今回は日本の水産業、中でも特に、育てて収穫する養殖業と水産物の輸入について見ていきたいと思います。
日本の漁業は昭和59年(1984年)をピークに減少の一途を辿っています。その背景には、昭和50年代に、沿岸から200海里(約370km)の水域で外国船は勝手に入って漁をしてはいけないルールが適用されたことや、海外でも魚の需要が増えてきたことがあげられます。
図「我が国漁業生産額の推移」
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」に基づき水産庁で作成
注
- 昭和48(1973)年及び53(1978)年については、それぞれの年の「漁業・養殖業生産統計」における沖合漁業の生産量を用いた。
- 昭和58(1983)~平成30(2018)年は、平成30(2018)年の「漁業・養殖業生産統計」における沖合漁業に含まれる漁業種類を対象に集計した生産量を用いた。
- 漁業生産量には養殖業生産量は含まない。
(水産庁)
では、日本の養殖業について詳しく見ていきましょう。養殖業とは出荷サイズになるまで水槽やいけすで人の管理下のもと育て、収穫する手法です。養殖業の他にも栽培業があり、栽培業とは、卵や稚魚など外敵に狙われやすい時期を人の手で育て、その後自然海に放流し収穫サイズまで育ったら収穫する手法です。
その年によって漁獲量が変動する遠洋漁業や沖合漁業とは違い、養殖業は安定的な生産・供給が可能であるという特徴があります。下記の図を見てみると平成6年(1994)年にピークを迎えて以降緩やかに減少していることが見受けられます。
図「海面養殖業の魚種別生産量の推移」
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」
注:平成23(2011)年調査は岩手県、宮城県、福島県の一部を除く結果である。
図「内水面養殖業の魚種別生産量の推移」
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」
注
- 平成23(2011)年調査は岩手県、宮城県、福島県の一部を除く結果である。
- 平成13(2001)年以降の内水面養殖業生産量は、マス類、アユ、コイ及びウナギの4魚種の収獲量であり、平成19(2007)年以降の収獲量は、琵琶湖、霞ヶ浦及び北浦において養殖された上記4魚種以外のその他の収獲量を含む。
(水産庁)
天然魚は収穫時期が決まっており時期によって金額が変動しやすいですが、養殖では安定した供給を保つことが出来ます。世界的に見ても養殖業の割合は高まり天然の漁獲量を上回っています。日本ではまだ全体に占める養殖業の割合は大きくありませんが、中国ではおよそ8割が養殖業となっています。
日本の養殖業は、魚類、貝類、海藻類の他、宝飾品に使われる真珠など多岐にわたって行われています。全体の漁獲量の中で養殖業の割合は少ないですが、近年資源保護の観点から漁獲量が減少しており、養殖できる魚の種類を増やす動きが高まっています。
上記の図を見てみてもブリ類、マダイ、ギンザケ、クロマグロなどが養殖され、全体として減少傾向にある漁獲量の中でも上昇もしくは安定した供給を保っています。現在日本で収穫されるマダイの約8割が養殖であり、ウナギはほぼ養殖です。
生産量の多いホタテガイやブリは近年輸出がさかんに行われています。日本の水産業の輸出と輸入について今度は見ていきましょう。
図「我が国の水産物輸入量・輸入金額の推移」
資料:財務省「貿易統計」に基づき水産庁で作成
図「我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳」
資料:財務省「貿易統計」(令和元(2019)年)に基づき水産庁で作成
(水産庁)
まずは水産物輸入について見ていきましょう。2009年以降上昇していた水産物輸入ですが、ここ近年は減少傾向にあります。また、コロナ禍の海外でのロックダウンなどにより輸入が減り、水産物の輸入品の価格が高騰する問題が2020〜2021年にかけて起きています。
主な水産物輸入品はサケ・マス類、カツオ・マグロ類、エビです。それぞれ主な輸入相手国はサケ・マス類はチリ、ノルウェー等、カツオ・マグロ類は台湾、中国、マルタ等、エビはベトナム、インド、インドネシア等になっています。
資料:財務省「貿易統計」に基づき水産庁で作成
資料:財務省「貿易統計」(令和元(2019)年)に基づき水産庁で作成
(水産庁)
主な輸出相手国・地域は香港、中国、アメリカです。3か国・地域で輸出金額の約6割を占めています。
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