | 大 | 呼吸基質や、細胞壁の主成分となる。
単糖類…グルコース、フルクトース(果糖)、ガラクトースなど 二糖類…マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)など 多糖類…デンプン、グリコーゲン、セルロースなど |
脂質
(有機物) |
C H O (P) | 大 | 脂肪酸とグリセリンからなる。水に不溶。比重が小さい。脂肪は呼吸基質となり、リン脂質は生体膜の成分。 |
水 | 小 | 溶媒としていろいろな溶質をよく溶かす。化学反応の場。日熱が大きく、急激な温度変化を防ぐ。 | |
無機塩類 | 小 | 多くはイオンとして細胞の状態や働きを調節する。 | |
P | 骨や歯の成分 | ||
Na | pHや浸透圧の調節、活動電位の発生 | ||
K | 膜電位の発生 | ||
Cl | 浸透圧の調節、胃液中の成分 | ||
Ca | 骨や歯の成分、筋収縮や血液凝固に関係 | ||
Fe | ヘモグロビンの成分 | ||
Mg | クロロフィルの成分 |
タンパク質の立体構造ができるまで
タンパク質の一次構造
アミノ酸配列のこと。すなわち、DNAの塩基配列によって決まる。
例、インスリン
図1
[哺乳類のインスリン]ヒトとブタ・ウシ・ヒツジのインスリンのアミノ酸配列を調べると、A鎖の8、9、10番目とB鎖の30番目のアミノ酸配列が種によって異なるだけで、その他は共通していることがわかる。
A鎖 | B鎖 | |||||||||
1 | … | 8 | 9 | 10 | … | 21 | 1 | … | 30 | |
ヒト | Gly | Thr | Ser | Ile | Asn | Phe | Thr | |||
ブタ | Gly | Thr | Ser | Ile | Asn | Phe | Ala | |||
ウシ | Gly | Ala | Ser | Val | Asn | Phe | Ala | |||
ヒツジ | Gly | Ala | Gly | Val | Asn | Phe | Ala |
タンパク質の二次構造
水素結合により、らせん状のαヘリックス(αらせん)構造やβシート構造などの規則的な立体構造をとること。S-S結合による場合もある。
★水素結合…カルボキシル基の-COとアミノ基の-NHの間にみられるゆるやかな結合。
★S-S結合(ジスルフィド結合)…-SH基を含むシステインどうしにみられる結合。
図2
★αヘリックス構造
ポリペプチド鎖のアミノ酸が3~4個ごとにひと巻きするらせんをつくり、上下のらせんの内の-COと-NHの間で4個の水素結合を生じ、立体構造をとる。
★βシート構造
ポリペプチド鎖が平行に並び、互いに水素結合でつながって屏風のようにじぐざぐなっているので、安定で分解されにくい。
タンパク質の三次構造
らせん構造やジグザグ構造などの二次構造が組み合わさって折りたたまれ、1つの立体構造をとるもの。S-S結合による場合もある。
例、ミオグロビン(筋肉中で酸素運搬)
図3
タンパク質の四次構造
タンパク質がいくつかのサブユニット(三次構造からなるかたまり)からできているとき。
例、ヘモグロビン(赤血球に含まれる呼吸色素)
図4
タンパク質の変性
タンパク質を加熱したり、pHを急激に変化させたり、変性剤を加えたりすると、タンパク質本来の立体構造がくずれて性質が変わる。これを変性という。
変性したタンパク質では、一次構造は変化しないが、もとの立体構造が壊れて機能が失われている。このように、変性したタンパク質が本来の働きを失うことを失活という。
一度変性したタンパク質は、元の状態に戻らないことが多い。
例、タンパク質の化学薬品による変性(毛髪にパーマをかける場合)
図5
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