中学受験生なら、「国際連合」という言葉は知っていますよね。毎日のようにニュースや新聞でも見かける言葉です。では、国際連合とはどのような組織なのか、どのような機関があるのか、どのような活動をしているのか、説明することはできますか?
国際社会については、中学受験のカリキュラム上勉強を始める時期が遅く、また、用語も難しいため、覚えるのに苦労するところです。特に、国際連合については各国の利害が関係するため、ニュースで取り上げられやすく、時事問題として出題されやすいという特徴があります。理解の度合いによって差がつきやすいですから、正確で深い理解が求められます。
今回は、国際連合とその機関について、入試によく登場するところを取り上げて、理解を深める方法について書いていきます。
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国際連合とその機関、絶対にこれだけは!
国際連合は、国際平和及び安全を維持することを目的として1945年に設立された国際機関です。前身の国際連盟は、各国の足並みがそろわずに第二次世界大戦を防ぐことができなかったため、これに代わる新組織として設立されました。国際連合と国際連盟の違いについては、国際社会の単元では頻出の知識です。設立年、本部、加盟国についてはしっかり比較して整理しておきましょう。
国際連合の6つの機関
国際連合には、次の6つの主要機関が設けられています。塾のテキストにも図がありますね。本来は、すべて前に「国際連合」とつきますが、以下では省略しています。
- 総会
- 安全保障理事会
- 経済社会理事会
- 信託統治理事会
- 国際司法裁判所
- 事務局
特に大事なのは「安全保障理事会」
入試によく登場するのは、「安全保障理事会(安保理)」ですね。国際平和と安全の維持をはかる重要な機関で、最も大きな権限を持つ、事実上の最高意思決定機関といってもいい機関です。最近でも、北朝鮮問題やシリア問題などのニュースで頻繁にその会議の様子が報道されています。国連平和維持活動(PKO)の設立や、テロ対策、制裁措置の決定などを行っています。ニュースを見るたびに、新聞を読むたびに、安保理の役割を確認しておきましょう。
また、安保理の常任理事国と非常任理事国については、国際社会、国際連合を勉強するうえで絶対に落とすことのできない知識ですから、しっかり確認しておきましょう。常任理事国は決まった5カ国で、非常任理事国は10カ国で2年の任期付きだという違いも知っておきましょう。
常任理事国
- アメリカ合衆国
- イギリス
- フランス
- ロシア連邦
- 中華人民共和国
いずれも、第二次世界大戦に勝利した連合国です。このことを覚えていると、国際連合が成立した時に力を持っていた国が今に至るまで強い権限を持っていることがわかりますね。当時は中華人民共和国ではなく中華民国でしたが、その後中華民国(台湾)が持っていた代表権が改めて中華人民共和国に与えられました。国の名称は固有名詞ですから、間違えないように正確に覚えておきましょう。
非常任理事国
非常任理事国は、常任理事国と違って固定ではなく、任期は2年と決まっています。アジアから2カ国、アフリカから3カ国、中南米から2カ国、東ヨーロッパから1カ国、西ヨーロッパなどから2カ国の合計10カ国が選出されます。現在の非常任理事国は、ボリビア、エジプト、エチオピア、イタリア、日本、カザフスタン、セネガル、スウェーデン、ウクライナ、ウルグアイです。細かい知識なのですべて覚えようとする必要はありませんが、世界地図で国の位置を確認しておきましょう。
これははずせない!常任理事国が持つ強大な「拒否権」
安保理は9カ国以上の賛成で意思決定がなされますが、ここで絶対に忘れてはいけないのが、常任理事国が「拒否権」を持っているということです。つまり、5カ国の常任理事国のうち、1カ国でも反対すると、その案件は成立しない、という非常に強大な権力を常任理事国は持っているのです。評決は常任理事国5カ国全部の同意が必要、という大国一致の原則があるということはしっかり覚えておきましょう。
現在、安保理理事国の拡大案が話し合われていて、日本は常任理事国入りを目指しています。しかし、第二次世界大戦の敗戦国であり、周辺国の反対(領土問題など、こじれている国際問題を抱えています)もあり、またほかの案も話し合われているため、まだ実現には至っていません。ですが、日本は現在非常任理事国ですし、過去に何度も非常任理事国には選出されています。よく、正誤問題で、「日本は非常任理事国に選出されたことがない」という選択肢が出されることがありますが、そんなことはありませんので、ひっかからないように整理しておきましょう。
国際連合の関連機関
国際連合には、主要機関以外にもたくさんの機関があります。もちろん中学受験ではすべて覚える必要はありません。入試において要注意な機関をピックアップしておきますので、これらはしっかり整理しておきましょう。
- 国際教育科学文化機関(ユネスコ)
- 国連児童基金(ユニセフ)
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
- 世界保健機関(WHO)
- 国際原子力機関(IAEA)
- 世界貿易機関(WTO)
特に最近では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)について報道されることが多いので、ぜひ知っておきましょう。難民支援を行う人道機関で、難民に国際的な保護を与えます。1954年と1981年にノーベル平和賞を受賞しています。かつては、日本の緒方貞子さんがUNHCRのトップを務めていたことがあります。湾岸戦争後のクルド難民、旧ユーゴスラビア難民やルワンダ難民問題に対処し、非常に高い評価を受けた弁務官です。このに人の名前は模試や入試でも出題されることがあるので必ず覚えておきましょう。
UNHCRは、難民問題が世界中で起こっている現代において特に重要性が高まっている機関です。現在進行形で起こっているシリア難民問題も扱っています。世界中で起こっている難民問題については、世界地図をもとに出題されることもあります。関係している地域、なぜ起こっているのか、そのきっかけについても簡単でいいのでまとめておきましょう。
そのほか、世界保健機関(WHO)もよくニュースに出てきますね。エボラ出血熱など、世界的に流行する病気の対処にあたる機関です。日本は安全だから関係ない、という意識ではなく、もし日本に影響があった場合には、どのように対応するのか、という問題意識を持っておきましょう。難関校では、そういった問題解決意識を問うような問題が出題される可能性が大いにあります。
国際連合とその機関は、時事問題と合わせて確認を!
国際連合の主要機関、関連機関のうち重要なものについて整理してきました。まだ知らない知識かもしれませんが、今回挙げたものについてはしっかり整理し、簡単でいいので、それらの機関がどのような活動を行っているのか知っておきましょう。ユネスコとユニセフなどは混乱しやすい機関名です。ですが、それぞれどのような活動をする機関なのかを理解しておけば、間違えることはありません。
国際的な問題が生じるたびに、国連の活動はニュースや新聞で取り上げられます。つまり、時事問題が起こるたびに、国際連合やその機関がどう対処していくのか、が注目されます。ぜひ、日常的なニュースにアンテナを張って、時事問題が出てくるたびに国際連合の活動を確認しておきましょう。
最後に、重大ニュースなどが塾で発売されたら必ず確認しておきたい知識を一つ挙げておきます。2017年1月1日に新しい国連事務総長が選出されました。アントニオ・グテーレス氏(ポルトガル)です。前の国連事務総長の名前を書かないように、しっかり覚えておきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。